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サブカル女がこぞって評価する『冷たい熱帯魚』を実話踏まえて語る

2010年に発表された園子温監督による邦画『冷たい熱帯魚』。これが1993年に起こった「埼玉愛犬家連続殺人事件」が元になっていることは周知の事実。でも世のサブカル女は観る。その愚直な姿勢、単純にすげぇなって思うけどさ、ただ実話が元になってるって知識しかなくない?それ、勿体ないから。この記事ではそれを補足すべく、実際の事件にも触れながら作品の魅力を語る。

【あらすじ】

死別した前妻の娘と現在の妻。その折り合いの悪い二人に挟まれながらも、主人公の社本信行は小さな熱帯魚店を営んでいた。波風の立たないよう静かに暮らす小市民的気質の社本。だが、家族の確執に向き合わない彼の態度は、ついに娘の万引きという非行を招く。スーパーでの万引き発覚で窮地に陥る社本だったが、そんな彼を救ったのはスーパー店長と懇意にしていた村田だった。村田の懇願により店長は万引きを許す。さらに大型熱帯魚店を経営する村田は、娘をバイトとして雇い入れる。その親切さと人の良さそうな男に誘われて、社本と村田夫婦との交流が始まる。 しばらくして、利益の大きい高級魚の取引を持ちかけられる社本。それが、村田の悪逆非道な「ビジネス」と知り、同時に引き返せなくなる顛末への引き金となった。Wikipediaより引用

 

 

人間を透明にする男

「俺は警察もヤクザも、全部を敵にしても自分の力で生きてきた」と台詞にある通り、作中の村田(でんでん)は巧みな話術と暴力で人間を手玉に取って生きる姿が描かれる。

残虐性が話題になりがちな本作だけどさ、人間の「生きる」という本能を描いた良作だと思う。結局は金が動機ってのは残念なポイントではあるけど、誰にも頼らずに生きると決めた人間ってのは他人の命なんて関係なしに生きるための金を調達するんだなって実感できた。

ちなみに、実際の事件が元になったと言っても前半から中盤だからね。リアルでは熱帯魚店じゃなくてペットショップだし。このペットショップ「アフリカケンネル」の名前はあまりにも有名で、当時のニュースを観てた人とかはこの名前を聞いただけで不快感を露わにするんじゃないだろうか。綺麗にエンタメ化されてるのは園子温監督の手腕が良すぎるからだ。

 

 

徹底した犯罪哲学

全く持って褒められたものではないが、この元になった事件の首謀者であるSには犯罪哲学があった。上記はその一部

羅列するとちょっと義賊っぽい人格と錯覚しがちだけど、全くそんなことはなくて、ちゃんとシリアルキラーだから安心して欲しい。ちゃんと人類の敵。というのも、5番目に挙げた「透明にする」というのがかなり周到な死体処理の哲学だからだ。この事件の異端さを最も現わしているこの考え方は映画を観てれば分かるだろうから割愛するけど、この作業に対して留置所で「面白い・楽しい」って供述したってところがしっかり忌むべき絶対悪してる。

4ヶ月で4人の人間を消した罪とカルマは筆舌に尽くしがたい。しかもこれは判明してるだけで、人間に限った話だ。事件の裏では犬を買ってくれた家庭に毒入りの肉を差し入れして、新しい犬を売りつけたり、毒入りの飲料を常に常備していたりと、常軌を逸した行動は戦後の日本でも指折りのグリード

 

 

運の良さも大事

これは園子温監督ファンも知らないことだと思うんだけどね。実は実際の事件内容をまとめたWikipediaに載っている上の5つの決まり事以外にも哲学が存在するんだよ

ホラー民にとっては有名なんだけど。恐い話No.1決定戦『OKOWAチャンピオンシップ決勝戦』にて、初代王者に輝いた三木大雲和尚の怖談。これは「アフリカケンネル」の経営者である容疑者Sが捕まる直前のやり取りだ(上の動画でいうと2:26:50らへん)。

映画とはまた違う視点でこの犯人Sの特異さ、恐さを実際に対峙した三木和尚の口頭で語られてるから本当にオススメ(てか他の話もマジで怖くて面白いから時間があるなら観て欲しい、OKAWAは良いぞ)。

 

 

生きることは痛いんだよ

エロ・グロともに強烈なシーンが多い本作。散々凄惨な描写を魅せられた後なので、「いや、もう分かったよ…」と言いたいところだが、この台詞にこそ本質が詰まっているように俺は感じた。

そもそも、生きることは綺麗事ばかりではない。むしろ痛みの連続だ。金銭的な問題や悩みを全く抱えていない人なんて数えるほどしかいないし、そこに追加で家族問題、職場や友人との人間関係。生きているってことはそれだけで精神が摩耗していく連続であることは、現代を生きている人にとっては絶対に思い当たる節があるハズ

そんな人生においては、痛みを抱えて生きるしかないってこと。 痛みを乗り越えたとしても、その先が輝かしいモノであるとは限らないということをしっかりと表現してくれた。

「ラストが衝撃的」っていう感想を抱く人がすごく多いみたいだけど、俺からしたら「いや、こうなるだろ」って事しか思わなかった。ただ、期待を裏切らずに貫いてくれた園子温監督はやっぱり凄いなぁと思ったし、ラストにかけてのどんでん返し感は”フィクション映画”って感じで単純に芸術として良かったと思う。

でも一旦思い出そうぜ。これは実話が元になっているってことを。だいたい、園子温監督は”現代の闇”を描くのに非常に秀でた人だ。サブカル好きが皆、示し合わせたかのように氏の作品を評価しているのは面白い現象だと思うんだけどさ(何?エキストラで出たいの?そんな奴は一生エキストラだよ)、確実に苦しんだ人がいるという事実。この事実から目を背けてはイケないよね。といっても、単純にエンタメとして観ても秀逸な作品だし。普段他人の人生について考える機会がない人や、人生が綺麗事ばかりだと妄信する被害者A候補の能天気サブカル女に、この凄惨な事件があったということを伝えるためには超良い作品だと思う。

例の如く血が苦手な俺は軽く吐きそうだったのは秘密。

【まとめ】

ちなみに、この事件の首謀者であるK(作中における村田の妻)はまだ生きてるという事実。死刑制度に関しては難しい問題だからさ、俺は明確な答えは持ち合わせていないが、今の日本にはどれだけ痛みを抱えて生きている人がいるんだろう。そう考えると、この作品を只の実話を元にしたフィクションとだけ認識しておくのは勿体ない。これは、誰にでも起こり得る、そして起こり得ている話なんじゃないかと思う。

