近年稀にみる実写成功例『ミスミソウ』が原作を超えてたの知ってる?

2018年、ミニシアターを中心に上映された実写版『ミスミソウ』。2007年~2009年の間『ホラーM』で連載されていた押切蓮介さん原作の完成度も言わずもがなだったが、この実写化もまた、負けてない秀作。

東京から田舎の中学校に転校してきた野咲春花は、学校で「部外者」扱いされ、陰惨ないじめを受けることに。

春花は唯一の味方であるクラスメイトの相場晄を心の支えに、なんとか耐えていたが、いじめはエスカレートしていくばかり。

やがて事態は春花の家が激しい炎に包まれ、春花の家族が焼死するまでに発展。春花の心はついに崩壊し、壮絶な復讐が開始される。映画.comより引用

キャッチフレーズは「家族が焼き殺された日、私は復讐を決めた。」というド直球さ。潔い、というかこれしかない。原作も良くて…というか、押切蓮介作品は『ハイスコアガール』も『でろでろ』も『サユリ』大好きなんだけど、『ミスミソウ』はちょっと特別だよね。ここまで凄惨な復讐を描けるのは押切先生しかいない(黒押切)

 

 

主演:山田杏奈の代表作

原作準拠の惨殺劇。「絶ッ殺」という固い意志を示す視線を見事に再現したのは『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』の山田杏奈。ボウガンで遠くから狙ってくる男子生徒に対して殺意の波動を放出する様は、元々心に闇を抱えてたのでは? と思わざるを得ないほどの名演技。『小さな恋のうた』にも出演してたけど、強くて可愛い女優は昨今に置いてレア度SSR。この空気感を出せるのはリアル夜凪景と言っても良いくらい。もっと色んな映画出て欲しい(具体的には次の『冨江』とかやって欲しい)。

 

若手役者陣がとにかく優秀

唯一の救いである相場くんを演じるのは清水尋也。お前こんな演技できたんかい! という感想を、誉め言葉としてここに記したい。気付いた? 『ちはやふる-結び-』の須藤先輩だよ。この狂演なくして本作は完成しなかった。

もちろん、いじめっこグループも総じて良い演技をしてた。「ボウガンでお前の親父脅して、家に火ぃつけたのは俺だぁあああ」と叫びながら、その娘にも同じボウガン向けてくる全く同様の余地なしの男子生徒役も最高にダサい死に方するし。バイプレイヤーが優秀だからこそ主演陣が映えてる良き例。

すべては押切先生の原作が優れていたからこそなんだけどさ。思春期のスクールカーストにおいて悪意は容易に伝播すること、日常は一瞬で崩壊させることが出来るし、人間は一瞬で消せる。憧れだった人間は振り返れば小さな人間だし、雑魚のような3軍でも本気を出せば小さな世界くらい壊せること。その当たり前がしっかりと3次元化されてた。

 

誇張無しに再現度105%

流石に、あまりにも残酷なセリフは無くなってたけど、原作と違うのはそれだけかと。過激な暴力・人間が狂う瞬間のあのピリつく空気は完璧に原作準拠だった。

俺、押切先生の話は勿論だけど絵も好きだからさ。正直、実写化されても全然観る気になれなかった。「いやいや、あの絵があってこそストーリーが映えるんでしょ」なんてほざいてた。燃やしたい。たぶん俺が『ミスミソウ』という作品を知らないで観ても、「なんか、押切蓮介の作品っぽいなぁ」と感じる忠実さで、心の内面を描いてる。

ちなみに、”再現度105%”としたのは、映画に改変があったからだ。賛否両論なのかもしれないけど、俺は非常に良いアレンジだったと思う。美作昴もビックリのパーフェクトトレース+α

 

超意外な生存エンド

大概の作品だったら、絶対に「そりゃ悪手じゃろ」と言われる、死んだキャラの生存エンド。それを見事にまとめあげ、”救いのある『ミスミソウ』”を完成させていた。監督に拍手。

どんな人なんだろ? と思って調べたら内藤瑛亮監督というらしい。俺はこの人の他作品、観たことないんだけどね、本作に至っては素晴らしいと思った(押切先生ファン?とまで思えた)。いつか同監督の作品に出合ったら本気出して観てみよ。とにかく、俺はこの映画の終わりかた超好き

 

物語の真の終わりが描かれた

そもそもこの映画自体が、連載終了後の完全版をもとに作られている。読んだ人は分かってる事だから普通にネタバレするけど、この完全版には前日譚とエピローグが追加されている。

映画版はこれのエピローグ部分を改変したということになる(というか別のシーンに差し変わっただけで、おじいちゃんと春花の会話はあったのかもしれない。いや、あったんだよ。俺たちの心の中でな)。完全版と言うだけあって、これを描くことで一気に物語に深みが出たんだよね…おじぃちゃん…。

春花が妙子に言った最後の言葉「胸を張って生きて」から、映画のラストの爽快感&エモさが生まれるなんて、誰が想像できただろうか。この技量は敏腕監督と言わざるを得ない。『ミスミソウ』の新しい完全版を魅せてくれ、本当にありがとうございました。観終わった後の感じで言えば、完全に原作を超えてると思う

まとめ

漫画の実写化は基本的に失敗するのが定例になってしまったことは悲しいが、この『ミスミソウ』に関しては大成功。

原作ファンこそ観て欲しい作品なので、チェックして欲しい。

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