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『キングダム』の武将はみんな正しく意識高いから中間管理職は要チェキ

はじめに言っとくがある。『キングダム』は決して戦闘シーンがFate並にスゴい訳ではない。だが俺を含め多くの人を魅了する本作のドコが良いのか。それは登場人物の沸騰した感情が俺たちの心に訴えてくる点だ。この記事ではその熱量を、TVアニメ放送時点までを主軸に語りたい。

俺的作中ベストバウトTOP3に入るシーズン2のVS輪虎エピソードは観ただろうか? 漫画で読んだ人も、アニメで観るとまた泣けるから非常にオススメ。「何でこんなに泣けるんだろう…俺、病んでるのかな…」と自分の涙腺ダムの欠陥工事具合を心配したんだけどね。天下の大将軍への道を歩み始めた信が本当の意味ではじめて相対した”将軍”が輪虎であり、そしてその輪虎自身が非常に意識高い系の武将だったからなんだと気付いた。意識が高い人の言葉は、意識低いと自覚している人間に猛烈に響く瞬間がある。それ。

「本当に天に寵愛される武将は一握り」

「え…やだ…この人働きすぎて危ない一線超えちゃった…?」と感じてしまうのも無理はない。”戦いの天才が戦いの大天才に拾われた”と自分で標榜する通り、常に意識高い輪虎パイセン。廉頗四天王として秦六将・趙三大天と激戦を潜り抜けてきた偉大なる業界のパイセンなんだ。俺たちのような下々とは見ている景色が違う。「片手が使えない戦いなんて幾らでも経験してきたし、何より今日は、この後約束があるんでね。」戦いながら言う台詞にも経験からくる自信と意識の高さが漂ってる。まさに飲み会の日の意識高い大手広告代理店。

だがそんなパイセンも、業界若手注目株の信について思うところがあった。「武の力はともかく、あの歳でこれほど人を惹きつける力は自分にはなかった…」流石である。過去の自分をひけらかすのではなく、過去の自分と比較した上で、明らかな格下も称賛できる。実力者とはかくあるべき姿だと言えるだろう。

また、戦いの最中に放った台詞からも学ぶところがある。「今、背負っているモノの重大さが分かっているかい? 君が倒れれば、この軍は総崩れとなる」。ブラック企業で働いたことがある人はこの時の信と似たような経験ないだろうか。大概のブラックは人手不足の激務だが、それ以上に問題なのは経験不足な若手への重責。俺はこのセリフを聞いた時、深夜のオフィスで独り居残り、天井のシミを数える自分自身の姿を思い出して寒気がした。

「致命的だよ」

太腿を刺される信。馬上での戦いで脚の負傷は即死を意味する。追い打ちをかけるように言葉責めで焦らせてくる輪虎パイセン。やはり、この人もブラック企業に染まってしまった意地の悪いブラック社会人なのか。すぐさま馬から飛び降り自分のフィールドである地上戦にもつれ込む。その姿勢に対し輪虎が言い放つ「その判断は間違ってない。あのまま続けていたらすぐにでも勝負は終わっていたよ」。飴と鞭がお上手。厳しい言葉を投げつつも、若手に優しいところが憎めない上司の人心掌握術と言えるかもしれない。

「俺は関わった奴らの想いを背負って前に進むだけだ」

ここから信が覚醒する。一瞬の隙を突かれ致命的斬撃を食らった輪虎は膝を地面につき、項垂れてしまう(もう歳なんや…)。だが輪虎は笑みを浮かべながら立ち上がる。「殿が…待っている…こんな所で…負けられない…!!」この時点で原作読者ならびに視聴者は思っただろう。あ、コイツ本物や~…信念のある敵キャラや~。バイプレイヤーでこの魅力である。新卒で入った会社で出会ってたらついて行きたくなっちゃう。

「出会いは運命で、そこから先は自分次第さ」

散り際の台詞も完璧だ。相手のことを認めつつ、油断することなく精進しろよ、と退職前の捨て台詞として満点に近い激励。まさに「天に愛される武将は一握り」を体現するかのような、実力に慢心せず努力を続ける輪虎のブラック社員人生はこうして幕を下ろした。ありがとう輪虎。お前マジで最強の意識高い中間管理職だったぜ…。

ちなみに、この戦いの見所はこれだけではない。輪虎を打ち取った信の足元で「これで終わったと思っているのかぁ?めでたい奴らめぇ!ヒャハハハ!」って笑う輪虎兵、あなた世紀末から来ました?と言いたくなる下衆モブっぷりだが、言っていることは至極真っ当。温存されていた伏兵に蹂躙される後方、そこには女副長の羌瘣を置いてきた場所だった。

「私は、飛信隊の副長だ」

激戦後、死体の海で佇む身体を信に抱きかかえられ、意識朦朧の中での「離せ、馬鹿がうつる」っていう軽口すらも可愛い、健気。隊に加わって以来、はじめて隊のために戦う女武神が自分の居場所を自覚した瞬間。復讐に生きてきた人間が復讐後の居場所を守るために死地に赴く姿に俺の涙腺ダムならびに内なる母性もリミットブレイクした。まさにブラック企業の重責に負けずに目の前の仕事をこなす女性社員。可愛い、健気。味噌汁作って欲しい。

「馬鹿か!こんなになるまで無理しやがって!」

いや、お前も中々に無理してただろ。完全に自分のことは棚上げで部下を心配する信。何でそんなに心から心配した台詞吐けるの? 例えるなら校了した後のボロボロの状態で取引先と営業飲みに行くようなものだろうがよ。しかも信はこの後、「最後にまだ…行くところがある」と総大将が戦いを繰り広げる戦場に向かう。バッキャロー! お前さてはラーメンを汁まで飲み干すタイプだな? 塩分過多だ!過剰労働で死ぬつもりか?いや…こんな時期が俺にもあったな…何でもガムシャラに頑張ってよ…若いって良いねぇ。そして信はボロボロの身体を引っ張りながら魑魅魍魎が蠢く飲み会へ向かうのだった…。

 

というわけで、『キングダム』の熱さと武将たちの意識の高さは再認識できたと思う。ちなみにこの後のVS廉頗戦で倒した輪虎に背中押されながら大将軍に立ち向かう信も最高に熱いし、原作ファンが知っている通り合従軍編からの趙国侵攻編にもそれぞれ俺的ベストバウトがあるからアニメが追いついたら記事を書くかもしれない。

だから乱世は面白い。

とりあえず、信は俺と一緒に会社起こして欲しい。