とりあえず、
川の水を飲むのはやめような。

愛に言葉は要らない、『シェイプ・オブ・ウォーター』観るとはっきり分かんだね

『パンズ・ラビリンス』・『パシフィック・リム』で知られるギレルモ・デル・トロ監督。親日家としても知られる氏が作った中で最高の評価を受けている作品、それが『シェイプ・オブ・ウォーター』だ。

【あらすじ】

1962年の冷戦下のアメリカ。発話障害の女性であるイライザは映画館の上にあるアパートでただ独りで暮らし、機密機関「航空宇宙研究センター」で清掃員として働いている。アパートの隣人であるゲイのジャイルズ、仕事場の同僚で不器用なイライザを気遣ってくれるアフリカ系女性のゼルダに支えられ、平穏な毎日を送りながらも、彼女は恋人のない孤独な思いを常に抱えている。

そんな日々のなか、宇宙センターに新メンバーのホフステトラー博士が一体の生物の入ったタンクを運び込む。普段はイライザに不遜な対応を見せる軍人ストリックランドが、生物を邪険に扱った報復を受けて指を失う騒ぎがあり、清掃のために部屋に入ったイライザは初めてその生物を直視する。生物は「半魚人」と呼べる異形の存在だったが、独特の凛々しさと気品を秘めた容貌をもち、イライザの心を揺り動かす。彼女は生物に好物のゆで卵を提供し、手話を教えて意思の疎通をはかる。ふたりは親密な関係となってゆく。Wikipediaより引用

 

 

種族を超えた純愛物語

キービジュアルだけ観るとさ、普通に半魚人が女性を襲っている様にも見えるのが面白い。それだけ、異形の存在は人間にとって畏怖の対象なんですよと暗に示されている気もしてくる。

だが、本作の主題は「愛」全振りだ。話すことが出来ない(耳は聴こえる)主人公のイライザが半魚人とSEXするという(本作最大の衝撃シーン)「種族の違いなんてなんぼのもんじゃい!愛の前にはそんなこと関係ないんじゃ!」 と言わんばかりの超純愛ストーリーだ。未視聴の人は『美女と野獣』をイメージしてくれれば本作の雰囲気を理解しやすいかもしれない(厳密に言えば真逆の視点を描いているけど)、あれくらいピュアラブ映画。

 

 

ギレルモ監督史上

最高評価

第90回アカデミー賞で作品賞・監督賞・美術賞・作曲賞の4冠。あと英国アカデミー賞で3冠して、ゴールデングローブ賞も2冠してるし、ベネチア国際映画祭で金獅子賞。

ふぁー? そんなことある? 「賞って…独占禁止法とか無いんだ…」と俺が意味不明な感想を抱いたのも仕方がないと思うんだ。ちなみに、他にもいろんな国の映画賞に受賞してて、だいたい50個くらい賞とってる

よくもまぁこんなに…いや、だが、評価されるのも分かる。それは、この作品が前述のように『愛』を主題に置いた物語だからだろう。万国共通で『愛』は大事にされている。しかも、差別に苦しむ人が、人生においてどれだけ苦悩しているのかという様子を絶妙な塩梅で表現しているのも高評価ポイント。

「彼はありのままの私を見る。幸せそうに…私を見る。」は作中でのイライザの名セリフ(手話)なんだけどね。この言葉だけで、様々な迫害を受けてきたであろうことを視聴者に創造させる力がある。こういう話は得てして評価されやすい。普段、下品なウィットに富んでる俺も評価しちゃうんだもん、間違いねぇよ

 

ちなみに、ギレルモ・デル・トロ監督に関しては上の記事で語っているので俺と同じように奇特な趣味をお持ちの方はご一読下さい。非日常感が味わいたい人は彼の他作品も観た方が良い(自己責任でお願いします)

 

 

今の時代に対する風刺

米ソ冷戦中のアメリカを舞台に、政府の極秘機関で働くと言うと、現代とは全く関係ない世界の様に思われる。だが、ギレルモ監督は本作の記者会見で面白いことを言っていた。

「今の世の中、“よそ者は信用するな、警戒しろ”という風潮があり、愛がなかなか感じられない困難な時代だ」

俺的言語で意訳すると「ぶっちゃけ今の時代は、冷戦時代のように、人を信用しない・愛さない時代だ。これは大変宜しくない。私がメスだったらストレスで生理予定日ズレる。」だ。だから敢えてこの時代設定にしたんだろうね(超推測ゆえ信じるな危険)。

色々と脱線したけどさ。評価されているだけあって、扱っている主題の大きさはかなり大きい。得てして大きなことを社会に発信しようとすると、単純なメロドラマではなく、ファンタスティックな寓話の方が多くの人の心に刺さる。本作はこの点が相当考えられていて(例えば、異形の半魚人が派手な技を繰り出して、敵をバッタバタやっつけるという事は決して無い)、脇目も振らずに「愛」について本気で考えましたって作品。たぶん女性の方が好きな人多いんじゃないかな。かなりドラマチック。あと最後のシーンの神々しさが異常

【まとめ】

ちなみに、この記事のアイキャッチ画像になってるのは天野喜孝氏(FFのキャラデザが一番有名)が本作を描いた一枚絵。

映画公式サイトにてSP・PCどちらもダウンロード可能という大判振る舞いで、有名だったから俺も当時ダウンロードしてたけど、この映画を観た後だと、まったく絵の印象が違うのが面白い。こういう楽しみ方が出来るのも、良いよね。

『泣きたい私は猫をかぶる』が抜群に青春してて心が叫びたがってる

2019年6月18日よりNetflixにて配信された『泣きたい私は猫をかぶる』。『とらドラ!』や『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』しかり、人間の心の機微を描かせたら右に出る者なしの”岡田麿里”脚本に外れ無し。

【あらすじ】

周囲になじめない少女の唯一の楽しみは、猫に変身して好きな人に会いにいくこと。でもそんな毎日を続けるうちに、猫と人間の境界が次第にあいまいになり始め…。Netflixより引用

 

 

