「漫画」カテゴリーアーカイブ

漫画好きがガチで選ぶ『GANMA!』作品【おすすめ5選/Web漫画】

今やWebで殆どの漫画作品が読める現代。ジャンプ・マガジン・サンデーと大手に限らず、質の良い漫画が世の中に溢れてる。特に漫画アプリ『GANMA!』には、数多の漫画を読んできた俺でも心の底から「お、面白い…」と嘆息する作品が溢れてる。

【選定の基準】

もう何年も『GANMA!』を愛読している俺。面白い!って思った作品は結構あって、全部取り上げてたら相当長めの記事になって、要領を得ない感じになりそうだった。だから今回は”現在連載中”であること、そして”Web漫画っぽさ”を軸にして5作品を選定。かなり独善的なセレクトだが、この5作品は本当に間違いない。

 

 

人形峠

あらすじ

城南高校2年C組は毎年恒例の行事である農村体験のため、幸神村へ3泊4日でホームステイする事になった。青井賢登、伊万里舞、藤崎みなも、深沢皐、石上春也ら3班は兼業農家の支倉家に泊まる。支倉家には蔵があるが、「あそこへは行っちゃダメ」と行かないように言われる。その夜、地震が発生し、幸神村へ繋がる人形峠トンネルが崩落する。Wikipediaより引用

まずは『人形峠』。GANMA!読者であれば絶対に通っている本作は、2016年にアニメが放送された『迷い家』系の作品と思ってくれて良い。ただ、結構な長寿連載(連載開始は2015年)になっていることもあり、ストーリーは『迷い家』よりも入り組んでいる。この複雑さがミステリーファンを取り込んで同アプリ内でも不動の人気を誇っている

 

クラスメート群像(惨殺)劇

あらすじの通り、学校行事の一環としての農村体験設定なので(もはや忘れてたが)クラスメート全員が登場人物&被害者。5~6人毎に班に分かれており、それが6班まであるので30人強の登場人物が次々に狂っていくホラーミステリー

一応、主人公はいるんだけどね。もう2年くらい出てきてない気がする。だがまぁ、この数だ、仕方ない。逆に言えば主人公(及びメインヒロイン)が不在でも陰ることなく面白さを維持してることになる。それだけ魅力的なキャラが多いってことだろう。実際多い(まだ出てきてない可能性もある)。

※ちなみにアプリ内のムービングコミック企画の際は、大天使・花澤香菜さんが全読者にとっての聖母(高校生)に声を当てている。神采配、GJ

 

ひいな様が誘う狂気

※ホラー要因はすべて人形。わからん、俺は人形恐怖症(特に日本人形)だから、物語に人形が登場する度に中々な恐怖を覚えるんだけど。ミステリーファンにとっては本作はホラーじゃないのかもしれない。

と言うのも、”ひいな様に関わった人間が狂う”理由まで、ある程度本作では仮説が立てられているからだ。なんでも、「素材が水に塗れることで幻覚作用をもつ物質を噴出させている」とか。でもそれだけでは証明できないことも物語には溢れまくっていて、幻覚を出す人形&狂った人間、では説明できない謎が本作の一番の魅力になっている(そもそもタイムスリップは科学的に説明できない…)

とにかく、ここまで大風呂敷を広げることが出来るのも、Webならではだと俺は思うんだ。最近は1クールで終わるアニメが多くて悲しいし、紙媒体は人気が出ないとすぐ打ち切りになっちゃうしね…。だから、この一大ミステリー漫画を応援したいという気持ちで選出。面白いよ

『人形峠』
GANMA!

 

 

外れたみんなの頭のネジ

あらすじ

女子中学生・七尾ミサキは自分の住んでいる街の人々が少しずつ狂っていることに気付き、それと同時に謎の悪魔・べへりんが見えるようになる。「自分に周りが狂っていることを信じさせれば助けてやる」というべべりんの言葉を信じ恐怖体験を話すミサキだが、徐々に増す人々の狂気、戦慄の事件や巨大な陰謀に巻き込まれていく。Wikipediaより引用

二作目に選んだのは『外れたみんなの頭のネジ』。たまに広告とか露出してることもあったから、それで見た人もいると思う。一見これもサスペンスホラーっぽいストーリーだが、その実態は超サイコ作品。毎週毎週ネジがぶっ飛んだ登場人物が出てきて、読者をぶっ飛ばす。狂人ひとりひとりにフォーカスを当てれば適当なレベルのホラー映画できるんじゃ? という位のキチガイっぷりは、規制の緩いWeb漫画ならでは。

 

全員が狂った世界

勘違いしてはいけない点が一つ。”狂人が出て来る”というのはこの作品を非常に良く言い得ていて、登場人物全員が須らく狂ってるのが特徴。狂っていない人の方がレアなのでは…?

そもそも、なぜ全員が狂ってしまったのかって所が物語の核心部分になるんだけど。6月13日に起きた「613」という架空の出来事から日本中が狂いだしたということが明らかになる。この「613」が一体何なのかってことが、連載から5年の月日を経て漸く明かされようとしている。つまり未読の人は核心まで一気に観れるってこと、羨ましい(本作において、ド正直に秘密が明かされる訳ないが)。

 

奇人変人狂人の百鬼夜行

以上、Googleの画像検索で「外ネジ」検索するだけで出てきた数多の紳士淑女の一例でした(こんなのまだ序の口)。

初見の人は彼らを見たら「ホラーじゃん!」 ってなると思う。うん、まぁ限りなくホラーに近い作風ではあるんだが、これはサイコ漫画なんだよ。確かに極めてオカルトチックな狂人もいるけど、狂っている登場人物たちが観測している世界は全て狂ったものなので、それが人外なのかなんて分かることは無いんだよ。それとも、これらがホラーに見えてる方が狂っている可能性もある。

『外れたみんなの頭のネジ』
GANMA!

 

 

デッド・オア・ストライク

あらすじ

私立 頂(いただき)高校。野球エリート養成高校であり、ここではすべてが野球の実力で測られる!そんな学校に野球初心者が入学してきた!?人智を越える魔球(まきゅう)・魔振(ましん)が織り成す、生死を懸けたガチンコ野球×バトル漫画!GANMA!より引用

野球版『テニスの王子様』と呼ばれているが、そんな言葉すら生温い。野球という概念を大きく変えてきた『デッド・オア・ストライク』。よく考えたらタイトルもちょっと普通じゃないもんな! 今キーボード叩いてて気づいたわ。そう、これはA5ランクの野球ギャグバトルマンガだ

 

野球する気ゼロ

いや、作中のキャラは超本気で野球してる(らしい)よ。このようにトンデモ・ベースボールをしながら超ハイテンションで進む展開は読み始めたら最後、驚異的な中毒性と爽快な読後感をもたらしてくれる。それはまるでパンチの如き…連打!(試合中のテンション)。

突っ込みが追いつくことは決して無い。コレコレ、この勢いこそが大事なんだよ。むしろ勢いさえあれば面白い。「怖いものなど何もない」っていうある種の無法地帯だったWeb漫画黎明期、作者の熱意とテンションだけで好き放題やってた漫画こそが正義だった。『モブサイコ』だってぶっ飛んでたしな。とにかく、これは本当に面白い野球ギャグバトルマンガだ(2回目)。

『デッド・オア・ストライク』
GANMA!

 

 

多数欠

あらすじ

第一部

突如「皇帝」によって始まった多数欠により世界中の人々が死んでしまう。生き残った人々は毎日午前0時に多数欠をとり多数派だった人々が死ぬこと、特権と権利という能力を手に入れることができることが伝えられる。その中で実篤らは皇帝を倒すことを決意する。

第二部 -FINAL KEQ-

多数欠終了から1ヶ月。治安維持のためにごぼうらは皇帝のふりをし続けていた。そんななか皇帝の入れ替わりに気がついた少年、王野頼音は現皇帝一味に単独潜入,仲間となる。しかし謎の「女王」という存在が現皇帝を倒すと宣戦布告,彼らは特権利を使って再び戦うこととなる。

第三部 -judgement assizes-

ある日高校生の津川虎徹は、突然の暗闇の後、飛ばされた法廷という場所で、皇帝と名乗る謎の人物によって「多数欠」に参加させられる。穢土と名乗る青年に助けられて現実世界に無事帰還した虎徹は、幼なじみの奏斗と共に、多数欠を止めるため皇帝を倒すことを決意する。Wikipediaより引用

残り2作は俺の本当にオススメ。まず『多数欠』。これは今第三部を連載中なんだけどね。とりあえず第三部までやってる事だけで面白いということは分かってもらえると思う。それこそ最初は人類の半数がいきなり死亡したりと、終末生き残りゲームモノとしての様相を呈していたが、「特権」と「権利」という2つの異能を用いたバトルが最高にハマった。登場キャラも滅茶苦茶に多い(たぶん100人くらいいるんじゃ…?)けど、3部まで続いてればしょうがない。

 

チートキャラしか存在しない

とにかく異能が強力過ぎる。他の漫画に出てきたら、かなりバランス崩れちゃうんじゃないの? という強力無比な能力はこの漫画ならでは。登場人物の能力が総じてチートだからこそ、結局は頭脳バトルに発展していくんだけどね。この流れが見事。

特に「特権」は概念系の能力が多いく、その能力の発動に置いて宇宙の法則は機能しない。俺的好きな特権ランキング一位は「拒否権」かな、だって”断るだけで”ほぼ全ての攻撃を防げるからね。うん、「そんなんアリかよ」のオンパレード

そしてバトルだけに終始してないのも良い。というか友情・恋愛・戦闘のバランスが非常に秀逸。伏線の量と、それの回収もファンを増やしている要因だし、ちょい役として出てきたキャラが物語後半に意味を持ち始めるところとか、漫画ファンは全員好きなんじゃないかな。

Web漫画の中でも確実に上位にランクインしてる名作

『多数欠』
GANMA!

 

 

カルカラレルカ

あらすじ

カルカラレルカ SR-H ORIGIN(第1部)

未開惑星の開拓調査機関「ゴフェル」所属ハンターの兄妹が現地未確認生物のハンティングを行いながら失った記憶と惑星の秘密に迫る。

カルカラレルカ SR-H PROSPERITY(第2部)

人類文明の最先端に位置する超惑星”アーク”。 開拓が始まり一世紀以上が経過した今もなお、”その星”には未知の技術、未知の生物、そして未知の能力が眠る。 地球出身のハグルは、未知の惑星での立身出世を夢見て、”アーク”にある「能力開発機関」への入学を志す。Wikipediaより引用

ラストは「カルカラレルカ」。 まず初めに言いたい。まだ読んでない人は絶対に見た方が良い! Web漫画史上、これを超える作品は無いってくらい超面白い。というか、俺は今まで読んできた漫画の中でもかなり上位にランクインするんじゃないかとすら思ってる

 

キャラがとにかくアツい
「狩るか?狩られるか?」の世界

この文字の級数が気持ちいい。まず第一部の時点で相当な熱量だった(作者さん絶対書いてて楽しかったと思う)。異星に移住した人類が星を開拓しながら先住民と争う、と言えばかなりハリウッド臭がするが、まったくそんなことはない。こんな物語は日本人にしか想像できない。この世に溢れる物語を凝縮したような怒涛のストーリーは、星の数ほどの物語が日々生産され続ける漫画大国・日本だからこそ。

第一部の時点では画力がまだ粗削りな感じだったんだけどね。流石『GANMA!』を代表する超絶人気・長期連載作品。第二部になった今ではどの雑誌でも看板はれるくらいの実力を手に入れた。

 

これぞWeb漫画!な
抜群のテンポが◎

これは俺の勝手なイメージかもしれないんだけどね、月刊連載や週刊連載よりもポンポン読まれるWeb漫画において“テンポの良さ”はかなり重要。スマホでサクサク読めるからか、つまらないとすぐブラウザの戻るボタン押されちゃうしね。この記事で紹介した他作品もテンポ感は非常に良いけど、本作は別格

戻るボタン押す暇がないほどの急展開に次ぐ急展開。急旋回して急降下したと思ったら急浮上する起承転結の嵐だ。これには飽き性なデジタルネイティブ世代も、のめり込んでストーリーに没入間違いなし。マジで面白いよ。

『カルカラレルカ』
GANMA!

