親しくない奴から貰うプレゼントには人生撃滅爆弾が入ってると思った方が良い

人はプレゼントというものを盲目的に好意的なモノと考える傾向がある。だけど、それって結構危険だよね。善意ともとれる行動に実は裏があるなんてことは、世の中ザラにある。それを見事にカタチにしたのが、映画『ザ・ギフト』。

ザ・ギフト (吹替版)

あらすじ

情報セキュリティ会社に勤めるサイモンは、妻ロビンとともに新しい街に引っ越してきた。仕事は順調で、ふたりは豪華な自宅を購入し、順風満帆の人生に思えた。

そんなある日、学生時代の同級生ゴードン・モズリーに出会う。そして後日、ゴードンから引越祝いとして豪華なワインが届けられた。

ロビンはワインの返礼として、彼を自宅の夕食に招いた。食事の間、ゴードンはまるで親友だったかのように語り、実は高校時代彼とはあまり親しくなかったサイモンは不快感をおぼえる。ロビンには、彼は見かけよりいい人には違いないと思えた。

後日、二人が仕事仲間のパーティーから帰ると、ゴードンから「ギフト」として、庭の池に鯉が泳いでいた…。

地獄の黙示録をギフトしてくる男

THE GIFT

そんな奴いるか? と思った俺はホラー好き失格?

あらすじからも感じる通り、終始何かがおかしい印象を受ける本作。俺の友達が『地獄の黙示録』を俺にプレゼントしてきたら割とベストフレンド認定するけどね「よくわかってんじゃん」って。そもそもなんだけどさ、人から貰った飲み物とか口に入れたくなくないですか? 毒とか入ってるかも知れないじゃん(完全に人間不信なクズの意見なので聞き流してください)。だからチョコも苦手なんだよ。

ここで俺の猜疑心に関して触れようか。基本的には性善説を提唱する俺、だが世の中には悪人も存在するってことも良く理解している。吐き気を催す邪悪なる存在が同じ世界に生きているってことをこの30年弱の人生で嫌と言うほど理解した。

わぁ~この人、本当に心の底からクッソ♪ 運悪くトラック突っ込んでこないかなぁ今すぐ コイツの横っ腹に。なんて思った事も何度もあった。でもそんなことを思うってことは俺も悪の部類に入るんだよね。心が綺麗な人はきっとこんなこと微塵も思わずに他人を信じれる。そんな天使が存在するってことも理解している。だからこそ、俺は友達を無駄に作らない。俺みたいな悪が人と関わったらきっとその人に悪影響を与えてしまう。あと俺の人間強度が下がる。これが真の性善説提唱者よ。

 

考え得る限り最悪のギフトとは?

THE GIFT

そんな俺でも自らの手で他人を貶めるようなことは出来ない(これ以上魂を汚したくないからな)。でも、こんな風に心のテトラポッドが機能してるのは、俺が甘い人生を送ってきたからなんだと思う。きっともっと他人から辛い目に合わされた人生を送ってきた人ってのは、自らの何を犠牲にしても復讐の炎に身を焦がすんだろう。そこに潤いは皆無。この映画の脚本はそういう人物もいるんだよって事にフォーカスしてる。

あと、この作品における面白い見所として、一度悪に染まった人間は死ぬまで悪ですよってことが表現されている気がした。

清く正しくあることは無理かもしれない。これはそう人類に訴えてくる作品だ。それでも、闇堕ちしないように正しく抗う人生は輝きを放ってると思うし、そう信じたいけどね。そう、お気づきかも知れないが俺は正論という鎧で自分を守る弱虫

 

まとめ

観る前は全然期待してなかったんだけど、この映画を観終わった後の胸クソ悪さは近年類を見ない。良かった。ただ、俺とは相反してスカッとする人もいるのかもしれない。こればっかりは人を選ぶと思う。というより、誰に感情移入するかで結末が変わる感じかな。

ただ、俺が一番苦手な結末だったとだけ言っておこう。

覚悟できる精神的なドMだけが観て欲しい作品。

「このマンガがすごい!」って言われるべき作品それこそが『アクタージュ』

万人に勧められる漫画って、実際あんまり無いと思うんだよね。いや、あるんだけどさ。それが『アクタージュ』だ。

役者のシンデレラストーリーと言えば聞こえは良いが、少年誌ウケする設定じゃない? 馬鹿が。こと演劇漫画において、これほどジャンプに相応しい作品は存在しない。

あらすじ

役者志望の女子高生「夜凪 景(よなぎ けい)」はプロダクション『スターズ』のオーディションを受けるが、不合格となる。

しかし、その選考にかかわっていた映画監督「黒山 墨字(くろやま すみじ)」と出会い、黒山の率いる『スタジオ大黒天』に所属し、役者をめざし成長していく姿を描く。

そもそも、ジャンプで連載が始まった当初は、「どうせすぐ打ち切られるんでしょ?」という感想を抱いてしまっても不思議ではなかった。俺も思った。何故か、設定が曖昧で理解しずらかったからだ。メソッド演技[⇒ 感情を追体験することなどによって、より自然でリアリステックな演技・表現を行うこと]が異常に得意な夜凪が、主人公として絶対的な存在感を確立されていなかったという事にも原因の一端はあるかもしれない。でも、今思うとこれはそういう物語だったんだよ(テコ入れでそういう物語に成ったのかもしれないが)

 

アクタージュ act-age 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

人間離れした女優志望の女の子

もうちょい噛み砕いて説明すると、人間業とは思えないほどの演技力を魅せる夜凪に、俺が抱いた感情は「人間っぽくないから、何か感情移入できん…」これに尽きた。初音ミクに抱く感情と極めて相似。それもそのハズ、そういう風に描かれていたからね。当初のこの設定のまま、夜凪がチート演技力で女優道を突き進む、なんてストーリーだったら俺はこうして『アクタージュ』を紹介することもなく、本誌でもすぐに打ち切られたと思う。

 

チート主人公の成長譚

この流れが途中で変わる。きっと読者アンケートも順位が低かったのでは…? 自分の演技では、役者として”魅せる”演技が出来ないと夜凪は気付く。ここから、この作品は真の輝きを放った。

魅力的なライバルも登場し、友情が生まれ、勝つために努力し、勝利する(= まさにジャンプの王道展開)。その中で、演技ではない自分の感情を見せるようになってくる。つまり、これは稀代の天才・夜凪景が才能に奢ることなく、人間として成長していく物語だったってことだ。

この流れに入ってからの本作はジャンプ本誌でも明らかに頭角を現す。普通に『ワンピース』『鬼滅の刃』の次に掲載されるくらいのキラーコンテンツになった(最近のWJは単純な人気だけで掲載順は決めてないみたいだけど)。

ここから先は、作中屈指のエピソード(と個人的に思っている)『銀河鉄道の夜』編にフォーカスして本作の魅力を俺なりに語りたい。

 

舞台「銀河鉄道の夜」編

簡単なあらすじ
敏腕の舞台演出家・巌裕次郎(いわおゆうじろう)の劇団”天球”。そこに所属する憑依型カメレオン俳優の異名を持つ明神阿良也(みょうじんあらや)。夜凪の特技であるメソッド演技だったが、そこからさらに一歩踏み込んで役に没頭する阿良也の姿はある種の狂気。夜凪は初めて自分と似た演技をする阿良也とのダブル主演で、舞台演技の世界へと踏み込む。

 

憑依型カメレオン俳優との邂逅

この阿良也がまずヤバい(大好き)。マタギの役を演じる時は山籠もりして熊狩ってくる。そのくらい役作りに対して独特のプロ意識を持ってる若手実力派。

登場当初は夜凪すらも上回る圧倒的な演技力を見せるが、その秘密は役に没頭する”深さ”と観客の視点からの”伝わりやすさ”を意識している点にある。このことを共演者である夜凪にも教えて成長を促すあたり、優しい。

と、思いきやこの画像のセリフである。このコマだけ見るとサイヤ人の王子並みに高いプライド。ただ、これはそれだけ巌さんのことが大好きっていう事なんだよね。この無意識の愛 ガス 爆発、本当に好き。

というか、この舞台「銀河鉄道の夜」がダブル主人公であることにリンクして、必然的に『アクタージュ』本編も夜凪と阿良也、そしてその周囲の人物にスポットライトが当たるようになる。これが良かった。ここから加速度的に面白さ ガス 爆発した。

 

演出家不在の舞台本番

まさかの舞台公開初日に危篤状態になる巌さん演出家不在の状態で初日を迎える夜凪たちだったが、逆に奮起する。この親を想う子のような劇団”天球”の面々の姿が読者にも作品への没入感を与えてくれた。

いやお前ら絶対辛いだろ…という気持ちを抱きつつも、時間は止まらず幕が上がる。「恩師のために最高の舞台を」と意気揚々に臨む役者たち。ここから本当に怒涛の演技力祭りだから! 『アクタージュ』はここからが本番。 ここから本当に面白くなったから、これから読むって人は絶対ここ(たしか単行本で6巻)まで一気に読んで欲しい。

こっからダイジェスト形式で名シーンだけ一気。
の、つもりだった(遠い目)。

冒頭にしか出演しない亀ちゃん。冒頭にしか出てこない超脇役(ジョバンニを弄るいじめっ子・ザネリ、川で溺れてカムパネルラに助けられるもカムパネルラは死ぬ)という配役ながら、演じる側にとっては主演も助演も関係ないという精神から、観客に「最高に気持ち良い」と評される名バイプレイヤーとしての演技を魅せつける。そして多くのジャンプ読者を『アクタージュ』面白れぇぞって思わせたのもこのキャラ。この亀ちゃんが本当に最高だから。彼の言葉には嘘がない、役者にとってこれほどの誉め言葉はない。

しかも舞台から下がった後の言葉がコレ。マジ格好良い。でも、そうなんだよね。まだ『銀河鉄道の夜』は序盤も序盤。劇団”天球”の主役級はジョバンニ(阿良也)しか出てない。物語的にはこれから。『アクタージュ』もここからが真の本番。ごめん亀ちゃん、俺ちょっとフライングしてたんだな。でもお前マジで最高だったぜ

 

ダブル主演の面目躍如

銀河鉄道の車内でカムパネルラとジョバンニが再会する超名シーン。ちなみになんだけど、宮沢賢治の本家『銀河鉄道の夜』って読んだことありますか? 本家でもこのシーンは結構魅力的な描かれ方してて(本当はカムパネルラびしょ濡れで登場するけど)、唯一自分を虐めてなかったカムパネルラとの再会は、ジョバンニにとって唯一の安息。その時のえも言えぬ安心感と神々しさを、見事に『アクタージュ』の世界でも夜凪と阿良也が演じたってこと。

