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ホラー中毒が選ぶ青春を感じるホラー映画【おすすめ5選/小心者向け】

ほぼ毎日ホラー映画を観ている俺はあることに気付いた。あれ、ホラー映画って相当ジャンル細分化できるんじゃね? と。中でも特に俺の琴線に触れたのは”青春”を感じるホラーだ。相反する二つが共鳴した時、えも言えぬエモさが生まれる。

”青春”を感じるホラーとは?

一口にホラーと言っても色々ある。サイコホラー・スリラー・サスペンスホラー等が一番分かりやすい区分け。ジャンルだけで何でこんなに多いのか、”恐怖”の種類がまず多いからだ。このジャンルによる分け方も分かり易くて良いのだが、ホラーを観慣れてない人にとってはホラーはホラーだろう。でも、俺はまず襲ってくるクリーチャーの種類でまず分けられると思っている。幽霊・ゾンビ・サメ・宇宙人、etc…。

個人的に、かの名作『ジョーズ』はサメ映画であってホラー映画ではない。サメが出て来る作品はサメ映画ということにしよう。何故か。物理特化すぎて陰鬱とした恐怖が無いからだ。『13日の金曜日』『悪魔のいけにえ』も俺の中ではホラーではない。そもそも生きてる人間だし。同様の理由で『エイリアン』『ダークスカイズ』といった宇宙人襲来系も除外対象にする。宇宙人が出てきたらSF特化すぎるからだ

つまり、人外(宇宙人以外)が方途を尽くし何故かビビらせながら襲ってくるのがホラーだ。異議もあるだろうが、今回はこの考え方を念頭に、さらに細分化して”青春ホラー”というジャンルを俺が作ったということになる。というより、ここで間引かないと星の数ほどある作品の中から選ぶことになる。あまり前置きばかりが長くなってもピンとこないと思うので、ここからは厳選した”青春ホラー”を紹介したい。

 

 

学校の怪談

あらすじ

夏休みを翌日に控えた、一学期終業式の日の夕方。小学2年生の美夏は、忘れた絵の具箱を取りに学校に戻っていた。するとそこで美夏は、サッカーボールが自分を導くように旧校舎へと転がっていく不思議な光景を目撃する。旧校舎は取り壊しが決まって立ち入り禁止になっていたが、お化けが出ると子供たちの間で噂になっていた。しかし、美夏はボールにつられて中へと入ってしまい、そしてトイレの中で何者かに襲われてしまう。

美夏を心配した、5年生で姉の亜樹は、一人学校を訪れ、何者かに吸い寄せられるように旧校舎へと入っていく。そこにいたのは、イタズラしようと忍び込んでいた同級生の研輔と将太、4年生で双子の兄の均、そして6年生の香織だった。転校してきたばかりで、同級生となじめていなかった亜樹は、研輔達と衝突し、単独で妹を探しにいく。

しかしやがて、5人は自分たちが旧校舎から出られなくなっていることに気づく。そして5人の前に、ただの噂だったはずのお化けが現れた。Wikipediaより引用

「あ~コレね、あったあった!」と言っている顔が浮かびます。みんなのトラウマ製造映画であり、愛すべき青春。青春を感じるホラーとは何ぞや? という疑問に答えるのに、これより適した作品があるだろうか。いや、ない(反語)。学校を舞台にしたホラーは、総じて青春時代を想起させるけども、20代後半~30代にかけての年代に至ってはコレが一番リアルに感じるハズ

 

少年時代の甘酸っぱい恋心

黒髪清純美少女だったころの岡本綾。そして『学校の怪談』(シリーズ1作目)における神キャスティング・THE ミステリアスな女の子。旧校舎で出会いを果たすというボーイ・ミーツ・ガールを演じてくれた。隠れながらそっと手を握ってくる高学年のお姉さんの姿に全少年は精通不可避。ギンガムチェックのノースリーブブラウスがここまで似合っていたら、中村獅童の心が揺らぐ気持ちも超わかる。無論、作中でも淡い恋心を刺激するだけ刺激してラストのクライマックスを盛り上げてくれた。コレコレ、これなんですよ! 良質なホラーは怖がらせながらもしっかりと恋愛要素を盛り込んでくれる。その純度が高ければ高いほど青春メーターはグッと上がるってこと。

 

シリーズ全作が良作

『学校の怪談』シリーズは全4作。無論、同シリーズは他の作品も秀作だ。なんと言っても、てれび戦士だった前田亜季が出演している(しかも2・3ともに)。1995年の初作から比べると、如実にバブル時代の経済成長が反映された舞台設定になっており、学校の設備や時代背景も現代に近づいてくる。このリアルタイムさが良かった。学校・怪談・黒髪の美少女×リアル感=青春ホラーを体現していた本シリーズの1作目・2作目・3作目は、20年の時を経た今でも推せる。

4は無かった、良いね?
マジもんのホラー好きは要チェック!

