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最後まで意味が分からなかったと言えば真っ先に浮かんでくる『アイアムアヒーロー』について

2009年~2017年の期間スピリッツで連載しつつ、2016年の実写映画化も成功させた『アイアムアヒーロー』。気が狂ったか? と思うような衝撃の一巻に始まった本作は、連載終了まで見事に気が狂っていたと思うのは俺だけじゃないハズ。

【あらすじ】

主人公・鈴木英雄は、さえない35歳の漫画家。デビュー作は連載開始後半年で早々に打ち切られ、借金も背負い、アシスタントをしながら再デビューを目指し、ネームを描いては持ち込む日々が3年を経たが、出版社には相手にされない悶々とした日常を過ごしている。そんな無為な日常の中の救いは、恋人である黒川徹子の存在。だがその彼女も、すでに売れっ子漫画家になった元カレを何かと引き合いに出し、酔うたびに英雄の不甲斐なさをなじる始末であった。

そんなある日、全国的に「噛み付き事件」が多発する。町に増えてゆく警官の数、さらには厚労相が入院して、その入院先で銃撃戦が起こるといった報道が立て続けに起こる。英雄も深夜、タクシーに轢かれて両腕と右足が潰れ、首が真後ろに折れても運転手に噛み付き、奇声を発し立ち去る女性を目撃する。やがて、周囲の人々がゾンビのような食人鬼と化す謎の奇病が蔓延し、「ZQN」と呼ばれる感染者たちが街に溢れる。恋人や仕事仲間も犠牲となり、都内から逃亡した英雄は富士の樹海で女子高生・早狩比呂美、御殿場のアウトレットモールで看護師・藪(小田つぐみ)と出会い行動を共にする。Wikipediaより引用

 

 

実写版

『アイアムアヒーロー』

主演:大泉洋、そして有村架純長澤まさみがヒロインという豪華キャスティング(小田さんはヒロイン枠、いいね?)。それだけこの作品が売れる自信があったんだろう。結果としてこの思惑は大成功だったと言える

 

原作再現度MAX

まず大泉洋の英雄がめちゃくちゃ良かった(欲を言えばもう少し小太りだが)。社会不適合者感が如実に再現されていて、普通の社会が機能している時は絶対に役立たずな感じが◎。あと会ったことないけど「こんな人いそうだな…」っていうリアリティさが良かった。こういう役うまいよね。

あと長澤まさみのカッコ良さが際立つ。終末の世界で生き抜く強い女感が際立っていて、こんな女性に出会ったら即堕ち。ショッピングモールの面々も糞ったれっぷりを存分に発揮した演技で話を盛り上げてくれた。やっぱり価値観がなくなった世界でこそ人間の本性は出て来る。

 

ZQN再現度120%

韓国技術員の協力を得て行ったという特殊メイク&映像がハンパなくクオリティ高い(というより魅せ方が上手い)。ちなみに監督は『キングダム』と同じ佐藤信介監督なんだけどね。この佐藤監督が原作準拠で描いたスケッチをもとに特殊メイクを施している。陸上選手のZQNは3Dプリンタ使って用意されたZQNらしいし、カズレーザーもZQNとして出てきたりすごくバラエティ色強めながら、映像は最高にグロテスク。この思い切りの良いギャップが素晴らしかった。

もちろんストーリーも良かったよ。敢えてのショッピングモール編をメインにすることでアングラ感増しててゾンビ映画として2階級特進してた。

 

 

原作版

『アイアムアヒーロー』

意外と、映画しか観てない人・原作を最後まで観てない人多くない? 話が進むにつれてドンドン物語がカオスに煮詰まって3日目のカレーみたいになるから、読んでない人は原作の続きも読んだ方が良いと思う。

 

映画版の”その後”

冴えない漫画アシスタントの日常を淡々と描いた末、巻末で衝撃的なアウトブレイクを読者に与えた原作版『アイアムアヒーロー』。もちろん、最終巻でもやってくれてる(いや、むしろ何もやっていない)

映画では多少の差異はあってもほぼ原作準拠でやってくれたから、見事にゾンビ映画としての体を成していたけど。この作品の真のジャンルは実は”ゾンビもの”ではない。最終巻まで観てると要所要所に「あれ、この描写いる?」っていうシーンが出てきて、それがZQNとは? の解答への布石になっている(気がする)。そう、要するに投げっぱなしENDだ。

まぁ、たぶん、宇宙人的な存在が地球をテラフォーミングする&人類が共存できるか測るために、ウイルスなのか概念的なモノをアウトブレイクさせたんだと俺は素直に受け止めた…のかな。うん、正直に言うと俺も何が何だか分からん!

ただ、見所としてはいっぱいあるんだよ。比呂美ちゃん・小田さん・英雄の三角関係とか、建設的ZQN・巨大ZQN・存在理由不明ZQNの登場とか、江の島編・高層ビル編とか! え?大丈夫。俺も今本当に面白かったか疑問に思ってるよ。だが、まぁ、面白かったな…(遠い目)。

 

【まとめ】

俺のボキャブラリーではその魅力の一端しか伝えられなかった感があるが、一世を風靡したことには変わりない本作。終末系作品が一般大衆に認めらるようになった走りと言っても過言ではないので、未読の人は読んどけばヲタクとの会話の時に使えると思うよ(俺はヲタクじゃないから知らんけど)。

原作リスペクトの投げっぱなし記事でした。
(本作はちゃんと面白いから!)

結論から言うと『約束のネバーランド』は本当の自由を証明する為の旅

「ジャンプらしくない新連載」として、2016年に週刊少年ジャンプにて連載を開始した『約束のネバーランド』。2020年6月15日発売の同誌にて堂々完結した本作。いちファンとして、この王道にしてアナーキーな作品を語りたい。

【あらすじ】

色々な孤児が集まる「孤児院」・グレイス=フィールド(GF)ハウスは、院のシスターで「ママ」と慕われるイザベラのもとで、「きょうだいたち」にも血縁関係はないが、幸せに暮らしていた。ここでは、赤ん坊のころに預けられた子供を、特殊な勉強とテストにより育てあげ、6歳から12歳までの間に里親の元へと送り出す…と孤児たちは教えられていた。

里親が見つかり、外の世界に出ることになったというコニーが人形を置き忘れたため、主人公で身体能力に優れるエマと、知略に優れるノーマンはそれを届ける。しかし二人は、近づくことを禁じられていた「門」でコニーが食肉として出荷される瞬間を目撃する。そこから「鬼」の存在を知った二人は、リアリストで博識なレイのほか、ドン、ギルダを仲間に引き入れ、GFからの脱獄計画をスタートさせる。Wikipediaより引用

ちなみに、漫画漬けの日々を送る俺は
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それではお待ちかね。下記にて『約束のネバーランド』に関して独善的に語っていく。楽しく読んで、作品のことを好きになってくれると嬉しい。

 

数多の漫画賞を受賞

TSUTAYAコミック大賞 2016
第63回小学館漫画賞
漫画新聞大賞2017 大賞
このマンガがすごい! オトコ版1位
TSUTAYAコミック大賞 2018

大体有名どころだとこの辺。ゴールドラッシュかよ。ジャンプ編集部の担当は笑いが止まらなかったことだろう(あとケンコバさんがやってる『漫コバ』でもグランプリ獲ってたハズ)。まぁ正直、普段漫画読まない人からしたらこの辺の漫画ランキングは馴染みがないかもしれない(俺はとりあえず全部チェックしてるけど。あ、これ自慢です。あれ、自慢になってる?)。わかりやすく例えると、日本でアカデミー賞獲ったと思ったらカンヌ・ベルリン・ヴェネチアでも選出されちゃった感じ(゚Д゚)ハァ?