てかショートカットって!( ウィッグだけど)。ただの美少年と化した夜凪。憑依型カメレオン(♂)と憑依型カメレオン(♀)の邂逅はストーリーにのめり込ませる素敵さがあった。観客Aの舞台批評家も納得の演技。椅子だけの舞台、そこには確かに銀河鉄道に乗っている2人がいた。

てかここで一回冷静に作品について語りたいんだけど。物語の中で舞台を観てる感覚で漫画を読めるって中々に無いことだなって思う。演劇を舞台にした作品は数あれど。ここまで入り込める作品は本当に少ない(『まくむすび』も面白いぞ!)。

 

辛さを押し殺して演じる姿に感極まる

舞台袖で泣く七尾。この娘マジ可愛いから。人生において、役者という道に誘ってくれた恩師(巌さん)に感謝が一番深い。そう描かれる彼女の姿に、役者だって人間なんだよという気持ちを思い出させてくれる(夜凪とか、阿良也のキチガイ演技力に、役者は皆常軌を逸してると思いガチだった俺たちの心を救ってくれた天使)。

それでも舞台に上がる! そこに感動があった。絶対に恩師の想いを無駄にしたくないという気概をこの小さな身体から溢れさせるその姿。俺の目もドボドボでした

 

影の主役としての覚醒

この舞台を語る上で、アキラは絶対に外せない。現実で言うと、エイベックスの社長の息子。仮面ライダーで主演やって、世間からはキャーキャー言われる一方で、”親の七光り”と世間から疎まれる。演技面では夜凪・阿良也には比肩するとは決して言い難い。彼の覚醒にこそ、この舞台の成功はかかっていると言っても過言ではない。

何が悪いってワケではないんだけど。仮面ライダーってさ、最近は本当に顔で選ばれてる感があって悲しいよね。いやカッコいいのは良いんだけどさ。ここらで一回さ、藤岡弘くらいのおじさんが蟲の仮面被ってもいいと思うんだ。って、中学の時に思った俺、クウガで止まってます。

案の定”喰われる”アキラ。そもそもお前にこの大舞台はまだ早かったんや…もう良いよ、ゴールして良いんだよ…。無難に演じてカーテンコールで泣こうぜ…。という同情も誘ってくる。なんてすごい漫画…恐ろしい子…。あ、そういえば言い忘れてたけど、俺は本作のことを現代版『ガラスの仮面』だと思ってるんで。

そして無論ここで覚醒します。これぞジャンプ。だけど、この覚醒の仕方がヤバい。なんと舞台の上で、夜凪のあまりに入り込んだ演技に、演技では太刀打ちできないどころか、受け答えすらも満足に出来ないと感じ取ったアキラは、素でカムパネルラに向き合う

いや、ここは流石に筆舌に尽くし難い。国民的イケメンが観客に背を向けて、さながら独白のように自分の弱さを見せる(魅せる)その演技がむしろ、主役たちを輝かせる = 本来のバイプレイヤーとしての才能の開花。ここはぜひ単行本で読んで欲しい。たぶんアニメ化したら若干の省略がありそうな所だから絶対原作で。アキラ、表紙になるくらいだから。”最高にダサかった”から(嘘偽りなく誉め言葉)。

アクタージュ act-age 5 (ジャンプコミックス)

 

最期の別れがリンクするクライマックス

ここから最終局面。というかここからが本当の佳境。深く深く、役に潜ることで本人であるかの様に演じる夜凪と阿良也。2人の演技が役にハマればハマるほど”成りきっている”ということ。つまり、現実との境目が無くなってくる。ここからはむしろそれぞれ”どう役と折り合いをつけるか”という自分との闘いになる。

より分かりやすく言うと。ジョバンニとしてのカムパネルラとの別れ、明神阿良也としての巌さんとの別れがリンクしだす。いわば完全に役同一性障害。まぁ…ぶっちゃけこうならない方が不思議なくらいだけどね。一流の役者も、演じてる役柄によって私生活の性格変わるって言うしね。それがカンストした状態だろう。

やだ!カムパネルラどこ行っちゃうの? なんで行っちゃうの? まだ一緒に居たいよ!僕も一緒に行くよ! と間接的に溢れ出る死にゆく恩師への激情。役以前に自分の気持ちの整理がつかないと、カムパネルラとお別れをすることができない。これまで以上にジョバンニの気持ちを理解した結果、逆説的に本当の自分の感情に気が付く。この気持ちを整理することが出来なければ、この舞台を終わらせることが出来ない。ということでここから舞台を終わらせられるかどうかという、本当の最終局面に入る。

いや、言いたい気持ちをグッとこらえよう。
これも絶対に単行本で読んだ方が良いしな。
阿良也にフォーカスしすぎたけど、この阿良也を前に成長する夜凪も無論めっちゃアツい。
絶対に満足できるから読んで欲しい。

アクタージュ act-age 6 (ジャンプコミックス)

 

 

まとめ

ということで、完全に『銀河鉄道の夜』の舞台特集になった(てか画像貼りスギィ!いくつか消そうかな)。でもこれだけで漫画一つ連載できるんじゃないかってくらいの名エピソードだからね。仕方ないよね。マジ最高(ごめん俺がこの話のこと好き過ぎるだけ)。

とにかく、こんなに異質な”俳優漫画”は読んだことない。宝島社の「このマンガがすごい!」には何故か選ばれてないみたいだけど…。ジャンプの中では『呪術廻戦』ならんでネクストヒット間違いない。もう人気出てきてるって? いや、まだまだ本来の良さを評価され切ってない。これは近い将来、世間を席巻する作品だと思う。

ついに原作は大河ドラマ編に入る様子。そうだよね、やっぱり夜凪みたいな透明感ある正統派美女はNHKだよね!

自信を持って人に勧めれる漫画、それが『アクタージュ』だ。

むしろNHKでアニメ化しないかな。

国民的人気作『鬼滅の刃』を最終話まで読んだ時、強くなれる理由を知った

連載開始当初から異質な雰囲気を放っていた『鬼滅の刃』。

アニメ化が尋常じゃなくバズった結果、普段アニメに興味の無い層も巻き込んで一大ブームを起こしたことは記憶に新しい。

そんな本作が2020年5月18日発売の週刊少年ジャンプで堂々完結。ずっと好きだった作品が一区切りしたということで、満を持してその良さと、炭治郎が強くなれた理由について俺なりに語りたい。

あらすじ

時は大正。主人公・竈門炭治郎は亡き父親の跡を継ぎ、炭焼きをして家族の暮らしを支えていた。

炭治郎が家を空けたある日、家族は鬼に惨殺され、唯一生き残った妹・竈門禰豆子も鬼と化してしまう。禰豆子に襲われかけた炭治郎を救ったのは冨岡義勇と名乗る剣士だった。義勇は禰豆子を「退治」しようとするが、兄妹の絆が確かに残っていることに気付き剣を収める。

義勇の導きで「育手」鱗滝左近次の元を訪れた炭治郎は、禰豆子を人間に戻す方法を求め、鬼を追うため剣術の修行に身を費やす。

2年後、炭治郎は命を賭けた最終関門である選別試験を経て、「鬼殺隊」に入隊する。

 

正直、このあらすじ自体メチャクチャ懐かしいけど。こうして始まった物語は、大きく3つに分けられる。ここからは各編毎に成長する炭治郎のハイライトと、印象的な場面を紹介しながら物語の本質について語っていく。

 

竈門炭治郎立志編

アニメ一期が該当する。

自分の留守中に家族が全員惨殺されてて、妹が鬼になって混乱してたら突然現れたお兄さんに罵倒される。だから2年間修行したマン

ザ・理不尽な運命に立ち向かう不幸な少年は、妹を救う為だけに2年も山籠もりして岩も切れるようになる。修行中には皆のパパ・鱗滝さん、錆兎、真菰に出会い、最終戦別では後に同期となる五感組との邂逅を果たす。ぶっちゃけこの序盤が一番面白いし、後の物語の中でも重要人物になるキャラがドンドン出てきた。

 

辛い運命の中で育まれる愛情

最終戦別から戻った炭治郎に駆け寄って抱き着く禰豆子と鱗滝さん。この時に「よく…生きて戻った」って、仮面の下で感極まって泣く鱗滝さんの姿には本当の優しさが溢れ出てた。

ここで注目したいのは、鱗滝さんの愛情だ。年端も行かない兄妹が巻き込まれた運命に心から同情して、厳しく特訓する中にも少しずつ父親のような素振りを見せるようになる。そして最終戦別から戻ってきた時のこの反応。もうパパだろう

作中において、炭治郎の父・炭十郎が大きな意味を持ってるのはファンなら周知の事実。だが、物語開始時には既に死去しているし、序盤では回想ですら姿が描かれない。その代わりとしての役割を担っていたのが鱗滝さんだと思うんだよね。

つまりこの最序盤においては、妹の為に頑張る炭治郎の「兄妹愛」、それを支える鱗滝さんの「家族愛」が描かれていた。そう考えてみると、この作品全体の主題が見えてくる。

 

vs累(十二鬼月・下弦の伍)

恐怖政治で家族ごっこをしながら山に引き籠る、ちょっと歪んだ癖をお持ちの鬼との戦いを例に見てみよう。これは炭治郎にとって初めての十二鬼月との戦いでもある。下弦の伍なので、後に見るとただのザコ鬼なのだが序盤・竈門炭治郎立志編においては完全にボス級。.hackでいうスケィス、TOFにおける現代編のダオス、FF7Rにおけるセフィロスってところだ。とりあえず初撃で刀折ってくる。

炭治郎と禰豆子の慈しみ合う関係に嫉妬して、禰豆子を妹に欲するという現代なら完全に事案。だが家族愛に執着する敵の存在がここで丸々1話使って描かれるという好演出。ここまで話すともう分かると思うけど、『鬼滅の刃』という作品で説かれ続けるのは、”愛によって人は強くなれる”という事だと思ってる。この決戦で注目したいのは、歪んだ累の家族愛に対して炭治郎&禰豆子の兄妹愛が正しく勝利を収めることだ(あと、蟲柱の笑いながら毒を打ち込む狂気)。

 

