人間力低いって自覚ある奴ほど『ブルーピリオド』は心に響くと思う

美大漫画といえばハチクロ、それは揺るがない。だが美大受験漫画といえば? ―――答えは『ブルーピリオド』。これは新しい常識となる。

<あらすじ>

主人公である矢口 八虎はパッと見チャラチャラしたDQN。でも頭は良い。特に人生に対する目標というものが無く、友達と夜な夜な飲み歩いてバカ騒ぎしつつも、親からの“良い子であって欲しい”という期待にも応える、ある意味ドコにでもいる器用な高校生だ。 そんな八虎が美術室である作品に目を奪われ、このことををきっかけに真剣に絵を描いてみることに。その一枚の絵が、表現の世界へと踏み出す大きな一歩となる―――。

 

<作品概要>

誰もが噂くらいは耳にしたことがあるであろう、“壮絶な美大受験”を描く作品。所謂、一般的な大学を受験している人とは違う次元での戦いが繰り広げられていることは何となく想像していたが、ここまでリアルに描写されると藝大出身者(と、山口つばさ先生)にリスペクトを感じずにはいられない

2018年に『みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞2018』のネクストブレイク部門を受賞したことを皮切りに、2020年にはトントン拍子で『マンガ大賞2020』『第44回講談社漫画賞』の一般部門を受賞するという、今最も波に乗っている青春漫画

発行部数も10巻時点で300万部と超絶絶好調。「300万部って数字が正直良く分からない」って人は頭空っぽにしてよく考えてみてくれ、京都府の人口より多いぞ(たぶん)。芸術(×青春)という題材で、これだけの発行部数ってのは中々……。カルチャーに支えられながらも、カルチャーをおざなりにしている日本にも、まだ明るい未来があると思える良い数字だと思わないか。

かく言う俺も、実は思春期の頃に美大への進学を考えたことがあった(というか皆一回は考えたことあるのでは……? え、ない?)。でも金銭的な問題とか、「就職を考えると一般大学に進んで欲しい」など親から反対されたり、自分には才能がないと決めつけたりして諦めてしまうのが普通だと思うんだ。実際に俺も親から一蹴され、即諦めた苦い思い出がある。本作ではその辺の葛藤や現実的な問題も非常にリアルに描かれている。

一つ一つの問題を解決しながら、通常の勉強もこなし、絵の技術を身に付ける。そうでなくても多忙で多感な高校生という時期に、大人でも腰が引けるほどのこれらの量の問題に真正面から向き合う姿を見せられたら、感動せずにはいられない

ちなみに、漫画漬けの日々を送る俺は
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それではお待ちかね。『ブルーピリオド』に関して独善的に語っていきますよ~。楽しく読んで、作品のことを好きになってくれると嬉しい。

 

 

秀才DQN主人公

あらすじでも書いた通り、この物語の主人公は非常に優秀だ(頭が良いという意味で)。でも、決して絵の才能溢れる天才の類ではない。ここがこの作品の良いところ。なんとなく、親の言う通りに勉強して。なんとなく、今が楽しくなるように友達と、悪さして。なんとなく、笑うべきタイミングでヘラヘラして、場を白けさせないように空気を読んで。要するに波風立てないように生きている、そんな普通の男子高校生だ。

思春期には陥りがちなんだけど、こうやってなんとなく青春を過ごしていると ふと思う瞬間がある。「あれ? 俺……人間力低くね?」ってな(経験談)。他の人の意見に愛想笑いして、言うべきことを言わずに空気を読んだフリをする。自分は此処に確かに存在するのに、場の雰囲気や空気を回す歯車と化す。空回りし続ける歯車。この状態になったらもう青春はセピア色よ。ただ漫然と目の前のやるべき事をこなし、人生のレールを進めていくしかない。八虎もなんとなくそう思ってた。でも人生を変えるきっかけが現れる。そう、きっかけってのは唐突にやってくるんだ。

それは放課後の美術室。校則で禁止されているタバコを美術室に落としたことを思い出し、取りに行った時。唐突に眼前に広がる天井まで聳え立つ天使の油絵。なんか広大な景色とか、めちゃくちゃ精巧に造られた工場の可動部分とか、思わず息を呑む瞬間ってあるじゃん。目が点になって「なんだこれ…なんだこれ! なんだこれッ‼」ってなる瞬間。八虎にとってはこれがそれだったんだな。

そして気付いちゃうんだよ。絵には、芸術には、作り手の想いが言葉以上に込められているってことに。そして絵を描くことで、普段心の奥の方にしまっていた“言葉にできない感情”を表現できるということに。そして表現することの面白さに。

