ずっと色物かと思ってた『出会って5秒でバトル』を読んで5分でハマる

完全に色物の作品タイトルゆえに甘く見られがちだが、本作は非常にアツい想いをぶつけ合う秀逸バトル作品だ。また、その戦闘も『ハンター×ハンター』並みに頭脳を使う展開の目白押し。異能バトルはかく在るべき。

<あらすじ>

成績優秀でゲームが趣味の16歳の高校生・白柳啓は普通の日常に退屈していた。そこへ突然現れた謎の包帯男の襲撃を受け、ゲーム感覚で撃退することに成功したが、その後現れたマジシャン風の女に殺されてしまう。 病院風の謎の施設で啓は目を覚まし、同様の境遇の者ばかりが集められた会場に例のマジシャン風の女、魅音が登場。それぞれに与えられた「能力」を使って戦うことを説明される。 一対一での戦いの1stプログラム、5人グループが一対一で戦う2ndプログラム、チーム戦の3rdプログラムを経て、舞台は監視者1名を含む12人の6グループが戦う4thプログラムへと移っていく。Wikipediaより引用

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それではお待ちかね。下記にて『出会って5秒でバトル』に関して独善的に語っていく。楽しく読んで、作品のことを好きになってくれると嬉しい。

デスゲーム開始

本作は2015年、ウェブサイト上にて連載を開始した(ゆくゆくはリメイク版が『裏サンデー』『マンガワン』へ)。2015年といえば、昨今のラノベ・ドラマ・映画などによって所謂”デスゲーム”作品というものが消費されつくした頃だ。『バトル・ロワイヤル』に始まったこの系譜に対する驚きは、生まれ続ける同系統作品によって日本人の間でも浸透・吸収され、この手の作品に対しての驚きというものが皆無に等しくなった

一般的な日本国民よりも少しばかり多くの漫画作品に触れてきた俺は、ちょっぴり食傷気味だったこともあり「はいはい、またデスゲームものね……」と、タイトルを見た時点で世間と同様の感想を抱いたのを記憶している。それから数年本作に触れずに生きてきたというワケだ。この時の俺の愚行を、つい先日、初詣で神に謝罪してきた

去る2020年11月、アニメ化が発表されたことからも伺えるが。俺がタイトルだけで食わず嫌いしている間に『出会って5秒でバトル』は異能バトル漫画として超王道を突っ走る人気作品まで成長を果たした。それもそのハズだ……面白れぇもん……。皆、決して名前だけでその本質を理解した気になってはダメだぞ。真実はいつも一つ。

 

 

超頭脳派バトル

それでは、何がそんなに面白いのかを語ろう。タイトルの通り、基本的にはバトル主体のストーリーであることに嘘偽りは無い。そして”出会って5秒でバトル”が始まるという点に関しても概ね齟齬は無い。人気の秘訣はバトル内容だ

上の画像の通り、主人公の能力は「相手があなたの能力だと思った能力」。異能バトル漫画なり小説なりを読みなれている人はこの能力を聞いた時にどう思うだろうか。俺的にはメチャクチャ弱い能力だと思ったね。だって、自分が自分の能力だと思った能力だったら脳内リミッターを外して必死に「強い能力にしよ~」なんて考えることが出来るけど、対戦相手主体で自分の能力が決められるなんて、絶対弱い能力にされるやん!  まぁ、条件と使いようによっては柔軟性がありそうな能力だとも思ったが……。本作はこの主人公の異質な能力を中心として波乱が巻き起こっていく。

 

この能力が極めて面白いんだよな。つまり、この能力はネタバレしてる相手じゃない場合に限って無限。会話・行動によって相手を誘導し、最適な能力を自分が持っていると相手に想像させるという心理的駆け引きが生まれる

例えば、上記画像は物語中盤の決定的な場面なんだけど。攻撃を全て無効化する”リーダーの能力”(※正確にはこれも間違った認識)を相手が知っていることを前提として、”リーダーの能力”のことを何気なく会話の中で刷り込ませることによって、決定的な場面で相手の想像範囲を意図的に制限する。もっと踏み込んだ解説をすると、実際にこのリーダーと呼称されている人物の能力は「相手と平和的に交渉を行える能力」で、この副産物として交渉中は攻撃が一切効かなくなるっていう能力なんだよね。つまり、相手の認識と想像の絞り込みによっては本来存在しない「攻撃を全て無効化する」能力を具現化できるということ。とんでもねぇ。