本当の家族愛を思い出す鬼

結果で言えば、禰豆子の血鬼術”爆血”と炭治郎のヒノカミ神楽”炎舞”コンボでも倒すことは出来なかったワケだけど。アニメ19話の演出は神がかってたね。『ナルト 疾風伝』のサクラvsサソリ戦くらい動いてたし、アツかった。あと夢の中で母が出てきて鼓舞してくる演出もGJ。個人的にはこの後の20話で富岡さんに瞬殺された累の死の際、人間の時の親(自分で殺した)を思い出して謝りながら消滅していく姿に涙が止まらなかった。家族って、素晴らしいんだなぁって。『鬼滅の刃』ブームに乗っかっただけの有象無象は19話のヒノカミ神楽の演出にばかり注目して、20話はアウト・オブ・眼中だけど、この話を地上波でやったことは物凄いことだからね。アニメ一期におけるベストエピソードと言って良い。

ちなみにこの後の柱合会議もベストエピソードである(矛盾)。御屋形様が鬼滅隊員のことを「私の子」と呼ぶのもこの作品が家族愛をテーマにしてることの一端だよね。

 

無限列車編

父親から受け継いだヒノカミ神楽が鬼との戦いでの武器になるとして、炎柱・煉獄さんに話を聞きに行くエピソード。ここから皆の先輩、柱の面々も話に加わってくる。ストーリーが一気に加速するし、戦いも異能の嵐でド派手になるのがこの無限列車編以降。ここから先の戦いに比べれば、アニメ一期は児戯

 

vs魘夢(十二鬼月・下弦の壱)

乗客200人を乗せた列車と融合して襲ってくるいきなりの規格外展開。夢の中に引き込んでその中で自害しないと目が覚めないという覚悟無き者に対してはチート能力を持つ。「どんな鬼狩りだって関係ない、人間の原動力は心だ精神だ」と精神的に心を圧し折りながら幼気な子供達を洗脳して差し向けてくる悪鬼との戦いは煉獄さんがいなかったら普通に死んでたレベル。

ちなみに、ここで煉獄は家族の夢を見る。父親が自分同様に炎柱になったが急に辞めて、弟と一緒に「頑張って生きような」っていうシーンは今思うと中々に死亡フラグ

 

vs猗窩座(十二鬼月・上弦の参)一回目

煉獄さんの殉職戦。え、上弦って強杉内?と読者に印象付けるためだけの戦闘。ここでの戦闘に関しては語ることは他にない。でもこの後の煉獄さんの言葉には意味があったよね。これ以上良いこと言ってくれる先輩はいないだろうと今でも思ってる伝説の死に様だった。戦闘中の母親の回想で「強く優しい子の母になれて幸せでした」、最後は母親に「立派でしたよ」と言われながら息を引き取るのは、柱であっても同じ人間であること、その強さが家族のために鍛えられたものであるということを如実に表現していた。猗窩座についてはこの後に語るけど、上弦の壱の黒死牟の次に古い鬼という設定。そりゃ強い。そして、何を隠そう猗窩座は俺の一番好きな鬼であり、この記事で一番フィーチャーしたい鬼なんだよね。

物語はここから佳境に入ります。

 

vs妓夫太郎(十二鬼月・上弦の陸)

 

vs玉壺(十二鬼月・上弦の伍)

 

vs半天狗(十二鬼月・上弦の肆)

いやぁ、強かった。だが省略します
気になる人は9巻からの原作を読むべし。

鬼滅の刃 9 (ジャンプコミックス)

ここまでが中盤。原作内でも一番長く描かれた、鬼との死闘編と言い換えても良い。物凄くお粗末に省略したけど、それぞれの鬼との戦いと、柱たちの飛び散るパトスに本誌読者は毎週語るのが止まらなかった。俺も本当は書きたいんだよ? 決して書くのが疲れてきたワケじゃないよ? 頑張れ頑張れ! 俺はここまでよくやってきた!俺はできる奴だ!!

物語は最終局面・無限城編へ。

 

最終章 無限城決戦編

ここからは本当に瞬き禁止の戦いしかない。基本的には一体の鬼に対して数人の鬼狩りで攻略していくバトルロワイヤル方式になるんだけど。もうその時点で上弦の鬼たちの強さを物語ってる。一体一体がかなり長生きしてるのもあるけど、全員ラスボス級。さぁ紹介していこう。

 

vs獪岳(十二鬼月・新 上弦の陸)

 

vs童磨(十二鬼月・上弦の弐)

 

vs黒死牟(十二鬼月・上弦の壱)

省略します。

いや、待ってくれ、言いたいことは分かる。こいつらとの戦いは全部、省く事なんて出来ない超魅力的なエピソード揃いだ。善逸が雷の兄弟子穴埋め上弦と戦うのなんてクッソ胸アツだし、童磨戦とか俺超好きだからね。黒死牟戦に至っては柱クラス4人がかりというパレード、もう涙が止まらなかったさ。だが分かってくれ、ここで語りたいことは別にある。そして鳴女に至っては画像探すのすらダルい

 

vs猗窩座(十二鬼月・上弦の参)二回目

キ、キター!
そう、俺が語りたいのは猗窩座なんだよ!

実は女性は絶対に食べないという紳士鬼。というかさ、原作読んでる時、この戦い…なんか長くね? って思わなかった? この記事も大概長ぇけどな)そりゃあそうだろう。猗窩座ほど上弦で物語の主題に沿った敵はいないからな。あとアニメが人気過ぎて引き延ばされてたからな。

お気づきだっただろうか、猗窩座の技は全て生前の想い出が反映されている。「破壊殺・羅針」の陣の形、これ人間の時に妻だった恋雪が付けてた髪飾りと同じ文様なんだよね。大切な人の身に着けていたものとそっくりな陣が戦闘の最初に絶対に繰り出す技って、お前めっちゃ未練あるやん。そんな技。

技名すべて生前の想い出が由来

  • 脚式「冠先割/流閃群光/飛遊星千輪」
  • 砕式「万葉閃柳」
  • 滅式「鬼芯八重芯」
  • 終式「青銀乱残光」

全部花火の名前由来。大切な人と大切な約束をした時の背景が技名の由来って。お前めっちゃ未練あるやん。ちょっと、なんか、もう良い奴やん。さらに言うと、全身に入ってる刺青模様だけど。これにも設定がある。江戸時代は盗みを行うと刺青刑っていうのを受けたんだけどね。この刺青は病床の父親の為に薬を盗んでいた猗窩座の罪の意識が現れた結果なんだよ。そろそろ根が良い奴すぎて泣けてくる

極めつけは名前の由来。猗窩座って名前は無惨が名付けてるんだけどね。原作155話のタイトルにもある通り「役立たずの狛犬」っていう意味が含まれている。意味は「住処を守れなかった犬」。狛犬は守るものがあって初めて存在意義がある。でも守りたかった妻を毒殺されて居場所を失った猗窩座にはもう守るべきモノが無い。だから役立たずの犬。そんな意味がある。

 

とっくに失っていた強くなれる理由

そのことを思い出したんだろうね。炭治郎に首を切られても克服して、さぁ~、まだまだ死闘は終わらんぞい!ってなりそうだった恐怖の場面、結局最後は自決して消えていったワケだけど、これは何でなのかって所に繋がってくる。ここで首を切られたショック&恋雪に「もうやめて」と言われたことで自分の過去を思い出す猗窩座は、自分にはもう守るべき大切な人がいないことに気付いたんだよ。自分が強くなろうとしたのは、大切な人を守るためだったという事を思い出した。だからこその自決。だからこその炭治郎への感謝。強さを求めるのは、強くないと誰も守ることが出来ないからで、だから弱者である自分が嫌いだった。もう自分には強くなる理由も、強くなれる理由もないことに気付いたってことだ。感動をありがとう…。そして『鬼滅の刃』という作品のテーマを体現した良い人生・鬼生でした。

 

vs鬼舞辻無惨

略。長い、強い、白髪おじさん。
気になる人は最新巻を待ちましょう。

 

最終話「幾星霜を煌めく命」

舞台は現代。大正時代だった本編からすると、3世代くらい後の話。そこには炭治郎とカナヲの面影ある男の子2人が明らかな主人公オーラを出している世界だった。いや、なんだこれ。「妹が罪なき人の命を奪った時は腹を切って死ね」と鱗滝さんに言われていた時を考えると、同じ作品とは思えない位のハッピーエンドじゃないか!? こんなに幸せになってて良いの? しかも我妻性で善逸と禰豆子の面影ある2人が姉弟設定だと…つまり…善逸、おまえ良かったな…。

 

うぉおおお!これを、これを見たかったんだ!と叫びたくなる気持ちをグッとこらえて幸せな2人を祝福しましょう。「また人間に生まれ変わったら、私のことお嫁さんにしてくれる?」の有言実行。伊黒先輩マジ格好良いっス。この定食屋あったら1日4回は通う。柱全員、死んだメンバーは(ほぼ死んだけど)幸せな未来でちゃんと転生できたようで何より。

 

俺はこのコマを見て泣いた。富岡さんと錆兎と真菰だと…? この話は本当にファンのために描いてくれたんだなとギャオウした。生きていれば柱になってたであろう実力者の2人、死ぬはずだった富岡さん、今度は守るべき友として人生を送れているという幸せ。そしてこの姿を見れた幸せ。感謝です。

愈史郎は唯一の鬼として生き続けているっていうのも中々に良いラストだと思った。しかも珠世さんの絵を描き続けるという狂気の愛情。それでこそ愈史郎。合法ショタ。素晴らしい。

あとさ、ラストで描かれた竈門家の様子、先祖の写真を額縁に入れて飾ってるあれ、最高だよね。みんな笑顔で。ちゃっかり村田が入ってるのも嬉しい。

週刊少年ジャンプ(24) 2020年 6/1 号 [雑誌]

というように、ファンの期待をこれでもかと裏切らず描き切った見事な最終回でした。この作品を読んでて良かったなぁと心から思えた。

 

まとめ

守るべき大切な人達と当たり前に一緒にいられる世界で、鬼と戦うことがない幸せな世界。もう刀を持つ必要もないし、鍛える必要もない。けど、炭治郎の面影を色濃く受け継いだ炭彦くんは人並み外れた運動神経を持ってたよね。ここが面白いなって思った。

強くなる理由のない世界で、強いという設定。それはきっと炭治郎の「大切な人をもう2度と失いたくない」強い想いが現れたんじゃないかな。鬼はいないけど、幸せな世の中だけど、危険なことはたくさんあるし、何が起きるか分からない。だから、作中ずっと抗い続けた炭治郎の想いが成就して、子孫にも受け継がれてるんじゃないかと思った次第。炭治郎が、鬼殺隊が強く在れたのはいつも「大切な人を守るため」だったから。

