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普遍的正義について『幼女戦記』でアプローチする俺は既に闇落ちしてる

「銃を取れ!奮起せよ!」

気が付けば、地上波で興奮しながらアニメを観ていた2017年からこんなに年月が経ってしまった。忘れている人ももう多いと思うので、今一度、”ラインの悪魔”ことターニャ・デグレチャフ少佐の戦績をおさらいしておこう。「あぁ、あの幼女そんなことヤッてたなぁ…」って微笑みが零れてくるなら、諸君らは誉れ高い幼女好きだ。胸を張れ。

  • 帝国史上初の魔道大隊設立&隊長就任
  • セオリーを無視し南方ダキア首都襲撃
  • 西方前線での斬首作戦で敵司令部壊滅

ここまでの戦果で年齢は確か10歳~11歳。悪魔や…。

劇場版でも存在Xに対する憤怒の感情は全く衰えを見せず、戦場で自重することなくジェノサイドするチート幼女。また、その御力に陰りは無く、乱高下する荒ぶった金髪ポニーテールを拝めるとは光栄至極にございます。

今回は劇場版らしく、敵側である義勇軍側にもメアリーという主人公クラスの登場人物が出てくる。正義感が強く、友軍のピンチへは我先にと駆けつけたがり、ターニャとは倫理観的に絶対に友達になれないタイプ。※メアリーが上官に無謀を諫められ、唇を噛んでいる時、ターニャは首都を爆撃しながら広範囲放送で自国の国家を斉唱している。どっちが主人公か一瞬迷うレベル。

人類のため、世界のため、皆で戦うべきです!

清々しいヒーロー精神溢れるメアリーの台詞。週刊少年ジャンプだったら間違いなくコッチが主人公だろう。軍事的合理性の塊が可憐な幼女の皮を被ってるターニャとの対比で対立構造が見事に分かりやすい。だが、ターニャも決して悪ではない。

ここで今回の本題に入ろう。正義とは何だ?

過去マイケル・サンデルは、あの有名な『これからの「正義」の話をしよう』で幸福・自由・美徳の3つの観点から正義についてアプローチをした。ならば俺は『幼女戦記』からアプローチしてみたということだ。いたって真面目だよ。

例えば本作でメアリーは復讐心にその身と心を燃やし、敵を討つことが全てであり正義。そのためだったら命令無視もするし幼女にだってグーパンする。コンプラ的には、まぁ…中身オッサンですし、許しましょう。対するターニャは、理性に基づく自由意志においてその場での最善を尽くしてきた。だから敵対する奴に娘がいても殺すし、その娘も向かってきたら殺す。所属する国・組織が悩筋で頼りないからこそ、個人技で秀でる幼女は生き残るために自分の意志こそが正義。神に救いを求めるなんて持ってのほか!

そもそも、戦争においては個人が生きたいと思う事すらも正義とする大衆意識が存在する。例え相手が自分を肉親の仇として狙ってきたとしても、自分の命を守って御国に貢献するためだったら向かってくる白羽の矢は容赦なく撃ち落とせの精神だ。平時においては、不公平に感じる考え方だが、それが戦争ってもんだ。つまり国や宗教が違えば、正義は変わってくる。これはルールにおいて規定される正義の概念が単一ではないことを証明している。

一旦身近な例を用いよう。俺が昔勤めていた会社は所謂ブラック企業で、会社のトップの意思決定が全ての家族経営ワンマンカンパニーだった。「私がルールだ」と声高々に言わんばかりの(というか、言ってた)振る舞いは、組織に所属していない人からしたら嫌悪感丸出しで、馬鹿げた姿に見えると思う。だが所属している人間にとっては、その社長の一挙手一投足が全てだった。だって雇用主なんだもん…クビになったら明日からどうするの? 結果、従順な兵隊の出来上がりである。フォースは暗黒面に染まり、斬魄刀を持てば虚が身体を乗っ取ろうと仮面を被せてくる。所属組織の正義という真っ黒い旗を刺され、犯され、心がガバッガバ状態。その会社でも何人かいたのだが、この状態が長く続くと、スタンフォード監獄実験よろしく、正義に組しない受刑者を虐める看守側になろうと躍起になってくる。こうなるともうお手上げ。ヤリマンダースベイダーと俺は呼んでいた。

無論、例にもれず俺もそのペラッペラの正義に従っていたワケだけど、心の中では「コイツ(社長)がおかしいと思う心だけは忘れないようにしよう…」といつも思ってた。コレですよ。コレが、一番大事。先にも述べたように、時代・組織・環境で簡単に変わるのがソーシャルな正義的概念。ただあくまでこれは正義的な概念であって、普遍的な正義ではない。常に変わりゆくものだからこそ、自分自身で常に「これが正しいことなのだろうか?」と疑う心にこそ普遍的な正義が宿っているんだと信じたい。人間は生まれた時は善き心を持っていたのだと。あのクソ経営者を今でも地獄の底に叩き落として、釜茹でされてる姿を眺めながら芥川龍之介の『蜘蛛の糸』を大声で朗読したいと思う俺の歪んだ心にも、きっと正義が宿っているのだと、信じたい(信じたい)。

以上。長くなったけど、アニメ一つでここまで考えられるってすごく道徳的な世の中じゃない? みんな絶対もっとアニメ観るべきだよ~。漫画も良いよ、大事なことは漫画から学ぶんだよ~。え、まだあの映画観てないの?おかしくない?それって変だよ~。マジ有り得ないんですけど~、ウケる~。

っていう、頭の中肥溜め人間が主張する”有り得ない”という仮初の正義っぽい圧力に染まってはならない。それはその境遇だけで正義っぽく見える何かだ。大事なのはどんな環境でも自己の中で、正義とは?正しいとは?おかしいとは?と思える心を失くさないことだ。

ちなみに本編は、歩兵大隊と機甲中隊・砲兵隊が加わって帝国初の大戦闘集団:サラマンダー戦闘団が編隊&ターニャ隊長就任されて終了。

~俺たちの戦いはまだ終わらない…!!~END。

幼女戦記 コミック 1-16巻セット

アニメ2期、待ってます。