映画の『ピンポン』は観て、アニメの『ピンポン』観てない奴は日本国民じゃない

『鉄コン筋クリート』で有名な松本大洋先生が原作の『ピンポン』。2002年、窪塚洋介が主演の実写映画は日本でも大ヒットしたけど、2014年のアニメも映画に負けてない超名作だったんだよ。

あらすじ

才能にあふれ、卓球が好きで好きでたまらないペコ。子供の頃から無愛想で笑わないスマイルにとってペコはヒーローだ。

だが、ペコはエリート留学生チャイナに完敗。インターハイでも、幼なじみのアクマに敗れてしまう。一方スマイルは、コーチに才能を見い出され、実力をつけていく。

現実の壁にぶつかったペコと強さに目覚めたスマイル。それぞれの道を歩き始めた彼らに、またインターハイの季節がやってきた…。Filmarksより引用

アニメ版では、原作には登場しなかったけど松本大洋の構想にあったというキャラも登場してくる。それが物語を良い感じに盛り上げる。「映画は観たけど、アニメは絵が苦手」って言ってる人がたまにいるけど、全然わかってない。松本大洋の線を活かして動かされる水彩タッチのアニメーションは、原作の世界観を可能な限り限界までトレースしてるし、動きが加わることで映画版よりも情報量が凝縮されたアニメ化における一つの正解と言える

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アニメ表現の新境地

現実で役者を撮った後に動きを絵に落とし込む”ロトスコープ”を使用して作られているアニメーション。ロトスコープと聞くと、俺なんかは『悪の華』がまず頭に浮かんでくるけど(『花とアリス 殺人事件』もロトスコープだったね)、この『ピンポン』はカッコ良い構図を計算して作り込まれてる

漫画の中の「カッコ良い!」ってシーンを全部拾ってくれたセンスに脱帽。そして何より驚きだったのは、ぶっちゃけ漫画よりカッコ良いってこと。これは衝撃だった。一気に絵の力強さに持っていかれる感じはジョジョのアニメ化以来。萌え絵には無い輝きがある。単純に、スポーツアニメの表現手法で、新しい道を切り開いた超名作ってことをここで記録しておきたい。

もちろん、表現だけじゃなくストーリーも超面白い。基本的には国民の大半が観ているであろうあの実写映画版と大きな軸は変わらないんだけど、先に述べている通りアニメにしか出てこないキャラの登場によって深みが追加されている。より脇役の心境に光が当たっている感じかな。これはアニメ観た人の特権だし、ファンにとってのサービス要素でもあるから詳細は割愛する。

 

 

「おかえり、ヒーロー」

本作を語る上で絶対に外せないのは主人公ペコとスマイルの熱い友情だ。幼馴染の2人が高校に至ってなお爆発させたマグマの如き信頼関係には、理由なんか無くとも涙した人は多いハズ

観てない人の為にちょこっとだけ話すと、スマイルの名前の由来は「笑わないから」じゃない。ペコと卓球で戦ってる時に「笑うから」スマイルなんだよ。そんなスマイルが笑わなくなったっていうのは、圧倒的な実力だったペコが低迷期に入ったから。だからスマイルは子供の時の様に”圧倒的に強い”ペコが戻ってくるのをずっと待っていた

この男特有の、友達へのライバル意識が非常にアツい。突き詰めると『ピンポン』って、この2人の青春が凝縮された物語だからさ、ペコvsドラゴンとの戦いで自信と実力を取り戻したペコの姿に、作中屈指の名言「おかえり、ヒーロー」が飛び出したのは必然と言えるんですよね。

 

vsドラゴン

ちなみに、このヒーロー(強いペコ)復活の戦いとなるvsドラゴン戦も極限までアツい。映画版のクライマックスになる通り、圧倒的一強として君臨していた孤独な怪物に対して、卓球をすることの純粋な楽しさを思い出させるペコ。それだけ自分自身が卓球を楽しんでるってのが強く伝わってくる名バトル。

最初はペコに対してメチャクチャ敵意を露わにしていたドラゴンが、試合終盤では笑いながらペコとのラリーを楽しむっていうのが良いよね。一種の悟り状態みたいにトランスしながらお互いを高め合う姿に、全スポーツマンは落涙必至。認めてる者同士の戦いには凝縮された魂の会話があるんだよな。ペコも最後に「カッコ良かったぜ、ドラゴン」って言ってるし、アニメ版が映画と同じくこの試合で終わっても名作の仲間入りはしていた。だが、ここで終わらないのがノイタミナ

 

 

ヒーロー見参

アニメ版の絶対視聴ポイントは、無論、最終話(11話)の「血は鉄の味がする」だ。実写映画版ではペコがドラゴンに勝って、ペコvsスマイルの決勝戦は”ご想像にお任せします”って余韻を残して終わらせたけど。アニメ版では伝説の決勝戦を描いた

笑いながら試合をするスマイルが戻ってきて、「僕の血は鉄の味がする」って、ロボットと呼ばれていた少年が人間であったことを自覚する瞬間。ここにまず涙腺ダムが崩壊。

 

輝かしい想い出

そうそう、あと、映画版との違いとしてもう一つ絶対に観て欲しいシーンがある。舞台は未来、卓球場タムラで子供たちに卓球を教えるスマイル。日本代表として中国戦に向かうペコ。大人になってそれぞれ卓球と関わっている2人が描かれるのも本当に良い。

そして卓球場タムラに往訪するドラゴン(マフィアみたいな風体)。スマイルと2人で、海を眺めながら大人口調で仲良さげに話をする様子は、高校時代の激戦が、その後も友情を育むきっかけになったであろう事を想像させる。

高校時代、部活やスポーツに打ち込んだ想い出ってのはさ。大人になると本当に脳の端っこの小さい思い出でしかなくなる。昔を懐かしんだ時に「何であんなに頑張ってたのかなぁ」と思うことも多いが、楽しかった思い出ってのは、その後の人生に大きな影響を与える。結果として「頑張って良かった」と思えるから不思議だ。

卓球場の壁には大会の時の表彰台の写真。笑顔のスマイルには悔いは全く無い様に見えるのは俺だけじゃないハズ。

 

 

まとめ

以上、Netflixでアニメが全話視聴できるようになった記念の駆け足『ピンポン』語りでした。いや、これ本当に最高のアニメだから全国民に観て欲しい。あの映画版に負けない作品を作るってのは相当にハードル高かったと思うんだよ? でもそれを見事にこなした湯浅政明監督にスタオペだよ

アクマとかチャイナとか、語るとキリがない位に脇役たちの人間性にフォーカスした内容になってて、書いてて「収集つかなくなるな…」と気付いたんだ。だから実は800文字くらい消したけど。そのくらい面白い。映画は映画でエンターテイメントとして一級だったけど、本当に負けてない

まだの人はみて。絶対後悔しない。

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