学校の怪談4

 

 

怪怪怪怪物!

あらすじ

いじめられっ子のリン・シューウェイは、いじめっ子3人とともに、教師から独居老人の手伝いをする奉仕活動を命じられ、そこで2匹のモンスターに遭遇する。彼らは小さい方のモンスターを捕まえて、独自の「調査」と「実験」を始めるが、やがてモンスターは彼らの手に負えなくなっていく。そして、それは恐怖の始まりだった……。本当に恐ろしく、怖いものとは一体…。amazonより引用

ごめん早速『学校の怪談』の前提を覆す形になったけど、この作品に関して言えば、恋愛要素は皆無

 

輝くだけが青春じゃない

いじめられてたシューウェイが、いじめっ子グループと一緒に”怪物”を捕まえるというストーリー。前述のあらすじにもある通り、見つけたのは2匹、ここがミソ。怪物の妹(言い方合ってるのか不明?)にあたる方を捕まえて、学校に匿って行う「調査」と「実験」は子供ならではの吐き気を催す残酷さ。でもシューウェイはこの怪物調査を通していく中で、いじめられっ子ではなく(表面上は)仲間として認められていく。怪物の相手をしている間は自分は虐められないけど、自分と同じように”被害者”として衰弱していく怪物を前に、ある決心をする。

 

1番の被害者は”怪物”

ぶっちゃけると、本作において”怪物”は被害者だ。確かに、人間を襲うし、肉片は有り得ない位はじき飛ばすし、バスの車内を窒息するくらい血潮で染める。でもそれは全部、攫われた妹のためなんだよ。そんな怪物(姉)の気持ちを知ってからは、怪物(妹)への拷問は加速。苦しむ声で怪物(姉)を誘い出して、ブッ殺っしょ? マジこれでイケんべ? みたいなノリで物語はクライマックスへ向かっていく超胸クソ展開。それがシューウェイの作戦と絡み合って爆発的な鈍色の輝きを生んだ。

クリーチャーが襲ってくるホラーとしては異例だが。学生のモラル低下・いじめ問題への警鐘を鳴らし、ホラーの新境地を切り開いた問題作と言える。俺、かな~りマイルドに説明してるけど、普通に気分悪くなる映画だと思う。ただ、観た後は謎の爽快感

”青春ホラー”おすすめ5選、堂々のランクインです。

怪怪怪怪物! [DVD]

 

 

イット・フォローズ

あらすじ

ジェイ(マイカ・モンロー)は、恋人のヒュー(ジェイク・ウィアリー(英語版))とデートを重ねた末、彼と肉体関係をもつ。

その直後、ヒューはジェイにクロロホルムを嗅がせる。目覚めたジェイは、車椅子に縛りつけられている。彼女は、性交によってヒューから呪いを移されたと知る。

その呪いに憑かれた者は、人間の姿形をした「それ」に追いかけられる。「それ」は、ゆっくりと歩き、呪いに憑かれていない者の目には見ることができない。「それ」は、呪いに憑かれた者をつかまえて殺すと、その前に呪いに憑かれていた者を追いかけるという。Wikipediaより引用

『イット・フォローズ』は有名だよね。何となく、サブスクでゴリ押しされてた感ある(俺も一時オススメに滅茶苦茶表示されてた)。性交によって移る恐怖っていう設定は単純に面白いと思ったし、若者の性事情が荒れに荒れてる昨今を風刺したストーリーはむしろ10代~20代こそ観るべき

 

単なる”性病”の具現化じゃない

単純に、性行為によって”何か”に追われる立場が変わるという設定は、普通に考えると性病の怖さを表現しているように思える。でも、よく考えたらちょっと違うよね。

性病を揶揄するなら、”移す”ことで一時的にでも助からない設定にする。あくまでもこれはホラーで、”何か”が襲ってくるという、純粋な恐怖を主軸にした作品だってことだ。自分が助かるために自暴自棄になって誰彼構わず行為に及ぶ描写があるが、コレだとむしろ、SEXが救いとして扱われてるんだよね。また、襲ってくる”何か”は人の姿をしている。これも単純に、触手でグジュグジュのマラとか、等身大の〇〇〇とか、性の権化みたいな化物だったら簡単にトラウマを植え付けることができたハズ。

 

愛がなきゃダメ、絶対!