ここまで読めばお察しかと思うが、誰しも似たようなことは経験したことあるんじゃないだろうか。ある時、いきなり目の前が開けた感覚とでもいうか。真っ暗な暗闇にいたと思ったけど、「なんだ、光明は実は目の前にあったんだ!」的な瞬間というか。え? そんなドラマチックなことないって? いやいや、別にドラマチックではなくても良いと思うよ。参考までに、俺の人生において目の前が開けた瞬間というのを教えてあげよう。

 

人生を変えれるのは自分

―――あれは、ブラック企業で身を粉にして働いてい(奴隷をしてい)た時、連日の撮影に疲れ果てた俺は道路で仰向けに横たわったんだ。そしたらさ、広がってるんだよ青空が。視界一杯に。感じたね、「なんだ……こんなに俺が欲しかったのはこんなに近くにあったのか」と。手を伸ばせば届きそうなくらい一面の雲一つない空。圧倒的解放感と自由。どんなにつらい日々でもほんの少し勇気を出して車道に横たわれば自由になれる。ほんの少し勇気を出すだけで世界は微笑んでくれるということに気付いたんだ……。

安心してくれ、自殺幇助ブログではない。俺はその一週間後にブラック企業を辞めて自由を手に入れたよ~っていう、ゆるふわトークだ。まぁ俺の場合は空だったワケだけど、そのおかげで今は伸び伸びとやりたいことをやれる時間と余裕を手に入れた。きっかけなんて、いつでも どこにでも 溢れている。辛い時ほど周りが見えないなんてことはザラにあるからさ、ドラマチックとは限らないワケよ。ただ、人間関係に悩んでいる人ほど、”表現すること”が何かを変えるきっかけになってる場合が多いと俺は感じる。本当にやりたいこと、言いたいことを表現する手段ってのは実はたくさんある。大事なのはそれに気付けるかどうかだ。そして本気で実行できるかどうかだ。一歩踏み出すだけで、新しい考え方が見つかり、自分の中にあった問題が解決することは往々にしてある。いまグサリと胸が鳴った人は『ブルーピリオド』読んでみような。面白いよ。

 

 

母親との進路相談

前述している通り、本作はこんなリアルな家庭事情もしっかりと描いてくれている。実際、進路を決める上で一番の関門って親だもんな。ただ、そりゃあ親からしたら自分の子には安定した道を進んで欲しいって気持ちは分かる。でも親っつうのはさ、ちゃんと向き合えば応えてくれるもんなんだよ無論応えてくれない複雑な家庭もあるだろうが。でも、頼り方がわからなかったり、自分の気持ちを言葉に出来ないのが思春期の面白いところ。この命題の答えを導きだしたのが『ブルーピリオド』ってこと

さて、上のシーンの八虎を見た時に俺は思ったことがある。「あれ、これ、凄い成長の瞬間なのでは……?」ということだ。子が親に対して本心をブチまけるってだけで相当な勇気がいるのに、絵の素晴らしさを伝えつつ、本題である”藝大に行きたい”ことをストレートに表現している。「おいおい、高校生でこんなにガムシャラに想いを伝えられる人間がいてたまるか」と、一蹴することは簡単だ。だが胸に手を当てて考えてみて欲しい、自分が高校生の時にこんなに面と向かって親に感謝を伝えたことがあるだろうか? いや、むしろ今でも無理じゃないのか? 認めよう、俺には無理だ。つまり、今この瞬間に高校生の八虎は俺よりも人間力が高くなったんだ。真っ直ぐな人間の成長速度は速い

 

 

夢への道は険しい

親との軋轢も無事に解消され、本格的に予備校に通い絵の勉強を進める八虎。でもここからがまた面白いんだなぁ~。まず予備校のメンツが総じて濃い。さすが未来の美大生、天才と変態のオンパレードだ。完全なコミュ障だけど絵の才能に溢れていたり、男なのに三つ編みで芸術フェチだったり、優秀な姉にコンプレックスを持っている美少女だったり。単純に魅力あふれるキャラでもありつつ、思春期特有の何色にも染まりやすい感じもある。この時期の子供たちって酒の肴に最高だよな

ここからの内容は本当に絵の技術をガンガンと身に着けていくっていうことになるんだけど。何度も言うが八虎は天才ではないので、物凄く苦労して表現を突き詰めていく。美大に合格しやすい絵とはなんなのか、美大に合格しやすい絵は芸術としてダメなのか、自分は何で絵を描きたいのか、絵で何を表現したいのか、楽しく描くとは、てな感じで死ぬほど苦悩する。こうやって悩みぬいて悩みぬいて藝大受験へ一直線に突き進んでいくことになるんだけどね。しかしそれだけでは終わらない