極論、「俺の能力名はインデペンデンスディだ!」と伝えれば、相手の想像力によっては宇宙人の大群を召喚することも可能(なのかもしれない。作中にそんなぶっ飛んだ展開は無い)

 

 

純粋に展開がアツい

もちろん人気の秘訣という点で言えば単純に展開がアツい。完全な能力バトルだけの作品でこんなに人気が爆発するワケもなく、純粋にストーリーが面白い。クールな主人公:アキラが無双していくだけではなく、苦戦の中で苦悩しながら葛藤し、成長していく人間ドラマがこの漫画には詰まっている。サブキャラ・モブキャラも例外ではなく(これが凄い)、一人ひとりが謎のデスゲームの中で確固たる信念を持っているからこその衝突、育まれる友情。果ては敵キャラに至るまでが信念をもっていることが巧みに描かれている。そこに異能という無限大のバトル要素が加わるワケだから、盛り上がらない訳がない

ちなみに、俺が欲しい能力は主人公アキラの父が持っている「相手に一つ使命を与える能力」だ。作中で詳細はまだ語られていないけど、これ普通に『コードギアス』のギアスだからな。

 

 

<まとめ>

というワケで、今回の記事は『出会って五秒でバトル』について語らせてもらった。俺の中で”アニメ化されて覇権とりそうな作品”トップランカーだし、純粋に漫画の出来が良すぎるから早めのチェックをオススメする。決して、タイトルに惑わされてはいけない、これは超王道少年漫画だ。ではまた。

『Levius-レビウス-』が新時代のSF作品であることに世界はまだ気づいてない

新時代SFという言葉がこれ以上なく相応しい作品『Levius-レビウス-』。機械義肢の拳で放つ冷たい右ストレートには燃えるような想いが宿っていた。

あらすじ

強き者。美しき者。その名は――レビウス。 新生暦19世紀――戦後の帝都では、人体と機械を融合させて戦う「機関拳闘」という格闘技が行われていた。 戦争で父親を失い、母親も意識が戻らない状態となった孤独な少年、レビウス=クロムウェルは、彼を引きとった伯父ザックのもとで、機関拳闘の若き闘士として頭角を現し始める。 そんなある日、競技の最高峰であるGrade-1に挑戦する機会が、レビウスに訪れる。同級1位のヒューゴとの特別試合に勝つことが条件だったが、そのヒューゴが前哨戦の相手、A.J.という謎の選手との戦いで…!! 人間の尊厳と、文明の未来が火花を散らす、頂上バトル、ここに始まる。Wikipediaより引用

 

作品概要

『ウルトラジャンプ』の読者以外にはまだまだ認知されていない作品(されるべき作品)だと思うので、作品自体の簡単な前知識を書かせてくれ。

まず作者は中田春彌先生。2019年、ファンタジーアニメとして熱狂的な支持を生んだ『Fairy gone』のキャラクター原案(妖精も)を手掛けた方だ。この時点でそのセンスの異質さを感じ取ってくれると思うが、その画力の高さは本作でこそ十二分に発揮されている

連載開始は実は2013年と早い。『ドロヘドロ』『海獣の子供』『人類は衰退しました』『フリージア』と癖の強い作品を多く扱っていた伝説の雑誌『月刊IKKI』(現在は休刊中)出身のバリバリSF畑。同誌が2014年に休刊してから『Levius/est』とタイトル変更しウルジャン移籍という経緯を持つ。

SF×格闘技というありそうで無かった(り、あったり)ジャンルを確立しており、2019年にはNetflixで全世界に向けアニメ化を果たした。余談だが、アニメ版と原作では大きく設定が異なっており、一言で表すとアニメ版は色々軽やかに仕上がっている。SF作品をこよなく愛する俺からすれば断然全作をオススメするが、アニメ版はアニメ版で非常に良いと断言しておこう(主に最終回のあの娘の笑顔)。

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拳に宿す想い

まず主人公:レビウスの戦う理由に触れておこう。その半生を端的に言えば、”戦争孤児として故郷を焼き討ちされ、瓦礫の雨の中、母親に抱きかかえられながら助かった”過去を持つ物静かな男の子。はい、王道。「あ~、あるある。こうやって復讐に駆られて強くなる、SFにありがちなダーク主人公パターンね~。」と連載当初に感じていた愚直な俺を、俺は焼き殺したい。違うんだ。レビウスが戦う理由は確かに植物状態の母親を資金的に救うためであり、過去の記憶に巣食う悪党たちに復讐することなんだけど。本作の主人公の魅力はさらに先を行く。