この作品の肝はラスト10分にある。襲ってくる”何か”を仲間たちと協力して撃退し、自分に片思いしてくれてたチェリーボーイと両想いになるんだけどね(万歳!)。この時のセックスは恐怖を伝播させることもなく、薬で眠らされて起きたら縛られてるなんてこともない、幸せな行為としてのSEXなんだよ。

実際のところ、性行為によってトラウマを負う人も少なくない。この物語の主人公(女性)もまた、強姦被害者(しかもドメスティック?)であるかの描写もある。だからこそ、ラストのCherry boy SEXが活きてくる

何が言いたいかというと。この映画は最初に感じた通り、「若者の性事情」への揶揄であることに変わりない。だけど、一時の救いのためだけの性行為に何も意味はなく、愛がなきゃダメですよ! と、 「若者よ。その行為、愛・ありますか?」 と、一歩踏み込んで揶揄ってきた映画だと思うんだよね。これを青春ホラーと言わず何と言う! 性春ホラー

イット・フォローズ(吹替版)

 

 

ゾンビーワールドへようこそ

あらすじ

高校生でボーイスカウトのベン、カーター、オギーはクラブで女の子と遊びたくて仕方がない。

ある日、キャンプを抜け出してパーティー会場へ行く途中、なんとゾンビ化した住人たちが襲ってきた!間一髪のところを美人ウエイトレスに助けられた3人は、ボーイスカウトで 身につけた様々なワザを駆使して、一致団結しようとするのだが…。NBC UEJより引用

実は俺、あんまりゾンビ映画って好きじゃないんだよね。ここまでホラー紹介しといてなんだよって話だけど、俺は血が苦手なんだ。ただそんな俺でもこの『ゾンビ―ワールドへようこそ』は大好き。下手したらゾンビモノでは一番かもしれない

 

笑いあり、涙あり、青春がここにある

高校生にもなってボーイスカウト? まずここがフックになる本作。ボーイスカウトなんて続けてたらモテねぇよ!女とヤレねぇよ!というリビドーが溢れた結果、友情が崩壊する。ここからが祭りの始まりだ。

たぶんジャンル的にはゾンビを題材とした青春映画になるんだろうね。ゾンビ騒動を通して、友情の大切さ、愛する人の為に尽力することの正義を描く。「ゾンビ」ってタイトルにあるだけで、観る気が失せる人もいるかもしれないけど、この映画は誰にでもお勧めできる(下ネタ苦手な清純黒髪女子は除く)。もちろんハラハラ要素もあるし、グロめのゾンビも本気で襲ってくるので、軽めのホラーとして皆で楽しめるだろう。てか超笑える

 

ゾンビはいつだって本気

「超笑える」と言った手前、若干言い辛いんだけど。ゾンビ映画としては超王道設定で、超しっかりしたゾンビが襲ってくる。何だろうね、メイクが良かったのかな。ただ、ここに手抜きが無いからこそ、俺は今ホラー映画のジャンルとしてコレを紹介したいと思ったし、ホラー要素がしっかりしていないと、ぶっちゃけ魅力が半減する。そんなバランス感覚が秀逸な作品と言える。

バストの大きな婦警ゾンビが襲ってきた時に、その豊満な中身がこぼれ、見とれる少年。早く逃げないとヤバい、そんなデッド・オア・ダイな状況でも巨乳ゾンビの胸を揉む。これを観た時に俺は「なんて…青春なんだ…」と感じたんだドン!

