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ずっと色物かと思ってた『出会って5秒でバトル』を読んで5分でハマる

完全に色物の作品タイトルゆえに甘く見られがちだが、本作は非常にアツい想いをぶつけ合う秀逸バトル作品だ。また、その戦闘も『ハンター×ハンター』並みに頭脳を使う展開の目白押し。異能バトルはかく在るべき。

<あらすじ>

成績優秀でゲームが趣味の16歳の高校生・白柳啓は普通の日常に退屈していた。そこへ突然現れた謎の包帯男の襲撃を受け、ゲーム感覚で撃退することに成功したが、その後現れたマジシャン風の女に殺されてしまう。 病院風の謎の施設で啓は目を覚まし、同様の境遇の者ばかりが集められた会場に例のマジシャン風の女、魅音が登場。それぞれに与えられた「能力」を使って戦うことを説明される。 一対一での戦いの1stプログラム、5人グループが一対一で戦う2ndプログラム、チーム戦の3rdプログラムを経て、舞台は監視者1名を含む12人の6グループが戦う4thプログラムへと移っていく。Wikipediaより引用

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それではお待ちかね。下記にて『出会って5秒でバトル』に関して独善的に語っていく。楽しく読んで、作品のことを好きになってくれると嬉しい。

デスゲーム開始

本作は2015年、ウェブサイト上にて連載を開始した(ゆくゆくはリメイク版が『裏サンデー』『マンガワン』へ)。2015年といえば、昨今のラノベ・ドラマ・映画などによって所謂”デスゲーム”作品というものが消費されつくした頃だ。『バトル・ロワイヤル』に始まったこの系譜に対する驚きは、生まれ続ける同系統作品によって日本人の間でも浸透・吸収され、この手の作品に対しての驚きというものが皆無に等しくなった

一般的な日本国民よりも少しばかり多くの漫画作品に触れてきた俺は、ちょっぴり食傷気味だったこともあり「はいはい、またデスゲームものね……」と、タイトルを見た時点で世間と同様の感想を抱いたのを記憶している。それから数年本作に触れずに生きてきたというワケだ。この時の俺の愚行を、つい先日、初詣で神に謝罪してきた

去る2020年11月、アニメ化が発表されたことからも伺えるが。俺がタイトルだけで食わず嫌いしている間に『出会って5秒でバトル』は異能バトル漫画として超王道を突っ走る人気作品まで成長を果たした。それもそのハズだ……面白れぇもん……。皆、決して名前だけでその本質を理解した気になってはダメだぞ。真実はいつも一つ。

 

 

超頭脳派バトル

それでは、何がそんなに面白いのかを語ろう。タイトルの通り、基本的にはバトル主体のストーリーであることに嘘偽りは無い。そして”出会って5秒でバトル”が始まるという点に関しても概ね齟齬は無い。人気の秘訣はバトル内容だ

上の画像の通り、主人公の能力は「相手があなたの能力だと思った能力」。異能バトル漫画なり小説なりを読みなれている人はこの能力を聞いた時にどう思うだろうか。俺的にはメチャクチャ弱い能力だと思ったね。だって、自分が自分の能力だと思った能力だったら脳内リミッターを外して必死に「強い能力にしよ~」なんて考えることが出来るけど、対戦相手主体で自分の能力が決められるなんて、絶対弱い能力にされるやん!  まぁ、条件と使いようによっては柔軟性がありそうな能力だとも思ったが……。本作はこの主人公の異質な能力を中心として波乱が巻き起こっていく。

 

この能力が極めて面白いんだよな。つまり、この能力はネタバレしてる相手じゃない場合に限って無限。会話・行動によって相手を誘導し、最適な能力を自分が持っていると相手に想像させるという心理的駆け引きが生まれる

例えば、上記画像は物語中盤の決定的な場面なんだけど。攻撃を全て無効化する”リーダーの能力”(※正確にはこれも間違った認識)を相手が知っていることを前提として、”リーダーの能力”のことを何気なく会話の中で刷り込ませることによって、決定的な場面で相手の想像範囲を意図的に制限する。もっと踏み込んだ解説をすると、実際にこのリーダーと呼称されている人物の能力は「相手と平和的に交渉を行える能力」で、この副産物として交渉中は攻撃が一切効かなくなるっていう能力なんだよね。つまり、相手の認識と想像の絞り込みによっては本来存在しない「攻撃を全て無効化する」能力を具現化できるということ。とんでもねぇ。

極論、「俺の能力名はインデペンデンスディだ!」と伝えれば、相手の想像力によっては宇宙人の大群を召喚することも可能(なのかもしれない。作中にそんなぶっ飛んだ展開は無い)

 

 

純粋に展開がアツい

もちろん人気の秘訣という点で言えば単純に展開がアツい。完全な能力バトルだけの作品でこんなに人気が爆発するワケもなく、純粋にストーリーが面白い。クールな主人公:アキラが無双していくだけではなく、苦戦の中で苦悩しながら葛藤し、成長していく人間ドラマがこの漫画には詰まっている。サブキャラ・モブキャラも例外ではなく(これが凄い)、一人ひとりが謎のデスゲームの中で確固たる信念を持っているからこその衝突、育まれる友情。果ては敵キャラに至るまでが信念をもっていることが巧みに描かれている。そこに異能という無限大のバトル要素が加わるワケだから、盛り上がらない訳がない

ちなみに、俺が欲しい能力は主人公アキラの父が持っている「相手に一つ使命を与える能力」だ。作中で詳細はまだ語られていないけど、これ普通に『コードギアス』のギアスだからな。

 

 

<まとめ>

というワケで、今回の記事は『出会って五秒でバトル』について語らせてもらった。俺の中で”アニメ化されて覇権とりそうな作品”トップランカーだし、純粋に漫画の出来が良すぎるから早めのチェックをオススメする。決して、タイトルに惑わされてはいけない、これは超王道少年漫画だ。ではまた。

『Levius-レビウス-』が新時代のSF作品であることに世界はまだ気づいてない

新時代SFという言葉がこれ以上なく相応しい作品『Levius-レビウス-』。機械義肢の拳で放つ冷たい右ストレートには燃えるような想いが宿っていた。

あらすじ

強き者。美しき者。その名は――レビウス。 新生暦19世紀――戦後の帝都では、人体と機械を融合させて戦う「機関拳闘」という格闘技が行われていた。 戦争で父親を失い、母親も意識が戻らない状態となった孤独な少年、レビウス=クロムウェルは、彼を引きとった伯父ザックのもとで、機関拳闘の若き闘士として頭角を現し始める。 そんなある日、競技の最高峰であるGrade-1に挑戦する機会が、レビウスに訪れる。同級1位のヒューゴとの特別試合に勝つことが条件だったが、そのヒューゴが前哨戦の相手、A.J.という謎の選手との戦いで…!! 人間の尊厳と、文明の未来が火花を散らす、頂上バトル、ここに始まる。Wikipediaより引用

 

作品概要

『ウルトラジャンプ』の読者以外にはまだまだ認知されていない作品(されるべき作品)だと思うので、作品自体の簡単な前知識を書かせてくれ。

まず作者は中田春彌先生。2019年、ファンタジーアニメとして熱狂的な支持を生んだ『Fairy gone』のキャラクター原案(妖精も)を手掛けた方だ。この時点でそのセンスの異質さを感じ取ってくれると思うが、その画力の高さは本作でこそ十二分に発揮されている

連載開始は実は2013年と早い。『ドロヘドロ』『海獣の子供』『人類は衰退しました』『フリージア』と癖の強い作品を多く扱っていた伝説の雑誌『月刊IKKI』(現在は休刊中)出身のバリバリSF畑。同誌が2014年に休刊してから『Levius/est』とタイトル変更しウルジャン移籍という経緯を持つ。

SF×格闘技というありそうで無かった(り、あったり)ジャンルを確立しており、2019年にはNetflixで全世界に向けアニメ化を果たした。余談だが、アニメ版と原作では大きく設定が異なっており、一言で表すとアニメ版は色々軽やかに仕上がっている。SF作品をこよなく愛する俺からすれば断然全作をオススメするが、アニメ版はアニメ版で非常に良いと断言しておこう(主に最終回のあの娘の笑顔)。

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拳に宿す想い

まず主人公:レビウスの戦う理由に触れておこう。その半生を端的に言えば、”戦争孤児として故郷を焼き討ちされ、瓦礫の雨の中、母親に抱きかかえられながら助かった”過去を持つ物静かな男の子。はい、王道。「あ~、あるある。こうやって復讐に駆られて強くなる、SFにありがちなダーク主人公パターンね~。」と連載当初に感じていた愚直な俺を、俺は焼き殺したい。違うんだ。レビウスが戦う理由は確かに植物状態の母親を資金的に救うためであり、過去の記憶に巣食う悪党たちに復讐することなんだけど。本作の主人公の魅力はさらに先を行く。

