「アニメ」カテゴリーアーカイブ

『スタージル・シンプソン:SOUND&FURY』で創造における解答設定の大事さを説きたい

Netflixに現れた謎アニメ映画『スタージル・シンプソン:SOUND&FURY』はもうご覧になっただろうか? その実態は『ニンジャ・バットマン』のスタッフで送る、40分を超えたアニメーションMV。

スタージル・シンプソンとは?

1978年、アメリカケンタッキー州ジャクソンに生まれる。父親の影響でブルーグラスやカントリー・ミュージックに触れ、次第にロックやソウルなどジャンルレスな音楽を吸収していった。高校卒業後、アメリカ海軍に入隊し、90年代後半に日本へ。川崎から横須賀の基地へ通い、週末には東京へ繰り出すという生活を送っていた。海軍生活を終え、本国にて鉄道会社に就職し、仕事も順調であったが、最愛の妻の最大級のサポートから、ナッシュビルに拠点を移し、音楽への道を再び志すことになった。2013年、ファースト・アルバム『High Top Mountain』を自主制作し、全米で31位を記録。2014年にセカンド・アルバム『Metamodern Sounds In Country Music』をリリースし、アメリカン・ミュージック・アワードでは「2014年に最も飛躍したアーティスト」に選出され、第57回グラミーではベスト・アメリカーナ部門にノミネートされるなど全米で大ブレイクを果たした。2015年には大型フェスティバルBonnaroo、Lollapallozaに出演し、数々の人気番組にも登場するなど、凄まじい勢いで全米での知名度を高めていった。

全米中のレコード・レーベルの争奪戦ののち、アトランティック・レコードと契約し、メジャー・ファースト・アルバム「A Sailor’s Guide To Earth」をリリースし、iTunes初登場で総合チャート1位(US)、カントリーチャート1位(US)、インディーロックチャート1位(US)を総ナメ。そしてアルバムはBillboard全米チャート3位を記録した。

第58回グラミーでは、同アルバムが主要部門である「最優秀アルバム賞」、そして「最優秀カントリー・アルバム賞」にノミネートされその動向にも期待がかかる、全米が最も注目している「アメリカ音楽界の最重要シンガー・ソングライター」である。

 

要するに、最高に現代っぽくしたモダンカントリー。音楽にそれほど明るくない俺、このMVで初めてじっくり聴いてみたが、流石アメリカ様が認めたサウンド。存外良い…というか、オルタナ的にジャンルを超えた新しいカントリーソング、超良いぞ。

サウンド&フューリー
※本作で使われた楽曲収録アルバム

 

ストーリーは世紀末の復讐劇

簡単なあらすじ

過去編

突然スーツ姿の男2人組に家を襲われ、平穏だった日常は終わりを告げる(たぶん神職の刀鍛冶の家系?)。1人は銃、1人は毒を用いた搦め手を巧みに用いて、刀鍛冶の一族を惨殺。

無事助かった女の子と、その父。父は一族の復讐のために亡くなった友の魂を宿した二振りの刀を打つ。あと一歩のところで復讐が成るところだったが、娘を人質に取られ惨敗。

娘は刀に宿った魂の助力もあり、その場から父と刀を持って炎のなか逃走。いつの日か必ず復讐すると誓い、今は力を蓄え成長し強くなることを学ぶ。

未来編

舞台は近未来。荒野を駆ける車に乗り込むのは甲冑姿の女の子。歳は高校生くらいかな? この年齢になるまで身を潜めていたことに驚き。

復讐の対象である2人は世界を牛耳っていた。殿様よろしく、奴隷たちから過剰な搾取をするゲスっぷり。その2人に、真正面から復讐をしかける女の子。

果たして、復讐は成るのか!? そんな話(だと思う)。

 

MVとしてのアニメーション演出

なんであらすじ紹介なのに「たぶん」とか疑問形使うんだよって話だよね、うるさいなぁぶっ殺すよ? 。いや申し訳ない。なんせセリフが一切ない作品だからさ。

本作の音はスタージル・シンプソンの楽曲のみ。だから映像は全部楽曲の良さを惹き出すために作られているってことなんだよ。途中途中で、敵のマッチョとダンス始めるインド映画みたいなシーンがカットインするし、にっくき敵役も鋭い踊りを魅せる

故に、ストーリーは観た人自身で想像するしかない。だから上にかいた「あらすじ」も決して正解じゃないと思うんだよね。コレがこの作品の面白い所だと思う。

 

※クリエイティブを履き違えてはいけない

ちなみに…「内容はそれぞれのご想像にお任せします」ってスタンス、基本的に俺は嫌いなんだけどね。いや、ちゃんと答えを持ってるなら良いんだよ。許せないのは作った側が明確な答えを見つけきれてないのに、さも”答えは万人の心の中にあります…”みたいな達観した感じでナゾナゾをぶつけてくるのが大っ嫌いなんだ。いや、ちゃんと伝わってますよ? 貴方がちゃんと無能で物事を最後まで成し遂げられない小物だという事はね。曖昧なママ世に出したモノってのは、曖昧なママ世に伝わるからね。だから答えを設定するのが大切なんでしょ。しかもその答えに独創性があり過ぎてもダメ。受け取った側は、「あ、はい…(コイツ何言ってるんだ?)」で終わるのがオチだからね(俺も編集の時に嫌と言うほど経験した)。自己満足のクリエイティブは絶対に世に評価されない。偉大なるこのことをクリエイター諸兄は心に刻んで欲しい(一般大衆のマイノリティレポートでした)。

でも本作に関してはその嫌悪感は全く無かったかな。だってこれMVやし。ハナからストーリーは後付けというか。本当の意味で”音楽を聴きながら観た人”に想像させることを目的としてる、そんな気がした。むしろ、映像をフォーカスして観た時は楽曲がストーリーを想像する手助けをしてくれる。良い相乗効果が生まれてるとすら思ったね(え、何様?俺様です)。

もちろん、映像はクオリティ高くて観てて気持ち良い。まぁ俺、『ニンジャ・バットマン』大好きだし。あ、良かったらこっちも観て。

ニンジャバットマン

 

まとめ

色々偉そうなことを書いたけど、俺はクリエイターではないので意識高いクリエイター様方は右から左へ聞き流して頂きたい。

どんなことにも言えるけど、中途半端な奴は何をしたって中途半端だし、言動の節々に中途半端さが出てる。本気で物事に取り組んだ経験がある人にとっては、何故かすごく腹立たしく感じる部分だってことは、老若男女問わず人類の総意かと。

と言いつつ、俺も中途半端なんだけどね。

耳が痛い(いや、この場合は目?)

国民的人気作『鬼滅の刃』を最終話まで読んだ時、強くなれる理由を知った

連載開始当初から異質な雰囲気を放っていた『鬼滅の刃』。

アニメ化が尋常じゃなくバズった結果、普段アニメに興味の無い層も巻き込んで一大ブームを起こしたことは記憶に新しい。

そんな本作が2020年5月18日発売の週刊少年ジャンプで堂々完結。ずっと好きだった作品が一区切りしたということで、満を持してその良さと、炭治郎が強くなれた理由について俺なりに語りたい。

あらすじ

時は大正。主人公・竈門炭治郎は亡き父親の跡を継ぎ、炭焼きをして家族の暮らしを支えていた。

炭治郎が家を空けたある日、家族は鬼に惨殺され、唯一生き残った妹・竈門禰豆子も鬼と化してしまう。禰豆子に襲われかけた炭治郎を救ったのは冨岡義勇と名乗る剣士だった。義勇は禰豆子を「退治」しようとするが、兄妹の絆が確かに残っていることに気付き剣を収める。

義勇の導きで「育手」鱗滝左近次の元を訪れた炭治郎は、禰豆子を人間に戻す方法を求め、鬼を追うため剣術の修行に身を費やす。

2年後、炭治郎は命を賭けた最終関門である選別試験を経て、「鬼殺隊」に入隊する。

 

正直、このあらすじ自体メチャクチャ懐かしいけど。こうして始まった物語は、大きく3つに分けられる。ここからは各編毎に成長する炭治郎のハイライトと、印象的な場面を紹介しながら物語の本質について語っていく。

 

竈門炭治郎立志編

アニメ一期が該当する。

自分の留守中に家族が全員惨殺されてて、妹が鬼になって混乱してたら突然現れたお兄さんに罵倒される。だから2年間修行したマン

ザ・理不尽な運命に立ち向かう不幸な少年は、妹を救う為だけに2年も山籠もりして岩も切れるようになる。修行中には皆のパパ・鱗滝さん、錆兎、真菰に出会い、最終戦別では後に同期となる五感組との邂逅を果たす。ぶっちゃけこの序盤が一番面白いし、後の物語の中でも重要人物になるキャラがドンドン出てきた。

 

辛い運命の中で育まれる愛情

最終戦別から戻った炭治郎に駆け寄って抱き着く禰豆子と鱗滝さん。この時に「よく…生きて戻った」って、仮面の下で感極まって泣く鱗滝さんの姿には本当の優しさが溢れ出てた。

