本格的なドラマを楽しめる大人に西尾維新の『新本格魔法少女りすか』をオススメしたい理由

破滅的な要素を追加したり、チート能力を持っていたり、様々な魔法少女モノが乱立する昨今、そう…世は魔法少女戦国時代。そんな中、まさに新時代を象徴する令和のマジックガールが現れた。『新本格魔法少女りすか』だ。

己の野心のため“使える手駒”を探す小学5年生・供犠創貴は、赤い髪に赤い瞳の転校生・水倉りすかが“赤き時の魔女”の異名を持つ魔法使いだと知る。二人は手を取り合って時を超え、危機また危機の大冒険を繰り広げる──!

 

 

【作品概要】

西尾維新による小説を原作とした漫画作品について本記事では取り上げようと思う。ただこの原作、『ファウスト』にて2003~2008年連載、その後連載を中断し『メフィスト』にて2020年に2号掲載、後の単行本書下ろしで完結という、なんと17年の歳月を費やした知る人ぞ知る大作小説だ。作風としては魔法少女モノ×推理小説要素という、とても西尾維新らしい怪奇譚であり英雄譚

前述しているように西尾維新ファンやライトノベル全盛期の書店員が押さえているような「知る人ぞ知る」コア作品だったが、なんと20215月に『別冊少年マガジン』にて漫画化。作画:絵本奈央(『ジョゼと虎と魚たち』のキャラ原案・コミカライズ担当)によって令和に蘇り、再び日の目を見ることとなった。miracle。で、いざ俺も読んでみたところ、見事に新本格魔法少女をやっていたので、これは書かねばいかんな…と。

10歳の少年少女が大人に立ち向かい、大人になっていくことがどういった「痛み」を伴うのかデビュー2年目でこれを書こうとした西尾維新には流石という他ない

ちなみに、漫画漬けの日々を送る俺は
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それではお待ちかね。『新本格魔法少女りすか』に関して独善的に語っていく。楽しく読んで、作品のことを好きになってくれると嬉しい。

 

 

衝撃の序盤

物語の始まり。西尾維新作品は全部キャッチ―な始まりだが、『本格魔法少女りすか』においてはよりキャッチ―だと言える。悪い意味で

まず主人公の目の前で人身事故が起きます。しかも被害者は4人。これでもかと言わんばかりに人間を消し飛ばすのは原作者の綴る世界の特徴だが、まさに真骨頂ですな。しかもその光景を目にしながら「こういうことがあるから偶然というやつがそれほど嫌いになれないのだ」と、落ち着き払った様子で感想を述べる10歳の少年(主人公)。イイネ! 西尾維新節が炸裂してるぜ。

この凄惨な事件の後、主人公である創貴はヒロインであるりすかの元へ報告(相談)に行く。4人の関係性の薄い人物が不可思議に事故にあうという事件に関して「これは魔法が絡んでいる」と判断。事件の調査に向かうことになる というのが序盤の大まかな展開。この調査で ”りすか魔法少女であるということが明らかになるのだが、このスピード感が秀逸。展開をこれ見よがしにタメ過ぎても読者としてはダレるだけだし、作品名で ”魔法少女” と謳っているのだから、別に隠すべきではないという英断、潔くて気持ち良い。「さぁ魔法の力を駆使して犯人を追い詰めますよ~魔法で圧倒しますよ~」となるのかと …、ヒロインがバラバラになる

早い早い早い! 展開が早いッ! 情報量が多いわけではないんだけど、物事の進行が早すぎて脳ミソのメモリが一瞬処理できなくなるやつ。ものの序盤でここまでキャッチ―な要素を詰め込んでくれるあたり本当に流石かと。

 

 

本格たる所以

そして次の話で復活する

で、ですよね~ 流石にヒロイン兼主人公を殺して、ずっとそのままは無いですよね! 今どき流行りの ”なろう系” で、「実は主人公はこっちの冴えない男でした~みたいな展開もテンプレ化しつつあるけど、タイトルで謳ってるもんな、『新本格魔法少女りすか』って。

てことで復活しました。しかも大人の姿で。復活の理由を簡潔に言うと、りすかが魔法少女として有している魔法の一つに 一定以上の血液が流れ、本体が死の危機に瀕した際、自動的に17年(6200日)分の時間を一瞬で省略する というチート魔法があるからだ。つまりどれだけ血を流したとしても、永劫回帰、何度でも死ねるということ