志田未来 × 花江夏樹

W主演という青春キャスト

今年このアニメ映画に期待していた人も多いんじゃなかろうか。憎きコロナのおかげでNetflixでの配信に急遽変更になったのには色々な事情があるにしても、有難き幸せ

『ペンギンハイウェイ』で一躍有名になったスタジオコロリドが制作ってのも良い。しかも『ARIA』シリーズでお馴染みの佐藤順一監督&柴山智隆監督(スタジオコロリド)。あとさ、個人的に大好きな『ガッチャマンクラウズ インサイト』の清水勇司さんが演出ってのも高評価ポイント。他の製作陣も名だたるメンバーだし、久々に本気で揃えてきたなっていうアニメ映画。

そして、肝心の主演は『借りぐらしのアリエッティ』で声優イケるやん!と日本全土を歓喜させた志田未来。今回も絶好調でした。たぶんこの子は永遠に10代なんだな、女神かな。思いっきり声優っぽくない声がこの映画に最高に嵌ってた。更に、もう一人の男側主人公を演じるのは今をときめく花江夏樹くん。声優とか知らねぇよって人の為に俺が教えてあげよう。花江くんの代表作といえば『鬼滅の刃』の竈門炭治郎だよ。だがこれだけの一発屋というワケでもない。というか、個人的に今回の男主人公が花江くんと聞いた時に俺が歓喜した理由でもあるんだけど、彼は『四月は君の嘘』の有馬公生だよ! 神采配。観るしかなくない?

主題歌・挿入歌・エンドソング
「ヨルシカ」

ヨルシカの劇中歌も全部話の内容に合ってて◎! 重度のニコ厨だった俺にとってはヨルシカは青春の音。ボカロPだった時の面影をほんの少し漂わせつつ肉声で綴られる心の叫びには負け犬だとしてもアンコールを贈りたい

 

 

いつも失ってから気付く

笑顔の素晴らしさ

この作品の凄いところは、単純に恋愛物語だけに留まらない点だ。今までの自分が乗っ取られていき、ドンドン中身が猫になっていくという葛藤。そしていなくなったムゲに対して、隠していた自分の気持ちに気付く日之出少年。この両面の心情を見事に描いている。

中々にシビアな家族環境で過ごしているムゲは、”誰かから愛される”という境遇が理解できず、一度は人間でいることをやめる。と、文字にすると結構ハードな設定に感じるかもしれない。でもこれってさ、思春期に誰しもが一度は思うことだと思うんだ。誰もが一度は親に絶望して、友達のことが信じれなくなり、今とは違うところに行きたくなる。この大衆心理を題材に選ぶという絶妙な匙加減は流石の岡田麿里

だが思い出して欲しい。失った笑顔を取り戻してくれたのもまた家族であり、友達の存在であるということを。その時、その場所で疎ましく感じた存在も、フラットな目線で見れば自分を救っていてくれたことを。一時の感情で逃げることも壊すことも出来るコミュニティも自分の心の在り様ひとつで人生における太陽になる。本作はこの難しい思春期の心を真正面から直視してくれているので、こういった経験がある人ほど見ていて苦しい場面もあると思う。だが、目を背けずに観ることをお勧めする

【まとめ】

中国でも配信が決定したとのことで、これからドンドン人気になると思う。あと猫が可愛い。本当に可愛い。ムゲも可愛いけど太郎めちゃくちゃ美猫。いや、でも…欲を言えば映画館で観たかったな

今のところ、今年のアニメ映画暫定1位。

最後まで意味が分からなかったと言えば真っ先に浮かんでくる『アイアムアヒーロー』について

2009年~2017年の期間スピリッツで連載しつつ、2016年の実写映画化も成功させた『アイアムアヒーロー』。気が狂ったか? と思うような衝撃の一巻に始まった本作は、連載終了まで見事に気が狂っていたと思うのは俺だけじゃないハズ。

【あらすじ】

主人公・鈴木英雄は、さえない35歳の漫画家。デビュー作は連載開始後半年で早々に打ち切られ、借金も背負い、アシスタントをしながら再デビューを目指し、ネームを描いては持ち込む日々が3年を経たが、出版社には相手にされない悶々とした日常を過ごしている。そんな無為な日常の中の救いは、恋人である黒川徹子の存在。だがその彼女も、すでに売れっ子漫画家になった元カレを何かと引き合いに出し、酔うたびに英雄の不甲斐なさをなじる始末であった。

そんなある日、全国的に「噛み付き事件」が多発する。町に増えてゆく警官の数、さらには厚労相が入院して、その入院先で銃撃戦が起こるといった報道が立て続けに起こる。英雄も深夜、タクシーに轢かれて両腕と右足が潰れ、首が真後ろに折れても運転手に噛み付き、奇声を発し立ち去る女性を目撃する。やがて、周囲の人々がゾンビのような食人鬼と化す謎の奇病が蔓延し、「ZQN」と呼ばれる感染者たちが街に溢れる。恋人や仕事仲間も犠牲となり、都内から逃亡した英雄は富士の樹海で女子高生・早狩比呂美、御殿場のアウトレットモールで看護師・藪(小田つぐみ)と出会い行動を共にする。Wikipediaより引用

 

 

実写版

『アイアムアヒーロー』

主演:大泉洋、そして有村架純長澤まさみがヒロインという豪華キャスティング(小田さんはヒロイン枠、いいね?)。それだけこの作品が売れる自信があったんだろう。結果としてこの思惑は大成功だったと言える

 

原作再現度MAX

まず大泉洋の英雄がめちゃくちゃ良かった(欲を言えばもう少し小太りだが)。社会不適合者感が如実に再現されていて、普通の社会が機能している時は絶対に役立たずな感じが◎。あと会ったことないけど「こんな人いそうだな…」っていうリアリティさが良かった。こういう役うまいよね。

あと長澤まさみのカッコ良さが際立つ。終末の世界で生き抜く強い女感が際立っていて、こんな女性に出会ったら即堕ち。ショッピングモールの面々も糞ったれっぷりを存分に発揮した演技で話を盛り上げてくれた。やっぱり価値観がなくなった世界でこそ人間の本性は出て来る。

 

ZQN再現度120%

韓国技術員の協力を得て行ったという特殊メイク&映像がハンパなくクオリティ高い(というより魅せ方が上手い)。ちなみに監督は『キングダム』と同じ佐藤信介監督なんだけどね。この佐藤監督が原作準拠で描いたスケッチをもとに特殊メイクを施している。陸上選手のZQNは3Dプリンタ使って用意されたZQNらしいし、カズレーザーもZQNとして出てきたりすごくバラエティ色強めながら、映像は最高にグロテスク。この思い切りの良いギャップが素晴らしかった。