 

思春期ゆえの浮遊感

美大受験仲間であり、八虎の幼馴染でもあるユカちゃん(鮎川龍二)。名前を見て貰えれば分かると思うがこの美少女、女装男子である。物語序盤から登場し、全読者の心を射止める彼だが、本作を代表する超重要人物だてか普通に超可愛い。芸術を志す人ってのは変わり者が多いっていうけど、こんなに危うさを伴った男子高生はいない

というのも、トランスジェンダーだからだ。これに関しては俺みたいに学の無い人間がとやかく言う話題ではないと重々承知しているが、もう一度言わせて欲しい。こんなに危うさを伴った男子高生はいない

祖母から絵を褒められて、美大への進学を志すが、入試当日の実技試験が始まった瞬間にキャンバスに「×」だけ書きなぐって帰宅。女装する息子に対して厳しく当たる親と、祖母からの期待という板挟み状態で過ごした結果、プッツンいっちゃう姿は凄惨たるものだし。入試直前の八虎を傷心旅行に付き合わせて、部屋の中で互いに裸になって絵を描く姿(必見)は思春期ならではのユラユラした”不完全だからこその美”を体現していた。芸術を題材にした作品で、彼以上に表現者であった登場人物はいないと思う

 

≪無料試し読み≫

まんが王国

ちなみに、『ブルーピリオド』を無料試し読みできるサイトも紹介しておこう。俺がよく利用しているのはまんが王国だ。

漫画を読むときに試し読みをすることは大事だと俺は思っていて。自分に合っているかを手っ取り早く確認するには、まず読むことだと信じている。何よりもまず行動っていうし、ここで『ブルーピリオド』の世界を覗いてみては如何だろうか。

しかも漫画王国では今登録すると半額クーポンが必ず貰えるからオススメ。利用できるものは何でも利用すべきというのが俺のポリシーだ。俺も結構ずっと使ってるから安全面は問題ないハズ。

 

<まとめ>

と言うわけで、今最も熱い芸術漫画『ブルーピリオド』の紹介でした。この記事では全く触れなかったけど、絵の技術についても初心者に分かりやすいように描かれてるからさ、ちょっとでも美大に行ってみたいって人がいたら勉強になるかも。でも、大事なのは自分が何をしたいかだからな。ここがしっかり考えられている人間の表現したモノは他とは違う輝きが宿る。ただ、「何がしたいか」なんて高校生の時期に見つかる方が稀だ(俺なんか今もフワフワ生きている)。自分自身の心に真正面から向き合った人だけが人間的にも成長して、結果として表現の幅が広がって美大とかにも入りやすくなるのかもね。 好きなことをやってる奴は無敵だ。ではまた。

『ダンダダン』が俺の日常をブッ壊してくれた

ジャパンホラーと言われて思いつくのは何だろうか。貞子? 伽耶子? 富江? これらは日本を代表するホラーなので無論ジャパンホラーなのだが、俺が考える日本独自のホラーとは「なんでもあり」感を色濃く反映した作品だ。この漫画にはそれを感じる。

【あらすじ】

幽霊を信じないオカルトマニアの少年・高倉と、宇宙人を信じない少女・綾瀬は、互いの理解を超越した圧倒的怪奇に出会う——…!オカルティック青春物語!!『少年ジャンプ+』より引用

『ダンダダン』(少年ジャンプ+)

 

 

【作品概要】

去る2021年4月6日、唐突に『ジャンプ+』にて新連載を開始し、その圧倒的なクオリティでSNSをはじめ各所で話題になった『ダンダダン』。俺も読んだ瞬間に即友達に連絡したよ。「おい、また新世代の名作漫画が誕生したぞ」ってな。

作者は龍幸伸先生。どうも『チェンソーマン』『地獄楽』といった大ヒット作の制作現場でメインアシスタントをしていた超絶実力者とのこと。

なるほど確かに、この絵のクオリティはそこらの夢見がちな少年少女には出せない。なんというか…強弱がしっかりしているんだ。俺は絵に関しては全くのド素人なんだが、見るべき場所がしっかりと見るべきクオリティで書かれている感がすごい。この人たぶん広告デザイナーでも通用すると思う。しかもね、この『ダンダダン』が良いのは絵だけじゃないんだ、ストーリーの組み立て方が非常に秀逸なんだよ

ちなみに、漫画漬けの日々を送る俺は
他にもオススメ漫画を紹介してます。

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それではお待ちかね。下記にて『ダンダダン』に関して独善的に語っていく。楽しく読んで、作品のことを好きになってくれると嬉しい。