ここで注目したいのは、鱗滝さんの愛情だ。年端も行かない兄妹が巻き込まれた運命に心から同情して、厳しく特訓する中にも少しずつ父親のような素振りを見せるようになる。そして最終戦別から戻ってきた時のこの反応。もうパパだろう

作中において、炭治郎の父・炭十郎が大きな意味を持ってるのはファンなら周知の事実。だが、物語開始時には既に死去しているし、序盤では回想ですら姿が描かれない。その代わりとしての役割を担っていたのが鱗滝さんだと思うんだよね。

つまりこの最序盤においては、妹の為に頑張る炭治郎の「兄妹愛」、それを支える鱗滝さんの「家族愛」が描かれていた。そう考えてみると、この作品全体の主題が見えてくる。

 

vs累(十二鬼月・下弦の伍)

恐怖政治で家族ごっこをしながら山に引き籠る、ちょっと歪んだ癖をお持ちの鬼との戦いを例に見てみよう。これは炭治郎にとって初めての十二鬼月との戦いでもある。下弦の伍なので、後に見るとただのザコ鬼なのだが序盤・竈門炭治郎立志編においては完全にボス級。.hackでいうスケィス、TOFにおける現代編のダオス、FF7Rにおけるセフィロスってところだ。とりあえず初撃で刀折ってくる。

炭治郎と禰豆子の慈しみ合う関係に嫉妬して、禰豆子を妹に欲するという現代なら完全に事案。だが家族愛に執着する敵の存在がここで丸々1話使って描かれるという好演出。ここまで話すともう分かると思うけど、『鬼滅の刃』という作品で説かれ続けるのは、”愛によって人は強くなれる”という事だと思ってる。この決戦で注目したいのは、歪んだ累の家族愛に対して炭治郎&禰豆子の兄妹愛が正しく勝利を収めることだ(あと、蟲柱の笑いながら毒を打ち込む狂気)。

 

本当の家族愛を思い出す鬼

結果で言えば、禰豆子の血鬼術”爆血”と炭治郎のヒノカミ神楽”炎舞”コンボでも倒すことは出来なかったワケだけど。アニメ19話の演出は神がかってたね。『ナルト 疾風伝』のサクラvsサソリ戦くらい動いてたし、アツかった。あと夢の中で母が出てきて鼓舞してくる演出もGJ。個人的にはこの後の20話で富岡さんに瞬殺された累の死の際、人間の時の親(自分で殺した)を思い出して謝りながら消滅していく姿に涙が止まらなかった。家族って、素晴らしいんだなぁって。『鬼滅の刃』ブームに乗っかっただけの有象無象は19話のヒノカミ神楽の演出にばかり注目して、20話はアウト・オブ・眼中だけど、この話を地上波でやったことは物凄いことだからね。アニメ一期におけるベストエピソードと言って良い。

ちなみにこの後の柱合会議もベストエピソードである(矛盾)。御屋形様が鬼滅隊員のことを「私の子」と呼ぶのもこの作品が家族愛をテーマにしてることの一端だよね。

 

無限列車編

父親から受け継いだヒノカミ神楽が鬼との戦いでの武器になるとして、炎柱・煉獄さんに話を聞きに行くエピソード。ここから皆の先輩、柱の面々も話に加わってくる。ストーリーが一気に加速するし、戦いも異能の嵐でド派手になるのがこの無限列車編以降。ここから先の戦いに比べれば、アニメ一期は児戯

 

vs魘夢(十二鬼月・下弦の壱)

乗客200人を乗せた列車と融合して襲ってくるいきなりの規格外展開。夢の中に引き込んでその中で自害しないと目が覚めないという覚悟無き者に対してはチート能力を持つ。「どんな鬼狩りだって関係ない、人間の原動力は心だ精神だ」と精神的に心を圧し折りながら幼気な子供達を洗脳して差し向けてくる悪鬼との戦いは煉獄さんがいなかったら普通に死んでたレベル。

ちなみに、ここで煉獄は家族の夢を見る。父親が自分同様に炎柱になったが急に辞めて、弟と一緒に「頑張って生きような」っていうシーンは今思うと中々に死亡フラグ

 

vs猗窩座(十二鬼月・上弦の参)一回目

煉獄さんの殉職戦。え、上弦って強杉内?と読者に印象付けるためだけの戦闘。ここでの戦闘に関しては語ることは他にない。でもこの後の煉獄さんの言葉には意味があったよね。これ以上良いこと言ってくれる先輩はいないだろうと今でも思ってる伝説の死に様だった。戦闘中の母親の回想で「強く優しい子の母になれて幸せでした」、最後は母親に「立派でしたよ」と言われながら息を引き取るのは、柱であっても同じ人間であること、その強さが家族のために鍛えられたものであるということを如実に表現していた。猗窩座についてはこの後に語るけど、上弦の壱の黒死牟の次に古い鬼という設定。そりゃ強い。そして、何を隠そう猗窩座は俺の一番好きな鬼であり、この記事で一番フィーチャーしたい鬼なんだよね。

物語はここから佳境に入ります。

 

vs妓夫太郎(十二鬼月・上弦の陸)

 

vs玉壺(十二鬼月・上弦の伍)

 

vs半天狗(十二鬼月・上弦の肆)

いやぁ、強かった。だが省略します
気になる人は9巻からの原作を読むべし。

鬼滅の刃 9 (ジャンプコミックス)

ここまでが中盤。原作内でも一番長く描かれた、鬼との死闘編と言い換えても良い。物凄くお粗末に省略したけど、それぞれの鬼との戦いと、柱たちの飛び散るパトスに本誌読者は毎週語るのが止まらなかった。俺も本当は書きたいんだよ? 決して書くのが疲れてきたワケじゃないよ? 頑張れ頑張れ! 俺はここまでよくやってきた!俺はできる奴だ!!

物語は最終局面・無限城編へ。

 

最終章 無限城決戦編

ここからは本当に瞬き禁止の戦いしかない。基本的には一体の鬼に対して数人の鬼狩りで攻略していくバトルロワイヤル方式になるんだけど。もうその時点で上弦の鬼たちの強さを物語ってる。一体一体がかなり長生きしてるのもあるけど、全員ラスボス級。さぁ紹介していこう。

 

vs獪岳(十二鬼月・新 上弦の陸)

 

vs童磨(十二鬼月・上弦の弐)

 

vs黒死牟(十二鬼月・上弦の壱)

省略します。

いや、待ってくれ、言いたいことは分かる。こいつらとの戦いは全部、省く事なんて出来ない超魅力的なエピソード揃いだ。善逸が雷の兄弟子穴埋め上弦と戦うのなんてクッソ胸アツだし、童磨戦とか俺超好きだからね。黒死牟戦に至っては柱クラス4人がかりというパレード、もう涙が止まらなかったさ。だが分かってくれ、ここで語りたいことは別にある。そして鳴女に至っては画像探すのすらダルい

 

vs猗窩座(十二鬼月・上弦の参)二回目

キ、キター!
そう、俺が語りたいのは猗窩座なんだよ!

実は女性は絶対に食べないという紳士鬼。というかさ、原作読んでる時、この戦い…なんか長くね? って思わなかった? この記事も大概長ぇけどな)そりゃあそうだろう。猗窩座ほど上弦で物語の主題に沿った敵はいないからな。あとアニメが人気過ぎて引き延ばされてたからな。

お気づきだっただろうか、猗窩座の技は全て生前の想い出が反映されている。「破壊殺・羅針」の陣の形、これ人間の時に妻だった恋雪が付けてた髪飾りと同じ文様なんだよね。大切な人の身に着けていたものとそっくりな陣が戦闘の最初に絶対に繰り出す技って、お前めっちゃ未練あるやん。そんな技。

技名すべて生前の想い出が由来

  • 脚式「冠先割/流閃群光/飛遊星千輪」
  • 砕式「万葉閃柳」
  • 滅式「鬼芯八重芯」
  • 終式「青銀乱残光」

全部花火の名前由来。大切な人と大切な約束をした時の背景が技名の由来って。お前めっちゃ未練あるやん。ちょっと、なんか、もう良い奴やん。さらに言うと、全身に入ってる刺青模様だけど。これにも設定がある。江戸時代は盗みを行うと刺青刑っていうのを受けたんだけどね。この刺青は病床の父親の為に薬を盗んでいた猗窩座の罪の意識が現れた結果なんだよ。そろそろ根が良い奴すぎて泣けてくる

極めつけは名前の由来。猗窩座って名前は無惨が名付けてるんだけどね。原作155話のタイトルにもある通り「役立たずの狛犬」っていう意味が含まれている。意味は「住処を守れなかった犬」。狛犬は守るものがあって初めて存在意義がある。でも守りたかった妻を毒殺されて居場所を失った猗窩座にはもう守るべきモノが無い。だから役立たずの犬。そんな意味がある。

 