 

GANMA!(ガンマ)

GANMA!(ガンマ)
開発元:COMICSMART INC.
無料
posted withアプリーチ

【まとめ】

以上、漫画好きがガチで選ぶ『GANMA!』作品【おすすめ5選/Web漫画】でした。

今は完結した作品は有料会員しか見れないんだけどね。正直、『多数欠』と『カルカラレルカ』を見れるだけで元は取れると断言する。それくらい面白い。

日本漫画の未来は明るい。

映画の『ピンポン』は観て、アニメの『ピンポン』観てない奴は日本国民じゃない

『鉄コン筋クリート』で有名な松本大洋先生が原作の『ピンポン』。2002年、窪塚洋介が主演の実写映画は日本でも大ヒットしたけど、2014年のアニメも映画に負けてない超名作だったんだよ。

あらすじ

才能にあふれ、卓球が好きで好きでたまらないペコ。子供の頃から無愛想で笑わないスマイルにとってペコはヒーローだ。

だが、ペコはエリート留学生チャイナに完敗。インターハイでも、幼なじみのアクマに敗れてしまう。一方スマイルは、コーチに才能を見い出され、実力をつけていく。

現実の壁にぶつかったペコと強さに目覚めたスマイル。それぞれの道を歩き始めた彼らに、またインターハイの季節がやってきた…。Filmarksより引用

アニメ版では、原作には登場しなかったけど松本大洋の構想にあったというキャラも登場してくる。それが物語を良い感じに盛り上げる。「映画は観たけど、アニメは絵が苦手」って言ってる人がたまにいるけど、全然わかってない。松本大洋の線を活かして動かされる水彩タッチのアニメーションは、原作の世界観を可能な限り限界までトレースしてるし、動きが加わることで映画版よりも情報量が凝縮されたアニメ化における一つの正解と言える

ピンポン
STANDARD BOX [DVD]

 

 

アニメ表現の新境地

現実で役者を撮った後に動きを絵に落とし込む”ロトスコープ”を使用して作られているアニメーション。ロトスコープと聞くと、俺なんかは『悪の華』がまず頭に浮かんでくるけど(『花とアリス 殺人事件』もロトスコープだったね)、この『ピンポン』はカッコ良い構図を計算して作り込まれてる

漫画の中の「カッコ良い!」ってシーンを全部拾ってくれたセンスに脱帽。そして何より驚きだったのは、ぶっちゃけ漫画よりカッコ良いってこと。これは衝撃だった。一気に絵の力強さに持っていかれる感じはジョジョのアニメ化以来。萌え絵には無い輝きがある。単純に、スポーツアニメの表現手法で、新しい道を切り開いた超名作ってことをここで記録しておきたい。

もちろん、表現だけじゃなくストーリーも超面白い。基本的には国民の大半が観ているであろうあの実写映画版と大きな軸は変わらないんだけど、先に述べている通りアニメにしか出てこないキャラの登場によって深みが追加されている。より脇役の心境に光が当たっている感じかな。これはアニメ観た人の特権だし、ファンにとってのサービス要素でもあるから詳細は割愛する。

 

 

「おかえり、ヒーロー」

本作を語る上で絶対に外せないのは主人公ペコとスマイルの熱い友情だ。幼馴染の2人が高校に至ってなお爆発させたマグマの如き信頼関係には、理由なんか無くとも涙した人は多いハズ

観てない人の為にちょこっとだけ話すと、スマイルの名前の由来は「笑わないから」じゃない。ペコと卓球で戦ってる時に「笑うから」スマイルなんだよ。そんなスマイルが笑わなくなったっていうのは、圧倒的な実力だったペコが低迷期に入ったから。だからスマイルは子供の時の様に”圧倒的に強い”ペコが戻ってくるのをずっと待っていた

この男特有の、友達へのライバル意識が非常にアツい。突き詰めると『ピンポン』って、この2人の青春が凝縮された物語だからさ、ペコvsドラゴンとの戦いで自信と実力を取り戻したペコの姿に、作中屈指の名言「おかえり、ヒーロー」が飛び出したのは必然と言えるんですよね。

 

vsドラゴン

ちなみに、このヒーロー(強いペコ)復活の戦いとなるvsドラゴン戦も極限までアツい。映画版のクライマックスになる通り、圧倒的一強として君臨していた孤独な怪物に対して、卓球をすることの純粋な楽しさを思い出させるペコ。それだけ自分自身が卓球を楽しんでるってのが強く伝わってくる名バトル。

最初はペコに対してメチャクチャ敵意を露わにしていたドラゴンが、試合終盤では笑いながらペコとのラリーを楽しむっていうのが良いよね。一種の悟り状態みたいにトランスしながらお互いを高め合う姿に、全スポーツマンは落涙必至。認めてる者同士の戦いには凝縮された魂の会話があるんだよな。ペコも最後に「カッコ良かったぜ、ドラゴン」って言ってるし、アニメ版が映画と同じくこの試合で終わっても名作の仲間入りはしていた。だが、ここで終わらないのがノイタミナ

 

 

ヒーロー見参

アニメ版の絶対視聴ポイントは、無論、最終話(11話)の「血は鉄の味がする」だ。実写映画版ではペコがドラゴンに勝って、ペコvsスマイルの決勝戦は”ご想像にお任せします”って余韻を残して終わらせたけど。アニメ版では伝説の決勝戦を描いた

笑いながら試合をするスマイルが戻ってきて、「僕の血は鉄の味がする」って、ロボットと呼ばれていた少年が人間であったことを自覚する瞬間。ここにまず涙腺ダムが崩壊。

 

輝かしい想い出

そうそう、あと、映画版との違いとしてもう一つ絶対に観て欲しいシーンがある。舞台は未来、卓球場タムラで子供たちに卓球を教えるスマイル。日本代表として中国戦に向かうペコ。大人になってそれぞれ卓球と関わっている2人が描かれるのも本当に良い。

そして卓球場タムラに往訪するドラゴン(マフィアみたいな風体)。スマイルと2人で、海を眺めながら大人口調で仲良さげに話をする様子は、高校時代の激戦が、その後も友情を育むきっかけになったであろう事を想像させる。

高校時代、部活やスポーツに打ち込んだ想い出ってのはさ。大人になると本当に脳の端っこの小さい思い出でしかなくなる。昔を懐かしんだ時に「何であんなに頑張ってたのかなぁ」と思うことも多いが、楽しかった思い出ってのは、その後の人生に大きな影響を与える。結果として「頑張って良かった」と思えるから不思議だ。

卓球場の壁には大会の時の表彰台の写真。笑顔のスマイルには悔いは全く無い様に見えるのは俺だけじゃないハズ。

 

 

まとめ

以上、Netflixでアニメが全話視聴できるようになった記念の駆け足『ピンポン』語りでした。いや、これ本当に最高のアニメだから全国民に観て欲しい。あの映画版に負けない作品を作るってのは相当にハードル高かったと思うんだよ? でもそれを見事にこなした湯浅政明監督にスタオペだよ

アクマとかチャイナとか、語るとキリがない位に脇役たちの人間性にフォーカスした内容になってて、書いてて「収集つかなくなるな…」と気付いたんだ。だから実は800文字くらい消したけど。そのくらい面白い。映画は映画でエンターテイメントとして一級だったけど、本当に負けてない

まだの人はみて。絶対後悔しない。

近年稀にみる実写成功例『ミスミソウ』が原作を超えてたの知ってる?

2018年、ミニシアターを中心に上映された実写版『ミスミソウ』。2007年~2009年の間『ホラーM』で連載されていた押切蓮介さん原作の完成度も言わずもがなだったが、この実写化もまた、負けてない秀作。

あらすじ

東京から田舎の中学校に転校してきた野咲春花は、学校で「部外者」扱いされ、陰惨ないじめを受けることに。

春花は唯一の味方であるクラスメイトの相場晄を心の支えに、なんとか耐えていたが、いじめはエスカレートしていくばかり。

やがて事態は春花の家が激しい炎に包まれ、春花の家族が焼死するまでに発展。春花の心はついに崩壊し、壮絶な復讐が開始される。映画.comより引用

キャッチフレーズは「家族が焼き殺された日、私は復讐を決めた。」というド直球さ。潔い、というかこれしかない。原作も良くて…というか、押切蓮介作品は『ハイスコアガール』も『でろでろ』も『サユリ』大好きなんだけど、『ミスミソウ』はちょっと特別だよね。ここまで凄惨な復讐を描けるのは押切先生しかいない(黒押切)

 

 

主演:山田杏奈の代表作

原作準拠の惨殺劇。「絶ッ殺」という固い意志を示す視線を見事に再現したのは『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』の山田杏奈。ボウガンで遠くから狙ってくる男子生徒に対して殺意の波動を放出する様は、元々心に闇を抱えてたのでは? と思わざるを得ないほどの名演技。『小さな恋のうた』にも出演してたけど、強くて可愛い女優は昨今に置いてレア度SSR。この空気感を出せるのはリアル夜凪景と言っても良いくらい。もっと色んな映画出て欲しい(具体的には次の『冨江』とかやって欲しい)。

 

若手役者陣がとにかく優秀

唯一の救いである相場くんを演じるのは清水尋也。お前こんな演技できたんかい! という感想を、誉め言葉としてここに記したい。気付いた? 『ちはやふる-結び-』の須藤先輩だよ。この狂演なくして本作は完成しなかった。

もちろん、いじめっこグループも総じて良い演技をしてた。「ボウガンでお前の親父脅して、家に火ぃつけたのは俺だぁあああ」と叫びながら、その娘にも同じボウガン向けてくる全く同様の余地なしの男子生徒役も最高にダサい死に方するし。バイプレイヤーが優秀だからこそ主演陣が映えてる良き例。

すべては押切先生の原作が優れていたからこそなんだけどさ。思春期のスクールカーストにおいて悪意は容易に伝播すること、日常は一瞬で崩壊させることが出来るし、人間は一瞬で消せる。憧れだった人間は振り返れば小さな人間だし、雑魚のような3軍でも本気を出せば小さな世界くらい壊せること。その当たり前がしっかりと3次元化されてた。

 

誇張無しに再現度105%

流石に、あまりにも残酷なセリフは無くなってたけど、原作と違うのはそれだけかと。過激な暴力・人間が狂う瞬間のあのピリつく空気は完璧に原作準拠だった。

俺、押切先生の話は勿論だけど絵も好きだからさ。正直、実写化されても全然観る気になれなかった。「いやいや、あの絵があってこそストーリーが映えるんでしょ」なんてほざいてた。燃やしたい。たぶん俺が『ミスミソウ』という作品を知らないで観ても、「なんか、押切蓮介の作品っぽいなぁ」と感じる忠実さで、心の内面を描いてる。