少年の心をいつまでも忘れたくない。
そんな風に思わせてくれる青春ホラー。

ゾンビーワールドへようこそ
※プライム会員は吹替版無料で観れるよ

 

 

IT/”それ”が見えたら、終わり。

あらすじ

静かな田舎町で児童失踪事件が相次いで起きていた。

内気な少年ビルの弟が、ある大雨の日に外出し、おびただしい血痕を残して姿を消した。自分を責め、悲しみにくれるビルの前に現れた「それ」を目撃して以来、ビルは「それ」の恐怖にとり憑かれてしまう。

不良少年たちからイジメの標的にされている子どもたちも、自分の部屋、学校、町の中など何かに恐怖を感じるたびに「それ」に遭遇していた。

「それ」の秘密を共有することとなったビルと仲間たちは、勇気を振り絞り、「それ」と立ち向かうことを決意するが……。映画.comより引用

魂沸き心弾むスティーブン・キングの代表作。しかも指揮を執るのは『MAMA』のアンディ・ムスキエティ監督。この時点で面白くないワケが無い。

 

ホラーとして超一級

もうホラー要素に関しては文句ひとつ無い気持ちよさ。単純にビビるシーン多すぎだし、ペニーワイズの人を煽る怖がらせ方も常軌を逸してて最高。巨大化するし、空飛ぶし、血がプッシャーする。住処的に水場での驚かしが多かったりと、ちょっと和製ホラーの怖がらせ方してくるところが日本で大ブレイクした一因かもしれない(ちょっと子供向けの怖がらせ方だけど)。逆にグロテスクな映像が観たい洋ホラー狂にとっては中途半端な感じなのかな? 知らんけど。コレが面白くないって人はスティーブン・キングの描いた本質を理解できてないと思う

 

ホラー×ジュブナイル冒険活劇

思春期の男子特有の下ネタやFワードはありつつも、それを感じさせない爽やかさ。大人たちに頼れない状況の中(というか、登場する大人が総じて病んでる)少年・少女だけで悪に立ち向かう様子は、『スタンド・バイ・ミー』とか『僕らの七日間戦争』の系譜を感じる。小さな街で、スクールカースト底辺が集まったルーザーズクラブの面々が成長し、友情を深め、恐怖に打ち勝つという図式は至高

それに忘れてはならない恋愛要素もしっかりと盛り込んでいるところが素晴らしい。そう、『学校の怪談』でも同じことを書いた気がするが、良質なホラーは怖がらせながらもしっかりと恋愛要素を盛り込んでくれる。紅一点のベバリーが設定年齢的にはちょっと大人っぽくて、それが淡く輝かしい三角関係を生んでドラマティックが止まらない。子供時代、『学校の怪談』ではなく本作に出会っていたら、きっと岡本綾ではなくベバリーに恋をしていた(原作の乱交シーン無くなってて良かった)。

[少年・少女の葛藤]→[悪との対立]→[子供から大人へ] という黄金図式を描いた本作は青春ホラー筆頭。迷ったらコレ

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。

 

 

まとめ

我ながら独善的な5作品セレクトになった感が否めないが、参考程度に見て頂けたのならありがたい。ホラーってさ、色んなアプローチの作品があるから。本当はジャンル分けすることすら難しい。あくまで”青春を感じる”ホラーを選んだという事で(保身)。

あと、タイトルに【小心者向け】と入れてる通り、普段ホラー観ない人でもこれらの作品は観れると思う。というのも、青春要素が増えることによって理不尽な恐怖は緩和されてる。総じてエモく、ホラー入門としても優秀な作品になっているので、興味ある人は視聴をお勧めする。ただし、『怪怪怪怪物!』以外な

良いホラー映画ライフを。

シャマランの系譜を継いだ『アス』は愛すべき変態ホラー映画

鬼才ジョーダン・ピール監督が2019年に発表した『アス』。そして映画ファンなら誰しもが注目した本作。観た結果を簡潔に述べると、同監督の『ゲット・アウト』を超えた的確さで人的恐怖を突いてくる秀作だった。

あらすじ

1986年の夏、アデレード・ウィルソンは両親とともにサンタクルーズにある行楽地を訪れる。ビーチに建てられたミラーハウスに迷い込んだアデレードは、そこで自分にそっくりな少女と出会う。ミラーハウスから戻った彼女はトラウマにより失語症となる。

現在、大人に成長したアデレードは失語症を克服し、夫と二人の子を持つ母になっている。ウィルソン一家はサンタクルーズにあるビーチハウスを訪れる。反対するアデレードを説得し、一家はビーチへ出かける。彼らはそこで友人のタイラー一家と落ち合う。長男ジェイソンはビーチで、腕から血を流しながら立っている男を見る。Wikipediaより引用