とっくに失っていた強くなれる理由

そのことを思い出したんだろうね。炭治郎に首を切られても克服して、さぁ~、まだまだ死闘は終わらんぞい!ってなりそうだった恐怖の場面、結局最後は自決して消えていったワケだけど、これは何でなのかって所に繋がってくる。ここで首を切られたショック&恋雪に「もうやめて」と言われたことで自分の過去を思い出す猗窩座は、自分にはもう守るべき大切な人がいないことに気付いたんだよ。自分が強くなろうとしたのは、大切な人を守るためだったという事を思い出した。だからこその自決。だからこその炭治郎への感謝。強さを求めるのは、強くないと誰も守ることが出来ないからで、だから弱者である自分が嫌いだった。もう自分には強くなる理由も、強くなれる理由もないことに気付いたってことだ。感動をありがとう…。そして『鬼滅の刃』という作品のテーマを体現した良い人生・鬼生でした。

 

vs鬼舞辻無惨

略。長い、強い、白髪おじさん。
気になる人は最新巻を待ちましょう。

 

最終話「幾星霜を煌めく命」

舞台は現代。大正時代だった本編からすると、3世代くらい後の話。そこには炭治郎とカナヲの面影ある男の子2人が明らかな主人公オーラを出している世界だった。いや、なんだこれ。「妹が罪なき人の命を奪った時は腹を切って死ね」と鱗滝さんに言われていた時を考えると、同じ作品とは思えない位のハッピーエンドじゃないか!? こんなに幸せになってて良いの? しかも我妻性で善逸と禰豆子の面影ある2人が姉弟設定だと…つまり…善逸、おまえ良かったな…。

 

うぉおおお!これを、これを見たかったんだ!と叫びたくなる気持ちをグッとこらえて幸せな2人を祝福しましょう。「また人間に生まれ変わったら、私のことお嫁さんにしてくれる?」の有言実行。伊黒先輩マジ格好良いっス。この定食屋あったら1日4回は通う。柱全員、死んだメンバーは(ほぼ死んだけど)幸せな未来でちゃんと転生できたようで何より。

 

俺はこのコマを見て泣いた。富岡さんと錆兎と真菰だと…? この話は本当にファンのために描いてくれたんだなとギャオウした。生きていれば柱になってたであろう実力者の2人、死ぬはずだった富岡さん、今度は守るべき友として人生を送れているという幸せ。そしてこの姿を見れた幸せ。感謝です。

愈史郎は唯一の鬼として生き続けているっていうのも中々に良いラストだと思った。しかも珠世さんの絵を描き続けるという狂気の愛情。それでこそ愈史郎。合法ショタ。素晴らしい。

あとさ、ラストで描かれた竈門家の様子、先祖の写真を額縁に入れて飾ってるあれ、最高だよね。みんな笑顔で。ちゃっかり村田が入ってるのも嬉しい。

週刊少年ジャンプ(24) 2020年 6/1 号 [雑誌]

というように、ファンの期待をこれでもかと裏切らず描き切った見事な最終回でした。この作品を読んでて良かったなぁと心から思えた。

 

まとめ

守るべき大切な人達と当たり前に一緒にいられる世界で、鬼と戦うことがない幸せな世界。もう刀を持つ必要もないし、鍛える必要もない。けど、炭治郎の面影を色濃く受け継いだ炭彦くんは人並み外れた運動神経を持ってたよね。ここが面白いなって思った。

強くなる理由のない世界で、強いという設定。それはきっと炭治郎の「大切な人をもう2度と失いたくない」強い想いが現れたんじゃないかな。鬼はいないけど、幸せな世の中だけど、危険なことはたくさんあるし、何が起きるか分からない。だから、作中ずっと抗い続けた炭治郎の想いが成就して、子孫にも受け継がれてるんじゃないかと思った次第。炭治郎が、鬼殺隊が強く在れたのはいつも「大切な人を守るため」だったから。

ということで気持ちよく読了。
まったくもって良い作品でした。

俺も強くありたい。守るために。

『あひるの空』を漫喫で読んで泣く、これも一つの青春のカタチだと思うんだ

2004年の連載開始から、スポーツ漫画として最前線を走り続ける『あひるの空』。バスケと言えば、かの有名な歴史的ジャンプ漫画を思い浮かべがちだけど、ぶっちゃけ『スラムダンク』にも負けてない。と言うより、ジャンルが違う。これはバスケを題材にした青春大作だ。

あらすじ

九頭龍(くずりゅう)高校に入学した身長149cmの車谷空は、母親に誓った「高校最初のバスケの大会で優勝」の実現のためにバスケットボール部に入ろうとする。

しかしバスケ部は花園百春・千秋兄弟を始めとする不良達の巣窟になっており、部活動などできる状況ではなかった。だが、しつこく食い下がる空の純粋なバスケへの熱にかつてバスケをやっていた百春、千秋たちは心動かされていく。

そして空達のバスケット生活が始まった。

あらすじの時点で漂う「あ、バスケするまでが長いな」感。そんな印象を受けたのなら、正しい。俺も当時マガジン読みながら同じこと思った。そういう意味でも『スラムダンク』とは全く異なる滑り出しで(湘北高校はバスケ部がちゃんと機能していたからな)、どちらかと言えば『ルーキーズ』にジャンルとしては近いかもしれない。しかも特筆すべきは空の伸長が149㎝ってトコ。これが物語に大きく関わってくるし、小さいのに3Pシューターって事に誰もが心動く物語性があるんだよ。

更に言えば、この作品において”未来はない”。と言うと語弊があるが、主要メンバーの中でバスケを人生の柱にして、これでメシ喰っていくっていう人間性はあまり描かれない(横浜大栄の白石・豹、トビくらい?)。人生における高校時代を刹那的に描くことに特化しているからこその名作、青春漫画と言える。もし未来編を描くのだとしたら、連載終了後にTwitterとかで発表して欲しい。ただ、千秋の大学生編は観たい。

 

アニメ 『あひるの空』

アニメ、めっちゃ良いよね~。原作読んでる人は分かると思うけどさ、画力高くて、線が独特で、それが物語の雰囲気的にも良い演出になってるからさ。絶対にアニメじゃなくて紙で見た方が映える作品だと思ってたけど。良い意味で裏切ってきて、しっかり原作準拠クオリティに驚きながら観てる。

 

まさかの4クール放送

俺、てっきりクズ高校のスタメンが全員揃ったところで「俺たちの戦いはこれからだ…!!」っていうありきたりな残念エンドでアニメ終わらせると思ってたんだけど。まさかの4クール! 全く把握してなかった俺は、「いや終わらないんかーい、最高かよ~」って一人深夜に興奮してしまった。不覚。ただ、原作読んでた時はここまで来るのに本当に時間かかったから嬉しいな。俺、コンビニで立ち読みしながら泣いたからね。「ついに、ついにフルメンバー揃ったぁ」って。ここから怒涛の快進撃が始まるんだ!って。このことについては後で語るが、この時の俺はこの作品について何にも分かってなかった

青春の音が聞こえる演出

あとアニメになったことで何が良いかって言えば。(まぁ、これ以外の作品でも言えることなんだけど)音が付いたってことかな。でも他作品とは良さ具合が全然違くて、”青春の音”が追加されてるんだよ。バッシュが体育館の床を擦る音、ボールがバウンドして天井から響く音、ボールがゴールリングに当たらずネットをくぐった時の気持ちの良い音(蘇らせる…何度でもよッ!)。漫画には文字から想像する無限の可能性があるけど、実際に物語と一緒にSE聴くと、「あぁ~良いわぁ~」ってなるのが本音。

特に、30話で空のお母さん(車谷由夏・元日本代表)が空の試合を内緒で見に来た時に、体育館に響く音に耳を澄ませて「懐かしいわ…この音」っていうシーンの深みが爆発してたね。俺も学生時代、部活中に体育館の窓から外にプリズンブレイクして、風に当たりながら「良い風だ…」なんて呟いてたな…SNSじゃなくてリアルに。

というように、原作ファンであっても楽しめる(てかぶっちゃけ懐かしすぎて涙出てる気がする)。アニメ4クールでどこまでやってくれるのかも楽しみポイントだけど。横浜大栄メンバーがどんな感じで動くのかってのも要チェックだよね。マジで鷹山はやく出てきて欲しい。

 

原作 『あひるの空』

あ、ここからは猛烈にネタバレを含むので、アニメ派の人はご退室ください。

まず、現在単行本は50+1巻まで出てる。結構出てるなって思った? それはそうだろう。俺が中学の時からやってる作品ですから。チャリで来てたヤンキーもスーツ着て会社勤めするし、コミュ障だった俺が処世の為にアルカイックスマイルを会得するくらい、たっぷりと時間はあったからな。

 

あひるの空 THE DAY(1) (講談社コミックス)

そんな原作。最新巻でまさかの『あひるの空 THE DAY』とタイトル変更したのは衝撃だった。一個前の50巻がやけに分厚いから、本屋で並んでるのを見た時に「え! 最終巻!?」ってドキドキしちゃったよ(苦渋の決断で、マガジン本誌は2年くらい前に買うのを止めた)。そしてネーミングがストレートで潔い。”THE  DAY”って! 読者にとって待望のあの日をついに描いてくれてるってことか! って一目で理解した。タイトル見ただけで涙が出そうだったね。『はじめの一歩』で一歩と宮田が戦うみたいなもんだよ。

 