ちなみに、”再現度105%”としたのは、映画に改変があったからだ。賛否両論なのかもしれないけど、俺は非常に良いアレンジだったと思う。美作昴もビックリのパーフェクトトレース+α

 

超意外な生存エンド

大概の作品だったら、絶対に「そりゃ悪手じゃろ」と言われる、死んだキャラの生存エンド。それを見事にまとめあげ、”救いのある『ミスミソウ』”を完成させていた。監督に拍手。

どんな人なんだろ? と思って調べたら内藤瑛亮監督というらしい。俺はこの人の他作品、観たことないんだけどね、本作に至っては素晴らしいと思った(押切先生ファン?とまで思えた)。いつか同監督の作品に出合ったら本気出して観てみよ。とにかく、俺はこの映画の終わりかた超好き

 

物語の真の終わりが描かれた

そもそもこの映画自体が、連載終了後の完全版をもとに作られている。読んだ人は分かってる事だから普通にネタバレするけど、この完全版には前日譚とエピローグが追加されている。

映画版はこれのエピローグ部分を改変したということになる(というか別のシーンに差し変わっただけで、おじいちゃんと春花の会話はあったのかもしれない。いや、あったんだよ。俺たちの心の中でな)。完全版と言うだけあって、これを描くことで一気に物語に深みが出たんだよね…おじぃちゃん…。

春花が妙子に言った最後の言葉「胸を張って生きて」から、映画のラストの爽快感&エモさが生まれるなんて、誰が想像できただろうか。この技量は敏腕監督と言わざるを得ない。『ミスミソウ』の新しい完全版を魅せてくれ、本当にありがとうございました。観終わった後の感じで言えば、完全に原作を超えてると思う

まとめ

漫画の実写化は基本的に失敗するのが定例になってしまったことは悲しいが、この『ミスミソウ』に関しては大成功。

原作ファンこそ観て欲しい作品なので、チェックして欲しい。

酒を飲んだテンションで『波よ聞いてくれ』の女性陣について書いたから読んでくれ

2020年4月からアニメがスタートし、その魅力を地上波デジタルの波に乗せて拡散している『波よ聞いてくれ』。この面白さ、本当にもっと多くの人に届けたい。

あらすじ

舞台は北海道サッポロ。主人公の鼓田ミナレは酒場で知り合ったラジオ局員にグチまじりに失恋トークを披露するが、翌日に録音されていたトークがラジオの生放送で流されてしまう。

激高したミナレはラジオ局に突撃するも、ディレクターの口車に乗せられアドリブで自身の恋愛観を叫ぶハメに。

この縁でラジオDJデビューしたミナレを中心に、個性あふれる面々の人生が激しく動き出す。

さあさあ、波よ聞いてくれ!!!引用元:原作1話あらすじ

黙ってればスタイル抜群の金髪美女なのに、口と酒グセの悪さからThe 残念な美人ことミナレ。いきなりラジオパーソナリティとして活躍する(The ラジオ局遊撃隊の)トークスキルとその発想力は素人離れしてて本当に奇抜。ちなみに声優の杉山里穂はリアル北海道出身で今回が主演デビューのガチ美人

舞台となる北海道のローカル感。リアリティ味のあるギャグに全振りしたストーリーだけど、ラジオの収録現場・風景を事細かに描くニッチさは漫画に新しい波を生んだ。こんな人達が実際にいたら面白いなぁと思わずにはいられない、ある種”働く女の子シリーズ”の大人(熟女)版。 [補足: 新宿三丁目にあるスープカレー屋さん「東京ドミニカ」がミナレの働くVoyagerのモデルになっている(北海道じゃない)。]

波よ聞いてくれ(1)
(アフタヌーンコミックス)

ヤバくて良いオンナしかいない

作者:沙村広明さんの、『無限の住人』の頃からの悪癖特徴なんだけど。登場する女性がことごとくヤバい。主人公のミナレのヤバさと魅力はアニメを観れば開始10秒で実感できる。でも他の女性陣も総じて性格・性癖ともに歪みきった女性だということを忘れてはならない。この作品の良さは女性陣にある。原作読者の俺がその魅力の一端を紹介しよう。

 

 

 

鼓田ミナレ

推しも推されぬ主人公。生き意地の悪い女日本代表と言えるその思考回路には毎話感服する。ダメ男を好きになる母性と、抜群の行動力がフュージョンして人生がゴテンクス(失敗)。また、恰幅の良い男が性的に好みで、宗教団体に拉致監禁された時に美少年をハニートラップ役にあてがわれても肉体関係を拒絶する意志の強さを持つ。得意技はフランケンシュタイナー。黙ってれば美人。

 

 

 

南波瑞穂

家賃の払えなくなったミナレを家に泊めてあげるだけでなく、「いつまでもここに居れば良いじゃないですか」と甘言を囁く天使。しかしてその実態は構成作家(官能小説家)の久連木に高校時代から想いを寄せて同じ職場に就職を果たす対戦車地雷。現実にいたら一番可愛いけど一番地雷。また、精神的に思い詰めると包丁を備前長船なみの切れ味になるまで研ぐ(地雷)。でももし付き合ってたら年内にプロポーズする。普通に可愛い女性。

 

 

 

城華マキエ

交通事故を起こした兄の責任を取ってVoyagerで無償労働することになる黒髪の麗人。過保護な兄の束縛から逃れることができ、人生の喜びを見出だしつつあるが、実は卓越したラジオはがき職人。この綺麗な容姿で「網走刑務所の囚人の作った家具だけでトータルコーディネート」「膣をどこかに忘れてきた」というネタを投稿する類まれなるセンスを有する引き籠り。『無限の住人』に登場した作中最強の剣客ではない。

 

 

 

芽代まどか

ミナレの甲高い声色とは違い、人を安心させるリアジェリング・ウィスパーボイスの持ち主。アニメではカット? されてたけど、ミナレに対して対抗心のような興味を示しまくって公園のベンチで日本酒飲みを強制してくる可愛いババァ。突然パンチの聞いた酔いどれ説教されたミナレも思わず幣舞橋の銅像」と貧乳具合をディスるも、翌日にはこれを自虐ネタとして口撃してくるあたり百戦錬磨の性格悪さ。正直アニメではその魅力はまだ一切魅せれてない(二期フラグ?)黙ってればスレンダー美人。

 

 

まとめ

基本的に皆、黙ってれば美人なんだよ。というか、現実でも結構そうだよ。女性というものは可愛い存在だ。でも、男が真に惚れるのはそこじゃないからな。結婚という悪徳契約交わしてでも一緒に居たいと思える女性は、総じて可愛さ+αを持っているワケで。だからこそ一緒に居たくなる。この作品に出てくる女性キャラは、皆その辺を兼ね備えていると言っても良いような気がしてきたと思ったら酩酊して頭が痛いからたぶん酒のせいで思考回路がまとまってないんだろう。忘れて

ちなみに、アニメでどこまでやるのかってのは今後この作品に大きく関わってくると思う。ぶっちゃけ宗教団体編は「ラジオ要素どこいった!?」ってなるけど、一番面白いからやって欲しいな。(でも尺的に無理だな)。山中で消えた律子(天井裏で死んでなかった人)も出てくるし。官能小説家・ミナレ・瑞穂の大冒険でようやく一区切りする感あるしな。あとこのエピソードの終わり方が神

アニメが面白いと思った人は原作もぜひ。

鬱上級者がアニメ上級者に観て欲しい鬱アニメ【おすすめ5選/上級者向け】

鬱経験者の俺が自信を持ってオススメする鬱アニメ。

はじめに言っておこう。この記事では『School Days』とか『SHUFFLE!』は取り上げない。一世を風靡したこれらの作品は、俺の中で観ていて当たり前のバイブルだからだ(同じ理由で『魔法少女まどか☆マギカ』『がっこうぐらし!』等も無し)。この記事では、アニメ好きでも意外と観ていない作品をフィーチャーしたい。

『なるたる』(2003)

あらすじ

ある日、祖父母の実家に遊びに来ていた玉依シイナがヒトデのような謎の生き物「ホシ丸」に出会い、またそれがきっかけで「竜の子」、「竜骸」などと呼ばれる謎の存在、そしてそれらと「リンク」することで竜の子たちを操るさまざまな子供たちと出会い、交流を深め、時には戦う事になりながらも成長していくオムニバス形式のファンタジー作品。

ひらがな四文字のアニメは萌え豚御用達だと誰が決めた? 『ぼくらの』作者である鬼頭莫宏と言えば大まかな内容は分かるハズ。作者自身が「当時病んでおり、無意識的に精神状態が反映された」と語る通り、生粋の鬱作品。より社会に対しての怨恨が濃かった時期の作品と言い換えても良い。

軽~いバトル中心のストーリーかと思いきや。物語の途中から少年少女の精神状態・思春期に抱える人間関係の悩みが主題となってくる。その歪曲したジュブナイルに共感したら最後、抜け出せない鬱ラッシュ・マウンテンに乗車完了。シートベルトの準備はOK? むしろこの辺で心にダメージ負うくらいならこの先観ることは不可能なので、途中乗車するなら4話~5話がベストかもしれない。ぜひ心と相談して観てくれ。

 

内容とはかけ離れた陽気OP

このOPが醜悪 !  何故にこんなにも本編とはかけ離れた映像にしたのかは不明。一見すると日常系萌えアニメに分類されるこのOP映像と、日常の中の希望の存在を仄めかす歌詞は多くの視聴者を騙した(ちなみにフルで聴くとちゃんとハートフルボッコ歌詞してる)。というかそもそもキッズステーションで放送すな

TBSの地上波放送では、12話の一部が倫理委員会によりカットされるという鬱アニメ認定試験も無事突破。間違いない鬱作品と言える。ちなみに、原作はアニメよりも細かくストーリー回収してくれてるからより深部へ挑戦したい人は原作を読むことをオススメする(責任は取らない)。

なるたる(1) (アフタヌーンコミックス)


『ベルセルク』(2016)

あらすじ

“自分の国を持つ”という大きな野望を持つグリフィスは絶対的な力を持つ「ゴッドハンド」の五人目の守護天使となることと引き換えに自分が最も大切にしていた者たちを生贄に奉げた。

生贄の儀式の生き残りでありグリフィスの片腕であったガッツは身の丈を超える巨大な剣を持つ「黒い剣士」となり、仲間を裏切って無残に殺したグリフィスへの復讐のために世界を旅する。

日本が誇るダークファンタジーの巨塔。海外からの評価の方が高くて、俺の周りの漫画好き・アニメ好きでも意外と観てない作品の筆頭。原作40巻くらいしか出てないのにね。まぁ、内容が濃すぎて一人の男の鬱人生体感できるからな

中世ヨーロッパ風の”剣と魔法の世界”の王道を素で行くと聞けば、多少なりとも興味を持ってくれる人はいるかもしれない。だが、そんな軽い気持ちで観ると熱いフライパンで焼かれる冷凍ステーキのように苦しむことになる。

 

親友全員と恋人を同時に失う拷問展開

人理を超えた存在になれる券が当たったから人生の友全員生贄に捧げるでござる!という人間の業を描く胸糞王道ストーリー(でも、辛かったんだもんな!そりゃ人間辞めたくなるわという同情要素もある)。しかも特筆すべきはその人生の最底辺部分が描かれるのは作中中盤の過去編という残酷さ。こんなこと抱えて生きてたのかよ…ってなる。