斜め後ろから迫るヌメっとした恐さ

アカデミー賞脚本賞獲った『ゲット・アウト』を観た時も思ったけどさ、ジョーダン・ピール監督はたぶん天才。この人の作品は面白い。何が面白いかって、完全に意識の外から金属バットで脳ミソ揺らしてくるところかな。ぬらりひょんでも防げない

中盤で物語が一気に”転”じる。導入部分は「おやおや、ホラーっぽいことやってくれるじゃない!」ってな感じで、ささやかな物理ダメージを負わせてくるんだけど。中盤からは全く別のダメージで恐怖にアプローチしてくる。というより、攻撃されたことに恐怖は感じても嫌悪感は感じないと言う方が近いかもしれない。バットで殴られたら「バット痛い!やめてよぉ!」ってなるじゃん? でもコンニャク巻き付けたハリセンでぶん殴られたら「??????…え?????え?怖…」てなるじゃん。それ(は?)

 

 

物語が進むほど疑問が増えていく

どんなサスペンスでも、観てると「あ~ハイハイ、こういう展開ね」ってある種の既視感を覚えるんだけど。この映画を観ている時、そんなこと思うことは無い。例えば、全く想像したことない事態が目の前で起こると人間は一瞬フリーズする。「あ…ふーん、へぇ~、ほぉーん」と頭の中が感嘆詞でいっぱいになった結果、処理落ちする。人間なんてそんなもんだ。俺も子供の頃、見知らぬババアの霊が笑いながら寝てる俺をのぞき込んできた時は「わり、俺死んだ」と冷静に何かに謝ったもんな

でも本作は、そんな謎の恐怖絨毯爆撃中でもしっかりとギャグを忘れてない。”Fuck Tha Police”という言葉が皮肉たっぷりにギャグとして用いられるが、このギャグの使いどころはここしかなかったと断言できる。というか、非常に不謹慎で血みどろなシーンでの現代的ギャグなので、笑えるのは狂人か映画玄人だがまさに「恐怖と笑いは表裏一体」これ誰の言葉だと思う? まぁ俺の言葉なんだけど。ちなみにこの監督、元コメディアンらしいんだよね。こういうところに作り手の人間的魅力って出るよな。伏字多い文章書く奴は俺の中で人間的魅力マイナス5ポイント。

 

 

最恐のアハ体験

本作に敬意を込めて、ネタバレが売りの俺だが今回はネタバレ無しでいこうと思う。だから、ここで語るのはこの作品の本質だ。

そもそもタイトル名の『Us』ってさ、”US”つまりアメリカ様そのものを現わしているって説も映画ファンの間では囁かれている。ここまで言えば何となく予想できると思うが、この映画の裏テーマは「持つ者と持たざる者」だ(と、俺は感じた)。

『ゲット・アウト』でも現代社会の闇を描いたってこともあるが、この監督の作品はどうしても”そういうことを暗示してるんだろうな”って目線で観てしまった(たぶん俺みたいに偏屈な考えを持たないで観たらもっと面白いぞ)。ある種ドッペンルゲンガーという化物を錯視させてくれたワケだけど、これは、一つ何かが違っていたら自分自身も貧困のドン底に居たかもしれないんですよ…ということを暗示している。反面、チャンスは絶対にあるという爆発的な閃きも与えてくれるから厄介。相反する絶望と希望(一番絶望)を同時に描くことで、自由の国アメリカを全力で皮肉った。これはそんな作品とも言える。



まとめ

最期までストーリーを観ると、全ての点が一本の線になって、ぐにゃんぐにゃん曲がりながら地平線の彼方に消えていく。ぶっとんだ解答の衝撃は、どこか『シックス・センス』のラストを想起させる。

シャマラン監督の系譜を継ぐ、間違いなく名作。

『流転の地球』は日本が完全に中国に負けていることを如実に示していた

SFファンにとって、Netflixで後悔された『流転の地球』は衝撃でしかなかった。ハリウッドにも負けず劣らずのクオリティ・圧倒的な世界観の本作は、中国という国の勢いを現わしていると言っても過言ではない。

あらすじ

地球各地で異常気象や天変地異が起こるなか、その原因は、太陽が老化・膨張し赤色巨星化をたどるためと判明。太陽系そのものが300年ほどで消滅する危機に、世界の国々は団結して「地球連合政府」を設立。