2019年1月にアニメ版も放送されたから、それで一気にファンが増えた感もあるよね。UVERworldの「Touch off」が主題歌でめっちゃ格好良かった(あれはズルい)。2021年春にアニメ2期も決定してるという人気ぶり。でも、アニメを控えながらもキッチリ最終回を〆るところが最高にCoolかと。こういうところ、アナーキーで好き

 

 

エッジの効いた設定が◎

てことで、原作ファンの多さもさることながらアニメ観てる人も多いと思うので、詳しくストーリーを紹介するのは割愛。ここからは俺が好きな点を語りたいと思う。

まず、少年誌らしからぬ鬼のビジュアルが◎だよね。エマが初めて鬼を目撃した時の「なに?」は俺たち読者の気持ちを二文字で表現してくれていた。正確には「え、な…ふぇ…あーね、そういう感じでくるかー。で、なに?」っていう形にならない感情だったけど。しかも驚くべきはザコ鬼でこのクオリティ。物語中盤で登場する”狩場の死神”ことレウウィス大公に関してはパリコレモデルも顔負けの8頭身を魅せつけてくれた(女王もスタイル抜群!)。

そもそも、食肉人間の飼育場が舞台の作品をよく本誌で掲載する気になったなと感心しかないゲーム始めたら魔王城が最初の村みたいなクソゲー設定ながら、強大すぎる敵に立ち向かいながらの逃走劇はまごうことなき王道ストーリー

 

 

ジャンプの新たな王道

俺も前述しちゃってるけどさ、よく「ジャンプらしくない」という評価を受ける本作。真正面から敵を倒し、勝鬨を上げるのが本誌の特徴ではあるものの、主人公たちの年齢がここまで幼いと、このステレオタイプも現実と乖離しすぎてしまう。ならばどうするか。逃げるしかないでしょう。俺(30歳)だってそうする。

でも、逃げながらも友情・努力・勝利をしっかりと描いた。つまりこれは、子供という圧倒的弱者の目線でしっかりとジャンプの王道を描いた作品なんだよ。こんなにダークな作風ながら読者層は若年層&女性が多いって聞いたことあるしね。

しかも、お気づきだろうか。この『約束のネバーランド』のヒットを受けてか、本作以降、尖った作品がジャンプ本誌に増えた。『チェンソーマン』『呪術廻戦』はその筆頭だ(富樫先生は例外だ! 一旦忘れろ)。ダークファンタジーとして、名実ともにジャンプの新境地を切り拓いたってこと。

 

 

最高の未来とは

あ、このブログ全然ネタバレするスタイルだから。躊躇いなく最終話にも触れます(でも人が良いから大事なところは暈すよ←異論は認めない)

「運命なんて覆してやる」の精神で、仲間のために突き進む子供たちの姿はここまで観てきた読者も納得の展開。称賛すべきは、ここで希望の道を指し示すのが失った仲間であること。コニー、ユーゴ、イザベラをここで再登場させる作者の脚本作成能力をスキルハンター(盗賊の極意)したい

最後の最期で家族を失ったエマ。それを見て絞り出されるノーマンの「よかった…」。記憶が無い相手に対して独白のように綴られる幸せな未来と、選択したことの正当性。最高の未来だよ、でも、それでも僕は君といたかったという切なる少年の願いはもう全読者感涙必至でしょう。しかもさ、この独白を聞いたエマも泣いちゃうところが最高。全く記憶が無いのに、何故か溢れ出る涙。そして零れる「会いたかった…」の一言。これが聞ければもう満足なんだよ。むしろ最終話この一コマだけでも良かった。忘れてても、思い出せなくても、依然と別人でも良いから一緒に生きようって言えるのは、ここにたどり着くまで「なんとしても皆で生きよう」って願ってきた子たちだからこその言葉だよね。

見事なハッピーエンドで皆幸せなことには変わりないんだけど。他作品のように、ご都合主義全開で誰一人漏れることなくハッピーエンドじゃないっていうこの絶妙な塩梅がお見事。しかも俺は逃してませんよ。ジャンプって毎号、最終ページに編集部が一言〆の一言見出しみたいの入れるじゃん? それが今回は「絶望の運命、その彼岸(さき)で――」だったんだよ。ちゃんと絶望乗り越えてるんだよ。編集部公認ですよ。やはり、”最高の未来”って言うのは、苦しい逆境を乗り越えた先にしか手にすることが出来ないってことを、俺たちにしかと教えてくれた。本当の自由は頑張った奴だけが得られるんだよ

【まとめ】

本当の自由を求め、温室から脱走して異世界まで辿り着く物語。結末は、どうなんだろう…。賛否両論あるのかな。俺は好きだけどな。というより、最期まで少年誌としてのご都合主義に抗ったという点に俺は感動したよ。誰よりも本当の自由を証明したのは、この作品自体だったのでは? 週刊少年ジャンプという媒体の中に居ながらも「運命なんてクソくらえ」とヤリ切った本作に感謝。ちなみに、実写で映画化するらしいよ(マジ)

白井カイウ先生&出水ぽすか先生、お疲れ様でした。

次回作も本当に期待してる。

何も考えず『宇宙戦争:ゴライアス』観て脳の快楽物質をコントロールしよう

2012年、マレーシアにて制作された『宇宙戦争:ゴライアス』。知る人ぞ知る『宇宙戦争』後日譚だが、コレが中々に気持ちの良いドンパチSFなので今回はこれを取り上げたい。

【概要】

H・G・ウェルズの名作SF小説をアニメ映画化。地球に火星人の大軍が襲来し、勇敢な戦士達は侵略者に立ち向かう。地球の技術の粋を集めた兵器が今、うなりを上げる。Netflixより引用

時代設定が1910年代なんだけど、こんなに昔の設定だったんだ。あの賛否両論を生んだスピルバーグ監督版(トム・クルーズ主演)の『宇宙戦争』はモダナイズされてたってことかな。

宇宙戦争 (吹替版)

 

 

SF×スチームパンクアニメ

「ふむ…エンジンが蒸気機関だから、これはスチームパンクだな(謎理論)」というのが俺が観た時に一番最初に思った感想。正直、最初観てる時はこれがH.G ウェルズ原作だって気付かなかった。でも火星人のビジュアルが明らかに『宇宙戦争』意識してたからさ、「あ、そういう…?」ということで続編であることを理解した。

いや、でも流石に時代感あり過ぎでは!? テクノロジー格差が俺の母校の用務員室と電通の喫煙所くらいあるんですけど。なんて、人類敗北待ったなしと思っていた矢先、奮闘しだす人類。あ、良かった。やっぱり戦争は技術力を底上げするんだな。こんなビーム兵器が第二次世界大戦に使われてたら三国同盟は瞬殺で海の藻屑でしたね。ということで、幼いころに両親を消された主人公が火星人に復讐するスーパーマンになる物語が始まった。

 

 

偉大なアメリカ様に捧ぐ

リスペクト精神

面白い位に人が溶けて骨になるんだけどね。もうちょい避けろよ! 命大事にしようぜという俺の心配など意にも介さず溶ける。そして火星人は爆発する。足をヤられたハードパンチャーのインファイトだったか…と諦念を抱くと共に、俺にはある一つの考えが浮かんだ→「そうか、これはアメリカ様リスペクトのドンパチ映画だ」。こう思ってからはかなり気持ち良かった。

