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『ビースターズ』が世に示した自制心の大切さと種族問題への考え方

完結記念。数年前まで、『BEASTARS(ビースターズ)』めちゃくちゃ面白いよ と言ったら「へぇ~、そういうメルヘンなのも読むんだね!」なんて言葉を返されたもんだ。いや、違うんだ。この作品は超現実主義なフェアリーテイルだ。

あらすじ

中高一貫のエリート学校・チェリートン学園内で、ある日草食獣アルパカの生徒テムが肉食獣に殺されるという「食殺事件」が起きる。テムと同じく演劇部部員であったハイイロオオカミの少年レゴシは、大型の肉食獣であることに加えて寡黙な性格や意味深な言動が災いし、テム殺しの犯人だと疑いの目を向けられてしまう。幸いこの疑惑はすぐに晴れることとなるが、結局真犯人は見つからないままであり、学園内に生まれた肉食獣と草食獣の確執のようなものが消えることはなかった。Wikipediaより引用

ちなみに、漫画漬けの日々を送る俺は
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それではお待ちかね。下記にて『ビースターズ』に関して独善的に語っていく。楽しく読んで、作品のことを好きになってくれると嬉しい。

 

アニメ版の衝撃

擬人化された動物たちというメルヘンビジュアルに反して扱う内容がかなりシビアだから、本作がアニメ化された時の衝撃たるや……。ちなみに、原作は2016年秋から連載を開始して2020年10月に堂々の完結を果たしており、週刊少年チャンピオンとしては『ブラック・ジャック』『弱虫ペダル』に続く3作目の講談社漫画賞受賞作

前述のあらすじの通り、カートゥーンな動物たちの高校生活が綴られるストーリーだが、開始早々に生徒同士の食殺事件が発生。はい、ほのぼの日常系シルバニアファミリーは解散。ここから物語は愛憎入り乱れるサスペンスの様相を呈してくる。

……って感じで、主人公は異種族フェチの変態・寝取られ・同級生との殺し合いと動物のビジュアルじゃなかったらPTAから苦情が来るのではと疑う内容だったため、本作がアニメ化した時は中々に衝撃だった。だが、俺を含めたファンたちの不安はオンエア開始の瞬間に払拭される結果となった

 

神OP・神ED

OPは視聴者を見事に高揚させた。妖艶で可愛くて恐ろしい、そんな”野生の魅力”を見事に表現した良曲チョイス。そして毛並みまで再現されたCG技術。「アニメ……ここまできたか」なんて呟いたもんな。すごいよ。歌手は30代に不思議と響くと俺の中で話題のThe John’s Guerrillaの今村怜央が参加してるALI。懐かしさからくる興奮+ワクワクする曲調にPTAもニッコリ

ちなみにED楽曲は12話の中で4曲仕様されており、全曲YURiKAが歌ってる。俺のオススメは4話と11話に流れた「マーブル」、そして最終話でだけ流れた「月に浮かぶ物語」だ。どうでもいいけど、こういう美声で落ち着く曲調をカラオケで歌われるとどんなに歌うまくても反応に困るよね。でもこのEDは物語に合ってるからOKです

 

 

欲への葛藤

この作品において最初から最後まで一貫して描かれる肉食獣と草食獣の葛藤(というかこの物語は極論これしか無い)。一応、動物たちが住む世界として、表向きは種族問わず仲良くしてるんだけどね。肉食獣に流れるDNAは捕食対象としての草食獣を絶対に食べたいマンと化すし、アニメを観た人はご存じの通り、草食獣(ハルちゃん)は肉食獣(レゴシ)に覆い被さられると自ら負けを認めて足開くより先に胃の中に入ろうとしちゃう

だからこそ、この世界では各々が心の中で葛藤を繰り広げながら生きている。そして種族を超えて繋がる絆がある。そこに心が震える。中でも俺の心にグッときたシーンはレゴシが狼の誇りである牙を自らの手でへし折った場面かな。

もうこの雄狼カッコ良すぎるでしょう。獣社会の中でも一番偉いとされるビースターに対してこの決意表明。俺の牙は誰かを傷つけるためにあるんじゃないんです、誰かを守るためにあるんです。だから傷つける可能性があるならもう要りません。っていうブっ飛び発想、嫌いじゃない。肉食代表としての自制心と風格がカンストした瞬間だ。

というかコレ、現実社会に対しても言えることだと思うんだよね。力の強い人間はその力を無暗に振りかざすべきではないし、力の弱い人間にも強さはある。なにも腕力に限った話ではなくて、権力とか財力とか、他にも色々な力が不平等に割り振られた世の中だからこそ、どう扱うかが常に問われているように俺は感じる。※俺には何も力はないが。

動物たちの物語を見ていたつもりが、精いっぱい生きる彼らに深く感情移入していくうちに、自分自身の人生ともリンクしている内容だと気付く。気が付けば、自らの有り余る力に悩む肉食獣を、捕食者として日々悩みながら暮らす草食獣を、心の底から応援してしまう。そんな素晴らしい物語なんだよ。特に最終話に向かっていくラストへの流れは秀逸だ。完結となる22巻はまだ未発売だが、今のうちに21巻までの復習を強くオススメする。

まとめ

ということで、最高の盛り上がりを果たした後に有終の美を飾った名作に乾杯。草食動物への淡い変態恋心を抱きつつも種族問題の中心を駆け抜けたレゴシの生き様は言わずもがな、影の主役としてレゴシとともに戦い続けた勇敢なルイ先輩にも花束を贈りたい。そしてまた”間違いない名作”が漫画史に刻まれたことに感謝の意を表したい。