政府は地球を太陽系外に脱出させ、2500年かけて4.2光年離れた別の星系軌道に載せる「流転の地球」計画を決定。

各地に巨大な「地球エンジン」1万基を建設し、太陽系脱出の推力とした。また連合政府は、それと並行して30年かけて巨大な国際宇宙ステーションを建設。ステーションは地球から10万キロの距離を保ち計画のナビゲートを行うこととした。

地球が太陽系から離れたことで荒廃した地表に住めなくなった人々は、政府が「地球エンジン」の地下に建設した都市に暮らし、2500年後の新天地を待ち望むのであった。流転の地球-Wikipedia


本当の意味で「宇宙船地球号」

この映画を観ると、まずスケールの大きさに圧倒される。「え、これハリウッド映画だったっけ?」と思った俺は一回視聴止めてググったくらい。こう思った要因は設定の壮大さにある。

前述のあらすじにもある通り、「地球エンジン」と呼ばれる推力によって太陽系からの脱出を試みるその様は、想像よりも圧倒される。いやいや、地球の自転止めたら停止時のGで人類吹っ飛ぶやろ…と突っ込みを入れたくなるのがSFファンの性なのだが、本作はこの点も見事に描いている。ギブスンもにっこり

重核融合エンジンは石を燃料として推進力を得ているというのだが(そんなに石あるか?とも思ったが、地殻削ってるとしたらまぁイケる)、基本的に人間は地表ではこの地球エンジンのメンテナンスと燃料集めに追われている。その地表での様子が完全に氷河期。そうだね。分かってる。自転止めただけでも太陽に背中向けた側は生命存続不可能の氷の世界になるからな(北極と南極が繋がるイメージ)。だから、本作内での人類は地下に生活拠点を移している。この無理のないSF設定には俺もにっこり

この宇宙船地球号が、予期せぬ事故によって木星の方にハンドル切っちゃって、ぶつかる死ぬどうしようってのがメイン危機のストーリー。

 

 

アメリカ様に無いアジアの価値観

ハリウッド本家の終末系ってさ、ある種ステレオタイプ化してると俺は思うんだよ。「人類滅ぶってよ!」「マジかよ!何とかしようぜ!家族を死なせる訳にはいかない!」「立ち上がれ人類ウォオオ独立記念日じゃァアア」 ←ここまでテンプレ。いや、それが王道で観ててて最高に気持ち良いんだけどさ。

でも『流転の地球』では違った。一言で言えば”東洋の価値観で観る世界の終末”だ。俺たち日本人も、古くから盛者必衰の理を”あはれ”として受け入れてきたDNAが入ってるから何となく想像できると思うんだけど。「地球終わるってよ」「マジかよどうするん?」「死に方とか考えた方が良いかなぁ」「家族が満足して死ねるならそれで良い」「命日に寝る最高のベッド買おうぜ」 と言った人々が終末が近づくにつれて出てくる。”どう生きるか”よりも”どう生きたか”の方に先に視点を合わせる。ちなみに上の会話例は完全に俺の妄想であって、作中ではもっと切迫した様子の中国人が”いとをかし”の精神で絶滅に向き合ってるから安心してくれ

アジア人って、歴史柄なのか土地への執着が強い気がするのは俺だけ? あと正常性バイアスも一定数機能するよね。皆焦ってるけど、もう諦めて楽しもうぜ。あと最後は家で死にたい、的な。対して西洋文化は、一致団結すれば怖くない思想が強い。同じ終末系というジャンルでも、この違いを見事に表現したのが本作だということ。この東洋的思想が盛り上がりポイントに上手く組み込まれてるのも◎。

流転の地球 ハン・ドゥオドゥオ
ディフォルメフィギュア

まとめ

原作者のケン・リュウ氏が明示したアジア的思想をこのクオリティで映像化できたのは今の時代とても大きい。確立された正義に正解はなく、死生観は人類それぞれということを世界に発信できた。

また、同時にこの価値観を発信したのが日本ではなく中国であるというところも大きなマークポイント(ハイここ、テスト出まーす)。本来であれば日本こそがその価値を一番理解しているハズなのに、成長しつづける中国が経済力と倫理観を示している本作を観た時に、俺はもう「日本…完全に負けちまってるな…」と思った。”発展途上国は国民のモラルが低い”と言われていた中国がここまで精神的成長を魅せつける作品を作ったとなると、立場は完全に逆転し、逆に日本人が大事にしなくなってきたものを考える機会になってきているのかもしれないとすら思える。