「我が軍の勝利だ!」って言って拳を掲げる姿には『インディペンデンスデイ』の大統領演説の感動を思い出したし、全世界が一丸となって火星人に立ち向かっていく様子も王道。余談だが、かの有名なウィル・スミス主演の『インディペンデンスデイ』も、原作『宇宙戦争』から影響を受けてたらしいね。ラストの倒し方とか類似するものがあったしな。本作はそれらを全て踏まえた上で、敢えて純粋な殴り合いをアニメ映像に落とし込んだ良作だと言える。ただただ、見ていて気持ち良く、良い感じにドーパミン出るからパーキンソン病の予防になること請け合い

【まとめ】

Netflixって面白い作品多いなぁと改めて思った。今まで興味なかった作品も定額だとついつい観ちゃうよね。ということを言い訳にして、日々黙々と膨大な量の娯楽を消費している俺。たぶん働き盛りの20代の中では視聴率上位ランカーだと思う。全く自慢じゃなく、むしろ廃人の証明なんだけど、その辺の映画系Youtuberより観てる

Huluも登録するかも。
廃人への軌跡、乞うご期待。

『トレインスポッティング』は薬物肯定作品じゃない、巧みな薬物否定作品だ。

俺が往年の名作である『トレインスポッティング』を初めて観たのは、実はかなり遅い。編集の仕事で本作に触れた時だから、つい1年~2年前のことだ。でも、観るタイミングは関係なかった。酒×薬×女はいつの時代も男を虜にする。

【あらすじ】

ドラッグ中毒のマーク(ユアン・マクレガー)と悪友たちは常にハイ状態か、あるいはドラッグを手に入れるため盗みに精を出しているというていたらく。ある日、マークはこのままではいけないと更生するためにロンドンに行き職に就く。ところが、彼らの仲間が会社に押し掛けたことが原因で、マークはクビになってしまう。

トレインスポッティング(字幕版)

 

 

ユアン・マクレガー出世作

本作を語る上で、これは外せない要素だよね。特に俺みたいなホラー好きにとっては、最近『ドクター・スリープ』で名演を果たした彼の若かりし雄姿は何回観ても同じ人物とは思えない(両作どっちを先に観ても)。

いわゆる、ドラッグ映画とでも言うのだろうか。思いっきり犯罪行為を行いながら、若さにかまけて大暴走するストーリー。令和の時代に観てもあまりピンと来ない内容かもしれないが、たぶん当時の(今でも)チョイ悪な若者の娯楽と言えばドラッグだったんだろうなぁ…この映画を観れば感じ取ることができる。もちろん、これはユアン・マクレガーのぶっ飛んだ名演技あってこそ

 

 

カルト的な人気は

時代を経ても褪せない

当時、第一線にいた多くのクリエイターが影響を受けたのも頷ける映像と音楽の間違いなさ。特に映像演出は90年代あまり他の作品ではやってなかったであろう新しさを感じる。音楽に関しても、1996年に「Temptation」聴いたら誰でもニューオーダー好きになるよって感じ(もっとも、UKロックに明るい人達はこの映画放映前から聴いていただろうが)。

これまで本作をもとに多くのパロディも作られたし、俺が編集やってた時はよくクリエイターの先輩方にも勧められた(というより、観てないことはあり得ないとされていたが…今ならその気持ちも分かる)。それだけ、当時はほぼ全ての人が影響を受けたっていうことだと思う。

ちなみに監督は『スラムドッグ$ミリオネア』のダニー・ボイル監督。まだまだ現役の名監督(生ける最前線)だ。

 

 

身を滅ぼす象徴であり

救いを与えるドラッグ

まず明確に宣言しときたいんだけど、俺はドラッグ(あとギャンブル)はやらないと決めてるよく言動のラリ具合から勘違いされがちだが。やったら最後、俺みたいな意志の弱い人間は完全に依存してしまうと自分で分かるからだ(たぶん超ヤる、何を置いてでも全財産溶かして朝から晩までキメる)。嗜好品は酒と煙草だけで十分(早死に待ったナシ!)。だから、その気持ちよさっていうのは想像でしかないんだけど。それを前提に話を進めるね。

本作の中でレントンは、大衆である一般的な若者としてドラッグ(ヘロイン)に依存し、堕落した日々を送る少年。「手に入るドラッグはなんでもヤった、ビタミンCがドラッグだったらヤってた」という台詞の通り、作中で描かれるのも最高にキマッた日々だ(曰く、モルヒネ、コデイン、テマギン、フェノバルビタール、アモバルビタール、プロポキシフェン、メタドン、ペチジン、、デキストロモラマイド、クロルメチアゾールをキメたらしい。やべぇ、モルヒネしか知らない)。

そんな中で、平凡な日々からの脱却ツールとしていともたやすく接種されるドラッグ。でも時代柄、仕方ないと思うんだよね。日常に刺激を与えて、最高に気持ち良い。そんなのやるしかないだろう。特に10代~20代の多感な時期は手を出したくなる気持ちも分かる。ただ、この映画の中では「こんなの良くない」と思っているレントンの心理が巧みに表現されている。ここが良い。

破滅的な生活の中で、”普通”に生きることを揶揄してきた若者が”普通”の人生を送ることを肯定していく。そんなイギリス独特の自虐ネタのオンパレードを形にした名作だと思う。芸能人も見習え

 

 

【まとめ】

1996年から20年の時を経て、2017年に続編となる『T2 トレインスポッティング』が公開されたけど(まだ観れてない)。噂では『T3』なる第3作目も制作が進んでるとか? 「ベグビーが90分間大暴れする映画」らしいので、きっとファンを楽しませてくれると信じている。

最後に。ドラッグはダメ、絶対

映画の『ピンポン』は観て、アニメの『ピンポン』観てない奴は日本国民じゃない

『鉄コン筋クリート』で有名な松本大洋先生が原作の『ピンポン』。2002年、窪塚洋介が主演の実写映画は日本でも大ヒットしたけど、2014年のアニメも映画に負けてない超名作だったんだよ。

あらすじ

才能にあふれ、卓球が好きで好きでたまらないペコ。子供の頃から無愛想で笑わないスマイルにとってペコはヒーローだ。

だが、ペコはエリート留学生チャイナに完敗。インターハイでも、幼なじみのアクマに敗れてしまう。一方スマイルは、コーチに才能を見い出され、実力をつけていく。

現実の壁にぶつかったペコと強さに目覚めたスマイル。それぞれの道を歩き始めた彼らに、またインターハイの季節がやってきた…。Filmarksより引用

アニメ版では、原作には登場しなかったけど松本大洋の構想にあったというキャラも登場してくる。それが物語を良い感じに盛り上げる。「映画は観たけど、アニメは絵が苦手」って言ってる人がたまにいるけど、全然わかってない。松本大洋の線を活かして動かされる水彩タッチのアニメーションは、原作の世界観を可能な限り限界までトレースしてるし、動きが加わることで映画版よりも情報量が凝縮されたアニメ化における一つの正解と言える

ピンポン
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アニメ表現の新境地

現実で役者を撮った後に動きを絵に落とし込む”ロトスコープ”を使用して作られているアニメーション。ロトスコープと聞くと、俺なんかは『悪の華』がまず頭に浮かんでくるけど(『花とアリス 殺人事件』もロトスコープだったね)、この『ピンポン』はカッコ良い構図を計算して作り込まれてる

漫画の中の「カッコ良い!」ってシーンを全部拾ってくれたセンスに脱帽。そして何より驚きだったのは、ぶっちゃけ漫画よりカッコ良いってこと。これは衝撃だった。一気に絵の力強さに持っていかれる感じはジョジョのアニメ化以来。萌え絵には無い輝きがある。単純に、スポーツアニメの表現手法で、新しい道を切り開いた超名作ってことをここで記録しておきたい。