助かる見込みが無いんじゃないかと思えるような状態の母親の描写は読者の心にトラウマを植え付けるくらい壮絶(もっとトラウマ植え付ける描写が後に出てくるが……)。そんな母親のために、戦闘用ではなく医療用の義肢(母親の形見的な)を用いて戦う少年。中々に感情移入する設定だ。そしてお待ちかね! ようやく焼き討ちした組織の登場。全てを投げ捨てて復讐に走るかに思えたがこの読者の予想は大きく肩透かしを食らう。最初こそ飛び掛かり相手を殺さんとするレビウスだったが、復讐相手(無口の美少女:AJ)の瞳を見るやいなや「助けを求めている……?」と菩薩もびっくりの読心。あの子にも何か戦わなければいけない理由があるのでは……? と葛藤の末に敵陣突入。家族を人質に取られ操られているだけのAJの境遇を理解し、正義の心を持って復讐相手を救うことを決意する。そう、レビウスは誰よりも正義の心を持った優しい少年なんだよ

 

 

怒涛のデスマッチ展開

そして始まるレビウスvsAJの戦い。内容としては、まるで4部作1作目のボスが所見殺しの上レベル100カンストでも勝てないくらいの超インフレ展開。この序盤から一気にラスボス感がたまんねぇんだよ……。駆け抜けるように展開するリズム感は良作の基本。それでいてしっかりとストーリーに重さを持たせるところは流石としか言えない。

敵組織の親玉:Dr.クラウン(上記画像のピエロ)の悪逆非道さと糞ッタレ具合がいい感じに物語にスパイスを与えつつ、命すら顧みずリミッター越えた強さで圧倒してくるAJに対して、セコンドにつくザックス(レビウスの叔父)と、天才義肢エンジニアであるビルという頼もしすぎる仲間のフォローにより奮闘するレビウス陣営。この展開が死ぬほど熱い。いままでどこか噛み合っていなかった味方陣営が圧倒的悪を前にして全力で力を合わせるウルトラ正義展開。しかも俺が凄いなと思ったのは、ザックスとビルは自分ではリングに立っていないので、戦うのはレビウスに任せるしかないのに、これ以上なく死力(視力)を尽くして一緒に戦うという点だ。当ブログで何度も述べているが、バイプレーヤーが魅力的な作品は神作

戦いの過程~結末まで全く目が離せない展開で、人間ドラマが涙腺を刺激しまくってくるストーリー構成なので、SF作品はちょっと……ていう人でも是非読んで欲しい。

 

 

更なるステージへ

恐ろしいくらい濃密な激闘で、漫画でいうと単行本20冊くらい読んだんじゃねぇか? と思ったが、これ、実際には2巻(18話)までの出来事だから。もちろん彼らの物語は続いていくワケで。更なる強敵の登場。そう、いくつかグレードが存在する「機関拳闘」の中で、作中で行われていた戦いは”GradeⅡ”。AJに勝利し、世界に13人しか認められていないという”GradeⅠ”へ昇格を果たしたレビウスの前に登場する圧倒的強者感を漂わせる新キャラ(イケメン)。一人ひとりが国家軍事力に匹敵する(詳しくは上の画像参照)という逆リーマンショックが起きた気がするが……、そんなところに投げ込まれることになったレビウス。物語の続きに心躍らせる最高の展開で序盤のイントロダクションは終了! ここまで気持ちの良い「俺たちの戦いはこれからだ!」は過去あっただろうか……いや、ない。まったく、楽しませてくれるぜ。

まとめ

ということで、『Levius-レビウス-』の俺的紹介記事でした。ただこの記事で扱った内容ってのは新装版上下巻の内容だけしか紹介してないので、より本作の世界観を堪能したい人はぜひ連載中の単行本で(地上波放送中のアニメ版は全くの別物なので、いつ観ても◎)。このすぐ後に世界最強”GradeⅠ No.1”の男が出て着たり、アニメで貧乳強気少女として物語を彩ったナタリアも出てくるので、飽きることは無い。てかこの新装版は近年稀にみるSF漫画の良作として永久保存版だと思うね。俺は応援し続けます。ではまた。

見たことない人のために『バキ』を要約したからこれ読んで最強目指そうぜ

シリーズ累計で8,000万部を越える超大作『バキ』シリーズ。この作品には「最強」とは、そして「強さ」とは、という人類最大の問いに対する答えが詰まっている。

各シリーズ概要


第1部 グラップラー刃牙
1994年にOVA化、2001年にはテレビアニメ化されている。全42巻。 地下闘技場編 物語の導入部分にあたり、東京ドームの地下に存在する地下闘技場で極秘に行われる格闘試合を描く。普段は平凡な17歳の高校生だが、地下闘技場では無敗のチャンピオンとして君臨する主人公・範馬刃牙。彼に挑戦する鎬兄弟やマウント斗羽との試合が行われたほか、愚地独歩対範馬勇次郎戦なども描かれている。

第2部 バキ
『グラップラー刃牙』の続編。全31巻。第1部に比べ、「恋愛」や「性」の要素が濃厚である。2004年には「週刊少年チャンピオン バトル増刊 バトリズム」に読み切り『範馬勇次郎誕生』を掲載。『範馬刃牙』2巻に収録された。新装版13巻から17巻には、最凶死刑囚のその後を描いた描き下ろし短編『REVENGE TOKYO』が収録されている。

第3部 範馬刃牙
『バキ』の続編。全37巻。最終編である地上最強の親子喧嘩編で、刃牙と勇次郎の因縁に決着が付く。また、『週刊少年チャンピオン』にて『範馬刃牙』の連載を中断して描かれた『ピクル』が収録された外伝も発行されている。

第4部 刃牙道
『範馬刃牙』の続編。全22巻。『週刊少年チャンピオン』2014年16号から2018年19号まで連載された。2014年16号では一挙4話、102ページに渡って掲載し[3]、続く17号と18号も各号に2話掲載された[4][5]。前3作とは異なりストーリーの区切りはなく、一貫してクローン技術と降霊術で蘇った宮本武蔵と現代の格闘家たちとの闘いを描く。

第5部 バキ道
『刃牙道』の続編。『週刊少年チャンピオン』2018年45号から連載開始。Wikipediaより引用

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第一部『グラップラー刃牙』

前述した概要を読めば分かる通り、これは戦いのテレクラである(作者が呼称)。よく巷では”地上最強の親子喧嘩”というワードが浸透していて、この印象が強すぎるけど、そんなことはないいや、まぁそうなんだけど。主人公である範馬刃牙と父である範馬勇次郎が実際に戦ったのはシリーズ通して僅か2回。むしろこの親子以外の登場人物の戦闘が大部分を占めている。

とはいえ、シリーズ最初期の『グラップラー刃牙』では主人公であるバキの壮絶な半生が描かれ、大別すると全42巻の中で3つに分けられる

 

<地下闘技場編>

東京ドームの地下に日本古来から存在するコロッセオで、世間から極秘にされた戦いが日夜行われているという物語冒頭からいきなりトンデモ展開。まぁここまでは良い。漫画とはキャッチ―さが大事だ。この地下闘技場のチャンピオンとして君臨しているのが主人公のバキで、苦戦しながらも毎回勝利を手にしていく圧倒的強さが描かれる…かと思いきや、圧倒的暴力親父:範馬勇次郎の乱入。会場は鮮血で染まり、空手の父と呼ばれる愚地独歩(読者から圧倒的支持を集める超人気キャラ)も全身ズタボロ(というかそれどころじゃない)にされた。※上の画像参照

 

<幼年期編>

ここまで読んだときに読者は気づくと思う。「あ、これあれだ。ドラゴンボールだ……。どんだけ強くなっても新しいキャラが出てきて永遠に終わらない戦いが続くんだ」ってな。半分正解。だがこれは『バキ』。そんな二番煎じではここまで人気は出ない。ちなみに、俺はこの幼年期編と呼んで刃牙すごい好きになったんだよ、過去編を丁寧に描く作品は神作。要約するとこの幼年期編では、刃牙がどうやって地下闘技場チャンピオンになるまで強くなれたのか、そして父との最初の対決&母との別離という物語の源泉が描かれる。ここを読まずして刃牙ファンならず。

 