真のダークファンタジーにおける悪魔どもは相手が男だろうが犯すし四肢でキャッチボールしながら大切な人を嬲る。信じ切っていた親友に裏切られ、悪魔たちに心と身体を凌辱される仲間を見ながら、なお生き続けた男の物語を観れば鬱間違いなし。例の如く、原作の方が数倍精神病めるし、辛すぎて人間辞めたくなるから読んで欲しい(絵の描き込み具合が日本トップレベル)。ハリーポッター好きな人とか、百味ビーンズの絶望味だと思えばちょっとワクワクするのでは?(しない)

ベルセルク 1 (ヤングアニマルコミックス)

 

『最終兵器彼女』(2000)

あらすじ

北海道の何も無い、でも坂ばかり多い街に住んでいた僕(シュウジ)。

ある日靴箱の中に手紙が入っていた。ちせからの手紙。僕らは、彼氏と彼女になった。 ちせと本当の彼氏、彼女になってからしばらくしたある日、町でタケやノリと買い物をしていたらいきなり僕達の日常が終わった。

そこで見てしまった、彼女。ちせ。

僕達は、恋していく。

ごめん、これは流石に有名すぎたかも。でも案外ちゃんと観てる人少なくない? アニヲタなんですぅ~って言ってる奴だいたいこれ観てなくない? にわか判別アニメと言っても良いかもしれん。

戦争に巻き込まれて無双していく物語は数あれど、最終兵器になる事の悲しさをここまでリアルに描写したのは本作くらい。ただの一般人がいきなり最終兵器になってジェノサイドするが、「それでも恋がしたい」という万国共通時代不問の乙女の心情が見事に北海道の地を舞台に顕現。ちなみに実写版、あれはダメだ忘れろ。

 

愛が純粋だからこそ病む

これたぶん、キャラの年齢が大人だと全く違う作品になったと思うんだ。高校生の恋愛をしながらの兵器生活だからこそ、日常の素晴らしさと憧れが際立つ。俺がこれを観たのも高校生だったからかな…「この作品観て一緒に泣けるような子と結婚したいな…」って思った記憶がある。話が遥か過去に飛躍したが、そのくらいリアルな心情が描かれてた。

原作は原作で、儚い気持ちを上手に表現している点が◎。

最終兵器彼女全7巻 完結セット (ビッグコミックス)

 

『今、そこにいる僕』(1999)

あらすじ

剣道場から帰る道の途中でシュウは、廃工場の一番高いエントツのてっぺんで佇んでいる見知らぬ少女のララ・ルゥを見つけた。

少女に興味を持って話しかけるが、少女は無言で夕日を見つめている。そんなとき突然、空間の彼方から彼女を狙ってやってきた奇怪なロボットの集団が迫ってきた。

ララ・ルゥを助けようとしたシュウはエントツから真ッ逆様に落ちてしまい、目覚めたらヘリウッドという知らない世界に連れてこられていた。

ちょっとジブリっぽい絵柄で可愛らしいキャラが特徴(というかだいたい他の作品もそうだけど)。この絵柄で、王道のボーイ・ミーツ・ガールを描く少年少女の成長物語…かと思いきや、ひょんなことから異世界に連れてこられたヒロインが強姦される(しかも妊娠する)という鬱病発症特効薬。


戦争×終末×絶望のトリプルコラボ

異世界で王女を助けるために、兵隊として奮闘する少年の頑張りをひたすらに見守るというだけでも十分鬱要素があったのだが。物語終盤にかけての報われなさが異常。なんでこんな子供たちがこんな目に…という理不尽さで、怒涛の如く畳みかけてくる哀しみは最終回でピークを極め、「いつか…また一緒に夕陽みようね?」というララ・ルゥの最期の虚無感でご飯3杯は食べれるくらい、心にぽっかり穴が空く

今、そこにいる僕

 

 

『TEXHNOLYZE』(2013)

あらすじ

絶望と暴力に支配され荒廃した都市・流9洲(ルクス)。地下にあるこの街は、地上との通行を遮断され、吹き溜まりのような場所と化すも特権階級である“クラース”とギャング的な自警団である“オルガノ”によりかろうじて維持されていた。

ある日、この地に一人の男が地上から通風孔を通って降りてきた。男の名は吉井。ある野望を遂行すべく降り立ったこの男を迎えるのは、賭けボクシングで生計を立てるも瀕死の重傷を負った少年・櫟士、近い未来を見ることの出来る少女・蘭、街の声を聞くことの出来るオルガノの長・大西京呉、そして未来の義肢である「テクノライズ」の技術に魅せられたクラースの科学者・ドク。

この男の来訪により、やがて流9洲は街全体を巻き込んだ事件へと発展していく。

最後は『TEXHNOLYZE』(テクノライズ)。「鬱アニメを語る上で、この作品は絶対に外せないでしょ!」っていう超名作。台詞という台詞が無い第一話は当時ネットで話題になった本当の問題作でもある。

安易な気持ちで観ると絶対に途中で挫折するから、本当に鬱になるアニメを探してるっていう人だけ是非ともチェックして欲しい。話自体がかなり面白い(面白いとは言ってない)し、物語終盤の盛り上がりというか加速具合は比肩する作品無し(かなり人を選ぶ)。「は?何このアニメ?」という感想を抱くことになるが、一気に観ることでその疑問はなんとなく解消されていく

 

心・身・誠・救・済!!!

まずOPがインストゥルメンタル。あぁ…これヤバいやつや…感満載の開幕に心をやられている暇はない、本当の絶望は遥か彼方。と言っても、これは俺の感想だから。嵌る人は本当に自分の人生の1ピースかのようにド嵌りするし、1話からメチャクチャ面白いっていう視聴者もいる(ピカソの生まれ変わりとかですかね)

肝心の物語はSF任侠モノ…って言うのが一番近いのかな。進化した人間が幸せになる訳ではなく、最期に向かう退廃した世界で、どう人間は生きるのかっていう事を考えさせられる作品だった。見せかけのカッコ良さや可愛さ、そんなものどうだってよくなる。完全に希望の立たれたラストシーンで逆に希望すら見えてくる気がした俺は少し重篤な気すらした。何を言っているか分からないと思うが観れば分かる。それほどに深い。繰り返しになるが、「これが自分の人生に足りなかったアニメだ」って人、本当にいるからな

TEXHNOLYZE 全8巻セット

まとめ

以上、鬱だった俺も認めるアニメ上級者にこそ観て欲しい5作品でした。むしろ、この5作品観たら鬱アニメマイスター名乗って良いと思う。

「意外と観られてない」って言っても観てる人は観てるし、何ならこの記事を探し出すくらい鬱への探求心を持っている人は既に全部視聴済みかもしれない。そんな人は、『ベルセルク』以外は結構昔の作品が多いし、懐かしいなぁと思いながら笑ってくれれば嬉しい(笑えるくらい心が壊れているなら)。

観てない作品が一つでもあった人は、死にそうに辛い境遇の時に視聴して欲しい。より作品にのめり込めるし、良くも悪くも人生を変えてくれる作品になると思う。

大切なことは観て何を想うかだ。人はどれだけ絶望の中にいたとしても、希望を見出だすと俺は信じています。

生き様で後悔したくない人は黙って『呪術廻戦』読めば良いと思うよ

『ハンター×ハンター』枠のニュージェネレーションと言えばその魅力は伝わると思うが。もっと一般人向けに綺麗ごとを述べれば、週刊少年ジャンプの層の厚さを証明するかのような作品、それが『呪術廻戦』。

ストーリー・概要

呪い。 辛酸・後悔・恥辱…。人間の負の感情から生まれる 禍々しきその力は、人を死へと導く。ある強力な「呪物」の封印が解かれたことで、 高校生の虎杖は、呪いを廻る戦いの世界へと入っていく…!

異才が拓く、ダークファンタジーの新境地!

呪術廻戦

ちなみに、漫画漬けの日々を送る俺は
他にもオススメ漫画を紹介してます。

SF作品のオススメ漫画は?
人気ブログランキングへ

映画化してるオススメ漫画は?
FC2 ブログランキング

今アツい漫画は?
にほんブログ村

それではお待ちかね。下記にて『呪術廻戦』に関して独善的に語っていく。楽しく読んで、作品のことを好きになってくれると嬉しい。

2020年10月よりアニメスタート

連載開始から2年で待望のアニメ化。正直、今までジャンプ読者の中でもニッチな層にウケてたからさ、メジャーになるのはどうなるんだろう…と言うところだけど。五条悟(c.v.中村悠一)がいる時点で面白さは無限になることが約束されているからな。

 

 

戦闘システムのセンスが良い

俺が何故この作品を手放しで褒めているのか、それはある意味ジャンプらしい戦闘システムの存在に起因する。脳筋よろしく「君がッ 泣くまでッ 殴るのを辞めない!」バトルも大好物なんだけどね、もともと『ハンター×ハンター』大好きな俺、頭で考えながら戦う作品が大好きなんだよ。別誌だけど、最近だと『出会って五秒でバトル』も良い。

もちろん、『呪術廻戦』で念能力は出てこない。その代わり呪術が出てくる。これが面白い。基本的には物理で殴るゴーストスイーパーなんだけどね。

ちょこちょこ画像で出てきている五条悟先生を例にこの漫画のバトルを少しだけ紹介したい。

 

呪術という名のナンデモ異能バトル

五条悟先生が使うのは「無下限呪術」っていう術式なんだけどね。コレは収束する無限級数を現実にする術式なんだよ(作者も上手く説明できていないので理解はしなくて良い)。もっと簡単に説明してみよう。敵がパンチして来た時、拳と五条先生の間には無限が広がっているんだけど、これを現実世界での無限として顕現する能力と言えば分かりやすいかな。うん、分からないね。え~っと、要は、目に見える世界だけで説明すると、引力と斥力と重力を同時に操るみたいな感じ? あとコレの応用で「領域展開」っていう技を取得してて、形成した領域の中にいる敵に無限の情報を与えて脳をフリーズさせ行動不能にすることもできるぞ!(大丈夫!俺も自分でッ 何言っているのかッ 全く分からない!)