ということで気持ちよく読了。
まったくもって良い作品でした。

俺も強くありたい。守るために。

『あひるの空』を漫喫で読んで泣く、これも一つの青春のカタチだと思うんだ

2004年の連載開始から、スポーツ漫画として最前線を走り続ける『あひるの空』。バスケと言えば、かの有名な歴史的ジャンプ漫画を思い浮かべがちだけど、ぶっちゃけ『スラムダンク』にも負けてない。と言うより、ジャンルが違う。これはバスケを題材にした青春大作だ。

あらすじ

九頭龍(くずりゅう)高校に入学した身長149cmの車谷空は、母親に誓った「高校最初のバスケの大会で優勝」の実現のためにバスケットボール部に入ろうとする。

しかしバスケ部は花園百春・千秋兄弟を始めとする不良達の巣窟になっており、部活動などできる状況ではなかった。だが、しつこく食い下がる空の純粋なバスケへの熱にかつてバスケをやっていた百春、千秋たちは心動かされていく。

そして空達のバスケット生活が始まった。

あらすじの時点で漂う「あ、バスケするまでが長いな」感。そんな印象を受けたのなら、正しい。俺も当時マガジン読みながら同じこと思った。そういう意味でも『スラムダンク』とは全く異なる滑り出しで(湘北高校はバスケ部がちゃんと機能していたからな)、どちらかと言えば『ルーキーズ』にジャンルとしては近いかもしれない。しかも特筆すべきは空の伸長が149㎝ってトコ。これが物語に大きく関わってくるし、小さいのに3Pシューターって事に誰もが心動く物語性があるんだよ。

更に言えば、この作品において”未来はない”。と言うと語弊があるが、主要メンバーの中でバスケを人生の柱にして、これでメシ喰っていくっていう人間性はあまり描かれない(横浜大栄の白石・豹、トビくらい?)。人生における高校時代を刹那的に描くことに特化しているからこその名作、青春漫画と言える。もし未来編を描くのだとしたら、連載終了後にTwitterとかで発表して欲しい。ただ、千秋の大学生編は観たい。

 

アニメ 『あひるの空』

アニメ、めっちゃ良いよね~。原作読んでる人は分かると思うけどさ、画力高くて、線が独特で、それが物語の雰囲気的にも良い演出になってるからさ。絶対にアニメじゃなくて紙で見た方が映える作品だと思ってたけど。良い意味で裏切ってきて、しっかり原作準拠クオリティに驚きながら観てる。

 

まさかの4クール放送

俺、てっきりクズ高校のスタメンが全員揃ったところで「俺たちの戦いはこれからだ…!!」っていうありきたりな残念エンドでアニメ終わらせると思ってたんだけど。まさかの4クール! 全く把握してなかった俺は、「いや終わらないんかーい、最高かよ~」って一人深夜に興奮してしまった。不覚。ただ、原作読んでた時はここまで来るのに本当に時間かかったから嬉しいな。俺、コンビニで立ち読みしながら泣いたからね。「ついに、ついにフルメンバー揃ったぁ」って。ここから怒涛の快進撃が始まるんだ!って。このことについては後で語るが、この時の俺はこの作品について何にも分かってなかった

青春の音が聞こえる演出

あとアニメになったことで何が良いかって言えば。(まぁ、これ以外の作品でも言えることなんだけど)音が付いたってことかな。でも他作品とは良さ具合が全然違くて、”青春の音”が追加されてるんだよ。バッシュが体育館の床を擦る音、ボールがバウンドして天井から響く音、ボールがゴールリングに当たらずネットをくぐった時の気持ちの良い音(蘇らせる…何度でもよッ!)。漫画には文字から想像する無限の可能性があるけど、実際に物語と一緒にSE聴くと、「あぁ~良いわぁ~」ってなるのが本音。

特に、30話で空のお母さん(車谷由夏・元日本代表)が空の試合を内緒で見に来た時に、体育館に響く音に耳を澄ませて「懐かしいわ…この音」っていうシーンの深みが爆発してたね。俺も学生時代、部活中に体育館の窓から外にプリズンブレイクして、風に当たりながら「良い風だ…」なんて呟いてたな…SNSじゃなくてリアルに。

というように、原作ファンであっても楽しめる(てかぶっちゃけ懐かしすぎて涙出てる気がする)。アニメ4クールでどこまでやってくれるのかも楽しみポイントだけど。横浜大栄メンバーがどんな感じで動くのかってのも要チェックだよね。マジで鷹山はやく出てきて欲しい。

 

原作 『あひるの空』

あ、ここからは猛烈にネタバレを含むので、アニメ派の人はご退室ください。

まず、現在単行本は50+1巻まで出てる。結構出てるなって思った? それはそうだろう。俺が中学の時からやってる作品ですから。チャリで来てたヤンキーもスーツ着て会社勤めするし、コミュ障だった俺が処世の為にアルカイックスマイルを会得するくらい、たっぷりと時間はあったからな。

 

あひるの空 THE DAY(1) (講談社コミックス)

そんな原作。最新巻でまさかの『あひるの空 THE DAY』とタイトル変更したのは衝撃だった。一個前の50巻がやけに分厚いから、本屋で並んでるのを見た時に「え! 最終巻!?」ってドキドキしちゃったよ(苦渋の決断で、マガジン本誌は2年くらい前に買うのを止めた)。そしてネーミングがストレートで潔い。”THE  DAY”って! 読者にとって待望のあの日をついに描いてくれてるってことか! って一目で理解した。タイトル見ただけで涙が出そうだったね。『はじめの一歩』で一歩と宮田が戦うみたいなもんだよ。

 

伝説の練習試合から1年

現実では13年。伝説のクズ高vs横浜大栄の練習試合は、俺の中で今アニメでやってる新庄東和戦と同じくらいアツい。この戦いで作品の根幹が完成した。空と鷹山の”来年”の約束は俺たち読者にとっての”未来”の希望になった。

運動系の部活やってた人達は多少なり経験してると思うんだけどさ。顧問の先生が仲良かったり、地域が一緒だったりすると、自然と仲良くなる他校の顔見知りができる。そんな中で、腐れ縁というか、不思議と公式試合でも良く対戦する奴が出てきたり。勝ったり負けたりを繰り返す中で生まれる感情は、友情とは全然違うんだけど、大事なんだよな。そんな相手とする再戦の約束ほど、青春を懸けるに値するものはない。ん? あぁ、俺にもそんな奴がいたよ。俺がやってたのバドミントンだけどな

とにかく、この約束でこの物語のゴールが確定した。物語の中の全てが結末に向けて動き出した。そういう意味では、アニメ版は未だ始まってもいないんだな。空と鷹山がした約束ってのはそのくらい重みがあったし、この試合で、トビ・豹、千秋・白石、百春・ヤックも各々に相手をライバル認定(こうして並べると大栄メンバーのステ高すぎて個別に潰されそう)。峯田もちゃっかり2年目は公式戦でスタメンデビューしてるし。いかん、文に収集がつかなくなってきた。要は、伝説の続きが今ようやく始まったんだなって、すごく実感してる。

 

今日の大切さは終わってから気付く

学生時代は、当たり前だけど全ての人間が明るく過ごせるワケじゃない。どんなに部活を頑張りたくても、家庭の事情や過去の経験から部活に入りたくても入れない人もいる。そういう”恵まれてない”他人を人間(特に中高生くらいの若い時代)は無意識に無視する傾向があるように感じる。俺もそうだった。不思議と、そういう可哀想な人(って言い方は正しくないと思うが)のことは視界に入っても認識してなかった。イジメとかそういう話じゃなくて、人間ってそういう生き物なんじゃないかと思うんだよね。

この作品を読んでると、そんな子供の時のフィルターがかかった景色が脳裏に浮かんでくる。無意味だと思って嫌々やってた体育館のモップ掛けも、誰かがやりたかった青春だったのかな。

もしかしたら、それは今も変わらないのかもしれない。俺も、めでたく今年で30歳を迎えるワケだけど(人生最終章始まったなって感じ、既に死にたい)。気付けば終わる20代、「精一杯生きたか?」 そう問われれば「生きた」と言える(主に仕事が辛すぎて)。でも、アッと言う間だったなぁって思うんだ。そして、一生懸命すぎて周りが見えてなかったとも思える。ふと周りに目を向けたら、自分よりも過酷な境遇の人間なんて幾らでもいて。そんな人達に胸を張って話しかけて、一緒に笑い話できるような、そんな人間になりたいな、30代は。だっていま生きれてる今日は、誰かがやりたかった青春かもしれないから。刹那的な今この瞬間を苦しんでいる人間がいるのなら、俺の眼が届く範囲くらいは一緒に楽しめるように努力したい。青春に年齢なんて関係ないんだよ。

 

あひるの空 コミック 1-40巻 (講談社コミックス)
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まとめ

この作品は甘くない。奇跡はめったに怒らないしご都合主義な少年誌的展開はない(まぁ、多少はある。異常に僅差で勝つ)。人生の辛さと楽しさを見事に教えてくれる。ゆえに一年目の夏の大会は一回戦で敗退する。そして二年目の横浜大栄高校との試合(THE DAY)も負けることは公式で確定してる。コレがこの作品の良いところ。青春の酸いも甘いもしっかりと描き切る(ここに書くとキリがないから書かないけど、里見西の新と円の未来編とか、授業サボって体育館で隠れながら円が空に「同じ位好きな人がいるの」って言う幸せな失恋回とか、女性目線の青春もしっかり描かれてるんだよ!最高なんだよ!)そこが良いんだよ。

なんか途中すごく懐古主義的な独白になってしまったけど、不快に感じた人がいたらゴメン。たぶんシャッフル再生してるApple Musicからミスチルの『sign』流れてきたからだわ。あと、もしアニメ新規・もしくは原作未読でここまで読んじゃった不幸な人は、アニメを機に原作も読んでください。大丈夫、こんな記事に書いてあることぐらいネタバレした上で読んでも全然楽しめる。そもそもネタバレで霞むような作品じゃない

大人になって読めば読むほど響く。

俺は漫喫で声出して泣いた。

俺的2020上半期アニメ・オブ・ザ・イヤーは間違いなく『空挺ドラゴンズ』

「2020年良かったアニメ作品は?」と聞かれた時、いの一番に頭に浮かんでくる作品、それが『空挺ドラゴンズ』(2020_05_14現時点)。

あらすじ

各国が龍と呼ばれる生物から生産できる食料や資材を欲して空を目指してから半世紀後の時代。世界には、飛行船に乗って捕獲した龍を加工して売りさばく龍捕りと呼ばれる職業が誕生した。希少となった現役の捕龍船クィン・ザザ号には、龍が大好物のミカを始め、新人龍捕りのタキタや龍捕りの父をもつジロー、諸事情で地上を旅立ったヴァナベルなど様々な龍捕りが搭乗しており、それぞれが事情や目的をもって共同生活を営みながら空の旅を続ける。