助かる見込みが無いんじゃないかと思えるような状態の母親の描写は読者の心にトラウマを植え付けるくらい壮絶(もっとトラウマ植え付ける描写が後に出てくるが……)。そんな母親のために、戦闘用ではなく医療用の義肢(母親の形見的な)を用いて戦う少年。中々に感情移入する設定だ。そしてお待ちかね! ようやく焼き討ちした組織の登場。全てを投げ捨てて復讐に走るかに思えたがこの読者の予想は大きく肩透かしを食らう。最初こそ飛び掛かり相手を殺さんとするレビウスだったが、復讐相手(無口の美少女:AJ)の瞳を見るやいなや「助けを求めている……?」と菩薩もびっくりの読心。あの子にも何か戦わなければいけない理由があるのでは……? と葛藤の末に敵陣突入。家族を人質に取られ操られているだけのAJの境遇を理解し、正義の心を持って復讐相手を救うことを決意する。そう、レビウスは誰よりも正義の心を持った優しい少年なんだよ

 

 

怒涛のデスマッチ展開

そして始まるレビウスvsAJの戦い。内容としては、まるで4部作1作目のボスが所見殺しの上レベル100カンストでも勝てないくらいの超インフレ展開。この序盤から一気にラスボス感がたまんねぇんだよ……。駆け抜けるように展開するリズム感は良作の基本。それでいてしっかりとストーリーに重さを持たせるところは流石としか言えない。

敵組織の親玉:Dr.クラウン(上記画像のピエロ)の悪逆非道さと糞ッタレ具合がいい感じに物語にスパイスを与えつつ、命すら顧みずリミッター越えた強さで圧倒してくるAJに対して、セコンドにつくザックス(レビウスの叔父)と、天才義肢エンジニアであるビルという頼もしすぎる仲間のフォローにより奮闘するレビウス陣営。この展開が死ぬほど熱い。いままでどこか噛み合っていなかった味方陣営が圧倒的悪を前にして全力で力を合わせるウルトラ正義展開。しかも俺が凄いなと思ったのは、ザックスとビルは自分ではリングに立っていないので、戦うのはレビウスに任せるしかないのに、これ以上なく死力(視力)を尽くして一緒に戦うという点だ。当ブログで何度も述べているが、バイプレーヤーが魅力的な作品は神作

戦いの過程~結末まで全く目が離せない展開で、人間ドラマが涙腺を刺激しまくってくるストーリー構成なので、SF作品はちょっと……ていう人でも是非読んで欲しい。

 

 

更なるステージへ

恐ろしいくらい濃密な激闘で、漫画でいうと単行本20冊くらい読んだんじゃねぇか? と思ったが、これ、実際には2巻(18話)までの出来事だから。もちろん彼らの物語は続いていくワケで。更なる強敵の登場。そう、いくつかグレードが存在する「機関拳闘」の中で、作中で行われていた戦いは”GradeⅡ”。AJに勝利し、世界に13人しか認められていないという”GradeⅠ”へ昇格を果たしたレビウスの前に登場する圧倒的強者感を漂わせる新キャラ(イケメン)。一人ひとりが国家軍事力に匹敵する(詳しくは上の画像参照)という逆リーマンショックが起きた気がするが……、そんなところに投げ込まれることになったレビウス。物語の続きに心躍らせる最高の展開で序盤のイントロダクションは終了! ここまで気持ちの良い「俺たちの戦いはこれからだ!」は過去あっただろうか……いや、ない。まったく、楽しませてくれるぜ。

まとめ

ということで、『Levius-レビウス-』の俺的紹介記事でした。ただこの記事で扱った内容ってのは新装版上下巻の内容だけしか紹介してないので、より本作の世界観を堪能したい人はぜひ連載中の単行本で(地上波放送中のアニメ版は全くの別物なので、いつ観ても◎)。このすぐ後に世界最強”GradeⅠ No.1”の男が出て着たり、アニメで貧乳強気少女として物語を彩ったナタリアも出てくるので、飽きることは無い。てかこの新装版は近年稀にみるSF漫画の良作として永久保存版だと思うね。俺は応援し続けます。ではまた。