<最大トーナメント編>

世界中の達人たちを集めた史上最大の無差別級プライド選手権。空手を完成させた愚地克己、暴走族トップの柴千春、戦える達人:渋川剛気先生、烈海王、ジャック・ハンマーと今後レギュラー化するメンバーが続々と登場した。また上の「幼年期編」で戦った敵が成長して再登場するという点でも非常に胸アツな展開である。『ドラゴンボール』の天下一武道会でも思ったが、主人公そっちのけで行われるトーナメント戦というのは漫画という作品にとっては鬼門だ。組み合わせ次第でその回の人気が大きく浮き沈みする。だが全く飽きることなく読めた。そう、『刃牙』とはただの親子喧嘩作品ではない。漢たちの生き様を描いた作品なんだよ。だから主人公以外の戦いも面白い。全員が全員、”最強とは?”という想いを胸に技術(と筋肉)をぶつけ合う様は、男だろうが女だろうが関係なく濡れる。特に決勝戦の刃牙vsジャックハンマーの兄弟対決は必見。

第二部『バキ』

「最大トーナメント編」での大団円を超え、8年に及ぶ連載を一度終了させた『グラップラー刃牙』。しかし同年1999年復活『バキ』として復活を遂げた(しかも間に外伝を挟んでいるから実質ほぼ休み無し)。あれだけの大熱戦を繰り広げた以上、さらに上の戦いを創造することができるのだろうか……と俺は不安に思ったんだが、えぇ、全くの杞憂に終わりました

サンドバックに人間を詰めて送り返すのはこの作品だけ。

 

<最凶死刑囚編>

示し合わせたかのように脱獄してきた最強の死刑囚たちとの戦いが描かれた。この死刑囚たちがヤバい。電気椅子くらっても生きていたり、爪も引っかからないツルッツルの壁を50mくらい昇って刑務所脱獄したり、そんな極悪強靭な奴らとの”武器の使用以外すべてを認める”という何でも有りルールで行われる街を舞台にしたリアル逃走中(リアル戦闘中)。全編に渡って「敗北とは何か?」という問いを追求しつつ、主人公のバキに至っては「愛とは?」という哲学的ウィットに富んだ内容となった。炎すらも無効化するマ・ワ・シ・受けがいともたやすく行われる名勝負の数々(というか普通に炎を吹くな)もさることながら、戦闘狂たちの考える愛の形も必見の濃い~内容。

 

色を知る息子を見守る父親

戦いしか知らないバキに初めて芽生える恋心。「気づいたらもう好きになっていた」というピュアな想いに応えるように、惹かれ合っていく二つの心。そしてそれを超至近距離で見守る地上最強の父親(超絶隠密肉親ストーキング)。なんだろう……感動するシーンなのに、親父のおかげでフフッと笑いが零れてしまう。このシリアスな笑い、アレだ、どこか『カイジ』を思い出す。本人たちはいたって真面目なのに、何故か笑いが込み上げてくる。こんな筋肉ダルマたちすらも可愛く思えてくる……。これもまた『バキ』の魅力ということだろう。良き。

 

<中国大擂台賽編>

前編にて、死刑囚が使う毒を食らい満身創痍で痩せこけていくバキ(死刑囚は瞬殺した)。「毒を直すには毒だ。戦いだ」と謎理論により中国で行われる最強決定戦に招致されるという、頭ん中までタンパク質な天下一脳筋国際交流さすがの俺も若干引き気味だったが、ここで驚くべき展開が待っていた。そう、日米代表勢の一員として、憎き父親と刃牙のチーム戦という形での共闘だ。これは熱い。父親を殺すために強くなってきた息子にとってはこれ以上なく耐えられない展開……かと思いきや、ちょっと嬉しそうな愛憎親子。今思えばこの辺りから少し様子が変わっていた……詳しくは後述する。最終決戦の範馬勇次郎(究極の暴力)vs海皇(究極の武)の戦いは現代武術氏に残すべき名バトルなので必見。ちなみに刃牙の毒は相手の毒手を食らい中和されました(完治!)

 

<神の子激突編>

表世界の公式ボクシングで最強を誇ったモハメド・アライの子供が梢江(刃牙の彼女)に猛アプローチをかけ、刃牙と彼女を争って戦う展開。最強と最愛とは? という究極の戦いを魅せてくれるかに思えたが、蓋を開けてみれば刃牙の圧勝。ここで勘違いしてはいけないのは、彼は決して弱くはない。パンチ一発で全身のプロテクターぶっ壊す人類がいてたまるか。そう、刃牙が強すぎた。ぶっちゃけ可哀想なくらいに惨敗した彼の行いは一見無駄なように見えるが、この戦いがあったからこそ刃牙は自分が十分に強くなったことを確信し、父:範馬勇次郎への挑戦状を叩きつけるという神展開を引き出したそう、モハメド・アライJr.は犠牲になったのだ……。そしてまたここで一旦連載終了。

第三部『範馬刃牙』

伝説の第3部。色々と盛り沢山な内容になる『範馬刃牙』は、シリーズでも屈指の密度となっている。俺もこの記事を書きながら「あれ、この章だけで全然一記事いけたな……?」と思えるほどだ。そろそろ疲れてきたかと思うが、安心してくれ、あと半分くらいだ(たぶん)。ここから一気に戦いは加速するので、覚悟して読んでくれ。

 

<超絶監獄バトル編>

[実践シャドーボクシング編は割愛]

さらなる強者を求めて、大統領を拉致してアメリカ・アリゾナ州刑務所に潜り込む刃牙。目的はミスター・アンチェイン(繋がれない男)ことビスケット・オリバ。範馬勇次郎すらも認めるリアルハルクかと思えるような圧倒的筋肉ダルマ男の自由な生き様は刑務所職員すらも従える。単純な力という、人類の根源的な恐怖を形にした戦闘スタイルにはさすがの刃牙も苦戦し、追いつめられたけど、最終的にはノーガードのガチンコ殴り合いでアメリカ最強を沈めた。余談だが、『プリズン・ブレイク』に刃牙が出演したら10分くらいで完結することになるだろう

 

<野人戦争編>

はい、お待たせしました。原始人との戦いが始まります! 1億9千年前の冷凍化石から現代技術の粋と偶然によって目覚めたピクル。ティラノサウルスを捕食していたという規格外の化物が現代に蘇り、騒ぐ一般大衆。もちろん格闘家たちも例に漏れず興奮するが、それは一般人とは違い、コイツと戦いたいという欲求だった。我先にと群がる今まで登場した実力者たちを一蹴し(ピクルvs烈海王とピクルvs愚地克己は本当に超名バトル)、最終的には刃牙も戦いの舞台へ。結果:勝ちます。この時に刃牙の異常性が初めて提言され、圧倒的没入感を有する想像力が刃牙の強みということが読者に明かされる。幼少期から最強の父を倒すべく常に強者(動物も含む)との戦いを想像・実践してきた刃牙にとっては、原始人・恐竜との戦いのイメージも造作なく、逆にその戦闘法を模倣すれば相手には恐竜が具現化したように見える。そう、もはやスタンドや念能力の類。原始最強を倒した刃牙に、もはや地上に並ぶ者はおらず、いよいよ父親:範馬勇次郎との戦いに向かうのだった(ティラノサウルス倒す男より当たり前のように強い父親……)

 

実況スタイル

ここで一度『刃牙』シリーズにおける戦闘実況スタイルをに言及したい。こと戦闘において漫画界のパイオニアであり先駆者であると言える本作。連載を続けるにつれ、戦闘中に巻き起こる奇々怪々な技術ラリーの実況も進化を遂げた。結果、辿り着いたのが、未来の視点で語られる戦闘解説だ。上の画像は原始人:ピクルvs刃牙の戦いを観戦していた烈海王が2人の戦闘を語るシーン。まるでTV番組のインタビューを観ているかのようなコマ割りと見ている者に語り掛けるような丁寧な解説は、未来の視点で「思い返せば……」という立ち位置になっているからこそ。まさに『プロフェッショナル』スガシカオの歌声が聴こえる。

 

<地上最強の親子喧嘩編>

[強者達の戦い編は割愛]

本作は最初から一戦を魅せるために展開してきたと言っても過言ではない。いうなれば『はじめの一歩』の一歩vs宮田である(こちらは未だに実現していないが……)。いよいよ戦う父子の戦いは、もはや親子喧嘩という枠に収まらず、隠しきれない。世界的に公にされた親子喧嘩という異例の死合い、その末に唯一無二の親子愛の形を示した二人には世界中(の読者)が涙したのは言うまでもない。

 