伝説の練習試合から1年

現実では13年。伝説のクズ高vs横浜大栄の練習試合は、俺の中で今アニメでやってる新庄東和戦と同じくらいアツい。この戦いで作品の根幹が完成した。空と鷹山の”来年”の約束は俺たち読者にとっての”未来”の希望になった。

運動系の部活やってた人達は多少なり経験してると思うんだけどさ。顧問の先生が仲良かったり、地域が一緒だったりすると、自然と仲良くなる他校の顔見知りができる。そんな中で、腐れ縁というか、不思議と公式試合でも良く対戦する奴が出てきたり。勝ったり負けたりを繰り返す中で生まれる感情は、友情とは全然違うんだけど、大事なんだよな。そんな相手とする再戦の約束ほど、青春を懸けるに値するものはない。ん? あぁ、俺にもそんな奴がいたよ。俺がやってたのバドミントンだけどな

とにかく、この約束でこの物語のゴールが確定した。物語の中の全てが結末に向けて動き出した。そういう意味では、アニメ版は未だ始まってもいないんだな。空と鷹山がした約束ってのはそのくらい重みがあったし、この試合で、トビ・豹、千秋・白石、百春・ヤックも各々に相手をライバル認定(こうして並べると大栄メンバーのステ高すぎて個別に潰されそう)。峯田もちゃっかり2年目は公式戦でスタメンデビューしてるし。いかん、文に収集がつかなくなってきた。要は、伝説の続きが今ようやく始まったんだなって、すごく実感してる。

 

今日の大切さは終わってから気付く

学生時代は、当たり前だけど全ての人間が明るく過ごせるワケじゃない。どんなに部活を頑張りたくても、家庭の事情や過去の経験から部活に入りたくても入れない人もいる。そういう”恵まれてない”他人を人間(特に中高生くらいの若い時代)は無意識に無視する傾向があるように感じる。俺もそうだった。不思議と、そういう可哀想な人(って言い方は正しくないと思うが)のことは視界に入っても認識してなかった。イジメとかそういう話じゃなくて、人間ってそういう生き物なんじゃないかと思うんだよね。

この作品を読んでると、そんな子供の時のフィルターがかかった景色が脳裏に浮かんでくる。無意味だと思って嫌々やってた体育館のモップ掛けも、誰かがやりたかった青春だったのかな。

もしかしたら、それは今も変わらないのかもしれない。俺も、めでたく今年で30歳を迎えるワケだけど(人生最終章始まったなって感じ、既に死にたい)。気付けば終わる20代、「精一杯生きたか?」 そう問われれば「生きた」と言える(主に仕事が辛すぎて)。でも、アッと言う間だったなぁって思うんだ。そして、一生懸命すぎて周りが見えてなかったとも思える。ふと周りに目を向けたら、自分よりも過酷な境遇の人間なんて幾らでもいて。そんな人達に胸を張って話しかけて、一緒に笑い話できるような、そんな人間になりたいな、30代は。だっていま生きれてる今日は、誰かがやりたかった青春かもしれないから。刹那的な今この瞬間を苦しんでいる人間がいるのなら、俺の眼が届く範囲くらいは一緒に楽しめるように努力したい。青春に年齢なんて関係ないんだよ。

 

あひるの空 コミック 1-40巻 (講談社コミックス)
※とりあえず40巻イッキ買いする猛者専用リンク

まとめ

この作品は甘くない。奇跡はめったに怒らないしご都合主義な少年誌的展開はない(まぁ、多少はある。異常に僅差で勝つ)。人生の辛さと楽しさを見事に教えてくれる。ゆえに一年目の夏の大会は一回戦で敗退する。そして二年目の横浜大栄高校との試合(THE DAY)も負けることは公式で確定してる。コレがこの作品の良いところ。青春の酸いも甘いもしっかりと描き切る(ここに書くとキリがないから書かないけど、里見西の新と円の未来編とか、授業サボって体育館で隠れながら円が空に「同じ位好きな人がいるの」って言う幸せな失恋回とか、女性目線の青春もしっかり描かれてるんだよ!最高なんだよ!)そこが良いんだよ。

なんか途中すごく懐古主義的な独白になってしまったけど、不快に感じた人がいたらゴメン。たぶんシャッフル再生してるApple Musicからミスチルの『sign』流れてきたからだわ。あと、もしアニメ新規・もしくは原作未読でここまで読んじゃった不幸な人は、アニメを機に原作も読んでください。大丈夫、こんな記事に書いてあることぐらいネタバレした上で読んでも全然楽しめる。そもそもネタバレで霞むような作品じゃない

大人になって読めば読むほど響く。

俺は漫喫で声出して泣いた。

俺的2020上半期アニメ・オブ・ザ・イヤーは間違いなく『空挺ドラゴンズ』

「2020年良かったアニメ作品は?」と聞かれた時、いの一番に頭に浮かんでくる作品、それが『空挺ドラゴンズ』(2020_05_14現時点)。

あらすじ

各国が龍と呼ばれる生物から生産できる食料や資材を欲して空を目指してから半世紀後の時代。世界には、飛行船に乗って捕獲した龍を加工して売りさばく龍捕りと呼ばれる職業が誕生した。希少となった現役の捕龍船クィン・ザザ号には、龍が大好物のミカを始め、新人龍捕りのタキタや龍捕りの父をもつジロー、諸事情で地上を旅立ったヴァナベルなど様々な龍捕りが搭乗しており、それぞれが事情や目的をもって共同生活を営みながら空の旅を続ける。

 

過酷な航海の中でも輝く日常

重労働で龍が取れないと賃金も低く、空を飛び続けるだけでも相当な労力を要するという超絶ブラックな職場ながら、乗組員の笑顔がとても眩しい。たまに港街に降りた時なんか、一張羅を着て陸の娯楽を堪能する姿に生命力を感じる。ただ、この解放っぷりは「いつ死んでもおかしくない」という感情が行動として表に出た結果なんだが地下から地上に出れた時のカイジみたいなもんだ。ひと時の楽しみだと割り切っているからこその切なさも微妙に漂わせる。その姿とこれを表現した作者に拍手。

 

若手乗組員の成長物語が泣ける
(ジロー成長物語)

若手と言ってもジローとタキタしかいないけど。オジサンばっかの中で歴の浅い2人は思春期ということもあって、旅の中で精神的な成長を経験していく。その描かれ方が最高。街で出会った女の子(カーチャ)とひと夏の恋ならぬひと街の恋をするんだけどね。街を発つ朝、一度も街から出たことが無いというカーチャの為に空中ドライブを敢行。その粋な演出が甘酸っぱいながらも見事なジュブナイル。空で朝焼けを見ながら「君も一緒に(行こう)…」って言おうとするジローに対して、後ろから泣きながら抱きしめて「舌、噛んじゃうよ」と、やんわり断るカーチャも非常に情緒的なんだよ。

明らかにお互い好きなのに、空と陸、2人の境遇と立場を考えて別れを決意する姿にドラゴンも霞むほどの輝きを見た。この後ジローは髪を短く切る(しかも切るのはカーチャってのがまた良い…)。失恋後のキャラデザ変更、ちょっと大人になった少年の成長の表し方を本当に分かってる。

 

若手乗組員の成長物語が泣ける
(タキタ成長物語)

龍の回廊での小型龍捕龍中に超高度から落ちるタキタ。120%死んだと思われたが、何と地上まで龍にしがみ付いていたことで地面に落ちても生きていたというご都合奇跡。だが、この陸でタキタが成長を果たすということの方が、視聴者的にはよっぽど奇跡だった。

自分が捕まってきた龍が落ちたのはその親龍の子がいる住処(付近?)。そこで、生きるために子が見ている隣で親を解体・調理するという中々に倫理委員会案件。最初は嫌がっていたタキタが身体を回復するために泣きながら親龍を食す姿は必見。居合わせたマタギの姉さん(アスケラ)の「仕留めた獲物はちゃんと食べる。食べた分だけ良く生きる」にはこの世の摂理が含まれてた。それを聞いたタキタはまた号泣。そして食べる(タキタ可愛い)。結局、この後この龍の子を天空の群れに戻すために再び空を目指します。この流れ本当すこ。その過程でのクィンザザ号メンバーとの再開シーンはアニメでの一番の盛り上がりポイント(っていうか最終回冒頭はこの話→龍の回廊)。

 

捕食されるだけじゃない龍の魅力

この作品が龍をただの獲物として扱う作品なら、俺はここまで惹かれなかったと思う。時には神秘的に、時には気色悪く、人知の及ばない”空の神”として描かれているからこそ、龍を獲ることの困難さがしっかりと感じられた。

少し、俺の中で印象的だった龍をエピソード毎に紹介したい。

 

光る龍

アニメ3話「光る龍と」にて、神秘的な龍との邂逅。この話は序盤の話の中でも群を抜いて心を揺さぶってきた。まず導入から”嵐の中で光る龍に救われた”という伝説話をジローが語る流れが良い。船乗りの間の伝説ということで真に受ける者が少ない中、ミカだけは「いや、いるかもしれねぇぞ」って否定しない(食べたいだけかもしれないが)。結論から言うと”光る龍”はいた。しかも嵐の船を救うっていう聖人のような習性と見た目。子供の頃の夢物語が実現したことでジローも思わず笑っちゃうところが◎、少年の成長を感じ、物語全体に深みをもたせる話となった。雷雲の中に常に晒されてるからか、メチャクチャに帯電したけど、スタンランス効かないんじゃ…