更に言えば、子供の頃のりすか(11歳)は 時間を前に進める” ことしかできないが、大人のりすか(27歳)は自分自身の肉体の時を止めることも可能だったり、もはや何の魔法で攻撃してるのかさえ分からない位にご立派なウィッチ。なんということでしょう、この作品だけで少女と蒸れ熟れ成人女性が楽しめるという一挙両得具合、性犯罪者の独房に常備しよう。

そしてタイトル回収だ。“本格” と謳っている通り、この作品において魔法は夢見る少女が起こす奇跡ではない。当然のように残虐で残酷で容赦なく人体を肉塊に変えるツールである。この辺り、恋に恋する もとい 魔法に夢見る そんじょそこらの魔法少女とは一線を画しており、本格的に魔法を用いる少女であると言えよう。

 

 

常軌皆無の魔法使い

ということで、チート能力を有していることが分かったりすか” だけど、チート能力を有しているからと言って無双することにはならないのが西尾維新作品。相対する敵も基本的に「あ…コイツ駄目だ。話通じない奴だ」感が溢れており、大体がチート級に強い(魔法とは通常こういう扱いなのかもしれないが)。この見た目で話通じないオーラを溢れさせるのは作画を担当している絵本奈央氏の功績と言って良いだろう。

無敵の能力を生かすも殺すも使い手次第ということが暗に描かれる様子はH×H』の念能力バトルを想起させるが、今思うと『H×H』の登場人物達こそ全員チートだもんな。力というものは結局は誰がどう使うかなんだよな。「デニムでも穿いてりゃ味が出る」ってAwichも歌ってたし。例えば先天的に持った力がどれだけ弱い能力だったとしても、自分自身としっかり向き合ってその人なりの味を引き出していくことがパーソナルな個としての魅力=強さになると俺は理解しているよ。その辺り西尾維新はよく分かっていると思う。

というわけで、チート能力を持ちながらもほぼ毎回死に続けるりすか彼女は決して強くなく、むしろ普通の少女以上に弱く深く傷ついていく。このあたりも「本格」と謳う所以と言えるだろう。表面上の作風は所謂 ”魔法少女” モノだが、その実、SF・ファンタジー作品を読んでいるというより水曜10時とかに地上波で放送している推理ドラマを観ている時の心境に近い。そう、これは現代版大人向け正統派魔法少女奮闘記なんだ。大人こそ読んで欲しい名作かと。

 

≪無料試し読み≫

まんが王国

ちなみに、全部読むほどじゃないって人の為に『新本格魔法少女りすか』を無料試し読みできるサイトを紹介しておこう。

俺がよく利用しているのはまんが王国だ。

漫画を読むときに試し読みをすることは大事だと俺は思っていて。自分に合っているかを手っ取り早く確認するには、まず読むことだ。何よりもまず行動っていうし、ここで『新本格魔法少女りすか』の世界を覗いてみては如何だろうか。利用できるものは何でも利用すべきというのが俺のポリシーだ。俺も結構ずっと使ってるから安全面は問題ないハズ。

 

 

【まとめ】

以上、『新本格魔法少女りすか』の紹介&感想記事でした。

大人が読める魔法少女作品って意外と少ないような気がしていて、例えば直近で最も市民権を得ているのは『魔法少女まどか☆マギカ』だと思うんだ? でも、普通の大人は観ない(異論を持つクソにわか共もいるだろうが、普通の大人は観ない)。

では、この普通の大人達に向けて漫画・アニメの認知度を高めるために何が必要かというと、リアルな要素の追加である。思春期の少年少女が真正面から悩みに向き合う姿だ。『キッズウォー』も『3B組金八先生』も子供がリアルな悩みに足掻き苦しんで生きているからこそお茶の間でウケた。この要素の比重が大きくなればなるほど普段アニメを観ない層も取っつきやすくなるということ。そういう意味で、本作は大人も読める本格的な魔法少女作品であると言える

こういう大人でも読めて面白い作品ってのがドンドン世に認められていくことこそが、二次元分野の更なる社会的価値向上に繋がると俺は思います。『新本格魔法少女りすか』良かったら読んでみてね。

ではまた。

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