範馬勇次郎について
ここで前知識として範馬勇次郎に触れておこう。生まれた時から意志を持っていたとされ、腹から取り上げようとする助産師に向かって「ミスの無いように気を付けろよ……」と(言わんばかりの眼力)痰を切ることから始まった彼の人生。

強者を求め紛争地域を渡り歩き、並ぶ者がいなくなるまでに成長した勇次郎はいつしか国家軍隊と同等以上とみなされることとなり、歴代アメリカの大統領は彼に聖書を抱えながら不戦宣誓を行うほど。こうして富・権力を手にし不自由なく生きていたかに見えたが、捕食者として頂点であるという事実に退屈。並ぶ者がいない人生にスパイスを……と世界各地で自分の種を蒔いた。結果、一番の成功作として育ったのが息子:刃牙ということである。

『グラップラー刃牙』幼年期編のラストでは、刃牙のことをつまみ食いと称して圧倒。自らの妻(刃牙の母親)も手にかけるという極悪非道人間破壊兵器として作中に君臨していた。

 

この世で一番の親子喧嘩

0地点で最高速に到達するゴキブリ突進、ピクルとの戦いで見出したトリケラトプス拳、今までの全ての経験と技術を集約した必殺技:虎王。刃牙の培ってきた技術と技を全て用いても勇次郎には通用せず(正確には効いているか不明)、すべて上位互換の技で返される。そんな攻防を繰り広げるうちに、世界中から集まってきた野次馬ギャラリーたちの心にある仮設が生まれてくる。「あれ? この殺し合いはこの親子のコミュニケーションなのでは?」という気持ちだ。確かに殺傷能力MAXの技をお互いに繰り出しているが、それはこの父(息子)ならば受け止めてくれるだろうという信頼ありきの応酬。”地上最強に君臨する父親と対等に会話するためには同じ高みまで登らなければいけない”と強くなった息子、宣言通り強くなってきた息子を称え、全ての攻撃を受け止める父親。形は非常に歪だが、内容としてはごくありふれた父子のコミュニケーションであると言えるのではないだろうか(いや、そんなことはないが)

 

心境の変化

今思えば、この戦いに至るまでにも刃牙の気持ちの変化は描かれていた。実の父とは言え母の仇である父親を最初は憎い存在として殺意を飛ばしまくっていたが、ともに戦い、”強さ”というただ一点において絶対に信頼を裏切らない父のことを、内心認めている自分がいることに気付いていた。

 

一方で父にも確実に変化は起こっていた。大国から畏怖の象徴として崇められる勇次郎が息子のもとを訪れ、手作りの晩御飯を食べる。こんな当たり前のことをリアルプレデターがするか? いや、しない。しかも更に、食卓を囲むだけではなく息子に対して食材に対する礼儀を教える。このシーンを読んでいる時「馬鹿なッ!」 と全読者心の叫びを代弁した俺がいた。いや……違うな……。この親子が特別だと勘違いしていた全読者(俺を含む)が固定観念に囚われていたのかもしれない。いつだって親は子を躾け、可愛がるものだし、感情のない人間などいない

 

衝撃の決着

激戦の末、母親殺害時と同じ技を食らい聴覚を失った刃牙だったが、それでも負けじと闘志を飛ばして去り行く父を立ち止まらせる。そして伝説のエア味噌汁(これはぜひ単行本で!)。マジの殺し合いという肉体言語によって初めて対話をした結果、息子に対して放った最強継承。これには鳥肌が止まらなかった。

”息子が父親に認められる”。男の人生において、これ以上の喜びは中々ないだろう。それを単行本109冊で描き切ったのが『バキ』という作品ってこと(番外編を入れれば112冊)。

強さを極めた末に行きついた親子の愛の形。これは決して特殊なものではない。ごくありふれた家庭に、ごく当たり前のように存在するモノである。だが家族仲が悪かったり、プライドが邪魔をしてお互いを認められなかったり、この”当たり前の奇跡”を逃がしてしまっている人が多いことも事実だと思う。真の強さとは、家族だろうと(家族だからこそ)逃げず、真正面から愛を伝えることなのではないだろうか。範馬親子にとってはその手段が拳だっただけってことだ。諦めず頑張った刃牙少年に拍手。

まとめ

正直、食わず嫌いで今まで読んでいなかった『バキ』シリーズ。これメチャクチャ面白かったぞ。本記事では、キリが良いので、シリーズ第三作目となる『範馬刃牙』までしか紹介しなかったけど、続編にあたる『刃牙道』『バキ道』は地上最強になった後の刃牙の戦いが描かれる。宮本武蔵(本物)との真剣勝負相撲をする地上最強……まだまだ楽しませてくれることは言うまでもない。

家で『カウボーイビバップ』タレ流してるだけでお洒落だと思える不思議

90年代のSFアニメと言えば『攻殻機動隊』。異論は無い。だが『カウボーイビバップ』のことも忘れてはならない。多くのファンを虜にする良さ、これこそ色褪せない不朽の名作。

あらすじ

時は2071年。宇宙開拓時代を迎えた人類は太陽系内に生活圏を広げており、悪化する治安への対策として、指名手配犯を捕まえる賞金稼ぎ、いわゆる「カウボーイ」たちが活躍している。カウボーイ稼業を営むスパイク・スピーゲルと相棒のジェット・ブラックは、古い漁船を改造したオンボロ宇宙船「ビバップ号」に乗り込んで宇宙を駆け巡っている。大物の賞金首を捕まえることもある一方、その荒っぽいやり方に巻き込んだ一般市民からの損害賠償請求も多い彼らに金銭的余裕はない。 そんなビパップ号に奔放な美女フェイ・ヴァレンタイン、天才ハッカーのエド、犬のアインが転がり込む。おのおの何かしらの事情を抱えながらも、一同はビパップ号で緩やかな絆を育み、行く先々で様々な騒動に巻き込まれる。Wikipediaより引用

80年代~90年代頭に生まれたアニメ好きにとっては言わずと知れた大名作。かく言う俺も『攻殻機動隊』にハマった時に「お、コレも面白そうじゃん!」と流れで視聴。その世界観に魅了された

特筆すべきは一話完結型の各話構成。本筋の回も間に挟みつつのビバップ号4人(+1匹)のドタバタ劇は家でずっと流していたい心地良さすら感じさせる。というか、コロナ禍での我が家のBGMはこの『カウボーイビバップ』だった。ヤダ…お洒落。

”ビバップ”って名を冠している通り(アレンジから生まれたジャズスタイル)作中ではその話のタイトルに用いられた曲がストーリーを盛り上げる。ちなみに音楽はほぼ全てが 菅野よう子 作曲。国内外の音楽家が参加した「THE SEATBELTS」というクリエイティブ集団が演奏した。このごちゃまぜ感が最高なんだな。

 

 

名作と呼ばれる所以

厨二心をくすぐるハードボイルドなセリフ回しは『ブラック・ラグーン』を想起させつつも、コメディタッチなドタバタ回もあり観ていて飽きない。というか指数関数的に「あ…好き…」という感情が溢れてくる

渡辺信一郎監督も「毎回20分の映画を作っているような感覚でした」と語る通り、登場人物たちの会話によって引き出せれる世界観の深さは他に類を見ない。このアニメを視聴した後、空を見上げれば遠い星で賞金首との銃撃戦、路地裏を覗けばマフィア間の小競り合いが今まさに行われているのではないかとすら思えてくる。麻薬的な没入感

 

 

秀逸なセリフ回し

ハードボイルド作品に総じて言えるが、登場人物たちのやりとりが堪らなく秀逸。てか単純にセリフ自体も良い。Session1でスパイクが「カメレオンじゃねぇんだ、そうあちこち見えねぇのさ!」って言った時に俺は思ったね、こんな世界に生まれたかったと。かと思いきや、ファンの多いSession17の麻薬キノコ回では「俺の兄貴はなぁ、お前から買ったキノコを食って、笑って笑って腸捻転で死んだ!」というウィットに富んだ発言も(NHKだったら間違いなくピー音入る)。これがビバップ。

下記では、上記以外に俺が観直しながら良いな~と思ったセリフメモを羅列しとくからさ、愚かにも未視聴の人はこの素晴らしい世界観を感じてくれ。視聴済みの人は酒でも飲みながらほくそ笑んでくれ。

Session1Session3Session5Session10Session12
「肉の入ってねぇチンジャオロースはチンジャオロースと言わねぇんじゃねーのか?」
「……金がないときには言うんだよ」
「チャーリー・パーカーがゲーテの名言を吐くかい?」
「天国を追い出された天使は悪魔になるしかないんだ」
「昔の女が今でも自分のこと考えているなんて大間違いよ」
「女がみんな自分と同じと思ったら大間違いだぜ」
「人の中で独りぼっちだって感じるより、一人っきりで孤独を感じる方がマシ」
「離れるのが怖くなったんだね、その人たちと。だから離れちゃったんだ。」