 

超大型龍

アニメ最終回でその姿を見せた、龍の回廊のバカでかい超大型龍。ゲームだったらクリア後に現れるクラスの裏ボス級。え、何、天空にはこのレベルのボスがうろついてるの…? 普通の龍が二階建てアパートだとしたら六本木ヒルズくらいでかい、月並みに言って規格外。コイツの存在を最終回で魅せてくれたことによって、龍の底知れない恐ろしさと神々しさを余韻としてもたらした。ちなみに作中ではコイツは捕龍できず。またどこかで出てきたらかなり胸アツ。FF5で言うところのオメガ

 

まとめ

どうだろう。平時はさながら某ファミレス漫画のようなワイワイ感ある労働環境。ひとたび龍に出会えば一触即死のリアルな捕獲描写。そこに龍の料理のスパイスが効くことで見事に現代版・漁師作品が完成した作品なんだよ。ジブリのパクリとか色々言われているが、そんなことはない。圧倒的なオリジナル性がこの作品にはある。というか、仮にパクリだとしても良いんだよ。リアルタイムでジブリ並の作品見れてるって歴史的快挙だからな。チョー気持ち良い

空挺ドラゴンズ コミック 1-8巻セット
※イッキ買いする猛者用リンク

他、『空挺ドラゴンズ』の人気商品はこっち

ちなみに、原作ではミカのちょっぴりセンチメンタルな成長が描かれる展開が見れるし、より人間ドラマが濃くなってる。アニメにハマった人は原作も見て損はない(特にナウシカ好きは読んだ方が良い)。

青年誌でH描写無しにラブコメする『かぐや様は告らせたい』を語りたい

累計発行部数は1,000万部越え。押しも押されぬ人気作品となった『かぐや様は告らせたい』。アニメも順調に二期が放送中で毎週本当に楽しみにしているワケだけど。ここから更にアツくなっていく本作の魅力を俺なりに語りたい。

あらすじ(ネタバレ)

将来を期待されたエリートたちが集う名門校・秀知院学園。 その生徒会のメンバーである副会長・四宮かぐやと会長・白銀御行はお互いに惹かれ合っているものの、高すぎるプライドが邪魔をして半年が経っても告白することが出来ない。

素直になれない二人は、いつしか自分から告白することを「負け」と捉え、「いかにして相手に告白させるか」ばかりを考えるようになり、権謀術数の限りを尽くした“恋愛頭脳戦”を繰り広げる。

但し、連載が進むうちに“恋愛頭脳戦”描写および展開は減っていき、極度のツンデレ同士のギャグ色の濃いラブコメとなっている。

作者の赤坂も、「正直『天才たちの恋愛頭脳戦』の看板はそろそろ外すべきではないだろうか」と公言していた。その後、かぐやから告白することによってかぐやと御行の交際が開始する展開となったため、擬人化された『かぐや様は告らせたい』と『天才たちの恋愛頭脳戦』の双方が死亡するという描写がなされた

以上、あらすじにして盛大なネタバレ。さすがWikipediaパイセン、アニメ二期でもここまでは行かないだろうって事をサラッと書いてしまう…そこに痺れる憧れる(まぁ色んなサイトでネタバレしてるから今更だよね)。

以下は俺が本作をみてきた中で、絶対に外せないエピソードだったなと思う所を抜粋してみた。

白金御行 × 四宮かぐや が甘すぎ

この2人に限っては最高のラブコメ製造機と言うほかない。唐突だが、ここでこの2人に関しての俺的ベスト胸キュンエピソードを紹介させてくれ。

一位は間違いなく「花火の音は聞こえない 後編」だ。割と序盤の話で、アニメ一期でもしっかり描かれてたが、この話で本作はヤンジャンの中でも頭一つ飛び抜けたと言える。前編では、暗く悲しいかぐやの境遇をひたすら描く鬱展開だったが、後編でヒーローの様に助ける白金。そしてまさかの後編タイトルを最後の一コマに用いる粋な計らい。ドンドン聞こえる花火の音が、かぐやの鼓動とリンクした演出も久しく見てなかった月曜9時のノリだ。このエピソード以降、かぐやは白金の横顔から目が離せない。読者はこの作品から目が離せなくなった

第二位は無論、文化祭編(奇跡が起きれば、ここまでアニメ二期でやるのかも)。個人的にはこのエピソードもかなり良い。文化祭中に、”白金に告白をする”と決めたかぐやが勇気を出せず、悔し涙を流す心理も圧倒的画力で表現されていた。相手の事がお見通しな2人だからこそ、そんなかぐやの気持ちを察して自ら最高の演出で告白をする話。”文化祭で何かしらのハートを送った男女は結ばれる” なんて、ご都合主義なジンクスが出てきたときは肝を冷やしたが、そこは王道を地で行く(ヤング)ジャンプ。超こっ恥ずかしいことを大真面目にやってのけた。そのウルトラロマンティックな男らしさに乾杯。かぐやは完敗。

三位はかぐやの告白回でしょう。先に描いた文化祭編からすんなりと交際までいかないのが現代のラブコメ。今どきの若者は小学生で付き合うらしいが、このくらい節度あるラブとコメディを何故に道徳の授業で教えない? むしろ保健体育で教えてもいいんじゃないか? うん、脱線した。脳内法廷を繰り広げつつ多重人格が現れ、結果として作品名を無視するという読者にとって最高にハッピーな展開。結局、お互いに告白し合うという2人らしい結ばれ方にスタオペ。「好きな相手と結ばれることの難しさ」をこの2人は見事にラブコメってくれた。

というように最高なんだよこの2人。
(俺、ラブコメラブコメ煩いな。)

石上優 × 伊井野ミコ が尊い

何を隠そう、作者も認める公式裏主人公 × 公式裏ヒロインである。前髪長い系の根暗ヲタクと、正義感が強くで品行方正な風紀委員の2人はバリバリ仲が悪い。そう、目が合うと舌打ちするレベルで悪い。でも実はお互いのことを昔から気にしていて、裏で互いに助け合ってるっていう関係がGOOD(でも互いに気付いてない)。石上のせいで伊井野が腕を骨折しちゃうんだけどね、召使いのように「あーん」と食事を手伝う石上の不憫さに嫉妬の嵐が巻き起こったことは言うまでもない。しかも石上は他に好きな人がいるもんだからそれによって悶着する悶着する。この2人のラブコメは良いぞォ、下手したら主人公と正ヒロインよりも良い

もともと2人とも主人公はれるくらいに性格良い。高校時代に相手の気持ちを慮ることができるのは主人公くらい。でも、それが空回りしまくって2人とも友達少ない(石上に至っては友達いない、むしろクラスの女子は目が合っただけで泣く)ってのも加点対象。どうも俺は孤立してる人を見ると応援してしまうので、孤立してる者同士の酸っぱ過ぎる恋愛模様はこの作品の大きな見所と声を大にして言いたい。最近の原作で見せてくれる伊井野のデレに至ってはハートブレイク過ぎて俺と言う漁船が沈みそうである。

というように、この2人も最高なんだよ。

サブキャラが総じて濃い

最後に、『かぐや様は告らせたい』を語る上で欠かせないファクター・サブキャラについて語りたい。唯一恋愛フラグが立たない女子として藤原書記は、ギャグ要因として超重要キャラと言える。ただ、白金にバレーボールを教える回が本誌で披露された時は、その母性溢れる性格とスタイル抜群な可憐さに、ネット上ではようやく真のヒロインが現れたと話題になったものだ。かぐやの付き人・早坂は実は重度のマザコンで、いつも年齢不相応な振る舞いをしているけど、実際の所は甘えん坊で、恋に焦がれる一人の女の子ってとこが良いよね(となりのヤングジャンプ同人版では見事に同僚の白金と交際)。他にも、子安先輩は石上 × 伊井野の恋愛を語るうえでは外せない重要人物だし、大人な柏木さん報われることなきマキちゃんをはじめ、公式スピンオフ『かぐや様を語りたい』のメインキャラ2人も白金・かぐやへの愛が病的なまでに深く、読者に多くの共感をもたらしてくれる。俺もカレンとエリカの2人と本作について語りたい。

かぐや様は告らせたい 1-18巻セット
※最新巻までイッキ読みする猛者用

まとめ

どうだろう。ただのキャラ紹介になった感は否めないが、とにかく、青年誌で直接的なH描写無しにここまで面白い作品は無い(柏木さんのことは言うな、いいね?)。それだけストーリーに惹きつけるものがあるってことなんだと思うよ。アニメも引き続きどこまでやってくれるのか楽しみだし。原作がまた一つの佳境に突入してるから目が離せない。

かぐや様、タイプです。

『ひぐらしのなく頃に』またあのトラウマが復活すると思うと動悸が止まらない

 

言わずと知れた竜騎士07/07th Expansionによるノベルゲーム・アニメ作品『ひぐらしのなく頃に』。この作品への思い入れはちょっと尋常じゃない俺。2020年夏に新プロジェクト始動ということで、このタイミングで必修科目をおさらいしとこう。

