映画 『トレインスポッティング』は薬物肯定作品じゃない、巧みな薬物否定作品だ。 2020年6月12日 miketa コメントする 俺が往年の名作である『トレインスポッティング』を初めて観たのは、実はかなり遅い。編集の仕事で本作に触れた時だから、つい1年~2年前のことだ。でも、観るタイミングは関係なかった。酒×薬×女はいつの時代も男を虜にする。 【あらすじ】ドラッグ中毒のマーク(ユアン・マクレガー)と悪友たちは常にハイ状態か、あるいはドラッグを手に入れるため盗みに精を出しているというていたらく。ある日、マークはこのままではいけないと更生するためにロンドンに行き職に就く。ところが、彼らの仲間が会社に押し掛けたことが原因で、マークはクビになってしまう。トレインスポッティング(字幕版) ユアン・マクレガー出世作 本作を語る上で、これは外せない要素だよね。特に俺みたいなホラー好きにとっては、最近『ドクター・スリープ』で名演を果たした彼の若かりし雄姿は何回観ても同じ人物とは思えない(両作どっちを先に観ても)。いわゆる、ドラッグ映画とでも言うのだろうか。思いっきり犯罪行為を行いながら、若さにかまけて大暴走するストーリー。令和の時代に観てもあまりピンと来ない内容かもしれないが、たぶん当時の(今でも)チョイ悪な若者の娯楽と言えばドラッグだったんだろうなぁ…この映画を観れば感じ取ることができる。もちろん、これはユアン・マクレガーのぶっ飛んだ名演技あってこそ。 カルト的な人気は時代を経ても褪せない 当時、第一線にいた多くのクリエイターが影響を受けたのも頷ける映像と音楽の間違いなさ。特に映像演出は90年代あまり他の作品ではやってなかったであろう新しさを感じる。音楽に関しても、1996年に「Temptation」聴いたら誰でもニューオーダー好きになるよって感じ(もっとも、UKロックに明るい人達はこの映画放映前から聴いていただろうが)。これまで本作をもとに多くのパロディも作られたし、俺が編集やってた時はよくクリエイターの先輩方にも勧められた(というより、観てないことはあり得ないとされていたが…今ならその気持ちも分かる)。それだけ、当時はほぼ全ての人が影響を受けたっていうことだと思う。ちなみに監督は『スラムドッグ$ミリオネア』のダニー・ボイル監督。まだまだ現役の名監督(生ける最前線)だ。 身を滅ぼす象徴であり救いを与えるドラッグ まず明確に宣言しときたいんだけど、俺はドラッグ(あとギャンブル)はやらないと決めてる。よく言動のラリ具合から勘違いされがちだが。やったら最後、俺みたいな意志の弱い人間は完全に依存してしまうと自分で分かるからだ(たぶん超ヤる、何を置いてでも全財産溶かして朝から晩までキメる)。嗜好品は酒と煙草だけで十分(早死に待ったナシ!)。だから、その気持ちよさっていうのは想像でしかないんだけど。それを前提に話を進めるね。本作の中でレントンは、大衆である一般的な若者としてドラッグ(ヘロイン)に依存し、堕落した日々を送る少年。「手に入るドラッグはなんでもヤった、ビタミンCがドラッグだったらヤってた」という台詞の通り、作中で描かれるのも最高にキマッた日々だ(曰く、モルヒネ、コデイン、テマギン、フェノバルビタール、アモバルビタール、プロポキシフェン、メタドン、ペチジン、、デキストロモラマイド、クロルメチアゾールをキメたらしい。やべぇ、モルヒネしか知らない)。そんな中で、平凡な日々からの脱却ツールとしていともたやすく接種されるドラッグ。でも時代柄、仕方ないと思うんだよね。日常に刺激を与えて、最高に気持ち良い。そんなのやるしかないだろう。特に10代~20代の多感な時期は手を出したくなる気持ちも分かる。ただ、この映画の中では「こんなの良くない」と思っているレントンの心理が巧みに表現されている。ここが良い。破滅的な生活の中で、”普通”に生きることを揶揄してきた若者が”普通”の人生を送ることを肯定していく。そんなイギリス独特の自虐ネタのオンパレードを形にした名作だと思う。芸能人も見習え。 【まとめ】1996年から20年の時を経て、2017年に続編となる『T2 トレインスポッティング』が公開されたけど(まだ観れてない)。噂では『T3』なる第3作目も制作が進んでるとか? 「ベグビーが90分間大暴れする映画」らしいので、きっとファンを楽しませてくれると信じている。最後に。ドラッグはダメ、絶対。