Session14Session16Session18Session25Session26
「さぁ、君も一緒に人生を棒に振ってみないか?」
「女はすぐに裏切るが男は義理に生きるもんだ」
「義理ねぇ」
「俺はそう信じたいね」

「来たくはなかったんだが、会いたがる奴がいてな……失くした左腕だよ!」

「あたしはもう、ここにはいない。でも、この日のあたしは、ずっとここからあなたを応援している。たった一人の、あたしへ。」
「女がいた。俺は初めて生きてる女を見た。そう思った。あいつは俺が無くした俺の片割れさ。俺が欲しかった、俺のかけらなんだ」
「空腹は最高の調味料さ…」

「普通の女よ。綺麗で危なくてほっとけない…普通の女」

「スパイク、一つだけ聞かせてくれ。女のためか?」
「・・・死んだ女のためにできることなんてないさ」


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劇場版:天国の扉

1999年に終わったアニメシリーズから2年後、2001年9月に発表された劇場作品『カウボーイビバップ 天国の扉』。

「あんなラストを見せといて、続編があるのか⁉」と思ったのがもはや懐かしい。『BIG SHOT』が放映中だから、時系列的にはアニメシリーズの22話と23話の間ということになる。つまり、基本的には一話完結のストーリー構成のビバップにおいては未視聴でも映画版から見始めることも可能。「昔のアニメって絵がダメなんだよね」とか言って、自らの見識に限界を設けている糞ったれは是非ともこの劇場版からの視聴をオススメする

内容は、時系列的に仲睦まじく罵り合う最高なビバップのメンバーが描かれる。この時点でアニメシリーズを視聴済みだと「これこれこれぇ! こいつらをまた見たかったんだよぉ!」とテンションが上がるが、作品全体を通して基本的にはシリアス回のテンション。ハロウィン前の火星で起こる爆破テロの容疑者に3億の懸賞金がかけられて例に漏れずビバップ号の面々も犯人を追う。史上最高金額の懸賞首との戦いということで、若干スパイクの動きが良い気がするあとフェイの唇が奪われる

重厚なサウンドは相変わらず良いし、作品中盤でスパイクが負ける絶望シーンの演出も非常にGOOD。「そんなにあっさり負けちゃうんですかスパイクさん!」と視聴者の心を底辺に堕としてから、クライマックスの「この世界がどうなろうと知ったこっちゃねぇ。ただ、お前に借りを返しに来ただけさ。」な。もう話の構成が海外の映画なんだよ。流石、天下のサンライズ


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まとめ

不朽の名作と呼ばれる作品は数あれど、ここまで色褪せない作品も無い。例えば、偉大なる宮崎駿監督が作ったジブリ作品はいつまでも愛されるじゃん。これもそれだ。90年代後半のアニメ絵の独特なタッチが絶妙にマッチしているというか、今っぽい絵で表現すると、本作の良さは無くなっちゃうんだよな。だからこそ、アニメが好きな人には須らくこの作品を視聴して欲しい。取り敢えず、家でタレ流すところから始めよう。

先進的な技法で頭一つ飛びぬけた『パラノーマル・アクティビティ』がファンタスティック

今日もホラーを面白く観よう。モキュメンタリーが苦手な俺だけど、『パラノーマル・アクティビティ』は比較的不快になることなく観れる。そんな俺がシリーズ最終章『パラノーマル・アクティビティ/ゴーストディメンション』まで全7作品を観終わったので簡潔に紹介させてくれ。

あらすじ

かつてケイティとクリスティが住んでいた家に、ライアンとエミリー夫妻と娘のリーラが引っ越してくる。 ある日、夫妻は物置で箱の中からビデオカメラとビデオテープを見つける。彼らは興味本位でカメラのレンズを覗く。 それ以来、彼らの周囲で恐ろしい出来事が起こるようになり、リーラの様子も徐々におかしくなっていく。そして、怪異はますますエスカレートしていく。 そして彼らは徐々に最期へと進み、カメラには衝撃的なラストを捉えていた…Wikipediaより引用

 

変遷と終局

「いきなり最終作の話かよ」と思うかもしれないが、このシリーズを紹介するには遡った方が分かりやすい。この記事を読めば大まかな流れは分かるけど、作品を観た時にはしっかり楽しめるように書くから安心してくれ。

さて、シリーズ最後の作品ということで「悪霊の正体が、ついに明かされる――」がキャッチコピー。モキュメンタリー手法の先進として2007年に公開された同シリーズ。基本的にはアメリカが舞台で、家の中完結系ホラー映画。低予算で始まったシリーズだけど、一作目が大ヒットしたおかげで後の作品は潤沢予算になるってのはアメリカンシネマの夢があるところ。あくまでモキュメンタリーという姿勢を崩さないで作り続けた点が◎

この『パラノーマル・アクティビティ/ゴーストディメンション』はシリーズ的に7作目に相当してるんだけどね(よくぞここまで続けたな……)。『1』に始まった悪夢の続編が『2』、その後『TOKYO NIGHT』で日本版続編、舞台はアメリカに戻って『3』・『4』、ここら辺で真の敵が悪霊っていうよりも魔女だったと判明する(っていうか徒党を組んでカチこんで来る。その後、『呪いの印』でアメリカでのスピンオフ。で、満を持して7作目の本作だ。ここまで来ると悪霊もダッシュで殴ってくる

っていうかさ、本シリーズを観るたびに毎回思うことがあるんだけどね。俺が今の家に引っ越してきた時、近くに閉店セールをやってるABCマートがあったんだけど、最近言ったらまだ閉店セールやってたんだよ。まさにこれ。毎回「お、なるほどね。良い感じの引きで終わったわ!」って思ったら一年後に続編が出るんだよ。「終わらんかい」って憤慨し最終作をずっと観なかったのは内緒。ただ、そんなこと思いつつも全部観てきた俺からするとちゃんと面白かったね。なんか暇な時にもずっと流しておけるっていうか、日常系ユーチューバー観てる時と同じ感じ

 

 

進化する怪奇現象

ダッシュで殴ってくると上で書いたけど、最初からこんなにアグレッシブな霊障だったわけではない。1作目は超有名だから観たことある人も多いと思うが、あくまでも視聴者の共感を誘うようなリアルな驚かせ方をしていた(そう…最初は…)。それこそラップ音とか、朝起きるとモノが移動しているとか、日常でも全然起こり得る現象な点が高評価の由来だろう。だがアメリカ様は止まらないぜ、5作目以降では普通に時空を操ってくるからな気をつけろ

元々アメリカ版の『呪怨』『リング』に影響を受けたオーレン・ペリ監督が手掛けたということもあり、なんとなく伽椰子の呪いを連想させるところは日本でも俺みたいなホラー狂の一部にウケた理由だと思う。これは余談だけど、日本のホラーも続きすぎると常軌を逸した演出になる傾向があるからな。そう……貞子のように……

ただ、この映画的な怖がらせ方があるからこそ、B級映画的な良さを備えている気がするんだ、俺は。ちょっと素人チック(ウィジャ盤が急に発火するとか)の安っぽい演出があるからこそ、沖縄の大学生が部活で撮ったような”良い映画”になってるんだよ。「俺たちはこのやり方で大手の映画スタジオよりも怖い映画作ってやるぞ」っていう気概を感じる。スピルバーグ監督も絶賛したっていうのは有名な話だけど、きっとこういう情熱に心が動いたんじゃないかと。観てない人は一度視聴してみることをオススメする。

 

 

まとめ

長きにわたるシリーズも終わってみれば全部で7作。ハリーポッターと同じくらいの長さとなった。そう考えれば全然楽しんで観れる。願わくば、ファンタスティック・ゴーストが発生しないことを祈ろう。

SF好きの俺からしたら『デカダンス』は『マトリックス』であり『リング』な件

『デカダンス』それは令和の夏に降臨した至高のSFアニメ。

あらすじ

西暦4000年ごろ、文明が崩壊した世界で、人類は怪物のような生命体ガドルの脅威に晒されていた。ガドルは人類の敵だが、その体液は巨大移動要塞デカダンスの動力源となる。生き残った人々はデカダンスの中で暮らし、ガドルと戦い、そしてそれを糧として荒野を彷徨っていた。