あらすじ

昭和58年初夏。山奥の寒村・雛見沢村にて、前原圭一はごくありふれた毎日を過ごしていた。

都会から引っ越してきたばかりの圭一だったが、レナや魅音、沙都子、梨花ら仲良しグループのおかげで、楽しい日常を築き始めていた。

そんなある日、圭一は偶然会ったカメラマンの男性から、村にまつわる怪死事件の存在を知る…。

 

上記がアニメ第1話のあらすじ。全てはここから始まった(懐かしすぎて泣ける)。まず、俺が本作を観たのは高校1年~2年の時だったと思う。当時人間不信に陥っていた俺を、更なる深みに落としてくれた。そんな偉大な作品だと記憶している。それまでも『数宮ハルヒの憂鬱』『らきすた』など、主だったアニメは観てたんだけど、本腰入れて二次元の世界に沼っていった元凶。それが『ひぐらしのなく頃に』だ。

それからの俺はと言えば、TVで放送されているアニメに留まらず。ラノベゲーム・同人を買い漁り、地元でやっていないテレ東のアニメは漏らさずネットで視聴する、所謂クソナード街道をまっしぐら(派生してニコニコ動画、特に東方厨というサイドジョブを有する)。第2の人生が始まったと言っても過言ではない。今となっては感謝しかない、気もする。

 

人間不信を加速させる謎解き

当時は今に輪をかけて人嫌いだった俺。このアニメのおかげで見事に対人恐怖症を克服できて、行きたい大学にも受かったし、可愛い彼女もできた。今思えば、あの時にこのアニメを観始めて本当に良かった。観るか観ないかで悩んでいるそこの君、君にもこのアニメを観ることで明るい未来が待ってる!さぁレッツ視聴! なんて進研ゼミのような展開には当然ならなかった。むしろセンター試験は失敗したし、学校サボって家でアニメ観る生活を満喫してた。彼女はできたよ、画面の中に3人。あれ、おかしいな…昔のこと思い出してるだけなのに涙が…もう歳だな…。

昔語りはここまでにして、内容に触れよう(というか思い出したくない)。まず、何がここまでセンセーショナルだったのかと言うと、当時のアニメには無い手法を取り入れていたというのはあると思う。まず、アニメの中でもいくつかエピソードに分かれているんだけどね、ここに新しさがあった。

==============

【アニメ一期】

  • 鬼隠し編(1~4話)
  • 綿流し編(6~8話)
  • 祟殺し編(9~13話)
  • 暇潰し編(14~15話)
  • 目明し編(16~21話)
  • 罪滅し編(22~26話)

【アニメ二期】

  • 厄醒し編(1~5話)
  • 皆殺し編(6~13話)
  • 祭囃し編(14~24話)

==============

※OVA収録エピソードは割愛
これは原作のラノベゲームの特徴でもあるんだけど、各エピソードは独立した世界線になっている。つまり、1~4話の「鬼隠し編」が終わると次の「綿流し編」では物語冒頭からリスタートする。今でこそ『ハルヒ』のエンドレスエイトの偉業(という名の蛮行)や、『リゼロ』で一般的になっているが、これは当時としてはとても新しかった。しかも、推理モノのラノベゲームのシステムとして取り入れられたこの手法の良い点は、前エピソードとの比較で新しい世界で起こっている謎が解明できる点だ。これで視聴者は沼った

 

どう足掻いても絶望な世界

この言葉って、そもそもひぐらしのために作られたんじゃなかったっけ? ってくらいのピッタリな言葉。まず鬼隠し編が終わった時に、この絶望と言う反り立つ壁が顕現する。それからは簡単だ。綿流し編に入ると一瞬救われる気がする。だって世界が元通りになってるんだもん。「良かった~あの絶望は夢だったんやぁ~」て感じで。そしてさらなる絶望が現れる。ターザンロープだ。これには山田勝巳も失笑。天を仰いで涙を流しながら無力さを噛みしめる。そして詩音は笑いながら包丁を研ぐ。

おやおや、コレもしかして信じれば信じるほど馬鹿を観るってやつじゃないかな? かな? と語尾が馬鹿になってくるのも仕方がない。そのくらい当時は衝撃的だった。特に少年時代の繊細なガラスの心には堪えた。そして竜騎士さんの作品には顔芸という代名詞が付いた

 

「目明し編」からが真の本編

「鬼隠し編」「綿流し編」「祟殺し編」「暇潰し編」までが謎が謎を呼ぶ理不尽アニメ。だが「目明し編」からは一気にその風向きが変わる。解答編のスタートである。特に「目明し編」で物語の裏側で起きていたことが明かされ始める(主に「綿流し編」の)。視聴者のフラストレーションと、人を信じる心を地の底まで沈めて置いて、ここから一気に解答で気持ちよくさせるという詐欺師顔負けの手腕。御見それしました。しかもニコニコ動画全盛期だったこともあってか、「you」が神曲と崇められ、多くの歌い手が素晴らしい歌唱力を披露してくれた。

余談。「目明し編」直前の「祟殺し編」12話は放送委員会に引っ掛かり放送中止されるという伝説を残している(同時期に「スクールデイズ」も放送禁止くらってる)。かの有名な”秋葉原連続通り魔事件”や、京田辺警察官殺害事件と時期がかぶってしまったというのもあるが、リアルタイムで観ていた俺は「今更かよ!遅いよ!」と色々な意味でショッキングだった。

ニコニコ動画や同人作品(そもそもが同人作品だが)、放送禁止という異例の事態もあったが、”ひぐらし”ムーブメントは指数関数的に認知度を増大させることになったってワケだね。

 

一期ラストでの僅かな光明

とは言え、結局は圧倒的絶望のまま終了するんだろうと思われたアニメ一期も最後の最後で救いの可能性が豆粒ほど描かれる。なんと作中で人を信じることの尊さが説かれたのだ。10歳児が包丁をこめかみにズボズボして自殺したり、女の子が笑いながら病院に忍び込んで惨殺する作品でだ。そんなことある? 今までの惨劇も回避できる道があったと? もしかして、アニメ二期ではそのハッピーエンドを描いてくれるの? と。結局は信じる心が大事で、絆こそが世界を救うのか。些か疑問の残る終わり方をしたが、ここで俺の人間不信も治った。単純なんだ。締めるところは締める。大事。この見事な手のひら返しと言うエンターテイメントに視聴者は沼りすぎた結果マントルまで潜ることになる。「絶対に二期を観よう、きっとそこには幸せがあるハズ。部活メンバー全員が笑って過ごす未来が待っているんだ。なんならゲームも買おう」と。結論から言うと淡い期待だった

(TVアニメ化10周年記念)(ひぐらしのなく頃に)
全話いっき見ブルーレイ [Blu-ray] ※全話イッキ見直しする猛者用リンク

まとめ

というわけで、当時のアニメ一期のことを思い出しながら書いていたら「ひぐらし」という一大シリーズの良いところ見所のハイライト記事になりました。

新作オリジナルの展開もやってくれるとは思うけど、絵柄が今っぽくなるだけの新作になる可能性も考えて、ネタバレは少な目。俺の人生を大きく歪ませることになったアニメの筆頭たる作品、きっと今夏の新プロジェクトでも新しい哀しみ感動をもたらしてくれると思う。あ、あとファンにとっては周知だけど、『うみねこのなく頃に』は別ゲームだよ。あっちの方がファンタジー色強いから女性ファン(主に病んでる女子)が多かった印象。男からしたらどっちもメチャクチャ面白いけど、俺は思い入れが強いのは「ひぐらし」かな。

放送されたらまた記事を書くかも。では。

殺人犯の10人に1人は相手が好き過ぎて殺すという矛盾統計

『花とアリス 殺人事件』の、何とも言い難い名作オーラを感じつつも、つい最近まで未視聴だった俺を殴りたい。これは現代における愛憎の一例、と見せかけた友情物語だ。

史上最強の転校生、アリス。史上最強のひきこもり、花。二人が出逢ったとき、世界で一番小さな殺人事件が起こった。

石ノ森学園中学校へ転校してきた中学3年生の有栖川徹子(通称アリス/声:蒼井優)は、一年前に3年1組で起こった、「ユダが、四人のユダに殺された」というウワサを聞かされる。さらに、アリスの隣の家が<花屋敷>と呼ばれ、近隣の中学生に怖れられていることを知る。その花屋敷に住む「ハナ」ならユダについて詳しいはずだと教えられたアリスは、花屋敷に潜入する。

そこで待ち構えていたのは、不登校のクラスメイト・荒井花(通称ハナ/声:鈴木杏)だった…。

 

登場人物の軽快な会話が気持ち良い

「コラぁこの悪魔! 手羽先欲しいか? やらねぇよ~!」という仕草と発言ともに登校中にエンカウントした危険度AAAランクの男子生徒に対して「朝っぱらから鶏肉しゃぶりながら人の事罵りやがって、手前の方がよっぽど悪魔っぽいんだよコノヤロー」とアリスが言うシーン。この時俺は、この映画面白いじゃん…と確信した。ぶっちゃけこのシーンだけでも見て欲しい。西尾維新作品みたいな、登場人物の言葉のドッジボールで相手をジワジワと蔑むのが好きな人は、きっと俺みたいにココでこの作品にのめり込む。