見たことない人のために『バキ』を要約したからこれ読んで最強目指そうぜ

シリーズ累計で8,000万部を越える超大作『バキ』シリーズ。この作品には「最強」とは、そして「強さ」とは、という人類最大の問いに対する答えが詰まっている。

各シリーズ概要


第1部 グラップラー刃牙
1994年にOVA化、2001年にはテレビアニメ化されている。全42巻。 地下闘技場編 物語の導入部分にあたり、東京ドームの地下に存在する地下闘技場で極秘に行われる格闘試合を描く。普段は平凡な17歳の高校生だが、地下闘技場では無敗のチャンピオンとして君臨する主人公・範馬刃牙。彼に挑戦する鎬兄弟やマウント斗羽との試合が行われたほか、愚地独歩対範馬勇次郎戦なども描かれている。

第2部 バキ
『グラップラー刃牙』の続編。全31巻。第1部に比べ、「恋愛」や「性」の要素が濃厚である。2004年には「週刊少年チャンピオン バトル増刊 バトリズム」に読み切り『範馬勇次郎誕生』を掲載。『範馬刃牙』2巻に収録された。新装版13巻から17巻には、最凶死刑囚のその後を描いた描き下ろし短編『REVENGE TOKYO』が収録されている。

第3部 範馬刃牙
『バキ』の続編。全37巻。最終編である地上最強の親子喧嘩編で、刃牙と勇次郎の因縁に決着が付く。また、『週刊少年チャンピオン』にて『範馬刃牙』の連載を中断して描かれた『ピクル』が収録された外伝も発行されている。

第4部 刃牙道
『範馬刃牙』の続編。全22巻。『週刊少年チャンピオン』2014年16号から2018年19号まで連載された。2014年16号では一挙4話、102ページに渡って掲載し[3]、続く17号と18号も各号に2話掲載された[4][5]。前3作とは異なりストーリーの区切りはなく、一貫してクローン技術と降霊術で蘇った宮本武蔵と現代の格闘家たちとの闘いを描く。

第5部 バキ道
『刃牙道』の続編。『週刊少年チャンピオン』2018年45号から連載開始。Wikipediaより引用

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第一部『グラップラー刃牙』

前述した概要を読めば分かる通り、これは戦いのテレクラである(作者が呼称)。よく巷では”地上最強の親子喧嘩”というワードが浸透していて、この印象が強すぎるけど、そんなことはないいや、まぁそうなんだけど。主人公である範馬刃牙と父である範馬勇次郎が実際に戦ったのはシリーズ通して僅か2回。むしろこの親子以外の登場人物の戦闘が大部分を占めている。

とはいえ、シリーズ最初期の『グラップラー刃牙』では主人公であるバキの壮絶な半生が描かれ、大別すると全42巻の中で3つに分けられる

 

<地下闘技場編>

東京ドームの地下に日本古来から存在するコロッセオで、世間から極秘にされた戦いが日夜行われているという物語冒頭からいきなりトンデモ展開。まぁここまでは良い。漫画とはキャッチ―さが大事だ。この地下闘技場のチャンピオンとして君臨しているのが主人公のバキで、苦戦しながらも毎回勝利を手にしていく圧倒的強さが描かれる…かと思いきや、圧倒的暴力親父:範馬勇次郎の乱入。会場は鮮血で染まり、空手の父と呼ばれる愚地独歩(読者から圧倒的支持を集める超人気キャラ)も全身ズタボロ(というかそれどころじゃない)にされた。※上の画像参照

 

<幼年期編>

ここまで読んだときに読者は気づくと思う。「あ、これあれだ。ドラゴンボールだ……。どんだけ強くなっても新しいキャラが出てきて永遠に終わらない戦いが続くんだ」ってな。半分正解。だがこれは『バキ』。そんな二番煎じではここまで人気は出ない。ちなみに、俺はこの幼年期編と呼んで刃牙すごい好きになったんだよ、過去編を丁寧に描く作品は神作。要約するとこの幼年期編では、刃牙がどうやって地下闘技場チャンピオンになるまで強くなれたのか、そして父との最初の対決&母との別離という物語の源泉が描かれる。ここを読まずして刃牙ファンならず。

 