幼い頃にガドルに父を殺され、自身も右腕を失った少女ナツメはガドルと戦う戦士になりたかった。だが適性検査で不合格となり、デカダンスの装甲修理人として働くことになった。同じく装甲修理人のカブラギに厳しく指導されるが、彼がかつてガドルと戦っていた一流の戦士だったと知り、指導を願い出る。だがカブラギには、いやこの世界には驚くべき秘密が隠されていた。Wikipediaより引用

 

近年稀なマトリックス展開

『幼女戦記』であれだけの魔術戦を描いたNUT制作ということで、放送前から高クオリティな戦闘シーンが期待されていた。例に漏れず俺も「きっと濃密な作画で楽しませてくれるんだろうなぁ~。でも問題は脚本だよな、大丈夫かな…。」なんて思っていたワケだけど。結論から言おう。期待には見事に応えてくれた。そして、俺の一抹の不安は綺麗さっぱり払拭された。

戦闘シーンは観てくれ、語るのは無粋だ。このアニメで俺が語るべきは脚本だと思ってる。今この記事を書いている時点で7話の放送が終わったタイミングなので俺が思っていることと違うこともあるし、まだ明らかになっていない謎もあるからコイツSF好きなんだな~って姿勢で斜めに読んでくれると嬉しい

 

仮想現実が絡み合う

まずこの世界観に置いてはタンカーとギアという二種類の人類が存在する。ここから述べよう。タンカーっていうのは所謂デカダンスが存在する世界における人類のことで、ギアってのは仮想現実の中に受肉した運営側の精神体だ。もっと分かりやすく言おう。タンカーっていうのは俺が一番好きな映画『マトリックス』におけるネオ・モーフィアス・トリニティのことで、ギアっていうのはエージェント:スミスだ。

で、俺が一番面白いなって思ったのはギアに入っている精神体にとってだけデカダンス世界は仮想世界で、彼らには一段階上の世界が存在するということ。しかもこの所謂上位世界の存在(上の画像)のほうがファンシーな世界として描かれてて、ナツメがいるデカダンスの世界が下位世界にあたるってところ。そう、現実世界がファンシーに表現されているだけで、現実世界が管理する仮想世界で生きる人類という構図…完全に『マトリックス』なんだよ。え、『マトリックス』観たことない?…そんな奴いんの?

マトリックス(吹替版)

と言っても、カブラギが度々戻る上位世界もゲームの中の世界という記述があるので、さらに上位の世界が存在する可能性もある。ここまで述べれば勘の良い文学好きは気づくかもしれないけど、鈴木光司先生の『リング』シリーズ(貞子が出てくるアレな)とりあえずの回答編として書かれた『ループ』で『自分たちの上には上位の世界が存在し、そこの存在に管理されているのが自分たち』だという考え方。そしてその上位世界の先にはさらなる上位世界があるかもしれないという超ループ構造。これが成り立つのがアニメ『デカダンス』の世界観ということになる。

もちろん、この永久に続き兼ねない世界ループ構造の考え方は『マトリックス』にも当てはまるワケでして(今制作中の4作目ではこの展開になることを強く希望)。もしこの展開になったとしたら『攻殻機動隊』からインスパイアを受けたハリウッド映画が日本SF文学の巨塔『リング』から再インスパイアを受けて新たな世界を拡げるということになるので、日本人としては非常に誇らしいよね。『リング』の原作はホラーっていうか超絶SFだから読まず嫌いしてる文学ファンは一読の価値アリ。ちなみに貞子ってデカダンス的に言えばバグだから

リングシリーズ【4冊 合本版】
『リング』~『バースデイ』
(角川ホラー文庫)

 

「生きる世界は自分で決める」

って感じで、この作品が非常に良質なSFとして描かれていることは理解してくれたと思う。まぁ、こんなこと考えなくて何にも考えずに見ていても面白いのが『デカダンス』だと俺は思うよ。そもそも娯楽の楽しみ方は人それぞれだ。ただ、 ”楽しまない” のと ”楽しめない” のは大きく違う。俺としては選択肢が多いほうが人生楽しいよってことが言いたい。

この”選択をする”ということが本作の主題にもなっていると俺は感じるワケですよ。「私、強い人になりたいんです!」って言う少女の姿に突き動かされる人間ドラマ。そしておっさんと少女が2人で世界を変えようと力いっぱい前に進むサマは観ていて爽快。やってることは血みどろの化け物退治なんだけどね。でもそれが単純に頭空っぽでも楽しめるエンターテインメントとして成り立たせているから面白い。

最終的にカブラギがどちらの世界で生きることを選択するのか、それが楽しみである。

 

まとめ

ここ最近ぜんぜん記事更新してなかったけど、30歳になってから色々と充実しすぎてただけなんです。…うん、充実していた。という表現がピッタリなんです。つまり、これからはまた更新していこうと思ってるよ。気持ちはある。

今後の『デカダンス』とnijihack.comに乞うご期待。

これから来るロボット時代を考慮すると『イヴの時間』は最高の道徳教材

2008年にネット上でドラマ形式で公開された『イヴの時間』。全6話を収録した完全版が2010年に映画版として発表されて久しい本作。文化庁にも評価され、OVA部門として多くの賞を受賞したこの作品は今観ても面白い。いや、5G時代到来間近の今だからこそ、面白い。

「あらすじ」

「未来、たぶん日本。“ロボット”が実用化されて久しく、“人間型ロボット”(アンドロイド)が実用化されて間もない時代。」

アンドロイドはそれと分かるようにリングを頭に表示し、無表情で人間に奉仕する。だが、ロボットが社会の様々な分野に進出して人間から仕事を奪い、アンドロイドに精神依存する「ドリ系」と呼ばれる人々が確実に増え続けており、それを危険視する「倫理委員会」が広報活動に勤しんでいた。また、旧式化したロボットが不法投棄され主を持たない彼らが野良ロボットとして徘徊することが社会問題となっている。

高校生のリクオは、所有するハウスロイド「サミィ」の行動記録の中に、命令した覚えのない行動を発見する。級友のマサキと共にGPSを辿って行き着いたのは「イヴの時間」という不思議な喫茶店だった。「人間もロボットも区別しない」ことをルールにしたその店では、誰もが人間らしく振る舞っており見た目では区別がつかない。彼らは思い思いにそこでの時間を楽しんでいた。リクオとマサキは好奇心から店に通うようになる。

やがてリクオは店でウェイトレスのナギに悩みを相談しているサミィと鉢合わせてしまう。Wikipediaより引用

 

 

簡単な概要

先に述べている通り、最初はネット上で公開されたドラマだった。でも多くのSFファン・アニメファンから高評価を得て映画化されたって感じ。構図というか、アングルの取り方がお洒落なんだよ。一応記述しとくと、東京国際アニメフェア2010・第9回東京アニメアワード優秀賞OVA部門受賞作品、第14回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門審査員推薦作品だ。要するに意識高い系の秀作だ

俺が10年前にアニメ好き仲間と飲んでた時の話なんだけど、「最近面白かったアニメ映画のタイトルを同時に叫ぼう」って流れになって(いや同時に言う意味は全く無くて、酒カスの極みなんだけど)、いっせーの! で全員が全員『イヴの時間』って叫んだことがあった。そのくらい、良い作品なんだよ。

 

 

技術革新後の世界

食料自給率は80%というトンデモ水準の世界。きっとアンドロイドの有効活用によって、労働作業が効率化された結果なんだと思う。でも、”ドリ系”と言われてアンドロイドに人間として接する人を揶揄しているところを見ると、道徳の水準は今とさほど変わらないのかもしれない。

AIが自立思考を得ることで、人間に置き換わっていく過渡期を描いてるんだけどね。人間からしたら、仕事を奪われるし、人間よりも地球に配慮した存在のアンドロイドっていうのはアイデンティティの損失に繋がるし、癇に障るんだろう。そんな社会で、種族を超えて育まれる絆が描かれる

 

大事なのは内面に宿る人間性

はい! どれがアンドロイドでしょう! 何を隠そう、この中の半分以上がロボット。そう、不気味の谷を越えた工業製品ってのは外見じゃ人間と区別つかないんだよ。え?左上? うん、そう、外見じゃ区別つかないんだよ(てかサミィ2枠おるやんけ)。

物語の舞台になるのは主に「イヴの時間」っていう”人間とロボットを区別しない”喫茶店。超美人店主の凪さんが切り盛りする最高にお洒落なお店だ(代官山とかにありそう)。この店にいる時の登場人物の表情が良いんだよな。そしてそれが物語にも大きく絡んでくるからこれから観る人は要check。

 