もちろん、表現だけじゃなくストーリーも超面白い。基本的には国民の大半が観ているであろうあの実写映画版と大きな軸は変わらないんだけど、先に述べている通りアニメにしか出てこないキャラの登場によって深みが追加されている。より脇役の心境に光が当たっている感じかな。これはアニメ観た人の特権だし、ファンにとってのサービス要素でもあるから詳細は割愛する。

 

 

「おかえり、ヒーロー」

本作を語る上で絶対に外せないのは主人公ペコとスマイルの熱い友情だ。幼馴染の2人が高校に至ってなお爆発させたマグマの如き信頼関係には、理由なんか無くとも涙した人は多いハズ

観てない人の為にちょこっとだけ話すと、スマイルの名前の由来は「笑わないから」じゃない。ペコと卓球で戦ってる時に「笑うから」スマイルなんだよ。そんなスマイルが笑わなくなったっていうのは、圧倒的な実力だったペコが低迷期に入ったから。だからスマイルは子供の時の様に”圧倒的に強い”ペコが戻ってくるのをずっと待っていた

この男特有の、友達へのライバル意識が非常にアツい。突き詰めると『ピンポン』って、この2人の青春が凝縮された物語だからさ、ペコvsドラゴンとの戦いで自信と実力を取り戻したペコの姿に、作中屈指の名言「おかえり、ヒーロー」が飛び出したのは必然と言えるんですよね。

 

vsドラゴン

ちなみに、このヒーロー(強いペコ)復活の戦いとなるvsドラゴン戦も極限までアツい。映画版のクライマックスになる通り、圧倒的一強として君臨していた孤独な怪物に対して、卓球をすることの純粋な楽しさを思い出させるペコ。それだけ自分自身が卓球を楽しんでるってのが強く伝わってくる名バトル。

最初はペコに対してメチャクチャ敵意を露わにしていたドラゴンが、試合終盤では笑いながらペコとのラリーを楽しむっていうのが良いよね。一種の悟り状態みたいにトランスしながらお互いを高め合う姿に、全スポーツマンは落涙必至。認めてる者同士の戦いには凝縮された魂の会話があるんだよな。ペコも最後に「カッコ良かったぜ、ドラゴン」って言ってるし、アニメ版が映画と同じくこの試合で終わっても名作の仲間入りはしていた。だが、ここで終わらないのがノイタミナ

 

 

ヒーロー見参

アニメ版の絶対視聴ポイントは、無論、最終話(11話)の「血は鉄の味がする」だ。実写映画版ではペコがドラゴンに勝って、ペコvsスマイルの決勝戦は”ご想像にお任せします”って余韻を残して終わらせたけど。アニメ版では伝説の決勝戦を描いた

笑いながら試合をするスマイルが戻ってきて、「僕の血は鉄の味がする」って、ロボットと呼ばれていた少年が人間であったことを自覚する瞬間。ここにまず涙腺ダムが崩壊。

 

輝かしい想い出

そうそう、あと、映画版との違いとしてもう一つ絶対に観て欲しいシーンがある。舞台は未来、卓球場タムラで子供たちに卓球を教えるスマイル。日本代表として中国戦に向かうペコ。大人になってそれぞれ卓球と関わっている2人が描かれるのも本当に良い。

そして卓球場タムラに往訪するドラゴン(マフィアみたいな風体)。スマイルと2人で、海を眺めながら大人口調で仲良さげに話をする様子は、高校時代の激戦が、その後も友情を育むきっかけになったであろう事を想像させる。

高校時代、部活やスポーツに打ち込んだ想い出ってのはさ。大人になると本当に脳の端っこの小さい思い出でしかなくなる。昔を懐かしんだ時に「何であんなに頑張ってたのかなぁ」と思うことも多いが、楽しかった思い出ってのは、その後の人生に大きな影響を与える。結果として「頑張って良かった」と思えるから不思議だ。

卓球場の壁には大会の時の表彰台の写真。笑顔のスマイルには悔いは全く無い様に見えるのは俺だけじゃないハズ。

 

 

まとめ

以上、Netflixでアニメが全話視聴できるようになった記念の駆け足『ピンポン』語りでした。いや、これ本当に最高のアニメだから全国民に観て欲しい。あの映画版に負けない作品を作るってのは相当にハードル高かったと思うんだよ? でもそれを見事にこなした湯浅政明監督にスタオペだよ

アクマとかチャイナとか、語るとキリがない位に脇役たちの人間性にフォーカスした内容になってて、書いてて「収集つかなくなるな…」と気付いたんだ。だから実は800文字くらい消したけど。そのくらい面白い。映画は映画でエンターテイメントとして一級だったけど、本当に負けてない

まだの人はみて。絶対後悔しない。

海外に評価される日本的美意識の塊『パプリカ』を、代理店PRは会議室で観ろ

日本よりアメリカで評価されている映画No.1『パプリカ』。R指定の劇場アニメでは異例の人気を博した本作、もっと日本でも知られて良いと思うんだよね。

あらすじ

パプリカ/千葉敦子は、時田浩作の発明した夢を共有する装置DCミニを使用するサイコセラピスト。

ある日、そのDCミニが研究所から盗まれてしまい、それを悪用して他人の夢に強制介入し、悪夢を見せ精神を崩壊させる事件が発生するようになる。

敦子達は犯人の正体・目的、そして終わり無き悪夢から抜け出す方法を探る。Wikipediaより引用

キャッチコピーは「私の夢が、犯されている」

 

 

パプリカ(C.V.林原めぐみ)

主演はまさかの林原めぐみ。夢の中での探偵としてのパプリカと、現実世界の千葉敦子の2役を1人でこなす(まぁ役柄的に1人だし)。現実世界では黒髪キャリアウーマンな凛とした女性なのに対して、夢の中のパプリカは小悪魔チックな明るい性格。この演じ分けが地味に良い。さすが時代を築いた一流声優。『名探偵コナン』で機嫌の良い灰原が観れた時の歓びを思い出した

 

実力派声優の本気

意味があるのか無いのか分からない。そんな言葉が飛び交う夢物語。林原めぐみ以外にも江守徹・堀勝之祐・大塚明夫と超実力派が軒並み揃った声優の本気が聴ける

最近のアニメでも中々揃わないメンバーが捲し立てる狂言の数々は一見の価値あり。それに伴って物語も佳境に向かう。俺的オススメは「おお!有史以来の待ち人!その笛の音はニューロンの癒し!香しき脂肪分は至上のランチ!」と言って女性を上の口で普通にパックンするところ。本当に意味がわからない

 

 

夢と現実の境界がなくなる

物語終盤で夢世界が現実にも侵食してきてカオス具合が臨界点突破する。パプリカと千葉さんの2人が揃った時点で「?」という脳内エラー表示はMAXに近いんだけどね。物語を中盤くらいまで観てると不思議とそれが心地よくなって来る

大凡の戯言を抜きにストーリーを頭の中で整理しながら観ていると、夢×刑事ドラマのサスペンスとして良く出来てる。『サイコパス』よりもフィクション色強めなんだけど、『攻殻機動隊』ほどSFよりでもない。夢自体が曖昧&混沌すぎてジャンルに特化してない感じが逆に新境地。ストーリーの内容どうなの?ってことを話したいけど、夢要素が強すぎて…文章で書いても良く分かんないことになる。これたぶん観てもらった方が早い。ただ、オチ的な結論から言おう、これは全デブ救済アニメだ。

パプリカ

 

 

 

まとめ

正直、俺も最近まで観てなかった。たまたま昔のニュース記事を読んでたら「え、何、パプリカってそんな海外で人気あったん?良さそう」と思って観るという完全な”にわか”

でも結果として観れて良かったと思う。単純に声優が聴けるだけでアニメ好きにとっては嬉しいけど、それ以上に海外で評価されたっていう理由もなんとなく分かるクールジャパンがここにはあった。「こういうアニメで日本ブランドの市場価値は高まっていったんだなぁ」ってことが良く分かるし、確かにこれは日本人ならではの美意識が凝縮されていると感じた。むしろ、最近はちょっとカッコ付け過ぎてて、本当に世界にウケるのはこういうJAPAN像なのでは?とすら思えるので、日本代理店のPR関係者はこぞって会議室でチェックした方が良い

まだ観てないアニメ好きも、時間あったら観て。

近年稀にみる実写成功例『ミスミソウ』が原作を超えてたの知ってる?