もちろんストーリーも良かったよ。敢えてのショッピングモール編をメインにすることでアングラ感増しててゾンビ映画として2階級特進してた。

 

 

原作版

『アイアムアヒーロー』

意外と、映画しか観てない人・原作を最後まで観てない人多くない? 話が進むにつれてドンドン物語がカオスに煮詰まって3日目のカレーみたいになるから、読んでない人は原作の続きも読んだ方が良いと思う。

 

映画版の”その後”

冴えない漫画アシスタントの日常を淡々と描いた末、巻末で衝撃的なアウトブレイクを読者に与えた原作版『アイアムアヒーロー』。もちろん、最終巻でもやってくれてる(いや、むしろ何もやっていない)

映画では多少の差異はあってもほぼ原作準拠でやってくれたから、見事にゾンビ映画としての体を成していたけど。この作品の真のジャンルは実は”ゾンビもの”ではない。最終巻まで観てると要所要所に「あれ、この描写いる?」っていうシーンが出てきて、それがZQNとは? の解答への布石になっている(気がする)。そう、要するに投げっぱなしENDだ。

まぁ、たぶん、宇宙人的な存在が地球をテラフォーミングする&人類が共存できるか測るために、ウイルスなのか概念的なモノをアウトブレイクさせたんだと俺は素直に受け止めた…のかな。うん、正直に言うと俺も何が何だか分からん!

ただ、見所としてはいっぱいあるんだよ。比呂美ちゃん・小田さん・英雄の三角関係とか、建設的ZQN・巨大ZQN・存在理由不明ZQNの登場とか、江の島編・高層ビル編とか! え?大丈夫。俺も今本当に面白かったか疑問に思ってるよ。だが、まぁ、面白かったな…(遠い目)。

 

【まとめ】

俺のボキャブラリーではその魅力の一端しか伝えられなかった感があるが、一世を風靡したことには変わりない本作。終末系作品が一般大衆に認めらるようになった走りと言っても過言ではないので、未読の人は読んどけばヲタクとの会話の時に使えると思うよ(俺はヲタクじゃないから知らんけど)。

原作リスペクトの投げっぱなし記事でした。
(本作はちゃんと面白いから!)

何も考えず『宇宙戦争:ゴライアス』観て脳の快楽物質をコントロールしよう

2012年、マレーシアにて制作された『宇宙戦争:ゴライアス』。知る人ぞ知る『宇宙戦争』後日譚だが、コレが中々に気持ちの良いドンパチSFなので今回はこれを取り上げたい。

【概要】

H・G・ウェルズの名作SF小説をアニメ映画化。地球に火星人の大軍が襲来し、勇敢な戦士達は侵略者に立ち向かう。地球の技術の粋を集めた兵器が今、うなりを上げる。Netflixより引用

時代設定が1910年代なんだけど、こんなに昔の設定だったんだ。あの賛否両論を生んだスピルバーグ監督版(トム・クルーズ主演)の『宇宙戦争』はモダナイズされてたってことかな。

宇宙戦争 (吹替版)

 

 

SF×スチームパンクアニメ

「ふむ…エンジンが蒸気機関だから、これはスチームパンクだな(謎理論)」というのが俺が観た時に一番最初に思った感想。正直、最初観てる時はこれがH.G ウェルズ原作だって気付かなかった。でも火星人のビジュアルが明らかに『宇宙戦争』意識してたからさ、「あ、そういう…?」ということで続編であることを理解した。

いや、でも流石に時代感あり過ぎでは!? テクノロジー格差が俺の母校の用務員室と電通の喫煙所くらいあるんですけど。なんて、人類敗北待ったなしと思っていた矢先、奮闘しだす人類。あ、良かった。やっぱり戦争は技術力を底上げするんだな。こんなビーム兵器が第二次世界大戦に使われてたら三国同盟は瞬殺で海の藻屑でしたね。ということで、幼いころに両親を消された主人公が火星人に復讐するスーパーマンになる物語が始まった。

 

 

偉大なアメリカ様に捧ぐ

リスペクト精神

面白い位に人が溶けて骨になるんだけどね。もうちょい避けろよ! 命大事にしようぜという俺の心配など意にも介さず溶ける。そして火星人は爆発する。足をヤられたハードパンチャーのインファイトだったか…と諦念を抱くと共に、俺にはある一つの考えが浮かんだ→「そうか、これはアメリカ様リスペクトのドンパチ映画だ」。こう思ってからはかなり気持ち良かった。

「我が軍の勝利だ!」って言って拳を掲げる姿には『インディペンデンスデイ』の大統領演説の感動を思い出したし、全世界が一丸となって火星人に立ち向かっていく様子も王道。余談だが、かの有名なウィル・スミス主演の『インディペンデンスデイ』も、原作『宇宙戦争』から影響を受けてたらしいね。ラストの倒し方とか類似するものがあったしな。本作はそれらを全て踏まえた上で、敢えて純粋な殴り合いをアニメ映像に落とし込んだ良作だと言える。ただただ、見ていて気持ち良く、良い感じにドーパミン出るからパーキンソン病の予防になること請け合い

【まとめ】

Netflixって面白い作品多いなぁと改めて思った。今まで興味なかった作品も定額だとついつい観ちゃうよね。ということを言い訳にして、日々黙々と膨大な量の娯楽を消費している俺。たぶん働き盛りの20代の中では視聴率上位ランカーだと思う。全く自慢じゃなく、むしろ廃人の証明なんだけど、その辺の映画系Youtuberより観てる

Huluも登録するかも。
廃人への軌跡、乞うご期待。

『プロメア』観て、完全燃焼した俺は満足しすぎて次元断裂

『プロメア』の良さは異次元。多くの人を魅了し話題となった本作の良さは今更語るべくもないことだが、敢えて語りたい。俺は本作を、語らなければ生きていけない。

【あらすじ】

炎を操る新人類バーニッシュの出現に端を発する惑星規模の発火現象である世界大炎上により、人口の半分が焼失してから30年が過ぎた世界。自治共和国プロメポリスでは、炎上テロを繰り返す過激派バーニッシュの集団マッドバーニッシュに対抗すべく、対バーニッシュ用装備を扱う高機動救命消防隊バーニングレスキューが消火活動を行っていた。