誰もが”悩み”を抱えている

そんなお店に通うのは、アンドロイドと一線を越えたい人間人間のことをもっと理解したいアンドロイド、またはその両者が一緒に来店することもある。倫理的にはイリーガルなコンセプトなので、社会的には認められてないのか表には看板が一切出てなく、入口も普通に道を往来している人には全く分からないという心躍る仕様。なんだろうね、本作を観ていると主人公がこの店に入った時にワクワクするんだよ。演出が良いのも勿論だけどさ、この社会的に隠れた場所っていう設定が良いんだろうね

次第に常連客と仲良くなっていく主人公とともに、誰が人間で、誰がアンドロイドか明らかになっていくゆるふわ系ストーリー。なんだけど! カフェアニメとして観てもとても秀逸なんだけど!  大事なのは機会だろうが人間だろうが悩みを抱えているって点だ。この悩みを解決していく中での人間&ロイドドラマが最高に面白い

これは俺の持論なんだけどね。本作のようにアンドロイドが人間に限りなく近くなった世界…SFではこんなの全然近未来(っていうか現在)なんだけど、多くの文学作品では人間は人間に近づいたアンドロイドを嫌ってる。でもさ、これ、嫌う必要あるか? 高度に発達したテクノロジーは魔法と変わらない。なら高度に発達したアンドロイドも人間だろう。気持ち悪いって言うけど、自我が目覚めた時点で対等に接するべきだと思うし、お互いを尊重して生きていくことが出来るんじゃないのかな。まぁ、これは理想論だって言うのも理解していて、きっともっと抜き差しならない現実的な問題が色々と発生してくるんだろうけど。俺がこんな風に思っているのは色んなSF小説を読んでるから、思考がアンドロイド側に偏っているせいもあるかもしれない。でも、機械と人間が仲良くできる世界がきたらどんなに素敵なことなんだろうって、そういう風に思えるよ。本作を観ると。

実は漫画版もある。無論、良い。

 

「まとめ」

ファーストシーズンとして公開された既存の話が完結して早10年…。全体の雰囲気も良いし、”ロボット三原則”や、”不気味の谷”についてしっかりと考えられる本作は、5Gが本格的に生活に導入されるという今だからこそ観るべき作品だと思う。うん、むしろ教材だな。よし、国際派の石油王は学校作るだけじゃなくて生徒の分までDVDを買ったれ。

俺はセカンドシーズンをずっと待ってるよ。

ついに地上波で放送される『A.I.C.O. Incarnation』は現実でも起こり得るバイオSF

2018年3月に「面白いアニメがNetflixから出たらしい」という情報が俺の耳に入った。『A.I.C.O. Incarnation』というそのアニメは、一つのサブスクで独占配信なのが勿体ないと思える程のストーリーで、アニメ好きに強烈な印象をもたらした。今日は、2020年7月より満を持して地上波放送される本作について語りたい。

「あらすじ」

2035年、日本。黒部峡谷一帯では医療目的の人工生体の研究のための研究都市が形成されていた。その研究都市に属する桐生生命工学研究所にて起きた人工生命体暴走事故「バースト」。それにより渓谷一帯は人工生命体「マター」によって埋め尽くされ、政府によって管理がされる危険地帯になってから2年が経過していた。

バーストの事故によって家族を失ったうえ、自身は交通事故で重傷を負い、黒部平野に位置する桐生生命工学研究所に併設された桐生病院にて、リハビリを続けながら学校に通っていた橘アイコは、夏休みの1日前に転校してきた神崎雄哉によって突如拉致され、人工生体開発者である黒瀬進に引き合わせられ、信じがたい事実を告げられる。Wikipediaより引用

 

 

簡単な作品の概要

まずは内容ではなく製作陣について。

原作・制作はBONES、そして村田和也監督(コードギアスの助監督でありガルガンティアの監督)、脚本家として知られる野村祐一さん(エウレカ・コードギアス・DTB、最近だとキャロチュー)が構成という鉄壁の布陣。

そしてキャラクター原案:鳴子ハナハル。『COMIC快楽天』の表紙と言えばハナハル先生、『少女マテリアル』と言えばのハナハル先生だ。『彗星のガルガンティア』繋がりで起用されたのかな? なんにしてもGJ。これだけで観る気沸いてくるよね。

 

 

遠い未来の話じゃない

俺が第一話を観た時にまず思ったのは、”人工的な肉体をクローン技術で生み出して人間の治療に用いる”ってのは、全然未来の話ではないなってことだ。実際に(表向きには)動物のクローン臓器を人間に移植する研究も進んでいるし、その生命倫理問題は某有名SF雑誌でも何度も取り上げられている(俺の愛読書)。

だから、これは大枠の設定だけで言えば”近未来SF”に分類されるんだと思う。『攻殻機動隊』のように一足飛びで未来って感じじゃないだけに、妙に現実感を感じて物語に没入することができた。

 

俺的SF概念

そもそも俺的にSF作品ってのは実現可能な限界範囲の中で未来を現わしているものなワケで、「こんくらいだったら科学的にいつか辿り着きそう」っていう塩梅を客観的に感じれるか否かで印象が大きく変わってくる。その点で本作は100点。しっかりとサイエンスなフィクションしてる。

SFという分野は、現実の技術が進むのに比例して更なる未来へ連れて行ってくれるから好きだ。まぁ、車はいつまで経っても空を飛んでないし、俺が生まれた時から最後の物語と言い続けて最近7作目をリメイクしているゲームすらあるのが我が国の現状だが。頑張れ化学班! 徹夜すればリナリーが美味しいコーヒー淹れてくれるぞ。

 

 

本当の自分とは

自分の身体が本物に似せて作られた偽物だという衝撃的な事実を突きつけられるJK。しかもそれだけに留まらず、本当の身体は実の母・弟を巻き込んで被災地の中心部にあるという残酷な告白。この容赦ないテクノロジーの暴力と、かなり練り込まれた設定はSF好きにとってはかなりツボ。

初めは母&弟を助けるために自分の身体の暴走を止めに行くっていう王道展開なんだけどね。話が進むにつれて、自分の本当の身体にも意思が宿っていることに気付く(だいたい同じタイミングで視聴者も気付く)。自分の意思は確かにここ(頭の中)にあるのに、もう一人自分がいると知った時、人間はどういった行動を取るのか。そして、もう一人の自分はどういった行動を取るのか。ここが面白い

「まとめ」

独占配信っていうとさ、なんか低予算クオリティな感じをイメージしがちだけど。俺はこの作品を観てからオリジナル作品も捨てたもんじゃねぇなって思った売れてる企業は大体映画作るからな。それは資金が豊富なワケで。

地上波で放送されたらもっと多くの人に観て貰えると思うけど、これは本当に良いSF作品。

サブカル女がこぞって評価する『冷たい熱帯魚』を実話踏まえて語る

2010年に発表された園子温監督による邦画『冷たい熱帯魚』。これが1993年に起こった「埼玉愛犬家連続殺人事件」が元になっていることは周知の事実。でも世のサブカル女は観る。その愚直な姿勢、単純にすげぇなって思うけどさ、ただ実話が元になってるって知識しかなくない?それ、勿体ないから。この記事ではそれを補足すべく、実際の事件にも触れながら作品の魅力を語る。

【あらすじ】

死別した前妻の娘と現在の妻。その折り合いの悪い二人に挟まれながらも、主人公の社本信行は小さな熱帯魚店を営んでいた。波風の立たないよう静かに暮らす小市民的気質の社本。だが、家族の確執に向き合わない彼の態度は、ついに娘の万引きという非行を招く。スーパーでの万引き発覚で窮地に陥る社本だったが、そんな彼を救ったのはスーパー店長と懇意にしていた村田だった。村田の懇願により店長は万引きを許す。さらに大型熱帯魚店を経営する村田は、娘をバイトとして雇い入れる。その親切さと人の良さそうな男に誘われて、社本と村田夫婦との交流が始まる。 しばらくして、利益の大きい高級魚の取引を持ちかけられる社本。それが、村田の悪逆非道な「ビジネス」と知り、同時に引き返せなくなる顛末への引き金となった。Wikipediaより引用

 

 

人間を透明にする男

「俺は警察もヤクザも、全部を敵にしても自分の力で生きてきた」と台詞にある通り、作中の村田(でんでん)は巧みな話術と暴力で人間を手玉に取って生きる姿が描かれる。

残虐性が話題になりがちな本作だけどさ、人間の「生きる」という本能を描いた良作だと思う。結局は金が動機ってのは残念なポイントではあるけど、誰にも頼らずに生きると決めた人間ってのは他人の命なんて関係なしに生きるための金を調達するんだなって実感できた。