 

過酷な航海の中でも輝く日常

重労働で龍が取れないと賃金も低く、空を飛び続けるだけでも相当な労力を要するという超絶ブラックな職場ながら、乗組員の笑顔がとても眩しい。たまに港街に降りた時なんか、一張羅を着て陸の娯楽を堪能する姿に生命力を感じる。ただ、この解放っぷりは「いつ死んでもおかしくない」という感情が行動として表に出た結果なんだが地下から地上に出れた時のカイジみたいなもんだ。ひと時の楽しみだと割り切っているからこその切なさも微妙に漂わせる。その姿とこれを表現した作者に拍手。

 

若手乗組員の成長物語が泣ける
(ジロー成長物語)

若手と言ってもジローとタキタしかいないけど。オジサンばっかの中で歴の浅い2人は思春期ということもあって、旅の中で精神的な成長を経験していく。その描かれ方が最高。街で出会った女の子(カーチャ)とひと夏の恋ならぬひと街の恋をするんだけどね。街を発つ朝、一度も街から出たことが無いというカーチャの為に空中ドライブを敢行。その粋な演出が甘酸っぱいながらも見事なジュブナイル。空で朝焼けを見ながら「君も一緒に(行こう)…」って言おうとするジローに対して、後ろから泣きながら抱きしめて「舌、噛んじゃうよ」と、やんわり断るカーチャも非常に情緒的なんだよ。

明らかにお互い好きなのに、空と陸、2人の境遇と立場を考えて別れを決意する姿にドラゴンも霞むほどの輝きを見た。この後ジローは髪を短く切る(しかも切るのはカーチャってのがまた良い…)。失恋後のキャラデザ変更、ちょっと大人になった少年の成長の表し方を本当に分かってる。

 

若手乗組員の成長物語が泣ける
(タキタ成長物語)

龍の回廊での小型龍捕龍中に超高度から落ちるタキタ。120%死んだと思われたが、何と地上まで龍にしがみ付いていたことで地面に落ちても生きていたというご都合奇跡。だが、この陸でタキタが成長を果たすということの方が、視聴者的にはよっぽど奇跡だった。

自分が捕まってきた龍が落ちたのはその親龍の子がいる住処(付近?)。そこで、生きるために子が見ている隣で親を解体・調理するという中々に倫理委員会案件。最初は嫌がっていたタキタが身体を回復するために泣きながら親龍を食す姿は必見。居合わせたマタギの姉さん(アスケラ)の「仕留めた獲物はちゃんと食べる。食べた分だけ良く生きる」にはこの世の摂理が含まれてた。それを聞いたタキタはまた号泣。そして食べる(タキタ可愛い)。結局、この後この龍の子を天空の群れに戻すために再び空を目指します。この流れ本当すこ。その過程でのクィンザザ号メンバーとの再開シーンはアニメでの一番の盛り上がりポイント(っていうか最終回冒頭はこの話→龍の回廊)。

 

捕食されるだけじゃない龍の魅力

この作品が龍をただの獲物として扱う作品なら、俺はここまで惹かれなかったと思う。時には神秘的に、時には気色悪く、人知の及ばない”空の神”として描かれているからこそ、龍を獲ることの困難さがしっかりと感じられた。

少し、俺の中で印象的だった龍をエピソード毎に紹介したい。

 

光る龍

アニメ3話「光る龍と」にて、神秘的な龍との邂逅。この話は序盤の話の中でも群を抜いて心を揺さぶってきた。まず導入から”嵐の中で光る龍に救われた”という伝説話をジローが語る流れが良い。船乗りの間の伝説ということで真に受ける者が少ない中、ミカだけは「いや、いるかもしれねぇぞ」って否定しない(食べたいだけかもしれないが)。結論から言うと”光る龍”はいた。しかも嵐の船を救うっていう聖人のような習性と見た目。子供の頃の夢物語が実現したことでジローも思わず笑っちゃうところが◎、少年の成長を感じ、物語全体に深みをもたせる話となった。雷雲の中に常に晒されてるからか、メチャクチャに帯電したけど、スタンランス効かないんじゃ…

 

超大型龍

アニメ最終回でその姿を見せた、龍の回廊のバカでかい超大型龍。ゲームだったらクリア後に現れるクラスの裏ボス級。え、何、天空にはこのレベルのボスがうろついてるの…? 普通の龍が二階建てアパートだとしたら六本木ヒルズくらいでかい、月並みに言って規格外。コイツの存在を最終回で魅せてくれたことによって、龍の底知れない恐ろしさと神々しさを余韻としてもたらした。ちなみに作中ではコイツは捕龍できず。またどこかで出てきたらかなり胸アツ。FF5で言うところのオメガ

 

まとめ

どうだろう。平時はさながら某ファミレス漫画のようなワイワイ感ある労働環境。ひとたび龍に出会えば一触即死のリアルな捕獲描写。そこに龍の料理のスパイスが効くことで見事に現代版・漁師作品が完成した作品なんだよ。ジブリのパクリとか色々言われているが、そんなことはない。圧倒的なオリジナル性がこの作品にはある。というか、仮にパクリだとしても良いんだよ。リアルタイムでジブリ並の作品見れてるって歴史的快挙だからな。チョー気持ち良い

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他、『空挺ドラゴンズ』の人気商品はこっち

ちなみに、原作ではミカのちょっぴりセンチメンタルな成長が描かれる展開が見れるし、より人間ドラマが濃くなってる。アニメにハマった人は原作も見て損はない(特にナウシカ好きは読んだ方が良い)。

全力で作られたB級映画はA級映画を超えてるし時代も超えてくる

2020年7月に続編が発表される『ゴーストバスターズ』。子供の頃にTVで放送されていたのを観ていた人も多いかと。何を隠そう俺もその一人だ。子供ながらにその世界観にドハマりしたくらい、万国共通の名作。ホラーコメディとして今観ても色褪せない良さがここにある。

初代 ゴーストバスターズ

あらすじ
ニューヨークのコロンビア大学で超常現象や幽霊・霊体の研究を行っていたピーター・ヴェンクマン博士(ビル・マーレイ)、レイモンド・スタンツ博士(ダン・エイクロイド)、イゴン・スペングラー博士(ハロルド・ライミス)の冴えない研究者3人。ある日、「経費の無駄遣い」と一方的に研究費を打ち切られ大学を追い出されたことをきっかけに、借金を重ね、科学的に超常現象全般を扱い幽霊退治を行う会社「ゴーストバスターズ」を開業。

ゴーストバスターズは爆発物所持等の容疑で拘留されるが、「門の神ズール」にとり憑かれたディナと「鍵の神ビンツ」にとり憑かれたルイスが出会うことでゴーザが復活すること、二人の住む高層ビルは、ゴーザを崇拝しこの世の終りを祈る秘密結社の信者イヴォが特殊な設計によって建築したもので、屋上が異次元と現実世界との接点になっていたことをつきとめる。4人はレニー市長の希望で呼び出され、幽霊騒ぎを収拾するために活動を再開する。

 

キャストがハマり役

まず、観直して衝撃的だったんだけどさ。この作品、シガニー・ウィーバー出てたんだな(『エイリアン』のリプリー役と言えば一番わかりやすいかも)。子供の頃見てた時には俳優とか気にして観てなかったから全然知らなかったよ。まぁ、今でも全然気にして観てないけど。ただ、妖艶なリプリーが「あなた鍵の神?」って聞いてくる姿が観れただけでも、個人的には観直した甲斐がある。他の俳優陣も、もう「コイツ等しかいないでしょ!」ってレベルで物語にハマってるのは今も昔も変わらない感想となった。

 

チープさが逆に良い

84年に公開された映画ということもあるが、ゴーストの演出が2020年に観ると軒並みチープ! だがそこが良い。”破壊の神”がマシュマロマンとして顕現するか? ゴーストぶっ飛ばしたらマシュマロまみれになる作品が他にあるか? 俺は知らないね。良かった。ゲロぶっかけられながらレーザー光線で戦う姿がやけにカッコ良く見えたのは俺が子供心に下品だったからではなくて、この作品が良すぎたんだな。ちなみに、音楽も超ハマってる。深夜の低予算コマーシャルをイメージして作ったというテーマソングはこの作風にドンピシャだし、誰の耳にも残りやすい。日本で言えばジャパネットたかた並にキャッチー


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80年代の映画ってなんでこんなに良いんだろう。発展途上の時代性が反映されているというか、空気感が良いよね。低予算でも工夫してるところは今でも見習う出来だと思うし、何よりお金がなくてもアイデア次第で面白いものは作れるんだぞ! っていうゴールデンエイジ。これはその代表作だと今は思う。

 

続編 ゴーストバスターズ2

あらすじ
前作から5年。破壊神からニューヨークを救った彼らだったが、破壊した建物などの賠償金を市と州より請求された上、数々の違法行為の責任を押し付けられ「ゴーストバスターズ」社は破産してしまい、依頼もぱったりと来なくなった。

市民も彼らと超常現象を忘れ去り、4人組もそれぞれ別の道を歩んでいた。ピーター・ヴェンクマンはテレビ番組の司会者(担当番組の視聴率は最悪)、エゴン・スペングラーは研究所で心理学を研究、レイモンド・スタンツはオカルト書専門の本屋を営むかたわらウィンストン・ゼドモアと共にゴーストバスターズの仮装をして、パーティーに芸人として出ていた。

 

こっちの方が周知されてる説

正直に言おう、俺はこっちが初代ゴーストバスターズだとずっと思ってた。「マシュマロマンが出てくるのが2だったけなぁ~」と、うろ覚えのままにアホ面晒してた。たぶん、俺が生まれた年代的に日曜洋画劇場とかでTV放映が多かったのはこっちだったってのはあるかもしてないけどね。前作から僅か5年後の89年発表だけど、高度経済成長期だったこともあってかCG技術が向上(ただしチープさは変わらず)。ゴーストの表情もより豊かになった(そう、オニオンヘッドのゲロもより豊かになった)

 