バーニングレスキューの新米隊員ガロ・ティモスは、火災現場でマッドバーニッシュの首魁である少年リオ・フォーティアと出会う。「燃えて消す」を流儀とするガロと「燃やさなければ生きていけない」と語るリオは、互いの信念をかけて熾烈な戦いを繰り広げる。

燃える魂をぶつけ合う二人の戦い、果たしてその先にあるものとは――Wikipediaより引用

 

俺のトリガー&ガイナックスへの想いは上の記事に書いた通りなので、こちらも参照して欲しい。これを読んでくれれば俺がその辺のなんちゃってアニヲタ糞畜生とは違うということは分かってくれると思う。

 

 

アニメとしての全てが極上

作画・音楽・脚本そのすべてが最上級。これは昔からのガイナックスファンの心を開始10分で鷲掴みにして離さない(離されなかった俺が証人)とともに、最近アニメを観始めた将来性のある廃人候補も自宅警備員就職間違いなしの圧倒的JAPAN魂

危ない危ない、言いたい事多すぎて興奮してきたよ。うん、ゆっくり話そう。作画に関しては”すしお”さんを筆頭に『SSSS.GRIDMAN』等のアニメーター陣が終結。やはり今石監督作品にこのメンツは外せないよね。次に音楽、物語冒頭の大火事&マッドバーニッシュ初登場シーンでのsuperflyの『覚醒』。最高に痺れました。ふんぞり返ったリオの決めポーズもナイス。そしてキャラクターの動きに呼応するように鼓膜を揺らすのは、『キルラキル』でもその敏腕を示した澤野弘之さんの音楽。盤石かよ~。脚本に関しては観ろ。

 

「燃やさなければ生きていけない」

何の罪もない市民を殺さないことが誇りのバーニッシュ(炎人類)。炎を出さなければ人類と殆ど変わらないとは言え、その危険性から迫害を受ける可哀想な種族。

まず一つ良い…? 俺、本作を観ながら叫んだんだけどさ。リオの脇にいる2人、小西克幸と檜山修之やんけ。おいおいおいおいおいおい、『天元突破グレンラガン』におけるウルトラ重要キャラであるカミナ&ヴィラルの声をサブ役で使うという贅沢な采配。そしてファンには絶対に分かる熱すぎる美声。無論その演技に間違いはなく、ザコっぷり徹する崇高な役者心に魂が震えた。あ、あと早乙女くんも全く違和感を感じない名演でした。声優に転向しちゃおうぜ

 

「燃えて良いのは魂だけだ」

”バーニングレスキュー”の面々も総じて個性爆発。個人的に嬉しかったのはルチア(C.V.新谷真弓)かな…。『キルラキル』の蛇崩と言えば一番わかるかな(『フリクリ』のハル子でもあるんだけど!)。いやもうガイナックス同窓会かよ。地味に小山力也さんが隊長の声当ててるのも◎。

アイナ(C.V.佐倉綾音)の存在もかなり重要だと思った。可愛いヒロイン自体を久しぶりに見た気がする。いや、可愛いだけじゃなくてしっかり戦うんだけど。この、”戦闘には参加するけど、しっかり女の子(非主人公)”のポジションは『天元突破グレンラガン』のヨーコを思い出す(伝われ!この微妙なニュアンス!)。

まぁ、本作における声優で言えば、何よりもガロの声(松山ケンイチ)が良すぎた。「こ、こんなに男らしい声出せたんですね!」さすが日本のジョニーデップ。二枚目なのにアツいなんてやめろよ惚れるだろぜんぜん関係ないけど知り合いのスタイリストが松ケンの専属なので、今度サインお願いする

 

 

2人乗りロボットへの浪漫

2人乗りのロボットには浪漫が詰まってると思うんだ。敵だった者同士が協力して立ち向かう時、そこにはプラットフォームが必要だもんな。かの”グレンラガン”でも、カミナ&シモン・シモン&ニア・シモン&ヴィラルが乗り込み、物語の厚み(熱み・そして深み)を指数関数的に上昇させてくれた。”エウレカ”でもニルバーシュに乗った時の2人はいつもエモかったよな。『コードギアス』でも蜃気楼はルルーシュとC.Cが座ってるの観たら謎に心臓が高鳴ったじゃん? それ(え、盛り上がってるの俺だけ?)。

本作においては、対立していた二人の協力もストーリー上見事に構築されている。ここに違和感を感じてしまったら台無しだけど、本当に自然な流れでガロとリオは共闘することになる。中島かずき脚本に間違いなし

2人の対立だったものがドンドン拡がり、世界の危機に。そして世界との戦いに。よく考えたら、現実でもそうだもんね。小さな争いだと思っていた事が、実は根の深い因果から引き起こされた事の枝先にすぎなく。根本から解決させるためには世界そのものを正さなければならない。そう、この物語は世の中の縮図だ。だからこそ、この物語を観る価値がある。

 

 

2019年アニー賞ノミネート

っていうか未だに映画館で上映してるって超ロングランだよね。それだけ評価されているってことなんだけど。アニメ界のアカデミー賞と称されるアニー賞に2019年ノミネートされたのも頷ける。ちなみに興行収入は15億円越え

超インディペンデント作品としてはかなり夢のある実績だと思う。そりゃあね、『エヴァンゲリオン』とか”ジブリ”とか、新海誠とか。良いとされているモノ(実際良い)に比べたら物足りない数字かもしれない。でも原作も存在しない・確率されたフックの無い、いちアニメ会社が作ったオリジナル作品としてはこれは異例。絶対零度宇宙熱死砲の如く、日本アニメ界に光明を打ち込んでくれたんだ

 

【まとめ】

映画館に行くタイミングを逃していたので、AmazonのPrime videoで公開されたタイミングでの視聴だったわけだけど、後悔。これは映画館で観るべき作品だと素直に思った。

トリガーがある限り俺も生きよう。

『トレインスポッティング』は薬物肯定作品じゃない、巧みな薬物否定作品だ。

俺が往年の名作である『トレインスポッティング』を初めて観たのは、実はかなり遅い。編集の仕事で本作に触れた時だから、つい1年~2年前のことだ。でも、観るタイミングは関係なかった。酒×薬×女はいつの時代も男を虜にする。