2018年、ミニシアターを中心に上映された実写版『ミスミソウ』。2007年~2009年の間『ホラーM』で連載されていた押切蓮介さん原作の完成度も言わずもがなだったが、この実写化もまた、負けてない秀作。

あらすじ

東京から田舎の中学校に転校してきた野咲春花は、学校で「部外者」扱いされ、陰惨ないじめを受けることに。

春花は唯一の味方であるクラスメイトの相場晄を心の支えに、なんとか耐えていたが、いじめはエスカレートしていくばかり。

やがて事態は春花の家が激しい炎に包まれ、春花の家族が焼死するまでに発展。春花の心はついに崩壊し、壮絶な復讐が開始される。映画.comより引用

キャッチフレーズは「家族が焼き殺された日、私は復讐を決めた。」というド直球さ。潔い、というかこれしかない。原作も良くて…というか、押切蓮介作品は『ハイスコアガール』も『でろでろ』も『サユリ』大好きなんだけど、『ミスミソウ』はちょっと特別だよね。ここまで凄惨な復讐を描けるのは押切先生しかいない(黒押切)

 

 

主演:山田杏奈の代表作

原作準拠の惨殺劇。「絶ッ殺」という固い意志を示す視線を見事に再現したのは『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』の山田杏奈。ボウガンで遠くから狙ってくる男子生徒に対して殺意の波動を放出する様は、元々心に闇を抱えてたのでは? と思わざるを得ないほどの名演技。『小さな恋のうた』にも出演してたけど、強くて可愛い女優は昨今に置いてレア度SSR。この空気感を出せるのはリアル夜凪景と言っても良いくらい。もっと色んな映画出て欲しい(具体的には次の『冨江』とかやって欲しい)。

 

若手役者陣がとにかく優秀

唯一の救いである相場くんを演じるのは清水尋也。お前こんな演技できたんかい! という感想を、誉め言葉としてここに記したい。気付いた? 『ちはやふる-結び-』の須藤先輩だよ。この狂演なくして本作は完成しなかった。

もちろん、いじめっこグループも総じて良い演技をしてた。「ボウガンでお前の親父脅して、家に火ぃつけたのは俺だぁあああ」と叫びながら、その娘にも同じボウガン向けてくる全く同様の余地なしの男子生徒役も最高にダサい死に方するし。バイプレイヤーが優秀だからこそ主演陣が映えてる良き例。

すべては押切先生の原作が優れていたからこそなんだけどさ。思春期のスクールカーストにおいて悪意は容易に伝播すること、日常は一瞬で崩壊させることが出来るし、人間は一瞬で消せる。憧れだった人間は振り返れば小さな人間だし、雑魚のような3軍でも本気を出せば小さな世界くらい壊せること。その当たり前がしっかりと3次元化されてた。

 

誇張無しに再現度105%

流石に、あまりにも残酷なセリフは無くなってたけど、原作と違うのはそれだけかと。過激な暴力・人間が狂う瞬間のあのピリつく空気は完璧に原作準拠だった。

俺、押切先生の話は勿論だけど絵も好きだからさ。正直、実写化されても全然観る気になれなかった。「いやいや、あの絵があってこそストーリーが映えるんでしょ」なんてほざいてた。燃やしたい。たぶん俺が『ミスミソウ』という作品を知らないで観ても、「なんか、押切蓮介の作品っぽいなぁ」と感じる忠実さで、心の内面を描いてる。

ちなみに、”再現度105%”としたのは、映画に改変があったからだ。賛否両論なのかもしれないけど、俺は非常に良いアレンジだったと思う。美作昴もビックリのパーフェクトトレース+α

 

超意外な生存エンド

大概の作品だったら、絶対に「そりゃ悪手じゃろ」と言われる、死んだキャラの生存エンド。それを見事にまとめあげ、”救いのある『ミスミソウ』”を完成させていた。監督に拍手。

どんな人なんだろ? と思って調べたら内藤瑛亮監督というらしい。俺はこの人の他作品、観たことないんだけどね、本作に至っては素晴らしいと思った(押切先生ファン?とまで思えた)。いつか同監督の作品に出合ったら本気出して観てみよ。とにかく、俺はこの映画の終わりかた超好き

 

物語の真の終わりが描かれた

そもそもこの映画自体が、連載終了後の完全版をもとに作られている。読んだ人は分かってる事だから普通にネタバレするけど、この完全版には前日譚とエピローグが追加されている。

映画版はこれのエピローグ部分を改変したということになる(というか別のシーンに差し変わっただけで、おじいちゃんと春花の会話はあったのかもしれない。いや、あったんだよ。俺たちの心の中でな)。完全版と言うだけあって、これを描くことで一気に物語に深みが出たんだよね…おじぃちゃん…。

春花が妙子に言った最後の言葉「胸を張って生きて」から、映画のラストの爽快感&エモさが生まれるなんて、誰が想像できただろうか。この技量は敏腕監督と言わざるを得ない。『ミスミソウ』の新しい完全版を魅せてくれ、本当にありがとうございました。観終わった後の感じで言えば、完全に原作を超えてると思う

まとめ

漫画の実写化は基本的に失敗するのが定例になってしまったことは悲しいが、この『ミスミソウ』に関しては大成功。

原作ファンこそ観て欲しい作品なので、チェックして欲しい。

ホラー中毒が選ぶ青春を感じるホラー映画【おすすめ5選/小心者向け】

ほぼ毎日ホラー映画を観ている俺はあることに気付いた。あれ、ホラー映画って相当ジャンル細分化できるんじゃね? と。中でも特に俺の琴線に触れたのは”青春”を感じるホラーだ。相反する二つが共鳴した時、えも言えぬエモさが生まれる。

”青春”を感じるホラーとは?

一口にホラーと言っても色々ある。サイコホラー・スリラー・サスペンスホラー等が一番分かりやすい区分け。ジャンルだけで何でこんなに多いのか、”恐怖”の種類がまず多いからだ。このジャンルによる分け方も分かり易くて良いのだが、ホラーを観慣れてない人にとってはホラーはホラーだろう。でも、俺はまず襲ってくるクリーチャーの種類でまず分けられると思っている。幽霊・ゾンビ・サメ・宇宙人、etc…。

個人的に、かの名作『ジョーズ』はサメ映画であってホラー映画ではない。サメが出て来る作品はサメ映画ということにしよう。何故か。物理特化すぎて陰鬱とした恐怖が無いからだ。『13日の金曜日』『悪魔のいけにえ』も俺の中ではホラーではない。そもそも生きてる人間だし。同様の理由で『エイリアン』『ダークスカイズ』といった宇宙人襲来系も除外対象にする。宇宙人が出てきたらSF特化すぎるからだ

つまり、人外(宇宙人以外)が方途を尽くし何故かビビらせながら襲ってくるのがホラーだ。異議もあるだろうが、今回はこの考え方を念頭に、さらに細分化して”青春ホラー”というジャンルを俺が作ったということになる。というより、ここで間引かないと星の数ほどある作品の中から選ぶことになる。あまり前置きばかりが長くなってもピンとこないと思うので、ここからは厳選した”青春ホラー”を紹介したい。

