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愛に言葉は要らない、『シェイプ・オブ・ウォーター』観るとはっきり分かんだね

『パンズ・ラビリンス』・『パシフィック・リム』で知られるギレルモ・デル・トロ監督。親日家としても知られる氏が作った中で最高の評価を受けている作品、それが『シェイプ・オブ・ウォーター』だ。

【あらすじ】

1962年の冷戦下のアメリカ。発話障害の女性であるイライザは映画館の上にあるアパートでただ独りで暮らし、機密機関「航空宇宙研究センター」で清掃員として働いている。アパートの隣人であるゲイのジャイルズ、仕事場の同僚で不器用なイライザを気遣ってくれるアフリカ系女性のゼルダに支えられ、平穏な毎日を送りながらも、彼女は恋人のない孤独な思いを常に抱えている。

そんな日々のなか、宇宙センターに新メンバーのホフステトラー博士が一体の生物の入ったタンクを運び込む。普段はイライザに不遜な対応を見せる軍人ストリックランドが、生物を邪険に扱った報復を受けて指を失う騒ぎがあり、清掃のために部屋に入ったイライザは初めてその生物を直視する。生物は「半魚人」と呼べる異形の存在だったが、独特の凛々しさと気品を秘めた容貌をもち、イライザの心を揺り動かす。彼女は生物に好物のゆで卵を提供し、手話を教えて意思の疎通をはかる。ふたりは親密な関係となってゆく。Wikipediaより引用

 

 

種族を超えた純愛物語

キービジュアルだけ観るとさ、普通に半魚人が女性を襲っている様にも見えるのが面白い。それだけ、異形の存在は人間にとって畏怖の対象なんですよと暗に示されている気もしてくる。

だが、本作の主題は「愛」全振りだ。話すことが出来ない(耳は聴こえる)主人公のイライザが半魚人とSEXするという(本作最大の衝撃シーン)「種族の違いなんてなんぼのもんじゃい!愛の前にはそんなこと関係ないんじゃ!」 と言わんばかりの超純愛ストーリーだ。未視聴の人は『美女と野獣』をイメージしてくれれば本作の雰囲気を理解しやすいかもしれない(厳密に言えば真逆の視点を描いているけど)、あれくらいピュアラブ映画。

 

 

ギレルモ監督史上

最高評価

第90回アカデミー賞で作品賞・監督賞・美術賞・作曲賞の4冠。あと英国アカデミー賞で3冠して、ゴールデングローブ賞も2冠してるし、ベネチア国際映画祭で金獅子賞。

ふぁー? そんなことある? 「賞って…独占禁止法とか無いんだ…」と俺が意味不明な感想を抱いたのも仕方がないと思うんだ。ちなみに、他にもいろんな国の映画賞に受賞してて、だいたい50個くらい賞とってる

よくもまぁこんなに…いや、だが、評価されるのも分かる。それは、この作品が前述のように『愛』を主題に置いた物語だからだろう。万国共通で『愛』は大事にされている。しかも、差別に苦しむ人が、人生においてどれだけ苦悩しているのかという様子を絶妙な塩梅で表現しているのも高評価ポイント。

「彼はありのままの私を見る。幸せそうに…私を見る。」は作中でのイライザの名セリフ(手話)なんだけどね。この言葉だけで、様々な迫害を受けてきたであろうことを視聴者に創造させる力がある。こういう話は得てして評価されやすい。普段、下品なウィットに富んでる俺も評価しちゃうんだもん、間違いねぇよ

 

ちなみに、ギレルモ・デル・トロ監督に関しては上の記事で語っているので俺と同じように奇特な趣味をお持ちの方はご一読下さい。非日常感が味わいたい人は彼の他作品も観た方が良い(自己責任でお願いします)

 

 

今の時代に対する風刺

米ソ冷戦中のアメリカを舞台に、政府の極秘機関で働くと言うと、現代とは全く関係ない世界の様に思われる。だが、ギレルモ監督は本作の記者会見で面白いことを言っていた。

「今の世の中、“よそ者は信用するな、警戒しろ”という風潮があり、愛がなかなか感じられない困難な時代だ」

俺的言語で意訳すると「ぶっちゃけ今の時代は、冷戦時代のように、人を信用しない・愛さない時代だ。これは大変宜しくない。私がメスだったらストレスで生理予定日ズレる。」だ。だから敢えてこの時代設定にしたんだろうね(超推測ゆえ信じるな危険)。

色々と脱線したけどさ。評価されているだけあって、扱っている主題の大きさはかなり大きい。得てして大きなことを社会に発信しようとすると、単純なメロドラマではなく、ファンタスティックな寓話の方が多くの人の心に刺さる。本作はこの点が相当考えられていて(例えば、異形の半魚人が派手な技を繰り出して、敵をバッタバタやっつけるという事は決して無い)、脇目も振らずに「愛」について本気で考えましたって作品。たぶん女性の方が好きな人多いんじゃないかな。かなりドラマチック。あと最後のシーンの神々しさが異常

【まとめ】

ちなみに、この記事のアイキャッチ画像になってるのは天野喜孝氏(FFのキャラデザが一番有名)が本作を描いた一枚絵。

映画公式サイトにてSP・PCどちらもダウンロード可能という大判振る舞いで、有名だったから俺も当時ダウンロードしてたけど、この映画を観た後だと、まったく絵の印象が違うのが面白い。こういう楽しみ方が出来るのも、良いよね。