ぶっちゃけると、超序盤に出てくるこの先生がマジで最強のキャラ。だから能力も規格外すぎてちょっと人理超えてるんだよね(例えに出すキャラ間違えた感)。

 

異種呪術混合戦闘

あと、他の登場キャラも基本的には固有能力持ちってのが良いポイント。あんまり被りが無い。ちなみに一応の主要メンバー3人組は、近距離物理タイプ・式神中距離タイプ・呪殺遠距離というバランスの取れた構成。

もちろん敵キャラもしっかり個性あって、むしろあり過ぎ? 見てて飽きない。最近のジャンプは同時期に『ファイアパンチ』作者の長編連載『チェンソーマン』も絶好調で陰鬱とした人気を博しているけど。俺は正統に『H×H』の系譜を継いでいるのは本作だと思ってるよマジで。

 

 

外・内面ともに過剰スタイリッシュ

いやぁ~、もはやなんで服着てるのか理解できないレベルでスタイリッシュ。身体の構造上、ポーズにはきっと意味があると仮定しても(無い)、台詞・髪型・服装全てが通学路で出会ったら即ブザー鳴らすこの感じ。最高にズキュウゥゥゥゥンだよね。

 

主人公格は3人

やべ、主人公の画像が少なすぎる。まぁ、ある意味群像劇だし、主人公単行本4巻くらいまでずっと死んでたからな、仕方ないね。とは言え、特に魅力を放ってるのが主人公格3人。1人は最強・五条悟、正主人公・虎杖悠二、そして本編開始前の第0巻(『東京都立呪術専門高等専門学校』)で登場する元主人公・乙骨憂太。この3人が結構話の軸になってストーリーが進んで行く。

中でも俺が好きなのは元・主人公である乙骨。コイツが本当に熱い。簡単に説明すると、子供時代に結婚の約束をした幼馴染が交通事故で死ぬ。それからずっと幼馴染の呪いに悩まされ、呪術高専に入学。でもこれが相当なマッチポンプ。幼馴染が死ぬ瞬間に「死なないで」と願ったのが呪いになって、実は幼馴染の呪いっていうのは、幼馴染を死して尚呪いで引き留めていたっていう超ブラック純愛主人公。※性格はかなり善良、友達想いの常識人(そして純愛アニキ)。

もちろん、他の同級生キャラも魅力的。パンダとかパンダとかパンダとか。パンダはゴリラにも変身するしな。

 

 

まとめ

ざっくりと概要だけの紹介になったけど。人を選ぶが、人にオススメしたい作品の筆頭である本作。絵を見ただけで興味を少しでも持った人はセンスがある。絶対に読んだ方が良い。ハマる人は理屈抜きで絶対にハマる。『幽遊白書』とか好きだった人にもドンピシャ。

これから絶対に来る漫画だし、時間があれば必読。

「このマンガがすごい!」って言われるべき作品それこそが『アクタージュ』

万人に勧められる漫画って、実際あんまり無いと思うんだよね。いや、あるんだけどさ。それが『アクタージュ』だ。

役者のシンデレラストーリーと言えば聞こえは良いが、少年誌ウケする設定じゃない? 馬鹿が。こと演劇漫画において、これほどジャンプに相応しい作品は存在しない。

あらすじ

役者志望の女子高生「夜凪 景(よなぎ けい)」はプロダクション『スターズ』のオーディションを受けるが、不合格となる。

しかし、その選考にかかわっていた映画監督「黒山 墨字(くろやま すみじ)」と出会い、黒山の率いる『スタジオ大黒天』に所属し、役者をめざし成長していく姿を描く。

そもそも、ジャンプで連載が始まった当初は、「どうせすぐ打ち切られるんでしょ?」という感想を抱いてしまっても不思議ではなかった。俺も思った。何故か、設定が曖昧で理解しずらかったからだ。メソッド演技[⇒ 感情を追体験することなどによって、より自然でリアリステックな演技・表現を行うこと]が異常に得意な夜凪が、主人公として絶対的な存在感を確立されていなかったという事にも原因の一端はあるかもしれない。でも、今思うとこれはそういう物語だったんだよ(テコ入れでそういう物語に成ったのかもしれないが)

 

アクタージュ act-age 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

人間離れした女優志望の女の子

もうちょい噛み砕いて説明すると、人間業とは思えないほどの演技力を魅せる夜凪に、俺が抱いた感情は「人間っぽくないから、何か感情移入できん…」これに尽きた。初音ミクに抱く感情と極めて相似。それもそのハズ、そういう風に描かれていたからね。当初のこの設定のまま、夜凪がチート演技力で女優道を突き進む、なんてストーリーだったら俺はこうして『アクタージュ』を紹介することもなく、本誌でもすぐに打ち切られたと思う。

 

チート主人公の成長譚

この流れが途中で変わる。きっと読者アンケートも順位が低かったのでは…? 自分の演技では、役者として”魅せる”演技が出来ないと夜凪は気付く。ここから、この作品は真の輝きを放った。

魅力的なライバルも登場し、友情が生まれ、勝つために努力し、勝利する(= まさにジャンプの王道展開)。その中で、演技ではない自分の感情を見せるようになってくる。つまり、これは稀代の天才・夜凪景が才能に奢ることなく、人間として成長していく物語だったってことだ。

この流れに入ってからの本作はジャンプ本誌でも明らかに頭角を現す。普通に『ワンピース』『鬼滅の刃』の次に掲載されるくらいのキラーコンテンツになった(最近のWJは単純な人気だけで掲載順は決めてないみたいだけど)。

ここから先は、作中屈指のエピソード(と個人的に思っている)『銀河鉄道の夜』編にフォーカスして本作の魅力を俺なりに語りたい。

 

舞台「銀河鉄道の夜」編

簡単なあらすじ
敏腕の舞台演出家・巌裕次郎(いわおゆうじろう)の劇団”天球”。そこに所属する憑依型カメレオン俳優の異名を持つ明神阿良也(みょうじんあらや)。夜凪の特技であるメソッド演技だったが、そこからさらに一歩踏み込んで役に没頭する阿良也の姿はある種の狂気。夜凪は初めて自分と似た演技をする阿良也とのダブル主演で、舞台演技の世界へと踏み込む。

 

憑依型カメレオン俳優との邂逅

この阿良也がまずヤバい(大好き)。マタギの役を演じる時は山籠もりして熊狩ってくる。そのくらい役作りに対して独特のプロ意識を持ってる若手実力派。

登場当初は夜凪すらも上回る圧倒的な演技力を見せるが、その秘密は役に没頭する”深さ”と観客の視点からの”伝わりやすさ”を意識している点にある。このことを共演者である夜凪にも教えて成長を促すあたり、優しい。

と、思いきやこの画像のセリフである。このコマだけ見るとサイヤ人の王子並みに高いプライド。ただ、これはそれだけ巌さんのことが大好きっていう事なんだよね。この無意識の愛 ガス 爆発、本当に好き。

というか、この舞台「銀河鉄道の夜」がダブル主人公であることにリンクして、必然的に『アクタージュ』本編も夜凪と阿良也、そしてその周囲の人物にスポットライトが当たるようになる。これが良かった。ここから加速度的に面白さ ガス 爆発した。

 

演出家不在の舞台本番

まさかの舞台公開初日に危篤状態になる巌さん演出家不在の状態で初日を迎える夜凪たちだったが、逆に奮起する。この親を想う子のような劇団”天球”の面々の姿が読者にも作品への没入感を与えてくれた。

いやお前ら絶対辛いだろ…という気持ちを抱きつつも、時間は止まらず幕が上がる。「恩師のために最高の舞台を」と意気揚々に臨む役者たち。ここから本当に怒涛の演技力祭りだから! 『アクタージュ』はここからが本番。 ここから本当に面白くなったから、これから読むって人は絶対ここ(たしか単行本で6巻)まで一気に読んで欲しい。

こっからダイジェスト形式で名シーンだけ一気。
の、つもりだった(遠い目)。

冒頭にしか出演しない亀ちゃん。冒頭にしか出てこない超脇役(ジョバンニを弄るいじめっ子・ザネリ、川で溺れてカムパネルラに助けられるもカムパネルラは死ぬ)という配役ながら、演じる側にとっては主演も助演も関係ないという精神から、観客に「最高に気持ち良い」と評される名バイプレイヤーとしての演技を魅せつける。そして多くのジャンプ読者を『アクタージュ』面白れぇぞって思わせたのもこのキャラ。この亀ちゃんが本当に最高だから。彼の言葉には嘘がない、役者にとってこれほどの誉め言葉はない。

しかも舞台から下がった後の言葉がコレ。マジ格好良い。でも、そうなんだよね。まだ『銀河鉄道の夜』は序盤も序盤。劇団”天球”の主役級はジョバンニ(阿良也)しか出てない。物語的にはこれから。『アクタージュ』もここからが真の本番。ごめん亀ちゃん、俺ちょっとフライングしてたんだな。でもお前マジで最高だったぜ

 

ダブル主演の面目躍如

銀河鉄道の車内でカムパネルラとジョバンニが再会する超名シーン。ちなみになんだけど、宮沢賢治の本家『銀河鉄道の夜』って読んだことありますか? 本家でもこのシーンは結構魅力的な描かれ方してて(本当はカムパネルラびしょ濡れで登場するけど)、唯一自分を虐めてなかったカムパネルラとの再会は、ジョバンニにとって唯一の安息。その時のえも言えぬ安心感と神々しさを、見事に『アクタージュ』の世界でも夜凪と阿良也が演じたってこと。

てかショートカットって!( ウィッグだけど)。ただの美少年と化した夜凪。憑依型カメレオン(♂)と憑依型カメレオン(♀)の邂逅はストーリーにのめり込ませる素敵さがあった。観客Aの舞台批評家も納得の演技。椅子だけの舞台、そこには確かに銀河鉄道に乗っている2人がいた。

てかここで一回冷静に作品について語りたいんだけど。物語の中で舞台を観てる感覚で漫画を読めるって中々に無いことだなって思う。演劇を舞台にした作品は数あれど。ここまで入り込める作品は本当に少ない(『まくむすび』も面白いぞ!)。

 

辛さを押し殺して演じる姿に感極まる

舞台袖で泣く七尾。この娘マジ可愛いから。人生において、役者という道に誘ってくれた恩師(巌さん)に感謝が一番深い。そう描かれる彼女の姿に、役者だって人間なんだよという気持ちを思い出させてくれる(夜凪とか、阿良也のキチガイ演技力に、役者は皆常軌を逸してると思いガチだった俺たちの心を救ってくれた天使)。

それでも舞台に上がる! そこに感動があった。絶対に恩師の想いを無駄にしたくないという気概をこの小さな身体から溢れさせるその姿。俺の目もドボドボでした

 

影の主役としての覚醒

この舞台を語る上で、アキラは絶対に外せない。現実で言うと、エイベックスの社長の息子。仮面ライダーで主演やって、世間からはキャーキャー言われる一方で、”親の七光り”と世間から疎まれる。演技面では夜凪・阿良也には比肩するとは決して言い難い。彼の覚醒にこそ、この舞台の成功はかかっていると言っても過言ではない。

何が悪いってワケではないんだけど。仮面ライダーってさ、最近は本当に顔で選ばれてる感があって悲しいよね。いやカッコいいのは良いんだけどさ。ここらで一回さ、藤岡弘くらいのおじさんが蟲の仮面被ってもいいと思うんだ。って、中学の時に思った俺、クウガで止まってます。

案の定”喰われる”アキラ。そもそもお前にこの大舞台はまだ早かったんや…もう良いよ、ゴールして良いんだよ…。無難に演じてカーテンコールで泣こうぜ…。という同情も誘ってくる。なんてすごい漫画…恐ろしい子…。あ、そういえば言い忘れてたけど、俺は本作のことを現代版『ガラスの仮面』だと思ってるんで。

そして無論ここで覚醒します。これぞジャンプ。だけど、この覚醒の仕方がヤバい。なんと舞台の上で、夜凪のあまりに入り込んだ演技に、演技では太刀打ちできないどころか、受け答えすらも満足に出来ないと感じ取ったアキラは、素でカムパネルラに向き合う

いや、ここは流石に筆舌に尽くし難い。国民的イケメンが観客に背を向けて、さながら独白のように自分の弱さを見せる(魅せる)その演技がむしろ、主役たちを輝かせる = 本来のバイプレイヤーとしての才能の開花。ここはぜひ単行本で読んで欲しい。たぶんアニメ化したら若干の省略がありそうな所だから絶対原作で。アキラ、表紙になるくらいだから。”最高にダサかった”から(嘘偽りなく誉め言葉)。