 

 

学校の怪談

あらすじ

夏休みを翌日に控えた、一学期終業式の日の夕方。小学2年生の美夏は、忘れた絵の具箱を取りに学校に戻っていた。するとそこで美夏は、サッカーボールが自分を導くように旧校舎へと転がっていく不思議な光景を目撃する。旧校舎は取り壊しが決まって立ち入り禁止になっていたが、お化けが出ると子供たちの間で噂になっていた。しかし、美夏はボールにつられて中へと入ってしまい、そしてトイレの中で何者かに襲われてしまう。

美夏を心配した、5年生で姉の亜樹は、一人学校を訪れ、何者かに吸い寄せられるように旧校舎へと入っていく。そこにいたのは、イタズラしようと忍び込んでいた同級生の研輔と将太、4年生で双子の兄の均、そして6年生の香織だった。転校してきたばかりで、同級生となじめていなかった亜樹は、研輔達と衝突し、単独で妹を探しにいく。

しかしやがて、5人は自分たちが旧校舎から出られなくなっていることに気づく。そして5人の前に、ただの噂だったはずのお化けが現れた。Wikipediaより引用

「あ~コレね、あったあった!」と言っている顔が浮かびます。みんなのトラウマ製造映画であり、愛すべき青春。青春を感じるホラーとは何ぞや? という疑問に答えるのに、これより適した作品があるだろうか。いや、ない(反語)。学校を舞台にしたホラーは、総じて青春時代を想起させるけども、20代後半~30代にかけての年代に至ってはコレが一番リアルに感じるハズ

 

少年時代の甘酸っぱい恋心

黒髪清純美少女だったころの岡本綾。そして『学校の怪談』(シリーズ1作目)における神キャスティング・THE ミステリアスな女の子。旧校舎で出会いを果たすというボーイ・ミーツ・ガールを演じてくれた。隠れながらそっと手を握ってくる高学年のお姉さんの姿に全少年は精通不可避。ギンガムチェックのノースリーブブラウスがここまで似合っていたら、中村獅童の心が揺らぐ気持ちも超わかる。無論、作中でも淡い恋心を刺激するだけ刺激してラストのクライマックスを盛り上げてくれた。コレコレ、これなんですよ! 良質なホラーは怖がらせながらもしっかりと恋愛要素を盛り込んでくれる。その純度が高ければ高いほど青春メーターはグッと上がるってこと。

 

シリーズ全作が良作

『学校の怪談』シリーズは全4作。無論、同シリーズは他の作品も秀作だ。なんと言っても、てれび戦士だった前田亜季が出演している(しかも2・3ともに)。1995年の初作から比べると、如実にバブル時代の経済成長が反映された舞台設定になっており、学校の設備や時代背景も現代に近づいてくる。このリアルタイムさが良かった。学校・怪談・黒髪の美少女×リアル感=青春ホラーを体現していた本シリーズの1作目・2作目・3作目は、20年の時を経た今でも推せる。

4は無かった、良いね?
マジもんのホラー好きは要チェック!

学校の怪談4

 

 

怪怪怪怪物!

あらすじ

いじめられっ子のリン・シューウェイは、いじめっ子3人とともに、教師から独居老人の手伝いをする奉仕活動を命じられ、そこで2匹のモンスターに遭遇する。彼らは小さい方のモンスターを捕まえて、独自の「調査」と「実験」を始めるが、やがてモンスターは彼らの手に負えなくなっていく。そして、それは恐怖の始まりだった……。本当に恐ろしく、怖いものとは一体…。amazonより引用

ごめん早速『学校の怪談』の前提を覆す形になったけど、この作品に関して言えば、恋愛要素は皆無

 

輝くだけが青春じゃない

いじめられてたシューウェイが、いじめっ子グループと一緒に”怪物”を捕まえるというストーリー。前述のあらすじにもある通り、見つけたのは2匹、ここがミソ。怪物の妹(言い方合ってるのか不明?)にあたる方を捕まえて、学校に匿って行う「調査」と「実験」は子供ならではの吐き気を催す残酷さ。でもシューウェイはこの怪物調査を通していく中で、いじめられっ子ではなく(表面上は)仲間として認められていく。怪物の相手をしている間は自分は虐められないけど、自分と同じように”被害者”として衰弱していく怪物を前に、ある決心をする。

 

1番の被害者は”怪物”

ぶっちゃけると、本作において”怪物”は被害者だ。確かに、人間を襲うし、肉片は有り得ない位はじき飛ばすし、バスの車内を窒息するくらい血潮で染める。でもそれは全部、攫われた妹のためなんだよ。そんな怪物(姉)の気持ちを知ってからは、怪物(妹)への拷問は加速。苦しむ声で怪物(姉)を誘い出して、ブッ殺っしょ? マジこれでイケんべ? みたいなノリで物語はクライマックスへ向かっていく超胸クソ展開。それがシューウェイの作戦と絡み合って爆発的な鈍色の輝きを生んだ。

クリーチャーが襲ってくるホラーとしては異例だが。学生のモラル低下・いじめ問題への警鐘を鳴らし、ホラーの新境地を切り開いた問題作と言える。俺、かな~りマイルドに説明してるけど、普通に気分悪くなる映画だと思う。ただ、観た後は謎の爽快感

”青春ホラー”おすすめ5選、堂々のランクインです。

怪怪怪怪物! [DVD]

 

 

イット・フォローズ

あらすじ

ジェイ(マイカ・モンロー)は、恋人のヒュー(ジェイク・ウィアリー(英語版))とデートを重ねた末、彼と肉体関係をもつ。

その直後、ヒューはジェイにクロロホルムを嗅がせる。目覚めたジェイは、車椅子に縛りつけられている。彼女は、性交によってヒューから呪いを移されたと知る。

その呪いに憑かれた者は、人間の姿形をした「それ」に追いかけられる。「それ」は、ゆっくりと歩き、呪いに憑かれていない者の目には見ることができない。「それ」は、呪いに憑かれた者をつかまえて殺すと、その前に呪いに憑かれていた者を追いかけるという。Wikipediaより引用

『イット・フォローズ』は有名だよね。何となく、サブスクでゴリ押しされてた感ある(俺も一時オススメに滅茶苦茶表示されてた)。性交によって移る恐怖っていう設定は単純に面白いと思ったし、若者の性事情が荒れに荒れてる昨今を風刺したストーリーはむしろ10代~20代こそ観るべき

 

単なる”性病”の具現化じゃない

単純に、性行為によって”何か”に追われる立場が変わるという設定は、普通に考えると性病の怖さを表現しているように思える。でも、よく考えたらちょっと違うよね。

性病を揶揄するなら、”移す”ことで一時的にでも助からない設定にする。あくまでもこれはホラーで、”何か”が襲ってくるという、純粋な恐怖を主軸にした作品だってことだ。自分が助かるために自暴自棄になって誰彼構わず行為に及ぶ描写があるが、コレだとむしろ、SEXが救いとして扱われてるんだよね。また、襲ってくる”何か”は人の姿をしている。これも単純に、触手でグジュグジュのマラとか、等身大の〇〇〇とか、性の権化みたいな化物だったら簡単にトラウマを植え付けることができたハズ。

 

愛がなきゃダメ、絶対!