日本のSFにも期待したい。

悪魔×悪霊×化物が襲ってきた『死霊館 エンフィールド事件』が実話な件

『死霊館』シリーズが好き過ぎる。”史上最長に続いたポルターガイスト現象”と社会的に記録されている「エンフィールド事件」において、ウォーレン夫妻が立ち向かった悪魔・悪霊・化物。コレが実話をもとに作られていると言うのがまた、好き過ぎる。

あらすじ

ロンドン北部に位置するエンフィールドで、4人の子供とシングルマザーの家族は、正体不明の音やひとりでに動く家具が襲ってくるなど説明のつかない数々の現象に悩まされていた。

助けを求められた心霊研究家のウォーレン夫妻(パトリック・ウィルソン、ヴェラ・ファーミガ)は、一家を苦しめる恐怖の元凶を探るため彼らの家に向かう。

幾多の事件を解決に導いた夫妻ですら、その家の邪悪な闇に危機感を抱き……。シネマトゥデイ

『死霊館』シリーズ時系列

①『死霊館のシスター』(2018)
②『アナベル 死霊人形の誕生』(2017)
③『アナベル 死霊館の人形』(2015)
④『アナベル 死霊博物館』(2019)
⑤『死霊館』(2013)
⑥『ラ・ヨローナ 泣く女』(2019)
⑦『死霊館 エンフィールド事件』(2016)

上記の通り、実は映画が発表されたのはシリーズ3番目なんだけど、実際に怪現象が起こった時代は一番最近なんだよ。舞台である1977年~1979年、イギリスのエンフィールドで起こった一連の事件は怪奇現象の記録が山のように残ってる。メディアもこぞって問題を取り上げて(一時は子供のイタズラとして総スカン食らったが)、結果的に、ヤバすぎる霊障の数々に科学的な説明が出来な過ぎて社会的に認められたという実話。これが100年前とか1000年前とか現実味の無い遥か昔じゃなくて、極々最近の事ってところに夢がある。

死霊館 エンフィールド事件(吹替版)

 

悪魔×悪霊×化物

悪魔「ヴァラク」

『死霊館のシスター』(原題:THE NUM)でスピンオフ化もされた驚異のシスター(悪魔)、霊圧がグリムジョー位ある。この作品に至っては『サイレント・ヒル』なみに恐怖が襲ってきて「としまえん」のお化け屋敷くらい小便チビりそうになるから是非とも恋人と観て欲しい。

死霊館のシスター(吹替版)

 

悪霊「ビル・ウィルキンス」

被害にあったハーパー家の次女に憑依して、数々の記録媒体に残った伝説的悪霊。実際の記録ではビルだけじゃなくて老女や幼い女の子の霊も目撃されてるけど、一番メディア受けに成功したのがビルおじいちゃん。作中ではヴァラクの傀儡で、実はそんなに悪い奴じゃなかったんじゃないかと仄めかされている。実は一番被害者っぽい。

 

化物「へそ曲がり男」

マザーグースの一節に登場する”背中曲がり男”こと「crooked man」がモデルの化物。作中に登場する3体の中では一番実害が無い(犬に化けて家宅侵入・刺し殺そうとしてくる位)。また、スピンオフ化が決定しており、ファンが多いのも頷ける謎の妖艶さを持っている。俺もぬいぐるみとか欲しい。彼に関しては偶々居合わせたお祭りに参加した感が強いが、ヴァラクに操られてなかったとしたら、それはそれで不思議で怖い存在。

 

次女の特異さが際立つ

なんと同時に3体も襲ってきた「エンフィールド事件」。実際に憑依されたり、触媒になったのはほぼ次女ちゃんだけなんだけど。噂では高位の霊力持ちだったとか…。『ブリーチ』で言うところの織姫。だからこそこんなにたくさん襲ってきたってワケなんだよ。今ごろ三天結盾とか使えるようになってるんだろうな