アクタージュ act-age 5 (ジャンプコミックス)

 

最期の別れがリンクするクライマックス

ここから最終局面。というかここからが本当の佳境。深く深く、役に潜ることで本人であるかの様に演じる夜凪と阿良也。2人の演技が役にハマればハマるほど”成りきっている”ということ。つまり、現実との境目が無くなってくる。ここからはむしろそれぞれ”どう役と折り合いをつけるか”という自分との闘いになる。

より分かりやすく言うと。ジョバンニとしてのカムパネルラとの別れ、明神阿良也としての巌さんとの別れがリンクしだす。いわば完全に役同一性障害。まぁ…ぶっちゃけこうならない方が不思議なくらいだけどね。一流の役者も、演じてる役柄によって私生活の性格変わるって言うしね。それがカンストした状態だろう。

やだ!カムパネルラどこ行っちゃうの? なんで行っちゃうの? まだ一緒に居たいよ!僕も一緒に行くよ! と間接的に溢れ出る死にゆく恩師への激情。役以前に自分の気持ちの整理がつかないと、カムパネルラとお別れをすることができない。これまで以上にジョバンニの気持ちを理解した結果、逆説的に本当の自分の感情に気が付く。この気持ちを整理することが出来なければ、この舞台を終わらせることが出来ない。ということでここから舞台を終わらせられるかどうかという、本当の最終局面に入る。

いや、言いたい気持ちをグッとこらえよう。
これも絶対に単行本で読んだ方が良いしな。
阿良也にフォーカスしすぎたけど、この阿良也を前に成長する夜凪も無論めっちゃアツい。
絶対に満足できるから読んで欲しい。

アクタージュ act-age 6 (ジャンプコミックス)

 

 

まとめ

ということで、完全に『銀河鉄道の夜』の舞台特集になった(てか画像貼りスギィ!いくつか消そうかな)。でもこれだけで漫画一つ連載できるんじゃないかってくらいの名エピソードだからね。仕方ないよね。マジ最高(ごめん俺がこの話のこと好き過ぎるだけ)。

とにかく、こんなに異質な”俳優漫画”は読んだことない。宝島社の「このマンガがすごい!」には何故か選ばれてないみたいだけど…。ジャンプの中では『呪術廻戦』ならんでネクストヒット間違いない。もう人気出てきてるって? いや、まだまだ本来の良さを評価され切ってない。これは近い将来、世間を席巻する作品だと思う。

ついに原作は大河ドラマ編に入る様子。そうだよね、やっぱり夜凪みたいな透明感ある正統派美女はNHKだよね!

自信を持って人に勧めれる漫画、それが『アクタージュ』だ。

むしろNHKでアニメ化しないかな。

国民的人気作『鬼滅の刃』を最終話まで読んだ時、強くなれる理由を知った

連載開始当初から異質な雰囲気を放っていた『鬼滅の刃』。

アニメ化が尋常じゃなくバズった結果、普段アニメに興味の無い層も巻き込んで一大ブームを起こしたことは記憶に新しい。

そんな本作が2020年5月18日発売の週刊少年ジャンプで堂々完結。ずっと好きだった作品が一区切りしたということで、満を持してその良さと、炭治郎が強くなれた理由について俺なりに語りたい。

あらすじ

時は大正。主人公・竈門炭治郎は亡き父親の跡を継ぎ、炭焼きをして家族の暮らしを支えていた。

炭治郎が家を空けたある日、家族は鬼に惨殺され、唯一生き残った妹・竈門禰豆子も鬼と化してしまう。禰豆子に襲われかけた炭治郎を救ったのは冨岡義勇と名乗る剣士だった。義勇は禰豆子を「退治」しようとするが、兄妹の絆が確かに残っていることに気付き剣を収める。

義勇の導きで「育手」鱗滝左近次の元を訪れた炭治郎は、禰豆子を人間に戻す方法を求め、鬼を追うため剣術の修行に身を費やす。

2年後、炭治郎は命を賭けた最終関門である選別試験を経て、「鬼殺隊」に入隊する。

 

正直、このあらすじ自体メチャクチャ懐かしいけど。こうして始まった物語は、大きく3つに分けられる。ここからは各編毎に成長する炭治郎のハイライトと、印象的な場面を紹介しながら物語の本質について語っていく。

 

竈門炭治郎立志編

アニメ一期が該当する。

自分の留守中に家族が全員惨殺されてて、妹が鬼になって混乱してたら突然現れたお兄さんに罵倒される。だから2年間修行したマン

ザ・理不尽な運命に立ち向かう不幸な少年は、妹を救う為だけに2年も山籠もりして岩も切れるようになる。修行中には皆のパパ・鱗滝さん、錆兎、真菰に出会い、最終戦別では後に同期となる五感組との邂逅を果たす。ぶっちゃけこの序盤が一番面白いし、後の物語の中でも重要人物になるキャラがドンドン出てきた。

 

辛い運命の中で育まれる愛情

最終戦別から戻った炭治郎に駆け寄って抱き着く禰豆子と鱗滝さん。この時に「よく…生きて戻った」って、仮面の下で感極まって泣く鱗滝さんの姿には本当の優しさが溢れ出てた。

ここで注目したいのは、鱗滝さんの愛情だ。年端も行かない兄妹が巻き込まれた運命に心から同情して、厳しく特訓する中にも少しずつ父親のような素振りを見せるようになる。そして最終戦別から戻ってきた時のこの反応。もうパパだろう

作中において、炭治郎の父・炭十郎が大きな意味を持ってるのはファンなら周知の事実。だが、物語開始時には既に死去しているし、序盤では回想ですら姿が描かれない。その代わりとしての役割を担っていたのが鱗滝さんだと思うんだよね。

つまりこの最序盤においては、妹の為に頑張る炭治郎の「兄妹愛」、それを支える鱗滝さんの「家族愛」が描かれていた。そう考えてみると、この作品全体の主題が見えてくる。

 

vs累(十二鬼月・下弦の伍)

恐怖政治で家族ごっこをしながら山に引き籠る、ちょっと歪んだ癖をお持ちの鬼との戦いを例に見てみよう。これは炭治郎にとって初めての十二鬼月との戦いでもある。下弦の伍なので、後に見るとただのザコ鬼なのだが序盤・竈門炭治郎立志編においては完全にボス級。.hackでいうスケィス、TOFにおける現代編のダオス、FF7Rにおけるセフィロスってところだ。とりあえず初撃で刀折ってくる。

炭治郎と禰豆子の慈しみ合う関係に嫉妬して、禰豆子を妹に欲するという現代なら完全に事案。だが家族愛に執着する敵の存在がここで丸々1話使って描かれるという好演出。ここまで話すともう分かると思うけど、『鬼滅の刃』という作品で説かれ続けるのは、”愛によって人は強くなれる”という事だと思ってる。この決戦で注目したいのは、歪んだ累の家族愛に対して炭治郎&禰豆子の兄妹愛が正しく勝利を収めることだ(あと、蟲柱の笑いながら毒を打ち込む狂気)。

 

本当の家族愛を思い出す鬼

結果で言えば、禰豆子の血鬼術”爆血”と炭治郎のヒノカミ神楽”炎舞”コンボでも倒すことは出来なかったワケだけど。アニメ19話の演出は神がかってたね。『ナルト 疾風伝』のサクラvsサソリ戦くらい動いてたし、アツかった。あと夢の中で母が出てきて鼓舞してくる演出もGJ。個人的にはこの後の20話で富岡さんに瞬殺された累の死の際、人間の時の親(自分で殺した)を思い出して謝りながら消滅していく姿に涙が止まらなかった。家族って、素晴らしいんだなぁって。『鬼滅の刃』ブームに乗っかっただけの有象無象は19話のヒノカミ神楽の演出にばかり注目して、20話はアウト・オブ・眼中だけど、この話を地上波でやったことは物凄いことだからね。アニメ一期におけるベストエピソードと言って良い。

ちなみにこの後の柱合会議もベストエピソードである(矛盾)。御屋形様が鬼滅隊員のことを「私の子」と呼ぶのもこの作品が家族愛をテーマにしてることの一端だよね。

 

無限列車編

父親から受け継いだヒノカミ神楽が鬼との戦いでの武器になるとして、炎柱・煉獄さんに話を聞きに行くエピソード。ここから皆の先輩、柱の面々も話に加わってくる。ストーリーが一気に加速するし、戦いも異能の嵐でド派手になるのがこの無限列車編以降。ここから先の戦いに比べれば、アニメ一期は児戯

 

vs魘夢(十二鬼月・下弦の壱)

乗客200人を乗せた列車と融合して襲ってくるいきなりの規格外展開。夢の中に引き込んでその中で自害しないと目が覚めないという覚悟無き者に対してはチート能力を持つ。「どんな鬼狩りだって関係ない、人間の原動力は心だ精神だ」と精神的に心を圧し折りながら幼気な子供達を洗脳して差し向けてくる悪鬼との戦いは煉獄さんがいなかったら普通に死んでたレベル。

ちなみに、ここで煉獄は家族の夢を見る。父親が自分同様に炎柱になったが急に辞めて、弟と一緒に「頑張って生きような」っていうシーンは今思うと中々に死亡フラグ

 

vs猗窩座(十二鬼月・上弦の参)一回目

煉獄さんの殉職戦。え、上弦って強杉内?と読者に印象付けるためだけの戦闘。ここでの戦闘に関しては語ることは他にない。でもこの後の煉獄さんの言葉には意味があったよね。これ以上良いこと言ってくれる先輩はいないだろうと今でも思ってる伝説の死に様だった。戦闘中の母親の回想で「強く優しい子の母になれて幸せでした」、最後は母親に「立派でしたよ」と言われながら息を引き取るのは、柱であっても同じ人間であること、その強さが家族のために鍛えられたものであるということを如実に表現していた。猗窩座についてはこの後に語るけど、上弦の壱の黒死牟の次に古い鬼という設定。そりゃ強い。そして、何を隠そう猗窩座は俺の一番好きな鬼であり、この記事で一番フィーチャーしたい鬼なんだよね。

物語はここから佳境に入ります。

 

vs妓夫太郎(十二鬼月・上弦の陸)

 

vs玉壺(十二鬼月・上弦の伍)

 

vs半天狗(十二鬼月・上弦の肆)

いやぁ、強かった。だが省略します
気になる人は9巻からの原作を読むべし。

鬼滅の刃 9 (ジャンプコミックス)

ここまでが中盤。原作内でも一番長く描かれた、鬼との死闘編と言い換えても良い。物凄くお粗末に省略したけど、それぞれの鬼との戦いと、柱たちの飛び散るパトスに本誌読者は毎週語るのが止まらなかった。俺も本当は書きたいんだよ? 決して書くのが疲れてきたワケじゃないよ? 頑張れ頑張れ! 俺はここまでよくやってきた!俺はできる奴だ!!