ファンが望む展開盛り沢山

前作で「鍵の神」に依り代として被害にあったルイスがさりげなくゴーストバスターズと関わっている所がアツい。ちゃっかりサブカルな受付嬢とこれでもかと良い感じにイチャイチャってるの◎! あとラストではゴーストバスターズとして覚醒する展開も最高(お前、弁護士だろ)。NYっていう場所柄というのもあるが、この仲間が増えていく感じ、『血界戦線』に通じるところがあるんだよな~。登場人物もコミカルだし、アメリカンジョークがお洒落。あとデコ車もクール。とにかく、1の良い所を伸ばした印象。自由の女神をリーサルウェポンとして使うあたり、アメリカ様のアメコミ精神が現れてる。

ゴーストバスターズ2 (吹替版)
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ストーリー的には街一つが直接的に関わってくるので、壮大になった感じ。ただ流石なのはやっぱり音楽だな。ここで盛り上がって欲しいって所で見事にアゲな音楽流してくれる。こういう細かい所がよりクオリティ上がってるから、興行収入的には1の方が良かったみたいだけど俺は2の方が好き。

 

リブート版 ゴーストバスターズ

あらすじ
コロンビア大学で教鞭をとっていた素粒子物理学者のエリン・ギルバートは終身雇用の審査を目前に控えていた。しかし、以前共著した「過去からの幽霊」という本を手にした男性がオルドリッチ屋敷の幽霊騒ぎについて相談に来たことがきっかけで、エリンは本の共同執筆者であるアビー・イェーツと再会。アビーの共同研究者で原子力エンジニアのジリアン・ホルツマンを加えた3人で幽霊騒動の屋敷を訪れ、幽霊に遭遇。その動画を公開したことで超常現象の研究をしていたことが大学に発覚し、終身雇用どころか失職してしまう。アビーを頼ったエリンだったが、アビー達も同様に職を失ってしまう。

3人は幽霊研究というだけできわもの扱いされる現実に直面するが、幽霊の実在を証明した初めての科学者となるべく幽霊を捕獲し、管理下に置いて研究するために「超常現象究明研究所」を設立する。受付担当のケヴィン・ベックマン、地下鉄職員のパティ・トーランを仲間に加え、街中で暴れ出した幽霊退治に乗り出す。

元々は2の続きを描く予定だったらしいけど、諸事情によりリブート版に変更になった本作。導入部分などは現代風になっているが、大よその展開は同様。ただ大きく異なるのはメインメンバーが女性っていう点だろう(唯一の事務所男メンバーは馬鹿が服着て歩いてる、ただしイケメン)。変わらない点として、安定にオカマが出てくる。そして初代同様にユーモアに富んだメンツがゴーストの吐瀉物にまみれる

 

驚かし演出が劇的に進歩

2016年発表ということで、前作から27年も間が空いた。正直どうなるもんかと肝を冷やしたが、映画技術が向上したのはホラーコメディにとっては追い風。ゴーストのCGがより滑らかになったし、驚かし方もちゃんと時代に合わせて成長していた。初代に見られたチープ感も、あれはあれでホラー映画の醍醐味ではあるのだが、綺麗な幽霊が観れるならそれに越したことは無い。この点に関しては素直にグッジョブと言いたい。しかしゴーストは潰れると液状化するところは変わらない

 

世界観の作り方がより秀逸に

なんだろうね。歴史を経て設定がリアルな現代になったことで、よりヘルサレムズ・ロットっぽさが増した。小道具とかの演出も良いんだよ。何か雑多で混沌というか(事務所が中華料理屋の2階ってのもあるが)。路地裏でいともたやすく行われる新武器の実験が危険すぎて、逆にNYが好きになる。

賛否両論のリブートだったけど、結果的には歴史を踏襲した秀作になったと俺は感じた。本気でB級映画を作るとこうなるんだぞって好例(たぶん予算的には十二分にA級)。女性メンバーになったことでよりポップさが増してるから、初代を見てなくても楽しめる作品かと。一言で言えば、普通にめっちゃ面白いぞ。


ゴーストバスターズ (字幕版)
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まとめ

こんなに年代を超えて愛されている作品もないかと。ロゴ良し・音楽良し・脚本良しという3拍子揃った作品がカルチャーとして後世に残らないワケが無いってことだろう。しかもストーリーに関しては、元祖”ヲタク無双”モノと言える。ヲタクの心の奥底にあるヒーロー精神を刺激した結果、熱狂的ファン層を確立したってのもあるかもね。

珍しく、すごくベタ褒めした感があるけど。SFは80年代~90年代の作品の方が好きだから仕方がない。今年の最新作『ゴーストバスターズ/アフターストーリー』も期待。

あれ、夏に観る映画…多くね…?

青年誌でH描写無しにラブコメする『かぐや様は告らせたい』を語りたい

累計発行部数は1,000万部越え。押しも押されぬ人気作品となった『かぐや様は告らせたい』。アニメも順調に二期が放送中で毎週本当に楽しみにしているワケだけど。ここから更にアツくなっていく本作の魅力を俺なりに語りたい。

あらすじ(ネタバレ)

将来を期待されたエリートたちが集う名門校・秀知院学園。 その生徒会のメンバーである副会長・四宮かぐやと会長・白銀御行はお互いに惹かれ合っているものの、高すぎるプライドが邪魔をして半年が経っても告白することが出来ない。

素直になれない二人は、いつしか自分から告白することを「負け」と捉え、「いかにして相手に告白させるか」ばかりを考えるようになり、権謀術数の限りを尽くした“恋愛頭脳戦”を繰り広げる。

但し、連載が進むうちに“恋愛頭脳戦”描写および展開は減っていき、極度のツンデレ同士のギャグ色の濃いラブコメとなっている。

作者の赤坂も、「正直『天才たちの恋愛頭脳戦』の看板はそろそろ外すべきではないだろうか」と公言していた。その後、かぐやから告白することによってかぐやと御行の交際が開始する展開となったため、擬人化された『かぐや様は告らせたい』と『天才たちの恋愛頭脳戦』の双方が死亡するという描写がなされた

以上、あらすじにして盛大なネタバレ。さすがWikipediaパイセン、アニメ二期でもここまでは行かないだろうって事をサラッと書いてしまう…そこに痺れる憧れる(まぁ色んなサイトでネタバレしてるから今更だよね)。

以下は俺が本作をみてきた中で、絶対に外せないエピソードだったなと思う所を抜粋してみた。

白金御行 × 四宮かぐや が甘すぎ

この2人に限っては最高のラブコメ製造機と言うほかない。唐突だが、ここでこの2人に関しての俺的ベスト胸キュンエピソードを紹介させてくれ。

一位は間違いなく「花火の音は聞こえない 後編」だ。割と序盤の話で、アニメ一期でもしっかり描かれてたが、この話で本作はヤンジャンの中でも頭一つ飛び抜けたと言える。前編では、暗く悲しいかぐやの境遇をひたすら描く鬱展開だったが、後編でヒーローの様に助ける白金。そしてまさかの後編タイトルを最後の一コマに用いる粋な計らい。ドンドン聞こえる花火の音が、かぐやの鼓動とリンクした演出も久しく見てなかった月曜9時のノリだ。このエピソード以降、かぐやは白金の横顔から目が離せない。読者はこの作品から目が離せなくなった

第二位は無論、文化祭編(奇跡が起きれば、ここまでアニメ二期でやるのかも)。個人的にはこのエピソードもかなり良い。文化祭中に、”白金に告白をする”と決めたかぐやが勇気を出せず、悔し涙を流す心理も圧倒的画力で表現されていた。相手の事がお見通しな2人だからこそ、そんなかぐやの気持ちを察して自ら最高の演出で告白をする話。”文化祭で何かしらのハートを送った男女は結ばれる” なんて、ご都合主義なジンクスが出てきたときは肝を冷やしたが、そこは王道を地で行く(ヤング)ジャンプ。超こっ恥ずかしいことを大真面目にやってのけた。そのウルトラロマンティックな男らしさに乾杯。かぐやは完敗。

三位はかぐやの告白回でしょう。先に描いた文化祭編からすんなりと交際までいかないのが現代のラブコメ。今どきの若者は小学生で付き合うらしいが、このくらい節度あるラブとコメディを何故に道徳の授業で教えない? むしろ保健体育で教えてもいいんじゃないか? うん、脱線した。脳内法廷を繰り広げつつ多重人格が現れ、結果として作品名を無視するという読者にとって最高にハッピーな展開。結局、お互いに告白し合うという2人らしい結ばれ方にスタオペ。「好きな相手と結ばれることの難しさ」をこの2人は見事にラブコメってくれた。

というように最高なんだよこの2人。
(俺、ラブコメラブコメ煩いな。)

石上優 × 伊井野ミコ が尊い

何を隠そう、作者も認める公式裏主人公 × 公式裏ヒロインである。前髪長い系の根暗ヲタクと、正義感が強くで品行方正な風紀委員の2人はバリバリ仲が悪い。そう、目が合うと舌打ちするレベルで悪い。でも実はお互いのことを昔から気にしていて、裏で互いに助け合ってるっていう関係がGOOD(でも互いに気付いてない)。石上のせいで伊井野が腕を骨折しちゃうんだけどね、召使いのように「あーん」と食事を手伝う石上の不憫さに嫉妬の嵐が巻き起こったことは言うまでもない。しかも石上は他に好きな人がいるもんだからそれによって悶着する悶着する。この2人のラブコメは良いぞォ、下手したら主人公と正ヒロインよりも良い

もともと2人とも主人公はれるくらいに性格良い。高校時代に相手の気持ちを慮ることができるのは主人公くらい。でも、それが空回りしまくって2人とも友達少ない(石上に至っては友達いない、むしろクラスの女子は目が合っただけで泣く)ってのも加点対象。どうも俺は孤立してる人を見ると応援してしまうので、孤立してる者同士の酸っぱ過ぎる恋愛模様はこの作品の大きな見所と声を大にして言いたい。最近の原作で見せてくれる伊井野のデレに至ってはハートブレイク過ぎて俺と言う漁船が沈みそうである。