【あらすじ】

ドラッグ中毒のマーク(ユアン・マクレガー)と悪友たちは常にハイ状態か、あるいはドラッグを手に入れるため盗みに精を出しているというていたらく。ある日、マークはこのままではいけないと更生するためにロンドンに行き職に就く。ところが、彼らの仲間が会社に押し掛けたことが原因で、マークはクビになってしまう。

トレインスポッティング(字幕版)

 

 

ユアン・マクレガー出世作

本作を語る上で、これは外せない要素だよね。特に俺みたいなホラー好きにとっては、最近『ドクター・スリープ』で名演を果たした彼の若かりし雄姿は何回観ても同じ人物とは思えない(両作どっちを先に観ても)。

いわゆる、ドラッグ映画とでも言うのだろうか。思いっきり犯罪行為を行いながら、若さにかまけて大暴走するストーリー。令和の時代に観てもあまりピンと来ない内容かもしれないが、たぶん当時の(今でも)チョイ悪な若者の娯楽と言えばドラッグだったんだろうなぁ…この映画を観れば感じ取ることができる。もちろん、これはユアン・マクレガーのぶっ飛んだ名演技あってこそ

 

 

カルト的な人気は

時代を経ても褪せない

当時、第一線にいた多くのクリエイターが影響を受けたのも頷ける映像と音楽の間違いなさ。特に映像演出は90年代あまり他の作品ではやってなかったであろう新しさを感じる。音楽に関しても、1996年に「Temptation」聴いたら誰でもニューオーダー好きになるよって感じ(もっとも、UKロックに明るい人達はこの映画放映前から聴いていただろうが)。

これまで本作をもとに多くのパロディも作られたし、俺が編集やってた時はよくクリエイターの先輩方にも勧められた(というより、観てないことはあり得ないとされていたが…今ならその気持ちも分かる)。それだけ、当時はほぼ全ての人が影響を受けたっていうことだと思う。

ちなみに監督は『スラムドッグ$ミリオネア』のダニー・ボイル監督。まだまだ現役の名監督(生ける最前線)だ。

 

 

身を滅ぼす象徴であり

救いを与えるドラッグ

まず明確に宣言しときたいんだけど、俺はドラッグ(あとギャンブル)はやらないと決めてるよく言動のラリ具合から勘違いされがちだが。やったら最後、俺みたいな意志の弱い人間は完全に依存してしまうと自分で分かるからだ(たぶん超ヤる、何を置いてでも全財産溶かして朝から晩までキメる)。嗜好品は酒と煙草だけで十分(早死に待ったナシ!)。だから、その気持ちよさっていうのは想像でしかないんだけど。それを前提に話を進めるね。

本作の中でレントンは、大衆である一般的な若者としてドラッグ(ヘロイン)に依存し、堕落した日々を送る少年。「手に入るドラッグはなんでもヤった、ビタミンCがドラッグだったらヤってた」という台詞の通り、作中で描かれるのも最高にキマッた日々だ(曰く、モルヒネ、コデイン、テマギン、フェノバルビタール、アモバルビタール、プロポキシフェン、メタドン、ペチジン、、デキストロモラマイド、クロルメチアゾールをキメたらしい。やべぇ、モルヒネしか知らない)。

そんな中で、平凡な日々からの脱却ツールとしていともたやすく接種されるドラッグ。でも時代柄、仕方ないと思うんだよね。日常に刺激を与えて、最高に気持ち良い。そんなのやるしかないだろう。特に10代~20代の多感な時期は手を出したくなる気持ちも分かる。ただ、この映画の中では「こんなの良くない」と思っているレントンの心理が巧みに表現されている。ここが良い。

破滅的な生活の中で、”普通”に生きることを揶揄してきた若者が”普通”の人生を送ることを肯定していく。そんなイギリス独特の自虐ネタのオンパレードを形にした名作だと思う。芸能人も見習え

 

 

【まとめ】

1996年から20年の時を経て、2017年に続編となる『T2 トレインスポッティング』が公開されたけど(まだ観れてない)。噂では『T3』なる第3作目も制作が進んでるとか? 「ベグビーが90分間大暴れする映画」らしいので、きっとファンを楽しませてくれると信じている。

最後に。ドラッグはダメ、絶対

あのクリーチャー達が動く『スケアリーストーリーズ 怖い本』を映画館で観てビクッとして嬉ション

アメリカ版『学校の怪談』として有名な『スケアリーストーリーズ 怖い本』。学校の図書館に置いてあると保護者から苦情が殺到するという抜群の恐怖。ホラー好きは必見(必聴)のビックリ度合だったので、その魅力の一端を紹介する。

あらすじ

読むな危険。その本は、絶対に開いてはいけない―

ハロウィンの夜、町外れの幽霊屋敷に忍び込んだ子供たちが一冊の本を見つける。 そこには噂に聞いた怖い話の数々が綴られていた。

持ち帰った次の日から子供がひとり、またひとりと消えていく。 そして、その“怖い本”には毎夜ひとりでに新たな物語が書かれていくのだ。 主人公は消えた子供たち。彼らが“いちばん怖い”と思うものに襲われる物語がそこにあった。

次の主人公は誰なのか? 子供たちはどこへ消えたのか?“怖い本”の呪いからはだれひとり逃げられない―。Filmarksより引用

 

”ベストセラーの禁書”という矛盾した前振りの通り、子供が持つ根源的な恐怖が具現化される本作。ぶっちゃけるとホラーというより、モンスター映画に近いかもしれない。俺はこのご時世でも堂々と映画館で観れたんだけどね(マスク着用させられた)。久方ぶりに ビクッとする という感覚を味わえた良い作品

ちなみに、原作はペラペラっと読める超短編集。日本でもマイルドな翻訳版が出ているので読むと更に世界観を楽しめるぞ。

スケアリーストーリーズ 怖い本
いばりんぼうをつかまえた

 

ギレルモ・デル・トロ 節100%

ごめん、別にギレルモ監督が腹に風穴あいた案山子なワケではない。悪意のある記事構成になって大変申し訳ございません。よし、謝ったからちゃんと紹介するよ。

まず、この「ギレルモ監督」、ホラー映画撮る為に生まれた? みたいな名前じゃない? 俺なんか最初は完全にそう思ったけどね。でも映画界においては超実力派。『パンズ・ラビリンス』が一番有名な気がするけど、ほら、あの「食べちゃいけない試練」で葡萄を2粒食べた時に動き出した掌に目を装着する化物。あれを撮った監督と聞けばすごく分かりやすいんじゃないかな。