物語は最終局面・無限城編へ。

 

最終章 無限城決戦編

ここからは本当に瞬き禁止の戦いしかない。基本的には一体の鬼に対して数人の鬼狩りで攻略していくバトルロワイヤル方式になるんだけど。もうその時点で上弦の鬼たちの強さを物語ってる。一体一体がかなり長生きしてるのもあるけど、全員ラスボス級。さぁ紹介していこう。

 

vs獪岳(十二鬼月・新 上弦の陸)

 

vs童磨(十二鬼月・上弦の弐)

 

vs黒死牟(十二鬼月・上弦の壱)

省略します。

いや、待ってくれ、言いたいことは分かる。こいつらとの戦いは全部、省く事なんて出来ない超魅力的なエピソード揃いだ。善逸が雷の兄弟子穴埋め上弦と戦うのなんてクッソ胸アツだし、童磨戦とか俺超好きだからね。黒死牟戦に至っては柱クラス4人がかりというパレード、もう涙が止まらなかったさ。だが分かってくれ、ここで語りたいことは別にある。そして鳴女に至っては画像探すのすらダルい

 

vs猗窩座(十二鬼月・上弦の参)二回目

キ、キター!
そう、俺が語りたいのは猗窩座なんだよ!

実は女性は絶対に食べないという紳士鬼。というかさ、原作読んでる時、この戦い…なんか長くね? って思わなかった? この記事も大概長ぇけどな)そりゃあそうだろう。猗窩座ほど上弦で物語の主題に沿った敵はいないからな。あとアニメが人気過ぎて引き延ばされてたからな。

お気づきだっただろうか、猗窩座の技は全て生前の想い出が反映されている。「破壊殺・羅針」の陣の形、これ人間の時に妻だった恋雪が付けてた髪飾りと同じ文様なんだよね。大切な人の身に着けていたものとそっくりな陣が戦闘の最初に絶対に繰り出す技って、お前めっちゃ未練あるやん。そんな技。

技名すべて生前の想い出が由来

  • 脚式「冠先割/流閃群光/飛遊星千輪」
  • 砕式「万葉閃柳」
  • 滅式「鬼芯八重芯」
  • 終式「青銀乱残光」

全部花火の名前由来。大切な人と大切な約束をした時の背景が技名の由来って。お前めっちゃ未練あるやん。ちょっと、なんか、もう良い奴やん。さらに言うと、全身に入ってる刺青模様だけど。これにも設定がある。江戸時代は盗みを行うと刺青刑っていうのを受けたんだけどね。この刺青は病床の父親の為に薬を盗んでいた猗窩座の罪の意識が現れた結果なんだよ。そろそろ根が良い奴すぎて泣けてくる

極めつけは名前の由来。猗窩座って名前は無惨が名付けてるんだけどね。原作155話のタイトルにもある通り「役立たずの狛犬」っていう意味が含まれている。意味は「住処を守れなかった犬」。狛犬は守るものがあって初めて存在意義がある。でも守りたかった妻を毒殺されて居場所を失った猗窩座にはもう守るべきモノが無い。だから役立たずの犬。そんな意味がある。

 

とっくに失っていた強くなれる理由

そのことを思い出したんだろうね。炭治郎に首を切られても克服して、さぁ~、まだまだ死闘は終わらんぞい!ってなりそうだった恐怖の場面、結局最後は自決して消えていったワケだけど、これは何でなのかって所に繋がってくる。ここで首を切られたショック&恋雪に「もうやめて」と言われたことで自分の過去を思い出す猗窩座は、自分にはもう守るべき大切な人がいないことに気付いたんだよ。自分が強くなろうとしたのは、大切な人を守るためだったという事を思い出した。だからこその自決。だからこその炭治郎への感謝。強さを求めるのは、強くないと誰も守ることが出来ないからで、だから弱者である自分が嫌いだった。もう自分には強くなる理由も、強くなれる理由もないことに気付いたってことだ。感動をありがとう…。そして『鬼滅の刃』という作品のテーマを体現した良い人生・鬼生でした。

 

vs鬼舞辻無惨

略。長い、強い、白髪おじさん。
気になる人は最新巻を待ちましょう。

 

最終話「幾星霜を煌めく命」

舞台は現代。大正時代だった本編からすると、3世代くらい後の話。そこには炭治郎とカナヲの面影ある男の子2人が明らかな主人公オーラを出している世界だった。いや、なんだこれ。「妹が罪なき人の命を奪った時は腹を切って死ね」と鱗滝さんに言われていた時を考えると、同じ作品とは思えない位のハッピーエンドじゃないか!? こんなに幸せになってて良いの? しかも我妻性で善逸と禰豆子の面影ある2人が姉弟設定だと…つまり…善逸、おまえ良かったな…。

 

うぉおおお!これを、これを見たかったんだ!と叫びたくなる気持ちをグッとこらえて幸せな2人を祝福しましょう。「また人間に生まれ変わったら、私のことお嫁さんにしてくれる?」の有言実行。伊黒先輩マジ格好良いっス。この定食屋あったら1日4回は通う。柱全員、死んだメンバーは(ほぼ死んだけど)幸せな未来でちゃんと転生できたようで何より。

 

俺はこのコマを見て泣いた。富岡さんと錆兎と真菰だと…? この話は本当にファンのために描いてくれたんだなとギャオウした。生きていれば柱になってたであろう実力者の2人、死ぬはずだった富岡さん、今度は守るべき友として人生を送れているという幸せ。そしてこの姿を見れた幸せ。感謝です。

愈史郎は唯一の鬼として生き続けているっていうのも中々に良いラストだと思った。しかも珠世さんの絵を描き続けるという狂気の愛情。それでこそ愈史郎。合法ショタ。素晴らしい。

あとさ、ラストで描かれた竈門家の様子、先祖の写真を額縁に入れて飾ってるあれ、最高だよね。みんな笑顔で。ちゃっかり村田が入ってるのも嬉しい。

週刊少年ジャンプ(24) 2020年 6/1 号 [雑誌]

というように、ファンの期待をこれでもかと裏切らず描き切った見事な最終回でした。この作品を読んでて良かったなぁと心から思えた。

 

まとめ

守るべき大切な人達と当たり前に一緒にいられる世界で、鬼と戦うことがない幸せな世界。もう刀を持つ必要もないし、鍛える必要もない。けど、炭治郎の面影を色濃く受け継いだ炭彦くんは人並み外れた運動神経を持ってたよね。ここが面白いなって思った。

強くなる理由のない世界で、強いという設定。それはきっと炭治郎の「大切な人をもう2度と失いたくない」強い想いが現れたんじゃないかな。鬼はいないけど、幸せな世の中だけど、危険なことはたくさんあるし、何が起きるか分からない。だから、作中ずっと抗い続けた炭治郎の想いが成就して、子孫にも受け継がれてるんじゃないかと思った次第。炭治郎が、鬼殺隊が強く在れたのはいつも「大切な人を守るため」だったから。

ということで気持ちよく読了。
まったくもって良い作品でした。

俺も強くありたい。守るために。

『あひるの空』を漫喫で読んで泣く、これも一つの青春のカタチだと思うんだ

2004年の連載開始から、スポーツ漫画として最前線を走り続ける『あひるの空』。バスケと言えば、かの有名な歴史的ジャンプ漫画を思い浮かべがちだけど、ぶっちゃけ『スラムダンク』にも負けてない。と言うより、ジャンルが違う。これはバスケを題材にした青春大作だ。

あらすじ

九頭龍(くずりゅう)高校に入学した身長149cmの車谷空は、母親に誓った「高校最初のバスケの大会で優勝」の実現のためにバスケットボール部に入ろうとする。

しかしバスケ部は花園百春・千秋兄弟を始めとする不良達の巣窟になっており、部活動などできる状況ではなかった。だが、しつこく食い下がる空の純粋なバスケへの熱にかつてバスケをやっていた百春、千秋たちは心動かされていく。

そして空達のバスケット生活が始まった。

あらすじの時点で漂う「あ、バスケするまでが長いな」感。そんな印象を受けたのなら、正しい。俺も当時マガジン読みながら同じこと思った。そういう意味でも『スラムダンク』とは全く異なる滑り出しで(湘北高校はバスケ部がちゃんと機能していたからな)、どちらかと言えば『ルーキーズ』にジャンルとしては近いかもしれない。しかも特筆すべきは空の伸長が149㎝ってトコ。これが物語に大きく関わってくるし、小さいのに3Pシューターって事に誰もが心動く物語性があるんだよ。

更に言えば、この作品において”未来はない”。と言うと語弊があるが、主要メンバーの中でバスケを人生の柱にして、これでメシ喰っていくっていう人間性はあまり描かれない(横浜大栄の白石・豹、トビくらい?)。人生における高校時代を刹那的に描くことに特化しているからこその名作、青春漫画と言える。もし未来編を描くのだとしたら、連載終了後にTwitterとかで発表して欲しい。ただ、千秋の大学生編は観たい。

 

アニメ 『あひるの空』

アニメ、めっちゃ良いよね~。原作読んでる人は分かると思うけどさ、画力高くて、線が独特で、それが物語の雰囲気的にも良い演出になってるからさ。絶対にアニメじゃなくて紙で見た方が映える作品だと思ってたけど。良い意味で裏切ってきて、しっかり原作準拠クオリティに驚きながら観てる。

 

まさかの4クール放送

俺、てっきりクズ高校のスタメンが全員揃ったところで「俺たちの戦いはこれからだ…!!」っていうありきたりな残念エンドでアニメ終わらせると思ってたんだけど。まさかの4クール! 全く把握してなかった俺は、「いや終わらないんかーい、最高かよ~」って一人深夜に興奮してしまった。不覚。ただ、原作読んでた時はここまで来るのに本当に時間かかったから嬉しいな。俺、コンビニで立ち読みしながら泣いたからね。「ついに、ついにフルメンバー揃ったぁ」って。ここから怒涛の快進撃が始まるんだ!って。このことについては後で語るが、この時の俺はこの作品について何にも分かってなかった

青春の音が聞こえる演出

あとアニメになったことで何が良いかって言えば。(まぁ、これ以外の作品でも言えることなんだけど)音が付いたってことかな。でも他作品とは良さ具合が全然違くて、”青春の音”が追加されてるんだよ。バッシュが体育館の床を擦る音、ボールがバウンドして天井から響く音、ボールがゴールリングに当たらずネットをくぐった時の気持ちの良い音(蘇らせる…何度でもよッ!)。漫画には文字から想像する無限の可能性があるけど、実際に物語と一緒にSE聴くと、「あぁ~良いわぁ~」ってなるのが本音。

特に、30話で空のお母さん(車谷由夏・元日本代表)が空の試合を内緒で見に来た時に、体育館に響く音に耳を澄ませて「懐かしいわ…この音」っていうシーンの深みが爆発してたね。俺も学生時代、部活中に体育館の窓から外にプリズンブレイクして、風に当たりながら「良い風だ…」なんて呟いてたな…SNSじゃなくてリアルに。

というように、原作ファンであっても楽しめる(てかぶっちゃけ懐かしすぎて涙出てる気がする)。アニメ4クールでどこまでやってくれるのかも楽しみポイントだけど。横浜大栄メンバーがどんな感じで動くのかってのも要チェックだよね。マジで鷹山はやく出てきて欲しい。

 

原作 『あひるの空』

あ、ここからは猛烈にネタバレを含むので、アニメ派の人はご退室ください。

まず、現在単行本は50+1巻まで出てる。結構出てるなって思った? それはそうだろう。俺が中学の時からやってる作品ですから。チャリで来てたヤンキーもスーツ着て会社勤めするし、コミュ障だった俺が処世の為にアルカイックスマイルを会得するくらい、たっぷりと時間はあったからな。

 

あひるの空 THE DAY(1) (講談社コミックス)