というように、この2人も最高なんだよ。

サブキャラが総じて濃い

最後に、『かぐや様は告らせたい』を語る上で欠かせないファクター・サブキャラについて語りたい。唯一恋愛フラグが立たない女子として藤原書記は、ギャグ要因として超重要キャラと言える。ただ、白金にバレーボールを教える回が本誌で披露された時は、その母性溢れる性格とスタイル抜群な可憐さに、ネット上ではようやく真のヒロインが現れたと話題になったものだ。かぐやの付き人・早坂は実は重度のマザコンで、いつも年齢不相応な振る舞いをしているけど、実際の所は甘えん坊で、恋に焦がれる一人の女の子ってとこが良いよね(となりのヤングジャンプ同人版では見事に同僚の白金と交際)。他にも、子安先輩は石上 × 伊井野の恋愛を語るうえでは外せない重要人物だし、大人な柏木さん報われることなきマキちゃんをはじめ、公式スピンオフ『かぐや様を語りたい』のメインキャラ2人も白金・かぐやへの愛が病的なまでに深く、読者に多くの共感をもたらしてくれる。俺もカレンとエリカの2人と本作について語りたい。

かぐや様は告らせたい 1-18巻セット
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まとめ

どうだろう。ただのキャラ紹介になった感は否めないが、とにかく、青年誌で直接的なH描写無しにここまで面白い作品は無い(柏木さんのことは言うな、いいね?)。それだけストーリーに惹きつけるものがあるってことなんだと思うよ。アニメも引き続きどこまでやってくれるのか楽しみだし。原作がまた一つの佳境に突入してるから目が離せない。

かぐや様、タイプです。

『ひぐらしのなく頃に』またあのトラウマが復活すると思うと動悸が止まらない

 

言わずと知れた竜騎士07/07th Expansionによるノベルゲーム・アニメ作品『ひぐらしのなく頃に』。この作品への思い入れはちょっと尋常じゃない俺。2020年夏に新プロジェクト始動ということで、このタイミングで必修科目をおさらいしとこう。

あらすじ

昭和58年初夏。山奥の寒村・雛見沢村にて、前原圭一はごくありふれた毎日を過ごしていた。

都会から引っ越してきたばかりの圭一だったが、レナや魅音、沙都子、梨花ら仲良しグループのおかげで、楽しい日常を築き始めていた。

そんなある日、圭一は偶然会ったカメラマンの男性から、村にまつわる怪死事件の存在を知る…。

 

上記がアニメ第1話のあらすじ。全てはここから始まった(懐かしすぎて泣ける)。まず、俺が本作を観たのは高校1年~2年の時だったと思う。当時人間不信に陥っていた俺を、更なる深みに落としてくれた。そんな偉大な作品だと記憶している。それまでも『数宮ハルヒの憂鬱』『らきすた』など、主だったアニメは観てたんだけど、本腰入れて二次元の世界に沼っていった元凶。それが『ひぐらしのなく頃に』だ。

それからの俺はと言えば、TVで放送されているアニメに留まらず。ラノベゲーム・同人を買い漁り、地元でやっていないテレ東のアニメは漏らさずネットで視聴する、所謂クソナード街道をまっしぐら(派生してニコニコ動画、特に東方厨というサイドジョブを有する)。第2の人生が始まったと言っても過言ではない。今となっては感謝しかない、気もする。

 

人間不信を加速させる謎解き

当時は今に輪をかけて人嫌いだった俺。このアニメのおかげで見事に対人恐怖症を克服できて、行きたい大学にも受かったし、可愛い彼女もできた。今思えば、あの時にこのアニメを観始めて本当に良かった。観るか観ないかで悩んでいるそこの君、君にもこのアニメを観ることで明るい未来が待ってる!さぁレッツ視聴! なんて進研ゼミのような展開には当然ならなかった。むしろセンター試験は失敗したし、学校サボって家でアニメ観る生活を満喫してた。彼女はできたよ、画面の中に3人。あれ、おかしいな…昔のこと思い出してるだけなのに涙が…もう歳だな…。

昔語りはここまでにして、内容に触れよう(というか思い出したくない)。まず、何がここまでセンセーショナルだったのかと言うと、当時のアニメには無い手法を取り入れていたというのはあると思う。まず、アニメの中でもいくつかエピソードに分かれているんだけどね、ここに新しさがあった。

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【アニメ一期】

  • 鬼隠し編(1~4話)
  • 綿流し編(6~8話)
  • 祟殺し編(9~13話)
  • 暇潰し編(14~15話)
  • 目明し編(16~21話)
  • 罪滅し編(22~26話)

【アニメ二期】

  • 厄醒し編(1~5話)
  • 皆殺し編(6~13話)
  • 祭囃し編(14~24話)

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※OVA収録エピソードは割愛
これは原作のラノベゲームの特徴でもあるんだけど、各エピソードは独立した世界線になっている。つまり、1~4話の「鬼隠し編」が終わると次の「綿流し編」では物語冒頭からリスタートする。今でこそ『ハルヒ』のエンドレスエイトの偉業(という名の蛮行)や、『リゼロ』で一般的になっているが、これは当時としてはとても新しかった。しかも、推理モノのラノベゲームのシステムとして取り入れられたこの手法の良い点は、前エピソードとの比較で新しい世界で起こっている謎が解明できる点だ。これで視聴者は沼った

 

どう足掻いても絶望な世界

この言葉って、そもそもひぐらしのために作られたんじゃなかったっけ? ってくらいのピッタリな言葉。まず鬼隠し編が終わった時に、この絶望と言う反り立つ壁が顕現する。それからは簡単だ。綿流し編に入ると一瞬救われる気がする。だって世界が元通りになってるんだもん。「良かった~あの絶望は夢だったんやぁ~」て感じで。そしてさらなる絶望が現れる。ターザンロープだ。これには山田勝巳も失笑。天を仰いで涙を流しながら無力さを噛みしめる。そして詩音は笑いながら包丁を研ぐ。

おやおや、コレもしかして信じれば信じるほど馬鹿を観るってやつじゃないかな? かな? と語尾が馬鹿になってくるのも仕方がない。そのくらい当時は衝撃的だった。特に少年時代の繊細なガラスの心には堪えた。そして竜騎士さんの作品には顔芸という代名詞が付いた

 

「目明し編」からが真の本編

「鬼隠し編」「綿流し編」「祟殺し編」「暇潰し編」までが謎が謎を呼ぶ理不尽アニメ。だが「目明し編」からは一気にその風向きが変わる。解答編のスタートである。特に「目明し編」で物語の裏側で起きていたことが明かされ始める(主に「綿流し編」の)。視聴者のフラストレーションと、人を信じる心を地の底まで沈めて置いて、ここから一気に解答で気持ちよくさせるという詐欺師顔負けの手腕。御見それしました。しかもニコニコ動画全盛期だったこともあってか、「you」が神曲と崇められ、多くの歌い手が素晴らしい歌唱力を披露してくれた。

余談。「目明し編」直前の「祟殺し編」12話は放送委員会に引っ掛かり放送中止されるという伝説を残している(同時期に「スクールデイズ」も放送禁止くらってる)。かの有名な”秋葉原連続通り魔事件”や、京田辺警察官殺害事件と時期がかぶってしまったというのもあるが、リアルタイムで観ていた俺は「今更かよ!遅いよ!」と色々な意味でショッキングだった。

ニコニコ動画や同人作品(そもそもが同人作品だが)、放送禁止という異例の事態もあったが、”ひぐらし”ムーブメントは指数関数的に認知度を増大させることになったってワケだね。

 

一期ラストでの僅かな光明

とは言え、結局は圧倒的絶望のまま終了するんだろうと思われたアニメ一期も最後の最後で救いの可能性が豆粒ほど描かれる。なんと作中で人を信じることの尊さが説かれたのだ。10歳児が包丁をこめかみにズボズボして自殺したり、女の子が笑いながら病院に忍び込んで惨殺する作品でだ。そんなことある? 今までの惨劇も回避できる道があったと? もしかして、アニメ二期ではそのハッピーエンドを描いてくれるの? と。結局は信じる心が大事で、絆こそが世界を救うのか。些か疑問の残る終わり方をしたが、ここで俺の人間不信も治った。単純なんだ。締めるところは締める。大事。この見事な手のひら返しと言うエンターテイメントに視聴者は沼りすぎた結果マントルまで潜ることになる。「絶対に二期を観よう、きっとそこには幸せがあるハズ。部活メンバー全員が笑って過ごす未来が待っているんだ。なんならゲームも買おう」と。結論から言うと淡い期待だった

(TVアニメ化10周年記念)(ひぐらしのなく頃に)
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まとめ

というわけで、当時のアニメ一期のことを思い出しながら書いていたら「ひぐらし」という一大シリーズの良いところ見所のハイライト記事になりました。

新作オリジナルの展開もやってくれるとは思うけど、絵柄が今っぽくなるだけの新作になる可能性も考えて、ネタバレは少な目。俺の人生を大きく歪ませることになったアニメの筆頭たる作品、きっと今夏の新プロジェクトでも新しい哀しみ感動をもたらしてくれると思う。あ、あとファンにとっては周知だけど、『うみねこのなく頃に』は別ゲームだよ。あっちの方がファンタジー色強いから女性ファン(主に病んでる女子)が多かった印象。男からしたらどっちもメチャクチャ面白いけど、俺は思い入れが強いのは「ひぐらし」かな。

放送されたらまた記事を書くかも。では。

人形恐怖症の俺が『アナベル』に心を射止められて渡米する話

俺的最怖ホラー映画である『死霊館』シリーズ。ホラー大好きな俺でもマジで怖いと泣きながら画面に許しを請う、そんな本シリーズの現状最新作である『アナベル 死霊博物館』を視聴した。

アナベルは物理的媒体であって、コレ自体が悪霊なワケではない。そんな幻想はアナベルの可愛らしい頭突きで飴細工のようにブレイクされ、画面に向かって許しを請う29歳の独身男がここにいた。

 

あらすじ
留守番の夜、少女たちに襲いかかる悪霊の数々。
導くのは”あの人形”

超常現象研究家ウォーレン夫妻の家に、強烈な呪いを持つ一体の人形が運び込まれた。その人形の名は、アナベル。アナベルは地下の”博物館”で、他の呪われし品々とともに厳重に封印された。夫妻が仕事で家を空ける、ある日。娘のジョディは年上の少女のメアリー、ダニエラの3人で一夜を過ごすことに。しかし、ダニエ

ラが”警告 決して触るな”と書かれた博物館に勝手に入り込み、アナベルの封印を解いてしまう。

それは、少女たちの想像を絶する悪夢のはじまりとなった……。

※アナベル人形とは…
実在する呪いの人形。コネチカット州にあるウォーレン夫妻の博物館に厳重に保管されている。強い呪いを持ち、極めて危険な存在の為、現在も毎週神父が祈祷を施している。

 

新作が出るたびに深まる呪い

そもそもアナベル人形は『死霊館』に出てきた霊的媒体の一つに過ぎなくて、こんなにフィーチャーされるとは思ってなかった。ちなみに、シリーズを時系列順に並べると下記の通り。※()内の数字は公開年。