え…わからない? マジかよ。じゃあ…『ロード・オブ・ザ・リング』続編の『ホビット』監督、ホラー好きにとっては義務教育と化しつつある『MAMA』製作総指揮の人だと覚えておこう。→(と思ったのは本音なんだけど。今Wikipedia見たら『シェイプ・オブ・ウォーター』撮ってるじゃん。一番有名じゃん、情弱な俺乙)。

と言う感じで、ここまで丁寧に作品名を列挙すれば、普通に有名映画を観てる人は気付くと思うんだけどさ。ギレルモ監督の真髄は人外への飽くなき愛にある。「デジタルな化物ではなく、生身の化物を作りたかったんだ」米国記者にインタビューで語る通り、息遣いが耳元で聴こえるような、リアル感が最高にクールな化物を創り上げる天才ってワケだ。

 

そもそも原作の挿絵がトラウマ

あ!この絵みたことあるって言う人もたくさんいると思う。これは原作の挿絵なんだけどね。ホラー板とかでは頻出のクリーチャー達なので、俺なんかはセンター試験の勉強してる時に海馬に刷り込まれてたよ

このクリーチャー達に見事に命を吹き込んだのはギレルモ監督の生涯きっての一大事業だと思う。確かに、図書館で子供が読んだら死ぬまで忘れないような化物たちだが、映像化することによって大人でもトラウマになるレベルまで昇華された。マジで質感がやばい。

あと、個人的には『ジューン・ドゥの解剖』撮ったウーヴレダル監督との相性もすごく良かった。音がヤバい。

 

 

クリーチャーの不気味さがヤバい

ペールレディ

ジャングリーマン

案山子のハロルド

大きな足指

なんか…もっといた気がするけど、とりあえず今回の映画でベンチ入りしてたのはこの辺。大体が怖い画像探してる時に出てきた画像だよね!(歓喜)

あえて原作挿絵から抜粋したんだけど、これらのクリーチャーが動いてるのは普通に興奮した(大丈夫、性的にではない)。 だからホラーの世界に少しでも魅入られて、ちょびっと齧ってるような俺みたいな人間にとっては、彼らが動いてるだけでかなり嬉ション作品

ちなみに俺は本作を観て”ペールレディ”軽くトラウマになったぞ!(子供の頃、夏休みに5回ほど入院してるので病院が舞台のホラー苦手。もう入院できない…。)

 

 

物語を伝えることの大切さ

本作では、ギレルモ監督の物語的特徴でもある、”悪であるクリーチャーに共感する主人公”が描かれる

60年代後半、アメリカVSロシア冷戦中の時代背景ともリンクしてくるんだけどさ。言論の自由がしっかりと確立される最中、特に女性の出版物に対しての弾圧もまだあったんじゃないかな? そんな設定の中で「物語を語ることで、癒す」を正義とするストーリーは、闇の中に輝く希望をしっかりと描いていたし、なるほど…こういう着地もアリ…と、物語を語る事の大切さがしっかりと感じることができた。

 

 

まとめ

アメリカの子供向けホラーってことで、心の奥底にある恐怖心を煽ってくる内容だった本作。音の演出が秀逸だから、これは映画館で観た方が良い作品だと思うんだよね(自宅で爆音鳴らせる裕福層は除く)。最後に希望も含ませてくれたし、ワンチャン続編化してくれると泣いて怖がる。そして映画館へ走る。

どちらにせよ、ギレルモ監督からは暫く目が離せなそうだ。

海外に評価される日本的美意識の塊『パプリカ』を、代理店PRは会議室で観ろ

日本よりアメリカで評価されている映画No.1『パプリカ』。R指定の劇場アニメでは異例の人気を博した本作、もっと日本でも知られて良いと思うんだよね。

あらすじ

パプリカ/千葉敦子は、時田浩作の発明した夢を共有する装置DCミニを使用するサイコセラピスト。

ある日、そのDCミニが研究所から盗まれてしまい、それを悪用して他人の夢に強制介入し、悪夢を見せ精神を崩壊させる事件が発生するようになる。

敦子達は犯人の正体・目的、そして終わり無き悪夢から抜け出す方法を探る。Wikipediaより引用

キャッチコピーは「私の夢が、犯されている」

 

 

パプリカ(C.V.林原めぐみ)

主演はまさかの林原めぐみ。夢の中での探偵としてのパプリカと、現実世界の千葉敦子の2役を1人でこなす(まぁ役柄的に1人だし)。現実世界では黒髪キャリアウーマンな凛とした女性なのに対して、夢の中のパプリカは小悪魔チックな明るい性格。この演じ分けが地味に良い。さすが時代を築いた一流声優。『名探偵コナン』で機嫌の良い灰原が観れた時の歓びを思い出した

 

実力派声優の本気

意味があるのか無いのか分からない。そんな言葉が飛び交う夢物語。林原めぐみ以外にも江守徹・堀勝之祐・大塚明夫と超実力派が軒並み揃った声優の本気が聴ける

最近のアニメでも中々揃わないメンバーが捲し立てる狂言の数々は一見の価値あり。それに伴って物語も佳境に向かう。俺的オススメは「おお!有史以来の待ち人!その笛の音はニューロンの癒し!香しき脂肪分は至上のランチ!」と言って女性を上の口で普通にパックンするところ。本当に意味がわからない

 

 

夢と現実の境界がなくなる

物語終盤で夢世界が現実にも侵食してきてカオス具合が臨界点突破する。パプリカと千葉さんの2人が揃った時点で「?」という脳内エラー表示はMAXに近いんだけどね。物語を中盤くらいまで観てると不思議とそれが心地よくなって来る

大凡の戯言を抜きにストーリーを頭の中で整理しながら観ていると、夢×刑事ドラマのサスペンスとして良く出来てる。『サイコパス』よりもフィクション色強めなんだけど、『攻殻機動隊』ほどSFよりでもない。夢自体が曖昧&混沌すぎてジャンルに特化してない感じが逆に新境地。ストーリーの内容どうなの?ってことを話したいけど、夢要素が強すぎて…文章で書いても良く分かんないことになる。これたぶん観てもらった方が早い。ただ、オチ的な結論から言おう、これは全デブ救済アニメだ。