そんな原作。最新巻でまさかの『あひるの空 THE DAY』とタイトル変更したのは衝撃だった。一個前の50巻がやけに分厚いから、本屋で並んでるのを見た時に「え! 最終巻!?」ってドキドキしちゃったよ(苦渋の決断で、マガジン本誌は2年くらい前に買うのを止めた)。そしてネーミングがストレートで潔い。”THE  DAY”って! 読者にとって待望のあの日をついに描いてくれてるってことか! って一目で理解した。タイトル見ただけで涙が出そうだったね。『はじめの一歩』で一歩と宮田が戦うみたいなもんだよ。

 

伝説の練習試合から1年

現実では13年。伝説のクズ高vs横浜大栄の練習試合は、俺の中で今アニメでやってる新庄東和戦と同じくらいアツい。この戦いで作品の根幹が完成した。空と鷹山の”来年”の約束は俺たち読者にとっての”未来”の希望になった。

運動系の部活やってた人達は多少なり経験してると思うんだけどさ。顧問の先生が仲良かったり、地域が一緒だったりすると、自然と仲良くなる他校の顔見知りができる。そんな中で、腐れ縁というか、不思議と公式試合でも良く対戦する奴が出てきたり。勝ったり負けたりを繰り返す中で生まれる感情は、友情とは全然違うんだけど、大事なんだよな。そんな相手とする再戦の約束ほど、青春を懸けるに値するものはない。ん? あぁ、俺にもそんな奴がいたよ。俺がやってたのバドミントンだけどな

とにかく、この約束でこの物語のゴールが確定した。物語の中の全てが結末に向けて動き出した。そういう意味では、アニメ版は未だ始まってもいないんだな。空と鷹山がした約束ってのはそのくらい重みがあったし、この試合で、トビ・豹、千秋・白石、百春・ヤックも各々に相手をライバル認定(こうして並べると大栄メンバーのステ高すぎて個別に潰されそう)。峯田もちゃっかり2年目は公式戦でスタメンデビューしてるし。いかん、文に収集がつかなくなってきた。要は、伝説の続きが今ようやく始まったんだなって、すごく実感してる。

 

今日の大切さは終わってから気付く

学生時代は、当たり前だけど全ての人間が明るく過ごせるワケじゃない。どんなに部活を頑張りたくても、家庭の事情や過去の経験から部活に入りたくても入れない人もいる。そういう”恵まれてない”他人を人間(特に中高生くらいの若い時代)は無意識に無視する傾向があるように感じる。俺もそうだった。不思議と、そういう可哀想な人(って言い方は正しくないと思うが)のことは視界に入っても認識してなかった。イジメとかそういう話じゃなくて、人間ってそういう生き物なんじゃないかと思うんだよね。

この作品を読んでると、そんな子供の時のフィルターがかかった景色が脳裏に浮かんでくる。無意味だと思って嫌々やってた体育館のモップ掛けも、誰かがやりたかった青春だったのかな。

もしかしたら、それは今も変わらないのかもしれない。俺も、めでたく今年で30歳を迎えるワケだけど(人生最終章始まったなって感じ、既に死にたい)。気付けば終わる20代、「精一杯生きたか?」 そう問われれば「生きた」と言える(主に仕事が辛すぎて)。でも、アッと言う間だったなぁって思うんだ。そして、一生懸命すぎて周りが見えてなかったとも思える。ふと周りに目を向けたら、自分よりも過酷な境遇の人間なんて幾らでもいて。そんな人達に胸を張って話しかけて、一緒に笑い話できるような、そんな人間になりたいな、30代は。だっていま生きれてる今日は、誰かがやりたかった青春かもしれないから。刹那的な今この瞬間を苦しんでいる人間がいるのなら、俺の眼が届く範囲くらいは一緒に楽しめるように努力したい。青春に年齢なんて関係ないんだよ。

 

あひるの空 コミック 1-40巻 (講談社コミックス)
※とりあえず40巻イッキ買いする猛者専用リンク

まとめ

この作品は甘くない。奇跡はめったに怒らないしご都合主義な少年誌的展開はない(まぁ、多少はある。異常に僅差で勝つ)。人生の辛さと楽しさを見事に教えてくれる。ゆえに一年目の夏の大会は一回戦で敗退する。そして二年目の横浜大栄高校との試合(THE DAY)も負けることは公式で確定してる。コレがこの作品の良いところ。青春の酸いも甘いもしっかりと描き切る(ここに書くとキリがないから書かないけど、里見西の新と円の未来編とか、授業サボって体育館で隠れながら円が空に「同じ位好きな人がいるの」って言う幸せな失恋回とか、女性目線の青春もしっかり描かれてるんだよ!最高なんだよ!)そこが良いんだよ。

なんか途中すごく懐古主義的な独白になってしまったけど、不快に感じた人がいたらゴメン。たぶんシャッフル再生してるApple Musicからミスチルの『sign』流れてきたからだわ。あと、もしアニメ新規・もしくは原作未読でここまで読んじゃった不幸な人は、アニメを機に原作も読んでください。大丈夫、こんな記事に書いてあることぐらいネタバレした上で読んでも全然楽しめる。そもそもネタバレで霞むような作品じゃない

大人になって読めば読むほど響く。

俺は漫喫で声出して泣いた。

俺的2020上半期アニメ・オブ・ザ・イヤーは間違いなく『空挺ドラゴンズ』

「2020年良かったアニメ作品は?」と聞かれた時、いの一番に頭に浮かんでくる作品、それが『空挺ドラゴンズ』(2020_05_14現時点)。

あらすじ

各国が龍と呼ばれる生物から生産できる食料や資材を欲して空を目指してから半世紀後の時代。世界には、飛行船に乗って捕獲した龍を加工して売りさばく龍捕りと呼ばれる職業が誕生した。希少となった現役の捕龍船クィン・ザザ号には、龍が大好物のミカを始め、新人龍捕りのタキタや龍捕りの父をもつジロー、諸事情で地上を旅立ったヴァナベルなど様々な龍捕りが搭乗しており、それぞれが事情や目的をもって共同生活を営みながら空の旅を続ける。

 

過酷な航海の中でも輝く日常

重労働で龍が取れないと賃金も低く、空を飛び続けるだけでも相当な労力を要するという超絶ブラックな職場ながら、乗組員の笑顔がとても眩しい。たまに港街に降りた時なんか、一張羅を着て陸の娯楽を堪能する姿に生命力を感じる。ただ、この解放っぷりは「いつ死んでもおかしくない」という感情が行動として表に出た結果なんだが地下から地上に出れた時のカイジみたいなもんだ。ひと時の楽しみだと割り切っているからこその切なさも微妙に漂わせる。その姿とこれを表現した作者に拍手。

 

若手乗組員の成長物語が泣ける
(ジロー成長物語)

若手と言ってもジローとタキタしかいないけど。オジサンばっかの中で歴の浅い2人は思春期ということもあって、旅の中で精神的な成長を経験していく。その描かれ方が最高。街で出会った女の子(カーチャ)とひと夏の恋ならぬひと街の恋をするんだけどね。街を発つ朝、一度も街から出たことが無いというカーチャの為に空中ドライブを敢行。その粋な演出が甘酸っぱいながらも見事なジュブナイル。空で朝焼けを見ながら「君も一緒に(行こう)…」って言おうとするジローに対して、後ろから泣きながら抱きしめて「舌、噛んじゃうよ」と、やんわり断るカーチャも非常に情緒的なんだよ。

明らかにお互い好きなのに、空と陸、2人の境遇と立場を考えて別れを決意する姿にドラゴンも霞むほどの輝きを見た。この後ジローは髪を短く切る(しかも切るのはカーチャってのがまた良い…)。失恋後のキャラデザ変更、ちょっと大人になった少年の成長の表し方を本当に分かってる。

 

若手乗組員の成長物語が泣ける
(タキタ成長物語)

龍の回廊での小型龍捕龍中に超高度から落ちるタキタ。120%死んだと思われたが、何と地上まで龍にしがみ付いていたことで地面に落ちても生きていたというご都合奇跡。だが、この陸でタキタが成長を果たすということの方が、視聴者的にはよっぽど奇跡だった。

自分が捕まってきた龍が落ちたのはその親龍の子がいる住処(付近?)。そこで、生きるために子が見ている隣で親を解体・調理するという中々に倫理委員会案件。最初は嫌がっていたタキタが身体を回復するために泣きながら親龍を食す姿は必見。居合わせたマタギの姉さん(アスケラ)の「仕留めた獲物はちゃんと食べる。食べた分だけ良く生きる」にはこの世の摂理が含まれてた。それを聞いたタキタはまた号泣。そして食べる(タキタ可愛い)。結局、この後この龍の子を天空の群れに戻すために再び空を目指します。この流れ本当すこ。その過程でのクィンザザ号メンバーとの再開シーンはアニメでの一番の盛り上がりポイント(っていうか最終回冒頭はこの話→龍の回廊)。

 

捕食されるだけじゃない龍の魅力

この作品が龍をただの獲物として扱う作品なら、俺はここまで惹かれなかったと思う。時には神秘的に、時には気色悪く、人知の及ばない”空の神”として描かれているからこそ、龍を獲ることの困難さがしっかりと感じられた。

少し、俺の中で印象的だった龍をエピソード毎に紹介したい。

 

光る龍

アニメ3話「光る龍と」にて、神秘的な龍との邂逅。この話は序盤の話の中でも群を抜いて心を揺さぶってきた。まず導入から”嵐の中で光る龍に救われた”という伝説話をジローが語る流れが良い。船乗りの間の伝説ということで真に受ける者が少ない中、ミカだけは「いや、いるかもしれねぇぞ」って否定しない(食べたいだけかもしれないが)。結論から言うと”光る龍”はいた。しかも嵐の船を救うっていう聖人のような習性と見た目。子供の頃の夢物語が実現したことでジローも思わず笑っちゃうところが◎、少年の成長を感じ、物語全体に深みをもたせる話となった。雷雲の中に常に晒されてるからか、メチャクチャに帯電したけど、スタンランス効かないんじゃ…

 

超大型龍

アニメ最終回でその姿を見せた、龍の回廊のバカでかい超大型龍。ゲームだったらクリア後に現れるクラスの裏ボス級。え、何、天空にはこのレベルのボスがうろついてるの…? 普通の龍が二階建てアパートだとしたら六本木ヒルズくらいでかい、月並みに言って規格外。コイツの存在を最終回で魅せてくれたことによって、龍の底知れない恐ろしさと神々しさを余韻としてもたらした。ちなみに作中ではコイツは捕龍できず。またどこかで出てきたらかなり胸アツ。FF5で言うところのオメガ

 

まとめ

どうだろう。平時はさながら某ファミレス漫画のようなワイワイ感ある労働環境。ひとたび龍に出会えば一触即死のリアルな捕獲描写。そこに龍の料理のスパイスが効くことで見事に現代版・漁師作品が完成した作品なんだよ。ジブリのパクリとか色々言われているが、そんなことはない。圧倒的なオリジナル性がこの作品にはある。というか、仮にパクリだとしても良いんだよ。リアルタイムでジブリ並の作品見れてるって歴史的快挙だからな。チョー気持ち良い

空挺ドラゴンズ コミック 1-8巻セット
※イッキ買いする猛者用リンク

他、『空挺ドラゴンズ』の人気商品はこっち

ちなみに、原作ではミカのちょっぴりセンチメンタルな成長が描かれる展開が見れるし、より人間ドラマが濃くなってる。アニメにハマった人は原作も見て損はない(特にナウシカ好きは読んだ方が良い)。