<最大トーナメント編>

世界中の達人たちを集めた史上最大の無差別級プライド選手権。空手を完成させた愚地克己、暴走族トップの柴千春、戦える達人:渋川剛気先生、烈海王、ジャック・ハンマーと今後レギュラー化するメンバーが続々と登場した。また上の「幼年期編」で戦った敵が成長して再登場するという点でも非常に胸アツな展開である。『ドラゴンボール』の天下一武道会でも思ったが、主人公そっちのけで行われるトーナメント戦というのは漫画という作品にとっては鬼門だ。組み合わせ次第でその回の人気が大きく浮き沈みする。だが全く飽きることなく読めた。そう、『刃牙』とはただの親子喧嘩作品ではない。漢たちの生き様を描いた作品なんだよ。だから主人公以外の戦いも面白い。全員が全員、”最強とは?”という想いを胸に技術(と筋肉)をぶつけ合う様は、男だろうが女だろうが関係なく濡れる。特に決勝戦の刃牙vsジャックハンマーの兄弟対決は必見。

第二部『バキ』

「最大トーナメント編」での大団円を超え、8年に及ぶ連載を一度終了させた『グラップラー刃牙』。しかし同年1999年復活『バキ』として復活を遂げた(しかも間に外伝を挟んでいるから実質ほぼ休み無し)。あれだけの大熱戦を繰り広げた以上、さらに上の戦いを創造することができるのだろうか……と俺は不安に思ったんだが、えぇ、全くの杞憂に終わりました

サンドバックに人間を詰めて送り返すのはこの作品だけ。

 

<最凶死刑囚編>

示し合わせたかのように脱獄してきた最強の死刑囚たちとの戦いが描かれた。この死刑囚たちがヤバい。電気椅子くらっても生きていたり、爪も引っかからないツルッツルの壁を50mくらい昇って刑務所脱獄したり、そんな極悪強靭な奴らとの”武器の使用以外すべてを認める”という何でも有りルールで行われる街を舞台にしたリアル逃走中(リアル戦闘中)。全編に渡って「敗北とは何か?」という問いを追求しつつ、主人公のバキに至っては「愛とは?」という哲学的ウィットに富んだ内容となった。炎すらも無効化するマ・ワ・シ・受けがいともたやすく行われる名勝負の数々(というか普通に炎を吹くな)もさることながら、戦闘狂たちの考える愛の形も必見の濃い~内容。

 

色を知る息子を見守る父親

戦いしか知らないバキに初めて芽生える恋心。「気づいたらもう好きになっていた」というピュアな想いに応えるように、惹かれ合っていく二つの心。そしてそれを超至近距離で見守る地上最強の父親(超絶隠密肉親ストーキング)。なんだろう……感動するシーンなのに、親父のおかげでフフッと笑いが零れてしまう。このシリアスな笑い、アレだ、どこか『カイジ』を思い出す。本人たちはいたって真面目なのに、何故か笑いが込み上げてくる。こんな筋肉ダルマたちすらも可愛く思えてくる……。これもまた『バキ』の魅力ということだろう。良き。

 

<中国大擂台賽編>

前編にて、死刑囚が使う毒を食らい満身創痍で痩せこけていくバキ(死刑囚は瞬殺した)。「毒を直すには毒だ。戦いだ」と謎理論により中国で行われる最強決定戦に招致されるという、頭ん中までタンパク質な天下一脳筋国際交流さすがの俺も若干引き気味だったが、ここで驚くべき展開が待っていた。そう、日米代表勢の一員として、憎き父親と刃牙のチーム戦という形での共闘だ。これは熱い。父親を殺すために強くなってきた息子にとってはこれ以上なく耐えられない展開……かと思いきや、ちょっと嬉しそうな愛憎親子。今思えばこの辺りから少し様子が変わっていた……詳しくは後述する。最終決戦の範馬勇次郎(究極の暴力)vs海皇(究極の武)の戦いは現代武術氏に残すべき名バトルなので必見。ちなみに刃牙の毒は相手の毒手を食らい中和されました(完治!)