 

宇宙人ヲタ meet 霊媒師の孫

物語冒頭をざっくりと紹介。

カースト最底辺と言える眼鏡陰キャ男子が受けているいじめを、颯爽と助けるハキハキ系美人ギャル。そんな二人の出会いから始まる本作。この時点では一体どんな物語が繰り広げられることになるか全く予想できない。良い立ち上がりだ。

会話をする中で、眼鏡陰キャ男子(高倉)は『ムー』を購読しているような生粋のオカルト男子ということが明かされる(そりゃあいじめられるよな…わかる)。一方でハキハキ系美人ギャル(綾瀬)は祖母に霊媒師を持つ由緒正しき除霊少女。高倉は宇宙人を、綾瀬は幽霊を信じているが、互いが互いの信じている未確認現象を信じていないということで、小競り合いすることに。以上の経緯により高倉は幽霊スポットへ、綾瀬は宇宙人と交信しやすいという所謂いわくのある場所へ向かうことになる。

 

 

非日常はいつだって突然

結果的に、二人とも幽霊・宇宙人に遭遇。いきなりキタァ―‼ そうだよな、非日常はいつだって唐突に襲ってくる。デスマーチはいつだって唐突に始まるし、会社が倒産するのもある日突然告げられる。人外もそうだ、いきなり襲ってきて日常をブッ壊すから脅威なんだよ。この展開リアルですごく好き。

ということで襲われた二人は見事に餌食になりましたとさ…

では、もちろん終わらない

少年ジャンプはいつだって困難から勝利に向かうだから愛されてるんだ

 

 

非日常には

非日常をぶつけんだよ!

宇宙人に脳を弄られ過ぎて開花する綾瀬の超能力。ターボババァに呪われることで可能になった高倉の憑依合体。ともにリスキーながらも、目の前の敵を倒すために全力を振るう。ここで俺の脳裏にはかの白石晃士監督の名作(迷作)映画『貞子vs 伽耶子』の名言が浮かんできた。そう「バケモンにはバケモンをぶつけんだよ」だ。なんだって対処法は一緒。

そりゃさ、俺も考えたことあるよ。「幽霊に襲われたら瞬間移動で逃げれたら楽なのにな~」とか、「阿弥陀流真空仏陀切りできたらUFOとか切れんじゃね?」とか。それを実践してのけた…だと? 少年の心を持つ漫画フリークの欲望と渇望のオーバーソウルだよ

ちなみに、このバトル時の躍動感がこの漫画最大の特徴と言って良いと俺は思う。漫画なのにアニメを観ているかの如く動いて、俺の脳を揺さぶってくるからさ、この作品を読んだだけで俺も超能力に目覚めないかなと思った次第

それにしても、陰キャとして物語序盤に登場した高倉がバトル時にここまでカッコ良くなるなんて誰が想像できただろうか(上の画像二枚目が高倉)。しかも綾瀬もしっかり戦うヒロインとして絶対的な力に目覚めてるし……。いや、待て待て。そうか、これはダブル主人公モノか。ボーイがガールとミーツした結果どちらも戦う力に目覚める。まさに王道じゃないか

つまり何が言いたいかと言うと。この『ダンダダン』は、幽霊だったり宇宙人だったり超能力だったり、一見すると要素が盛り沢山の好き放題やっている作品だが、全くの無秩序ではないということだ。少年少女が異形のモノと戦いながら互いに惹かれつつ、日常と非日常を行き来する。そんな王道少年漫画としての筋がビシッと通るように、しっかりと物語をまとめ上げている令和の超秀作だってこと

『ダンダダン』(少年ジャンプ+)

 

 

【まとめ】

アクロバティックな豪快アクションと青春ストーリー、その軸にあるのはオカルト(幽霊・宇宙人・超能力)というゴチャマゼ感満載の本作。オカルト要素ってのは、大抵はどれか一個にフォーカスしたり、『涼宮ハルヒの憂鬱』のようにサブ的要素としてこっそりと忍ばせることが王道とされてきた二次元の常識を1話目で一気にブチ壊してきた

でも、これこそが俺が望んでいた作品なのかもしれないって思うんだ。いつだってホラーはホラー、宇宙人モノは宇宙人モノと括られてきた。でも全部信じている俺みたいな現実クラッシャー乞食にとってはどうだろう。オカルトという括りで一緒くたに非日常を味わえる、こんな作品を、俺は、俺たちは望んでいたんじゃないだろうか。まさにヤサイマシニンニクマシマシアブラカラメ作品。

胸ヤケしつつも、絶対にまた食べたくなるヤツな。

ではまた。