 

次々と明かされる教室の秘密

転校してきたアリスは「1年前、教室で殺人事件があった」という眉唾の噂を耳にする。その死んだ男子生徒の座っていた席に座ったからという理由で、クラスメイトに遠巻きに避けられる流れ。調べていくとどうも「男子生徒は4人のユダに殺された」「死んだ男子生徒の名前はユダ」「ユダには妻が4人いた」と一見理解不能な暗号めいた情報だけが集まっていく。もう本当に出てくるキャラがブッ飛び気味で軽快(警戒)。そして、このサスペンス染みた展開で、どういうことだろう? と一瞬でも考えたとしたらもう最後まで観るしかない(そう、俺のように)。

 

詳細を調べようと、殺人事件のいきさつを把握しているという花の家に乗り込むアリス。ここでようやく花とアリスのゴールデンコンビが邂逅する(つまり、なんと作品全体の半分近くを消化するまで主人公の一人である花は出てこない )。

 

罵りながら深まる友情

ここからは正直、前半の導入部とは全く違う作品になる。花とアリスの一夜の大冒険編って感じ(やってることはただのストーキングとパパ活)。ユダの生死を確かめるべくユダの父親を追う2人。まず、この時の2人のすれ違いとアプローチの違いが面白い。花は理詰めで綿密な計画を立てるタイプ。アリスは行き当たりばったりだけど、その人当たりの良さから結局上手く行っちゃうタイプ。この2人が揃うことでの相乗効果が深みのある物語を生んでる。

アニメの世界にとどまらず、頭脳派タイプと行動派タイプが揃った時にお互いの良さが爆発的に向上するってのは良くある話だ。ヒーローにはサイドキックが必要だもんな。まぁ、花とアリスの場合はどっちも行動派だし、どちらも特に猪突猛進馬鹿ってワケではないのだが、要は長所の話。

 

車の下の告白

このシーンの殆どが花の語り(回想&罪の告白)で構成されてる。でもここがこの物語における謎の解答パートだ。ここで一気に全ての謎が解けていくのが最高に気持ち良い。花には最初から全部わかっていて、その上で、アリスを一日付き合わせていたというのもなんか面白い。っていうかユダの真相と最期の瞬間がかなり面白い(いや、アナフィラキシーは馬鹿にしちゃいかん! 俺もクマバチに首の動脈付近を3回ほど刺されたことあるけど、あれ本当に泡吹いて悶絶して糞尿垂れ流すからなッ)。

何よりも、ここで自分の感情を吐露する花の描写・鈴木杏の演技が絶妙なんだよ。アリスの声を当ててる蒼井優も、このシーン以降は少し敵意の無くなった声になって、感情を表に出した花に対して一気に心の距離が縮まったっていうのが表現されてる気がした。このシーンにこの映画の良さと、主題である花とアリスの全てが詰まっていると言っても決して過言ではない。この夜、ゴールデンコンビは誕生した。

 

友情のはじまり

「あたしのダチがアンタに話があるんだよ」ってアリスが言うシーン。いつのまにかダチになってる!  いいぞこういう友情物語は好きだ。一気に世界が明るくなった気がする。このセリフを聞くためにこの映画を観たんだ。

殺人事件の10%は痴情のもつれ・男女関係のトラブルで相手を殺してるって法務省のデータを見たことがあるけど、まさにそれを暗示しているかのような世界一小さい殺人事件でした。でもそれで深まる絆もあるから愛ってのは難しい(自分には愛なんてよくわからん)。

花とアリス殺人事件
※視聴用リンク

というワケで、『花とアリス 殺人事件』良い作品でした。

実は実写版は観てない(本作はロトスコープを用いたアニメ)んだけどね。そっちもファン多いからタイミングで観てみようと思う。本作で描かれた友情の始まりに対して、友情の終わりが描かれているみたいだからなおのこと楽しみ。

俺はただ愚直にトロイメライ聴きながら『かくしごと』の大蛇足を待つ

久米田康治先生の作品『かくしごと』。

2020年4月からアニメ化を果たし、一気に人気が出ているであろう今作。先生の数少ないファンとして、噛めば噛むほど味が出てくるであろうこの作品の魅力を紹介したい。本記事に伏字が多いのは愛ゆえである。

 

あらすじ
隠し事は、なんですか?

ちょっと下品な漫画を描いてる漫画家の後藤可久士。一人娘の小学4年生の姫。可久士は、何においても、愛娘・姫が最優先。親バカ・可久士が娘・姫に知られたくないこと。それは……自分の仕事が「漫画家」であること。 自分の”かくしごと”が知られたら娘に嫌われるのでは!?

” 愛と笑い、ちょっと感動のファミリー劇場がはじまるーー”

 

ここにきて新境地

曰く、久米田先生が”アニメ化を目論んだ”ことであろう『行け!! 南国アイスホッケー部』(短命に終わったワケではなく、先生のベストヒット作品)。『勝手に改造』『さよなら絶望先生』と子供の頃から読んできた自分にとっては(というか他は知らない)、本作のハートフルさに新境地を感じずにはいられない。

そもそも、俺が最初に先生の作品を読んだのは『勝手に改造』からなんだけどね。その社会風刺を含んだ一話完結の服を着ないギャグの数々に、「こんな漫画が存在して良いのか」と小学生ながらに疑問を持ったのを覚えている。後に知ることになるが、この系譜は『行け!! 南国アイスホッケー部』の途中から狂人のごとく発揮された久米田先生の持ち味。『さよなら絶望先生』がアニメで人気になり認知度が一気に向上したことで、この作風にハマる人が続出した久米田節ってやつだ。やりたいことをヤリまくり”終わり良ければ全て良し”の精神に溢れた名誉ある撤退最終回を繰り返す、少年誌らしからぬ無二の作者と言える。

そんな俺からみたら、本作は異端だ。今まで学園生活モノが多かった中、家庭・仕事場という全く違うフィールドを軸にした物語展開。家族愛をテーマに据え、しかもその内容がしっかりと父と娘の愛の深さを描いているから驚きである。どうした? 久米田どうした? 遅れてやってきた悟り世代か? と初めて読んだ時は衝撃を受けた(アニメに至ってはキラキラと輝きすぎていて、一瞬、先生の作品だとわからなかったぐらいだ)。だから、あえて新境地という言葉を用いたい。

 

久米田康治節は健在

コレコレコレぇ! 過去作を見てきた人達にとって、無くてはならない要素。それが社会風刺ネタ(画像はアニメ4話「ノルマエ・ナマエ」より抜粋)。今思えば、誰もが思っていることを全国誌で大っぴらにネタにするそのブラックジョークから学んだことは多く(「ダメ絶対音感」の話とかね)。例えば『勝手に改造』では、巷で”お洒落キング”なるものが流行っていた頃、作中で”お洒落先生”なるものが若者のファッションを悪意のある目線から酷評するような表現があった。その痛快さは、さながらポスト池上彰。些か脱線するが、池上彰と言えば、2013年の参院選で公明党議員に対し「政教分離の憲法違反への言及」でお茶の間をシニカルな空気に変えた。これを週イチで行っていたのが久米田康二であると言えば、言い得て妙。同作品の鋭い切り口を受け継ぐコンテンツ、それが『かくしごと』という作品なんだ。

 

新境地の先に何を魅せてくれるのか

1話冒頭、姫が18歳になって昔の実家を訪れる。そこで父の「隠し事」が「書く仕事」だったということを初めて知るというストーリーなのだが。実はこの18歳編はしばらくナリを潜める(単行本では毎巻描かれる)。再びこの未来編が原作で動き出したのは実は最近のことで(2020年4月くらい)、それからというもの、本編としてメインに描かれてきた姫10歳~11歳の過去編と絡み合いながら、空白の時間で何があったのかがドンドン明らかになってきている。

原作はここからいよいよストーリーの核心部分に触れ、面白くなってくるところなので、期待しかない。特に打ち切り最終回への畳みかけ伏線の張り方には勝手に定評を感じているので、一体どんな形で物語をまとめてくれるのか、楽しみで仕方がないのが本音だ。家族愛がテーマなので、ハッピーエンドになるだろう。という前提がありつつ、久米田先生だったらいつも通り想像を超えたエンディングを魅せてくれるだろうと過度な期待でプレッシャーをかけたい。すごいなー漫豪さすがだなー。

 

色々と言いたい放題言ってしまったが、本作での姫の台詞の一つである「言いたいことがあったら漫画で描けよ」を自ら体現する作風が大好きなので、気になった人は暇な時に観て欲しい。

これは仮設だが、久米田先生自身に娘がいることが某漫画家のツイートで世間にバレている。もしかしたら作者自身も娘に自分の仕事を内緒にしており、これは事実に基づいた一部ノンフィクションの可能性も…?

かくしごと コミック 1-11巻セット
※イッキ買いしたい猛者用リンク

面白いよ。

謎アニメ『ミッドナイト・ゴスペル』の正体はアートマン用の電子ドラッグ

『ミッドナイト・ゴスペル』とは?