 

<神の子激突編>

表世界の公式ボクシングで最強を誇ったモハメド・アライの子供が梢江(刃牙の彼女)に猛アプローチをかけ、刃牙と彼女を争って戦う展開。最強と最愛とは? という究極の戦いを魅せてくれるかに思えたが、蓋を開けてみれば刃牙の圧勝。ここで勘違いしてはいけないのは、彼は決して弱くはない。パンチ一発で全身のプロテクターぶっ壊す人類がいてたまるか。そう、刃牙が強すぎた。ぶっちゃけ可哀想なくらいに惨敗した彼の行いは一見無駄なように見えるが、この戦いがあったからこそ刃牙は自分が十分に強くなったことを確信し、父:範馬勇次郎への挑戦状を叩きつけるという神展開を引き出したそう、モハメド・アライJr.は犠牲になったのだ……。そしてまたここで一旦連載終了。

第三部『範馬刃牙』

伝説の第3部。色々と盛り沢山な内容になる『範馬刃牙』は、シリーズでも屈指の密度となっている。俺もこの記事を書きながら「あれ、この章だけで全然一記事いけたな……?」と思えるほどだ。そろそろ疲れてきたかと思うが、安心してくれ、あと半分くらいだ(たぶん)。ここから一気に戦いは加速するので、覚悟して読んでくれ。

 

<超絶監獄バトル編>

[実践シャドーボクシング編は割愛]

さらなる強者を求めて、大統領を拉致してアメリカ・アリゾナ州刑務所に潜り込む刃牙。目的はミスター・アンチェイン(繋がれない男)ことビスケット・オリバ。範馬勇次郎すらも認めるリアルハルクかと思えるような圧倒的筋肉ダルマ男の自由な生き様は刑務所職員すらも従える。単純な力という、人類の根源的な恐怖を形にした戦闘スタイルにはさすがの刃牙も苦戦し、追いつめられたけど、最終的にはノーガードのガチンコ殴り合いでアメリカ最強を沈めた。余談だが、『プリズン・ブレイク』に刃牙が出演したら10分くらいで完結することになるだろう

 

<野人戦争編>

はい、お待たせしました。原始人との戦いが始まります! 1億9千年前の冷凍化石から現代技術の粋と偶然によって目覚めたピクル。ティラノサウルスを捕食していたという規格外の化物が現代に蘇り、騒ぐ一般大衆。もちろん格闘家たちも例に漏れず興奮するが、それは一般人とは違い、コイツと戦いたいという欲求だった。我先にと群がる今まで登場した実力者たちを一蹴し(ピクルvs烈海王とピクルvs愚地克己は本当に超名バトル)、最終的には刃牙も戦いの舞台へ。結果:勝ちます。この時に刃牙の異常性が初めて提言され、圧倒的没入感を有する想像力が刃牙の強みということが読者に明かされる。幼少期から最強の父を倒すべく常に強者(動物も含む)との戦いを想像・実践してきた刃牙にとっては、原始人・恐竜との戦いのイメージも造作なく、逆にその戦闘法を模倣すれば相手には恐竜が具現化したように見える。そう、もはやスタンドや念能力の類。原始最強を倒した刃牙に、もはや地上に並ぶ者はおらず、いよいよ父親:範馬勇次郎との戦いに向かうのだった(ティラノサウルス倒す男より当たり前のように強い父親……)

 

実況スタイル

ここで一度『刃牙』シリーズにおける戦闘実況スタイルをに言及したい。こと戦闘において漫画界のパイオニアであり先駆者であると言える本作。連載を続けるにつれ、戦闘中に巻き起こる奇々怪々な技術ラリーの実況も進化を遂げた。結果、辿り着いたのが、未来の視点で語られる戦闘解説だ。上の画像は原始人:ピクルvs刃牙の戦いを観戦していた烈海王が2人の戦闘を語るシーン。まるでTV番組のインタビューを観ているかのようなコマ割りと見ている者に語り掛けるような丁寧な解説は、未来の視点で「思い返せば……」という立ち位置になっているからこそ。まさに『プロフェッショナル』スガシカオの歌声が聴こえる。

 

<地上最強の親子喧嘩編>

[強者達の戦い編は割愛]

本作は最初から一戦を魅せるために展開してきたと言っても過言ではない。いうなれば『はじめの一歩』の一歩vs宮田である(こちらは未だに実現していないが……)。いよいよ戦う父子の戦いは、もはや親子喧嘩という枠に収まらず、隠しきれない。世界的に公にされた親子喧嘩という異例の死合い、その末に唯一無二の親子愛の形を示した二人には世界中(の読者)が涙したのは言うまでもない。

 

範馬勇次郎について
ここで前知識として範馬勇次郎に触れておこう。生まれた時から意志を持っていたとされ、腹から取り上げようとする助産師に向かって「ミスの無いように気を付けろよ……」と(言わんばかりの眼力)痰を切ることから始まった彼の人生。