ちなみに、実際の事件が元になったと言っても前半から中盤だからね。リアルでは熱帯魚店じゃなくてペットショップだし。このペットショップ「アフリカケンネル」の名前はあまりにも有名で、当時のニュースを観てた人とかはこの名前を聞いただけで不快感を露わにするんじゃないだろうか。綺麗にエンタメ化されてるのは園子温監督の手腕が良すぎるからだ。

 

 

徹底した犯罪哲学

全く持って褒められたものではないが、この元になった事件の首謀者であるSには犯罪哲学があった。上記はその一部

羅列するとちょっと義賊っぽい人格と錯覚しがちだけど、全くそんなことはなくて、ちゃんとシリアルキラーだから安心して欲しい。ちゃんと人類の敵。というのも、5番目に挙げた「透明にする」というのがかなり周到な死体処理の哲学だからだ。この事件の異端さを最も現わしているこの考え方は映画を観てれば分かるだろうから割愛するけど、この作業に対して留置所で「面白い・楽しい」って供述したってところがしっかり忌むべき絶対悪してる。

4ヶ月で4人の人間を消した罪とカルマは筆舌に尽くしがたい。しかもこれは判明してるだけで、人間に限った話だ。事件の裏では犬を買ってくれた家庭に毒入りの肉を差し入れして、新しい犬を売りつけたり、毒入りの飲料を常に常備していたりと、常軌を逸した行動は戦後の日本でも指折りのグリード

 

 

運の良さも大事

これは園子温監督ファンも知らないことだと思うんだけどね。実は実際の事件内容をまとめたWikipediaに載っている上の5つの決まり事以外にも哲学が存在するんだよ

ホラー民にとっては有名なんだけど。恐い話No.1決定戦『OKOWAチャンピオンシップ決勝戦』にて、初代王者に輝いた三木大雲和尚の怖談。これは「アフリカケンネル」の経営者である容疑者Sが捕まる直前のやり取りだ(上の動画でいうと2:26:50らへん)。

映画とはまた違う視点でこの犯人Sの特異さ、恐さを実際に対峙した三木和尚の口頭で語られてるから本当にオススメ(てか他の話もマジで怖くて面白いから時間があるなら観て欲しい、OKAWAは良いぞ)。

 

 

生きることは痛いんだよ

エロ・グロともに強烈なシーンが多い本作。散々凄惨な描写を魅せられた後なので、「いや、もう分かったよ…」と言いたいところだが、この台詞にこそ本質が詰まっているように俺は感じた。

そもそも、生きることは綺麗事ばかりではない。むしろ痛みの連続だ。金銭的な問題や悩みを全く抱えていない人なんて数えるほどしかいないし、そこに追加で家族問題、職場や友人との人間関係。生きているってことはそれだけで精神が摩耗していく連続であることは、現代を生きている人にとっては絶対に思い当たる節があるハズ

そんな人生においては、痛みを抱えて生きるしかないってこと。 痛みを乗り越えたとしても、その先が輝かしいモノであるとは限らないということをしっかりと表現してくれた。

「ラストが衝撃的」っていう感想を抱く人がすごく多いみたいだけど、俺からしたら「いや、こうなるだろ」って事しか思わなかった。ただ、期待を裏切らずに貫いてくれた園子温監督はやっぱり凄いなぁと思ったし、ラストにかけてのどんでん返し感は”フィクション映画”って感じで単純に芸術として良かったと思う。

でも一旦思い出そうぜ。これは実話が元になっているってことを。だいたい、園子温監督は”現代の闇”を描くのに非常に秀でた人だ。サブカル好きが皆、示し合わせたかのように氏の作品を評価しているのは面白い現象だと思うんだけどさ(何?エキストラで出たいの?そんな奴は一生エキストラだよ)、確実に苦しんだ人がいるという事実。この事実から目を背けてはイケないよね。といっても、単純にエンタメとして観ても秀逸な作品だし。普段他人の人生について考える機会がない人や、人生が綺麗事ばかりだと妄信する被害者A候補の能天気サブカル女に、この凄惨な事件があったということを伝えるためには超良い作品だと思う。

例の如く血が苦手な俺は軽く吐きそうだったのは秘密。

【まとめ】

ちなみに、この事件の首謀者であるK(作中における村田の妻)はまだ生きてるという事実。死刑制度に関しては難しい問題だからさ、俺は明確な答えは持ち合わせていないが、今の日本にはどれだけ痛みを抱えて生きている人がいるんだろう。そう考えると、この作品を只の実話を元にしたフィクションとだけ認識しておくのは勿体ない。これは、誰にでも起こり得る、そして起こり得ている話なんじゃないかと思う。

とりあえず、
川の水を飲むのはやめような。

『泣きたい私は猫をかぶる』が抜群に青春してて心が叫びたがってる

2019年6月18日よりNetflixにて配信された『泣きたい私は猫をかぶる』。『とらドラ!』や『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』しかり、人間の心の機微を描かせたら右に出る者なしの”岡田麿里”脚本に外れ無し。

【あらすじ】

周囲になじめない少女の唯一の楽しみは、猫に変身して好きな人に会いにいくこと。でもそんな毎日を続けるうちに、猫と人間の境界が次第にあいまいになり始め…。Netflixより引用

 

 

志田未来 × 花江夏樹

W主演という青春キャスト

今年このアニメ映画に期待していた人も多いんじゃなかろうか。憎きコロナのおかげでNetflixでの配信に急遽変更になったのには色々な事情があるにしても、有難き幸せ

『ペンギンハイウェイ』で一躍有名になったスタジオコロリドが制作ってのも良い。しかも『ARIA』シリーズでお馴染みの佐藤順一監督&柴山智隆監督(スタジオコロリド)。あとさ、個人的に大好きな『ガッチャマンクラウズ インサイト』の清水勇司さんが演出ってのも高評価ポイント。他の製作陣も名だたるメンバーだし、久々に本気で揃えてきたなっていうアニメ映画。

そして、肝心の主演は『借りぐらしのアリエッティ』で声優イケるやん!と日本全土を歓喜させた志田未来。今回も絶好調でした。たぶんこの子は永遠に10代なんだな、女神かな。思いっきり声優っぽくない声がこの映画に最高に嵌ってた。更に、もう一人の男側主人公を演じるのは今をときめく花江夏樹くん。声優とか知らねぇよって人の為に俺が教えてあげよう。花江くんの代表作といえば『鬼滅の刃』の竈門炭治郎だよ。だがこれだけの一発屋というワケでもない。というか、個人的に今回の男主人公が花江くんと聞いた時に俺が歓喜した理由でもあるんだけど、彼は『四月は君の嘘』の有馬公生だよ! 神采配。観るしかなくない?

主題歌・挿入歌・エンドソング
「ヨルシカ」

ヨルシカの劇中歌も全部話の内容に合ってて◎! 重度のニコ厨だった俺にとってはヨルシカは青春の音。ボカロPだった時の面影をほんの少し漂わせつつ肉声で綴られる心の叫びには負け犬だとしてもアンコールを贈りたい

 

 

いつも失ってから気付く

笑顔の素晴らしさ

この作品の凄いところは、単純に恋愛物語だけに留まらない点だ。今までの自分が乗っ取られていき、ドンドン中身が猫になっていくという葛藤。そしていなくなったムゲに対して、隠していた自分の気持ちに気付く日之出少年。この両面の心情を見事に描いている。

中々にシビアな家族環境で過ごしているムゲは、”誰かから愛される”という境遇が理解できず、一度は人間でいることをやめる。と、文字にすると結構ハードな設定に感じるかもしれない。でもこれってさ、思春期に誰しもが一度は思うことだと思うんだ。誰もが一度は親に絶望して、友達のことが信じれなくなり、今とは違うところに行きたくなる。この大衆心理を題材に選ぶという絶妙な匙加減は流石の岡田麿里

だが思い出して欲しい。失った笑顔を取り戻してくれたのもまた家族であり、友達の存在であるということを。その時、その場所で疎ましく感じた存在も、フラットな目線で見れば自分を救っていてくれたことを。一時の感情で逃げることも壊すことも出来るコミュニティも自分の心の在り様ひとつで人生における太陽になる。本作はこの難しい思春期の心を真正面から直視してくれているので、こういった経験がある人ほど見ていて苦しい場面もあると思う。だが、目を背けずに観ることをお勧めする

【まとめ】

中国でも配信が決定したとのことで、これからドンドン人気になると思う。あと猫が可愛い。本当に可愛い。ムゲも可愛いけど太郎めちゃくちゃ美猫。いや、でも…欲を言えば映画館で観たかったな

今のところ、今年のアニメ映画暫定1位。