パプリカ

 

 

 

まとめ

正直、俺も最近まで観てなかった。たまたま昔のニュース記事を読んでたら「え、何、パプリカってそんな海外で人気あったん?良さそう」と思って観るという完全な”にわか”

でも結果として観れて良かったと思う。単純に声優が聴けるだけでアニメ好きにとっては嬉しいけど、それ以上に海外で評価されたっていう理由もなんとなく分かるクールジャパンがここにはあった。「こういうアニメで日本ブランドの市場価値は高まっていったんだなぁ」ってことが良く分かるし、確かにこれは日本人ならではの美意識が凝縮されていると感じた。むしろ、最近はちょっとカッコ付け過ぎてて、本当に世界にウケるのはこういうJAPAN像なのでは?とすら思えるので、日本代理店のPR関係者はこぞって会議室でチェックした方が良い

まだ観てないアニメ好きも、時間あったら観て。

近年稀にみる実写成功例『ミスミソウ』が原作を超えてたの知ってる?

2018年、ミニシアターを中心に上映された実写版『ミスミソウ』。2007年~2009年の間『ホラーM』で連載されていた押切蓮介さん原作の完成度も言わずもがなだったが、この実写化もまた、負けてない秀作。

あらすじ

東京から田舎の中学校に転校してきた野咲春花は、学校で「部外者」扱いされ、陰惨ないじめを受けることに。

春花は唯一の味方であるクラスメイトの相場晄を心の支えに、なんとか耐えていたが、いじめはエスカレートしていくばかり。

やがて事態は春花の家が激しい炎に包まれ、春花の家族が焼死するまでに発展。春花の心はついに崩壊し、壮絶な復讐が開始される。映画.comより引用

キャッチフレーズは「家族が焼き殺された日、私は復讐を決めた。」というド直球さ。潔い、というかこれしかない。原作も良くて…というか、押切蓮介作品は『ハイスコアガール』も『でろでろ』も『サユリ』大好きなんだけど、『ミスミソウ』はちょっと特別だよね。ここまで凄惨な復讐を描けるのは押切先生しかいない(黒押切)

 

 

主演:山田杏奈の代表作

原作準拠の惨殺劇。「絶ッ殺」という固い意志を示す視線を見事に再現したのは『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』の山田杏奈。ボウガンで遠くから狙ってくる男子生徒に対して殺意の波動を放出する様は、元々心に闇を抱えてたのでは? と思わざるを得ないほどの名演技。『小さな恋のうた』にも出演してたけど、強くて可愛い女優は昨今に置いてレア度SSR。この空気感を出せるのはリアル夜凪景と言っても良いくらい。もっと色んな映画出て欲しい(具体的には次の『冨江』とかやって欲しい)。

 

若手役者陣がとにかく優秀

唯一の救いである相場くんを演じるのは清水尋也。お前こんな演技できたんかい! という感想を、誉め言葉としてここに記したい。気付いた? 『ちはやふる-結び-』の須藤先輩だよ。この狂演なくして本作は完成しなかった。

もちろん、いじめっこグループも総じて良い演技をしてた。「ボウガンでお前の親父脅して、家に火ぃつけたのは俺だぁあああ」と叫びながら、その娘にも同じボウガン向けてくる全く同様の余地なしの男子生徒役も最高にダサい死に方するし。バイプレイヤーが優秀だからこそ主演陣が映えてる良き例。

すべては押切先生の原作が優れていたからこそなんだけどさ。思春期のスクールカーストにおいて悪意は容易に伝播すること、日常は一瞬で崩壊させることが出来るし、人間は一瞬で消せる。憧れだった人間は振り返れば小さな人間だし、雑魚のような3軍でも本気を出せば小さな世界くらい壊せること。その当たり前がしっかりと3次元化されてた。

 

誇張無しに再現度105%

流石に、あまりにも残酷なセリフは無くなってたけど、原作と違うのはそれだけかと。過激な暴力・人間が狂う瞬間のあのピリつく空気は完璧に原作準拠だった。

俺、押切先生の話は勿論だけど絵も好きだからさ。正直、実写化されても全然観る気になれなかった。「いやいや、あの絵があってこそストーリーが映えるんでしょ」なんてほざいてた。燃やしたい。たぶん俺が『ミスミソウ』という作品を知らないで観ても、「なんか、押切蓮介の作品っぽいなぁ」と感じる忠実さで、心の内面を描いてる。

ちなみに、”再現度105%”としたのは、映画に改変があったからだ。賛否両論なのかもしれないけど、俺は非常に良いアレンジだったと思う。美作昴もビックリのパーフェクトトレース+α

 

超意外な生存エンド

大概の作品だったら、絶対に「そりゃ悪手じゃろ」と言われる、死んだキャラの生存エンド。それを見事にまとめあげ、”救いのある『ミスミソウ』”を完成させていた。監督に拍手。

どんな人なんだろ? と思って調べたら内藤瑛亮監督というらしい。俺はこの人の他作品、観たことないんだけどね、本作に至っては素晴らしいと思った(押切先生ファン?とまで思えた)。いつか同監督の作品に出合ったら本気出して観てみよ。とにかく、俺はこの映画の終わりかた超好き

 

物語の真の終わりが描かれた

そもそもこの映画自体が、連載終了後の完全版をもとに作られている。読んだ人は分かってる事だから普通にネタバレするけど、この完全版には前日譚とエピローグが追加されている。

映画版はこれのエピローグ部分を改変したということになる(というか別のシーンに差し変わっただけで、おじいちゃんと春花の会話はあったのかもしれない。いや、あったんだよ。俺たちの心の中でな)。完全版と言うだけあって、これを描くことで一気に物語に深みが出たんだよね…おじぃちゃん…。

春花が妙子に言った最後の言葉「胸を張って生きて」から、映画のラストの爽快感&エモさが生まれるなんて、誰が想像できただろうか。この技量は敏腕監督と言わざるを得ない。『ミスミソウ』の新しい完全版を魅せてくれ、本当にありがとうございました。観終わった後の感じで言えば、完全に原作を超えてると思う

まとめ

漫画の実写化は基本的に失敗するのが定例になってしまったことは悲しいが、この『ミスミソウ』に関しては大成功。

原作ファンこそ観て欲しい作品なので、チェックして欲しい。