  1. 『死霊館のシスター』(2018)
  2. 『アナベル 死霊人形の誕生』(2017)
  3. 『アナベル 死霊館の人形』(2014)
  4. 『アナベル 死霊博物館』(2019)
  5. 『死霊館』(2013)
  6. 『ラ・ヨローナ ~泣く女~』(2019)
  7. 『死霊館 エンフィールド事件』(2016)

無論俺は全部観てる。『死霊館のシスター』『ラ・ヨローナ ~泣く女~』は完全なスピンオフ作品で、物語的な繋がりはありつつも独立した世界観。この2作品に関しては演出が結構違う。外堀から埋めて恐怖の袋小路に追いつめられる他作品に比べるともっと直接的な恐怖だ。路地裏歩いてたら鈍器でこめかみ殴られる感じ。これはこれで、フリスクを一箱丸々一気飲みした時みたいに気持ちの良い快感があるので、ホラー映画が好きでまだ未視聴の人はマスト失神。

アナベルが登場してからどんどん深堀りされて過去の恐怖話が膨れていってることになるんだけどね。ドンドンとその呪いが強まってる印象。むしろ『死霊館』で初出した時はメチャクチャ丸くなってたんですね姉御! なんてことすら思ってしまう(実質的な害は無かったじゃんかぁ…)。

 

アナベルを基点に暴れる歴戦の悪意

本作ではアナベル人形が悪霊の力を増大させる触媒とともに、自立した殺戮人形のように描かれる(許可なく布団の中に入ってきて良いのは俊雄くんだけだろうが…!! 但し、ニャーと囁いてくれるなら許す)。先天性の人形恐怖症である俺にとっては、手に汗握る拷問の視聴となったのは言うまでもない。とは言え、『死霊館』のあの”逃げ場無し・慈悲無し・救い無し”の圧倒的恐怖に比べれば全然顔を背けずに観れたかなって言うのが本音(単純に俺の脳の恐怖を感じる部分が壊れて来たというのはあるかもしれないが)。「このまま行けば、普通に最後まで余裕」そう思っていた俺が、ラスト30分で悪霊たちに弄ばれ、心を陵辱されたのは語るに及ばず。

 

 

ジェームズ・ワンのホラーに外れ無し

今回は監督じゃなくてプロデュースを担当してるんだけどね。『SAW』シリーズをはじめ『インシディアス』シリーズでも毎回卓越した驚かせ方をしてくれるジェームズ・ワン。彼が絡んでる作品は、観てる人の驚かせ方が本当に秀逸。「絶対ここで驚かせてくるじゃん!」って所で想像の壁を粉砕して絶対に驚かせてくれる。そこに凡百のホラーに感じるような「そう来るかぁ~」なんて悠長な感想を抱く暇はなく、「そッ…そう来ッ…ふふ、来るッか…はッァ」ってなる。最悪過呼吸から喘息になる

 

映像の作り方が上手いっていうのは当然として、音の使い方が上手いように感じるのは俺だけなんだろうか。前菜のように不安をそそるBGMで恐怖心を刺激しつつ、最怖ポイントでとびっきりのメインディッシュを心臓に直接叩きこんでくる。あとは、何よりもストーリー(脚本)がメチャクチャ良いんだよね~。俺が何で『死霊館』が一番好きかって、ホラーとして最上級の構成になってるんだけど、それ以上に「家族愛、大事!」という感動が表現されてるんだよ。なんか上手く言えないけど。そこに名作スペシャリテ足りうる味わい深さがある。観終わった後に「あぁ、観て良かったな…」と恍惚に浸れる自慰ホラー、最高だと思わないか。

 

新作にも期待しかない

今回で一旦、アナベル人形から派生した作品は小休止。でも『死霊館』の直接の系譜としてウォーレン夫妻の新作『The Conjuring: The Devil Made Me Do It』が2020年(コロナショックで2021年かな)に制作されてるし、ヴァラク(ウォーレン夫妻を殺すためならイギリスまで出張することも厭わないシスターのコスプレした悪魔)が規格外のビビらせ方をしてくる『死霊館のシスター』の系譜で2の制作が発表されてる。あと個人的には一番楽しみなんだけど、『死霊館 エンフィールド事件』に出てきた”へそ曲がり男”のスピンオフ作品『The Crooked Man』も制作中らしくて、もう本当に楽しみで仕方がないんだよ。観た過ぎるからアメリカで放送されたら渡米しようかなってぐらい。

ホラー好きは観て絶対に損しないこのシリーズ。純粋に人に勧められるのホラーってあんまり無いじゃん、ここにありますよ。

死ぬほど気乗りしないけど恋人と一緒に観るのも良いと思う。途中の怖いシーンで彼女は彼氏にくっ付けるし、視聴後の家族愛には感動待ったなし。そうそう、恋人と観るなら観るなら絶対に『死霊館のシスター』が良いですよ。

死霊館のシスター(吹替版) ※恋人と観る猛者用

目ん玉かっぽじって恐怖に慄け。

殺人犯の10人に1人は相手が好き過ぎて殺すという矛盾統計

『花とアリス 殺人事件』の、何とも言い難い名作オーラを感じつつも、つい最近まで未視聴だった俺を殴りたい。これは現代における愛憎の一例、と見せかけた友情物語だ。

史上最強の転校生、アリス。史上最強のひきこもり、花。二人が出逢ったとき、世界で一番小さな殺人事件が起こった。

石ノ森学園中学校へ転校してきた中学3年生の有栖川徹子(通称アリス/声:蒼井優)は、一年前に3年1組で起こった、「ユダが、四人のユダに殺された」というウワサを聞かされる。さらに、アリスの隣の家が<花屋敷>と呼ばれ、近隣の中学生に怖れられていることを知る。その花屋敷に住む「ハナ」ならユダについて詳しいはずだと教えられたアリスは、花屋敷に潜入する。

そこで待ち構えていたのは、不登校のクラスメイト・荒井花(通称ハナ/声:鈴木杏)だった…。

 

登場人物の軽快な会話が気持ち良い

「コラぁこの悪魔! 手羽先欲しいか? やらねぇよ~!」という仕草と発言ともに登校中にエンカウントした危険度AAAランクの男子生徒に対して「朝っぱらから鶏肉しゃぶりながら人の事罵りやがって、手前の方がよっぽど悪魔っぽいんだよコノヤロー」とアリスが言うシーン。この時俺は、この映画面白いじゃん…と確信した。ぶっちゃけこのシーンだけでも見て欲しい。西尾維新作品みたいな、登場人物の言葉のドッジボールで相手をジワジワと蔑むのが好きな人は、きっと俺みたいにココでこの作品にのめり込む。

 

次々と明かされる教室の秘密

転校してきたアリスは「1年前、教室で殺人事件があった」という眉唾の噂を耳にする。その死んだ男子生徒の座っていた席に座ったからという理由で、クラスメイトに遠巻きに避けられる流れ。調べていくとどうも「男子生徒は4人のユダに殺された」「死んだ男子生徒の名前はユダ」「ユダには妻が4人いた」と一見理解不能な暗号めいた情報だけが集まっていく。もう本当に出てくるキャラがブッ飛び気味で軽快(警戒)。そして、このサスペンス染みた展開で、どういうことだろう? と一瞬でも考えたとしたらもう最後まで観るしかない(そう、俺のように)。

 

詳細を調べようと、殺人事件のいきさつを把握しているという花の家に乗り込むアリス。ここでようやく花とアリスのゴールデンコンビが邂逅する(つまり、なんと作品全体の半分近くを消化するまで主人公の一人である花は出てこない )。

 

罵りながら深まる友情

ここからは正直、前半の導入部とは全く違う作品になる。花とアリスの一夜の大冒険編って感じ(やってることはただのストーキングとパパ活)。ユダの生死を確かめるべくユダの父親を追う2人。まず、この時の2人のすれ違いとアプローチの違いが面白い。花は理詰めで綿密な計画を立てるタイプ。アリスは行き当たりばったりだけど、その人当たりの良さから結局上手く行っちゃうタイプ。この2人が揃うことでの相乗効果が深みのある物語を生んでる。

アニメの世界にとどまらず、頭脳派タイプと行動派タイプが揃った時にお互いの良さが爆発的に向上するってのは良くある話だ。ヒーローにはサイドキックが必要だもんな。まぁ、花とアリスの場合はどっちも行動派だし、どちらも特に猪突猛進馬鹿ってワケではないのだが、要は長所の話。

 

車の下の告白

このシーンの殆どが花の語り(回想&罪の告白)で構成されてる。でもここがこの物語における謎の解答パートだ。ここで一気に全ての謎が解けていくのが最高に気持ち良い。花には最初から全部わかっていて、その上で、アリスを一日付き合わせていたというのもなんか面白い。っていうかユダの真相と最期の瞬間がかなり面白い(いや、アナフィラキシーは馬鹿にしちゃいかん! 俺もクマバチに首の動脈付近を3回ほど刺されたことあるけど、あれ本当に泡吹いて悶絶して糞尿垂れ流すからなッ)。

何よりも、ここで自分の感情を吐露する花の描写・鈴木杏の演技が絶妙なんだよ。アリスの声を当ててる蒼井優も、このシーン以降は少し敵意の無くなった声になって、感情を表に出した花に対して一気に心の距離が縮まったっていうのが表現されてる気がした。このシーンにこの映画の良さと、主題である花とアリスの全てが詰まっていると言っても決して過言ではない。この夜、ゴールデンコンビは誕生した。

 

友情のはじまり

「あたしのダチがアンタに話があるんだよ」ってアリスが言うシーン。いつのまにかダチになってる!  いいぞこういう友情物語は好きだ。一気に世界が明るくなった気がする。このセリフを聞くためにこの映画を観たんだ。

殺人事件の10%は痴情のもつれ・男女関係のトラブルで相手を殺してるって法務省のデータを見たことがあるけど、まさにそれを暗示しているかのような世界一小さい殺人事件でした。でもそれで深まる絆もあるから愛ってのは難しい(自分には愛なんてよくわからん)。

花とアリス殺人事件
※視聴用リンク

というワケで、『花とアリス 殺人事件』良い作品でした。

実は実写版は観てない(本作はロトスコープを用いたアニメ)んだけどね。そっちもファン多いからタイミングで観てみようと思う。本作で描かれた友情の始まりに対して、友情の終わりが描かれているみたいだからなおのこと楽しみ。