強者を求め紛争地域を渡り歩き、並ぶ者がいなくなるまでに成長した勇次郎はいつしか国家軍隊と同等以上とみなされることとなり、歴代アメリカの大統領は彼に聖書を抱えながら不戦宣誓を行うほど。こうして富・権力を手にし不自由なく生きていたかに見えたが、捕食者として頂点であるという事実に退屈。並ぶ者がいない人生にスパイスを……と世界各地で自分の種を蒔いた。結果、一番の成功作として育ったのが息子:刃牙ということである。

『グラップラー刃牙』幼年期編のラストでは、刃牙のことをつまみ食いと称して圧倒。自らの妻(刃牙の母親)も手にかけるという極悪非道人間破壊兵器として作中に君臨していた。

 

この世で一番の親子喧嘩

0地点で最高速に到達するゴキブリ突進、ピクルとの戦いで見出したトリケラトプス拳、今までの全ての経験と技術を集約した必殺技:虎王。刃牙の培ってきた技術と技を全て用いても勇次郎には通用せず(正確には効いているか不明)、すべて上位互換の技で返される。そんな攻防を繰り広げるうちに、世界中から集まってきた野次馬ギャラリーたちの心にある仮設が生まれてくる。「あれ? この殺し合いはこの親子のコミュニケーションなのでは?」という気持ちだ。確かに殺傷能力MAXの技をお互いに繰り出しているが、それはこの父(息子)ならば受け止めてくれるだろうという信頼ありきの応酬。”地上最強に君臨する父親と対等に会話するためには同じ高みまで登らなければいけない”と強くなった息子、宣言通り強くなってきた息子を称え、全ての攻撃を受け止める父親。形は非常に歪だが、内容としてはごくありふれた父子のコミュニケーションであると言えるのではないだろうか(いや、そんなことはないが)

 

心境の変化

今思えば、この戦いに至るまでにも刃牙の気持ちの変化は描かれていた。実の父とは言え母の仇である父親を最初は憎い存在として殺意を飛ばしまくっていたが、ともに戦い、”強さ”というただ一点において絶対に信頼を裏切らない父のことを、内心認めている自分がいることに気付いていた。

 

一方で父にも確実に変化は起こっていた。大国から畏怖の象徴として崇められる勇次郎が息子のもとを訪れ、手作りの晩御飯を食べる。こんな当たり前のことをリアルプレデターがするか? いや、しない。しかも更に、食卓を囲むだけではなく息子に対して食材に対する礼儀を教える。このシーンを読んでいる時「馬鹿なッ!」 と全読者心の叫びを代弁した俺がいた。いや……違うな……。この親子が特別だと勘違いしていた全読者(俺を含む)が固定観念に囚われていたのかもしれない。いつだって親は子を躾け、可愛がるものだし、感情のない人間などいない

 

衝撃の決着

激戦の末、母親殺害時と同じ技を食らい聴覚を失った刃牙だったが、それでも負けじと闘志を飛ばして去り行く父を立ち止まらせる。そして伝説のエア味噌汁(これはぜひ単行本で!)。マジの殺し合いという肉体言語によって初めて対話をした結果、息子に対して放った最強継承。これには鳥肌が止まらなかった。

”息子が父親に認められる”。男の人生において、これ以上の喜びは中々ないだろう。それを単行本109冊で描き切ったのが『バキ』という作品ってこと(番外編を入れれば112冊)。

強さを極めた末に行きついた親子の愛の形。これは決して特殊なものではない。ごくありふれた家庭に、ごく当たり前のように存在するモノである。だが家族仲が悪かったり、プライドが邪魔をしてお互いを認められなかったり、この”当たり前の奇跡”を逃がしてしまっている人が多いことも事実だと思う。真の強さとは、家族だろうと(家族だからこそ)逃げず、真正面から愛を伝えることなのではないだろうか。範馬親子にとってはその手段が拳だっただけってことだ。諦めず頑張った刃牙少年に拍手。

まとめ

正直、食わず嫌いで今まで読んでいなかった『バキ』シリーズ。これメチャクチャ面白かったぞ。本記事では、キリが良いので、シリーズ第三作目となる『範馬刃牙』までしか紹介しなかったけど、続編にあたる『刃牙道』『バキ道』は地上最強になった後の刃牙の戦いが描かれる。宮本武蔵(本物)との真剣勝負相撲をする地上最強……まだまだ楽しませてくれることは言うまでもない。