この作品の肝はラスト10分にある。襲ってくる”何か”を仲間たちと協力して撃退し、自分に片思いしてくれてたチェリーボーイと両想いになるんだけどね(万歳!)。この時のセックスは恐怖を伝播させることもなく、薬で眠らされて起きたら縛られてるなんてこともない、幸せな行為としてのSEXなんだよ。

実際のところ、性行為によってトラウマを負う人も少なくない。この物語の主人公(女性)もまた、強姦被害者(しかもドメスティック?)であるかの描写もある。だからこそ、ラストのCherry boy SEXが活きてくる

何が言いたいかというと。この映画は最初に感じた通り、「若者の性事情」への揶揄であることに変わりない。だけど、一時の救いのためだけの性行為に何も意味はなく、愛がなきゃダメですよ! と、 「若者よ。その行為、愛・ありますか?」 と、一歩踏み込んで揶揄ってきた映画だと思うんだよね。これを青春ホラーと言わず何と言う! 性春ホラー

イット・フォローズ(吹替版)

 

 

ゾンビーワールドへようこそ

あらすじ

高校生でボーイスカウトのベン、カーター、オギーはクラブで女の子と遊びたくて仕方がない。

ある日、キャンプを抜け出してパーティー会場へ行く途中、なんとゾンビ化した住人たちが襲ってきた!間一髪のところを美人ウエイトレスに助けられた3人は、ボーイスカウトで 身につけた様々なワザを駆使して、一致団結しようとするのだが…。NBC UEJより引用

実は俺、あんまりゾンビ映画って好きじゃないんだよね。ここまでホラー紹介しといてなんだよって話だけど、俺は血が苦手なんだ。ただそんな俺でもこの『ゾンビ―ワールドへようこそ』は大好き。下手したらゾンビモノでは一番かもしれない

 

笑いあり、涙あり、青春がここにある

高校生にもなってボーイスカウト? まずここがフックになる本作。ボーイスカウトなんて続けてたらモテねぇよ!女とヤレねぇよ!というリビドーが溢れた結果、友情が崩壊する。ここからが祭りの始まりだ。

たぶんジャンル的にはゾンビを題材とした青春映画になるんだろうね。ゾンビ騒動を通して、友情の大切さ、愛する人の為に尽力することの正義を描く。「ゾンビ」ってタイトルにあるだけで、観る気が失せる人もいるかもしれないけど、この映画は誰にでもお勧めできる(下ネタ苦手な清純黒髪女子は除く)。もちろんハラハラ要素もあるし、グロめのゾンビも本気で襲ってくるので、軽めのホラーとして皆で楽しめるだろう。てか超笑える

 

ゾンビはいつだって本気

「超笑える」と言った手前、若干言い辛いんだけど。ゾンビ映画としては超王道設定で、超しっかりしたゾンビが襲ってくる。何だろうね、メイクが良かったのかな。ただ、ここに手抜きが無いからこそ、俺は今ホラー映画のジャンルとしてコレを紹介したいと思ったし、ホラー要素がしっかりしていないと、ぶっちゃけ魅力が半減する。そんなバランス感覚が秀逸な作品と言える。

バストの大きな婦警ゾンビが襲ってきた時に、その豊満な中身がこぼれ、見とれる少年。早く逃げないとヤバい、そんなデッド・オア・ダイな状況でも巨乳ゾンビの胸を揉む。これを観た時に俺は「なんて…青春なんだ…」と感じたんだドン!

少年の心をいつまでも忘れたくない。
そんな風に思わせてくれる青春ホラー。

ゾンビーワールドへようこそ
※プライム会員は吹替版無料で観れるよ

 

 

IT/”それ”が見えたら、終わり。

あらすじ

静かな田舎町で児童失踪事件が相次いで起きていた。

内気な少年ビルの弟が、ある大雨の日に外出し、おびただしい血痕を残して姿を消した。自分を責め、悲しみにくれるビルの前に現れた「それ」を目撃して以来、ビルは「それ」の恐怖にとり憑かれてしまう。

不良少年たちからイジメの標的にされている子どもたちも、自分の部屋、学校、町の中など何かに恐怖を感じるたびに「それ」に遭遇していた。

「それ」の秘密を共有することとなったビルと仲間たちは、勇気を振り絞り、「それ」と立ち向かうことを決意するが……。映画.comより引用

魂沸き心弾むスティーブン・キングの代表作。しかも指揮を執るのは『MAMA』のアンディ・ムスキエティ監督。この時点で面白くないワケが無い。

 

ホラーとして超一級

もうホラー要素に関しては文句ひとつ無い気持ちよさ。単純にビビるシーン多すぎだし、ペニーワイズの人を煽る怖がらせ方も常軌を逸してて最高。巨大化するし、空飛ぶし、血がプッシャーする。住処的に水場での驚かしが多かったりと、ちょっと和製ホラーの怖がらせ方してくるところが日本で大ブレイクした一因かもしれない(ちょっと子供向けの怖がらせ方だけど)。逆にグロテスクな映像が観たい洋ホラー狂にとっては中途半端な感じなのかな? 知らんけど。コレが面白くないって人はスティーブン・キングの描いた本質を理解できてないと思う

 

ホラー×ジュブナイル冒険活劇

思春期の男子特有の下ネタやFワードはありつつも、それを感じさせない爽やかさ。大人たちに頼れない状況の中(というか、登場する大人が総じて病んでる)少年・少女だけで悪に立ち向かう様子は、『スタンド・バイ・ミー』とか『僕らの七日間戦争』の系譜を感じる。小さな街で、スクールカースト底辺が集まったルーザーズクラブの面々が成長し、友情を深め、恐怖に打ち勝つという図式は至高

それに忘れてはならない恋愛要素もしっかりと盛り込んでいるところが素晴らしい。そう、『学校の怪談』でも同じことを書いた気がするが、良質なホラーは怖がらせながらもしっかりと恋愛要素を盛り込んでくれる。紅一点のベバリーが設定年齢的にはちょっと大人っぽくて、それが淡く輝かしい三角関係を生んでドラマティックが止まらない。子供時代、『学校の怪談』ではなく本作に出会っていたら、きっと岡本綾ではなくベバリーに恋をしていた(原作の乱交シーン無くなってて良かった)。

[少年・少女の葛藤]→[悪との対立]→[子供から大人へ] という黄金図式を描いた本作は青春ホラー筆頭。迷ったらコレ

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。

 

 

まとめ

我ながら独善的な5作品セレクトになった感が否めないが、参考程度に見て頂けたのならありがたい。ホラーってさ、色んなアプローチの作品があるから。本当はジャンル分けすることすら難しい。あくまで”青春を感じる”ホラーを選んだという事で(保身)。

あと、タイトルに【小心者向け】と入れてる通り、普段ホラー観ない人でもこれらの作品は観れると思う。というのも、青春要素が増えることによって理不尽な恐怖は緩和されてる。総じてエモく、ホラー入門としても優秀な作品になっているので、興味ある人は視聴をお勧めする。ただし、『怪怪怪怪物!』以外な

良いホラー映画ライフを。

シャマランの系譜を継いだ『アス』は愛すべき変態ホラー映画

鬼才ジョーダン・ピール監督が2019年に発表した『アス』。そして映画ファンなら誰しもが注目した本作。観た結果を簡潔に述べると、同監督の『ゲット・アウト』を超えた的確さで人的恐怖を突いてくる秀作だった。

あらすじ

1986年の夏、アデレード・ウィルソンは両親とともにサンタクルーズにある行楽地を訪れる。ビーチに建てられたミラーハウスに迷い込んだアデレードは、そこで自分にそっくりな少女と出会う。ミラーハウスから戻った彼女はトラウマにより失語症となる。

現在、大人に成長したアデレードは失語症を克服し、夫と二人の子を持つ母になっている。ウィルソン一家はサンタクルーズにあるビーチハウスを訪れる。反対するアデレードを説得し、一家はビーチへ出かける。彼らはそこで友人のタイラー一家と落ち合う。長男ジェイソンはビーチで、腕から血を流しながら立っている男を見る。Wikipediaより引用

斜め後ろから迫るヌメっとした恐さ

アカデミー賞脚本賞獲った『ゲット・アウト』を観た時も思ったけどさ、ジョーダン・ピール監督はたぶん天才。この人の作品は面白い。何が面白いかって、完全に意識の外から金属バットで脳ミソ揺らしてくるところかな。ぬらりひょんでも防げない

中盤で物語が一気に”転”じる。導入部分は「おやおや、ホラーっぽいことやってくれるじゃない!」ってな感じで、ささやかな物理ダメージを負わせてくるんだけど。中盤からは全く別のダメージで恐怖にアプローチしてくる。というより、攻撃されたことに恐怖は感じても嫌悪感は感じないと言う方が近いかもしれない。バットで殴られたら「バット痛い!やめてよぉ!」ってなるじゃん? でもコンニャク巻き付けたハリセンでぶん殴られたら「??????…え?????え?怖…」てなるじゃん。それ(は?)