一言で言えば、アメリカの制作会社がNetflixに投じた劇薬だ。この作品に触れた者は「生きるって一体どういうことなんだろう?」という疑問を感じずにはいられない。もしくはタブレットの画面をそっと閉じるだろう。

簡単なあらすじ

主人公のクランシーは、宇宙の何処かで多元宇宙に向けて個人ラジオを放送するキャスター(なお、リスナーは1人)。突撃型のYoutuberさながら、様々な宇宙に取材に赴き(赴き方は現在の地球のテクノロジーでは理解不能なため割愛するが、卑猥)、その星での有識者をゲストとしたゲリラストリーミング番組を配信する。

ゾンビが蔓延する星に降り立った第一回放送では、大統領と一緒にゾンビを殺しながら「薬は合法化すべきか?」と議論を交わし、しゃべくっている間に特効薬が完成し星は救われた。ように思えたが、内臓飛び出した大統領はたぶん死んだしあの星も長くは保たないと思う。途中「生きるとは?」という議論が大統領との間で勃発したが、ゾンビに襲われながら妊婦が新生児を生む瞬間を見せたり、ゾンビの視点からの幸福=無為自然であり真の解脱を明示してくるというとってもキチガイアニメ。

クランシーは東洋仏教の思想が強い。あとどうやら毎回登場するゲストの中の人は現実世界の有識者とのこと。

 

「まともな世界は無いのか?」

常時サマー・オブ・ラブを体現したかのようなリラックスっぷりのクランシー。お前直前まで一つの星の終わる瞬間見てただろ。何でそんな安らかな顔でFMミュージック流してやがると突っ込みを入れたくなるが、これが彼の日常なんだろう。

自然味溢れる星に降り立ったと思ったらしゃべるカバと議論を交わす。議論を交わしながら狩猟され、ミンチにされ溶け合いながらも「愛とは?」という議論を続ける姿は超精神体としての神そのものだ。

彼の眼と体験を通して見る通り、”まともな世界”などこの世には存在しておらず。世界は何処も何かしらの問題を抱えているという事が主張されている。

 

「言葉は神だよ」

魚人間の姿をした臨済宗指導者もが出てきたところで、俺も流石に気付いたよ。このカートゥーンアニメは、悟り探求者たちのインスタライブに合わせて奇天烈なアバターがアンサンブルを奏でる脳内遠心分離機だということにね。ポックルだったら「あっあつあっあっ」って言いながら水見式の方法をピトーにバラしちゃうような、そんな感じ。

「東洋は悟りを開くことで真実に至ろうとするが、西洋では魔術を用いて悟りへの速度をブーストしたんだ」と魚人間が話している姿を見ながら、俺も、あっあっ…なるほどね~。なんて、考える力を失くしながら納得していた。これは新手の催眠術式か?

「僕らはハヌマーンがサルの神様と言われてもピンとこないよね。HAHAHA!」いや笑いどころ個性的すぎんかお前ら。 さながら仏教大学の教授会。だが、この時俺は既にこのアニメの術中にハマっていた。

考え続けることを美徳とする人間社会の多くの宗教。ただ、世間の人たちは現実に不満だらけ。本来は後ろではなく前向きにエネルギーを注ぐべきなのに、なぜ多くの人がそれをできないのか。

覚せい剤でラリってるミレニアム世代は今を輝かせることに必死で未来を見ていない。何故か。それは欲望を制御できていないからだ。欲望があるから人は不満を抱くし、気持ちのいいドラッグを鼻から掻き入れて脳をシェイクする。時にはこの停滞が必要な時もあるかもしれない(トリップ中に気付くこともあるらしい、例えば、オーガニズムが悟りの境地だということ)が、前に一歩進むために必要なことは考えることだ。

自分自身を。このイカれたアニメはその重要性を見事なまでのFuckin animationと、言葉を用いて説いてくれている。つまりマインドフルネス推奨アニメ。ナマステックス!

 

「監獄は自分の頭の中にあった」

このサイトの記事を読んでいる人は気付いてると思うが、俺は答えの無い問いかけが好きなんだ。俺自身は心理学部を卒業したが、姉が哲学を学んでいた影響もあるかもしれない。これだけで安定した収入があれば四六時中こういう答えの無い、どこに向かっているのかも分からない様な無駄な事を考えていたい(でも本音では無駄だとは思っていないから厄介★)。

自分の体も含めて、今見ている世界は自分自身の精神に内包されている。つまり、心を決めれば、自分を中心とした世界はそのように動くってことを、頭の中で整理できた良いアニメだった。Netflixに突然現れた謎の作品だと思っているそこの貴方、もう入口には立っていますよ。一緒に真理の扉を開けましょう◎(身体を放棄しろ!電子の世界で生きるぞ!は名言)。

ただ、軽い気持ちで見ると精神が宇宙の洗濯機に放り込まれるから、心して。もしくは観ない方が良い。

価値観の違いが自由を阻害するなんて決めつけてるのはきっと自分自身

いよいよNetflixで独占先行配信された『BNA』7話~12話。
早速全話視聴したから感想を。※チラっとネタバレしつつも大事なところには触れない紳士スタイルの記事をお送りします。

 

ちなみに、『BNA』に関しては前にも記事を書いているので、1話~6話を未視聴の人はそちらから合わせて読んで欲しい。

 

遂に物語は核心へ

あれ、”獣”人ってなんだっけ? みちるは元から獣人としてのスペックを遥かに超えていたけど、後半戦では獣人の概念を疑うような現象が多々起こる。いや、そもそも獣人の概念なんて俺も知らないけど。そんな突っ込みを入れている間に、本編では銀狼伝説の真実、市長と士郎の出会いなど矢継ぎ早にぶっちゃけエピソードが明かされていく。ここにきて爆発的な加速をみせるシナリオ。でも、この環状線をアクセルベタ踏みで走る飛ばし屋みたいな勢いこそTRIGGER。

法定速度を超えたまま、最大の謎である主人公みちる・親友なずなの2人が獣人になった原因も明らかになる。すごいサラっと書いてるけど、ここまで中々にモヤモヤ展開。みちるの一生懸命さが報われないような展開が続くからだ。6話までの時点だと、みちるがいっつも空回りしている軸の無い人間のように感じてた人もいるかもしれない。何を隠そう、俺も少し思ってた。けど、実はみちるは最初からブレてない。みちるはいつも”他人のこと”を想い続けていた。いつだって他人を心配して、親友のことを心配していた。その時その時の心配する相手によって行動の指針が変わるから、傍から見るとフラフラっとした人格っぽかったんだよね。物語後半になってようやくみちるの性格が理解できた気がする。

 

見てないところにこそ、真実はある

水面下で動いていた問題(ニルヴァジールシンドローム…名称が長い…でも響きが良い)が表に出てきて、噛み合い始める歯車。みちるだけの問題だと思っていた事が、ここで一気に獣人全員の問題になる。あれ、この物語、悪役が誰もいないんじゃ……? こんなに平和な作品があって良いのだろうか。いつものTRIGGERだったらグゥの音も出ないほどの超・悪が出てきて今までの敵と仲直りしながら打倒するハズ。来るか来るか…来てしまうのか、この優しい世界にも絶対悪が…。と、思ったらやっぱり来ました。 でも、悪はまさかの勢力。立場によって何者も悪に成り得るという良き例。※ラスボスは期待通りの人物だった。

 

絶対悪は絶対に悪の言葉を吐く法則

なんとも面白い展開。流石TRIGGER。最大の敵は最初から登場していたし、最大の味方はいつだって自分自身。獣がメインの話を非常に上手くまとめてきた。コレコレコレぇ! この展開を!待ってたんだよォ!あと相変わらずラストバトルの時のBGMが絶対に盛り上がるって凄いことだと思う。「それが世界の真実!」って叫びながら攻撃してくるのはラスボスの特権だよね。

 

「どう生きるかは自分で決める」

”強い女の子”はいつ観てもカッコ良い。物理的な話じゃなく、精神的に強い子ね(物理的に強くないとは言ってない)。そしてクライマックスの盛り上がりと表情の描き分けが尋常じゃない。たぶん一発で12000kcalくらいは消費してるんじゃないかって位の熱量。作画も同じ位カロリー消費してるのでは? 確実に螺旋エネルギー使ってるわ、コレ。最後はお家芸・全力ってところがGOOD。畳みかけつつも、物語は綺麗に折りたたまれるように終わってくれました。

 

「今の自分、結構好きなんだ」

この言葉がみちるの口から聞けただけで俺は満足です。自分のことを自分の意思で決めた子はの眼は輝いてる。人と獣人、2つの種族を体験し、真に理解しているのは、みちるとなずなの2人だけ。その上で選び取るこれからの自分。TRIGGERらしく、種族間のギャップに悩みつつも確実に喜びを得ていくという、センシティブな問題を描き切った良い作品でした。

依存症の俺は次回作も楽しみにしてます。
【メーカー特典あり】
アニメ『BNA ビー・エヌ・エー』
Complete album(メーカー特典:オリジナルステッカー)