 

 

物語が進むほど疑問が増えていく

どんなサスペンスでも、観てると「あ~ハイハイ、こういう展開ね」ってある種の既視感を覚えるんだけど。この映画を観ている時、そんなこと思うことは無い。例えば、全く想像したことない事態が目の前で起こると人間は一瞬フリーズする。「あ…ふーん、へぇ~、ほぉーん」と頭の中が感嘆詞でいっぱいになった結果、処理落ちする。人間なんてそんなもんだ。俺も子供の頃、見知らぬババアの霊が笑いながら寝てる俺をのぞき込んできた時は「わり、俺死んだ」と冷静に何かに謝ったもんな

でも本作は、そんな謎の恐怖絨毯爆撃中でもしっかりとギャグを忘れてない。”Fuck Tha Police”という言葉が皮肉たっぷりにギャグとして用いられるが、このギャグの使いどころはここしかなかったと断言できる。というか、非常に不謹慎で血みどろなシーンでの現代的ギャグなので、笑えるのは狂人か映画玄人だがまさに「恐怖と笑いは表裏一体」これ誰の言葉だと思う? まぁ俺の言葉なんだけど。ちなみにこの監督、元コメディアンらしいんだよね。こういうところに作り手の人間的魅力って出るよな。伏字多い文章書く奴は俺の中で人間的魅力マイナス5ポイント。

 

 

最恐のアハ体験

本作に敬意を込めて、ネタバレが売りの俺だが今回はネタバレ無しでいこうと思う。だから、ここで語るのはこの作品の本質だ。

そもそもタイトル名の『Us』ってさ、”US”つまりアメリカ様そのものを現わしているって説も映画ファンの間では囁かれている。ここまで言えば何となく予想できると思うが、この映画の裏テーマは「持つ者と持たざる者」だ(と、俺は感じた)。

『ゲット・アウト』でも現代社会の闇を描いたってこともあるが、この監督の作品はどうしても”そういうことを暗示してるんだろうな”って目線で観てしまった(たぶん俺みたいに偏屈な考えを持たないで観たらもっと面白いぞ)。ある種ドッペンルゲンガーという化物を錯視させてくれたワケだけど、これは、一つ何かが違っていたら自分自身も貧困のドン底に居たかもしれないんですよ…ということを暗示している。反面、チャンスは絶対にあるという爆発的な閃きも与えてくれるから厄介。相反する絶望と希望(一番絶望)を同時に描くことで、自由の国アメリカを全力で皮肉った。これはそんな作品とも言える。



まとめ

最期までストーリーを観ると、全ての点が一本の線になって、ぐにゃんぐにゃん曲がりながら地平線の彼方に消えていく。ぶっとんだ解答の衝撃は、どこか『シックス・センス』のラストを想起させる。

シャマラン監督の系譜を継ぐ、間違いなく名作。

Netflixで『GREAT PRETENDER』観て将来の夢がコンフィデンスマンになった

”詐欺”を題材とした作品って初めてかも。初めて食べたジャンルの料理って、美味しいのかどうか、比較対象が無いと分からないじゃん。でも美味しい料理は問答無用で美味しい。この『Great Pretender』もそれ。

あらすじ

自称“日本一の詐欺師”こと枝村真人(エダマメ)は、年寄りや旅行客相手に詐欺を働いていた。

そんなある日、標的に選んだ外国人バックパッカーはまさかの同業者だった!

彼の名はローラン・ティエリー。エダマメを気に入ったローランは、ロサンゼルス・ハリウッドで“ある勝負”を提案する。公式サイト 第一話

7月からの+Ultraでの放送に先駆け、Netflixでの1~5話先行配信。ずっと気になってたから昼間っからソッコー観た。結果としては大正解な判断だったと言わざるを得ない。制作は『進撃の巨人』『鬼灯の冷徹』『魔法使いの嫁』『恋は雨上がりのように』のWIT STUDIO。ここ主導の作品はクオリティ高すぎて、本当に観ているだけで楽しい

 

 

騙しのレベルが規格外

常識に囚われない規模で考えられた詐欺の手口は、観ていても全く予測不可能。でも理解した時に「なるほどそういう事か!」ってなるのが気持ち良い。最初からここまで考えてたんだとしたらマジすごいなルパンかよ…と思ってたら、脚本家が古沢良太! 『リーガルハイ』『コンフィデンスマンJP』の立役者が話を考えてるならこのエンタメ具合も秒で納得

冒頭一話で、蛇口に取り付ける浄水器で詐欺を画策してたとは思えない額で指数関数的に取引内容がデカくなっていく様子は、全部観た後で思い出すと鼻で笑えるくらい子悪党。世界はもっと広くて、中でも自由と資本主義のアメリカ様はやっぱり偉大だなって思えてくる

 

 

人生という舞台の一流役者

俺はこのアニメを観て改めて、人生で賢く生きるには演技力が必要なんだなって実感した。生きていく上で、人と接する上で一番大事なことと言っても良い。この作品の登場人物はそれのプロフェッショナルで、最高に痛快なので、生きるのに困っている人は観て損は無い

作中には詐欺師の他に、マフィアも出て来るんだけどね。ロス市警が出てきたと思ったらFBIも出てきて最高にハイ。この鼠算式に登場人物が絡み合っていくのが良いんだよな~。ちなみにマフィア映画らしい格好良い銃撃戦もあれば、息子を大事にする屈強なマフィアの姿もしっかりと描かれるから、洋画好きは結構この時点でハマる。

あと主人公のエダマメが本当に良い奴なんだよ(いや詐欺師なんだけど)。母親を大事にする奴に悪い奴はいない作中に登場する詐欺師が敏腕すぎて、たぶん実力的には下から数えた方が早いんだけど、主人公としての器がしっかりと確立されてるのが超好印象。と言いつつも、俺の推しはもちろんシンシアさんだ。観れば分かる。

 

 

まとめ

何故こんなにも+Ultraは名作をやってくれるのか。何か大きな力が働いているのではとすら思えて来る。てか、何で俺こんなに絵が好きなんだろう…と思っていま調べてたんだけどさ、わわわわわわわわわわわわわわわわわわわわ!キャラデザが! 貞本義行 様やないけ!マジか。ぜんぜん意識しないで見てた。いや、むしろ何で俺気付かなかった? 馬鹿か? 知ってから観たら絶対にそうなのに。「このキャラの感じ、懐かしいなぁ~」とか独り言ほざいてた自分の目ん玉に液晶を擦り付けてやりたい。

6話以降も絶対視聴が決定しました。

ロサンゼルスに乾杯。