家族愛こそが闇に対抗する武器

例によって本作でも、悪霊に対抗するには”愛情”が至高の武器という演出がされている。これだから「死霊館」シリーズは止められない。涙と涎が止まらない。勇気がなく、いつも母親に怒られてばかりの末っ子が「コレ食べて元気出して」と心霊現象に意気消沈している母親を気遣う場面。これには辛い中でも、忘れてはいけない大事なものが描かれていた。ジェームズ・ワン監督のホラーに外れ無し

 

まとめ

実話を基にした話っていうのは、得てして地味なモノになりがちなんだけど。『死霊館 エンフィールド事件』はエンターテイメント作品として抜群に良く出来ている。

しかも、ホラーファンにとってこの作品が事実を基にして作られていることは、大きな意味を持ってくる。実際の所どのように除霊が行われたかは定かではないが、「事実は小説より奇なり」という言葉の通りこんなに綺麗にまとまっていなかったのは確かだろう。ただ、2年以上にも及ぶ怪奇現象・メディアバッシングに対して、親子の愛無くしては乗り越えられなかったのは想像に難くない。そこまで想像させることが出来るのはジェームズ・ワン以外には有り得ないと俺は思う。

これからも、愛情の尊さを魅せ続けて欲しい。

俺は人生で一番面白かったアニメ映画と問われたら『REDLINE』と答える

人生において、傑作と言うべきアニメに出会うことが稀にある。
俺にとって、その代表作品が『REDLINE』ってワケだ。

御所アニメーター小池健・川尻善昭・大平晋也、当時ガイナックスに所属していた大平晋也・すしお、伝説級のクリエーターが集ってCG無しの手書き と言えば、アニメ文化に造詣の深い者なら察するだろう。

2010年に公開された本作。10年を経てもなお衰えず「笑い120%、涙120%、熱量1200%」で輝く魅力を、俺なりに紹介したい。

あらすじ

物語の舞台は、地球から2万1千光年離れたM3星雲という星系。 そこでは一時に数多くの知的生命が誕生し、ほぼ惑星一つ単位で文明が生まれた。 が、違う文化を持つ種族の間では摩擦が起き、紛争が起こり、やがて星雲全体を巻き込む宇宙戦争へと発展してしまう。

2度に渡る大戦が終わりひとまず宇宙平和条約が結ばれたものの、経済は泥沼化し、一部の星では軍事目的の技術研究も未だに行なわれており、現代の地球と同じ平穏と緊張と閉塞感が背中合わせにある時代が訪れていた。

そんな中、2度の大戦をまたいで尚絶大な人気を得て興行されている娯楽があった。 宇宙最速を決める5年に一度のカーレースの祭典、”REDLINEグランプリ”である。

電動ゴマと呼ばれる反重力エンジンを積んだエアカーが主流になりつつあるこの時代に、 敢えて旧来の燃料エンジンを積んだ四輪車で走るというマニアックさと、エンジンに関する事以外は禁止事項が無くどれだけ大きかろうが武器を積もうが何でもアリという過激さと能天気さで人気を博しているガチンコバトルレースだ。

そのREDLINEも8回目を数え、犬型獣人族の住むドロシー星にてREDLINE参加権残り一枠を賭けた最終予選レース、YELLOWLINEドロシー星大会が行なわれる。 まるで重戦車か戦闘機、あるいはその両方を足した様な姿の車達が激戦を繰り広げる中、一台だけただの車同然と言えるマシンが走っている。

マシンの名は”トランザム”。

それを駆るレーサーの名は、
“スゴク優しい男、JP”。

REDLINE
コレクターズ・エディション [Blu-ray]

 

木村拓哉&蒼井優のW主演

神キャスティング、この一言に尽きる。

というかコレ社会的に認知されてなさ過ぎない? 俺も当時、吉祥寺のバウスシアターに偶然迷い込んで観るまで知らなかったぞ。キムタクに関しては2004年の『ハウルの動く城』以降、沈黙を破ってのまさかの出演。つまり、ジブリの次に選ばれたのがこの作品なんだよ。蒼井優も『鉄コン筋クリート』から4年ぶりの声優挑戦。演技に関しても全く問題ない、むしろ超ハマり役

 

「すごく優しい男」
JP(C.V.木村拓哉)

本作の主人公。

本名:ジョシュア=パンクヘッド。鬼盛りリーゼントに革ジャンという厳つい格好でキメているが、中身はレースを愛する純朴な青年。

少年時代に一目惚れした少女ソノシーを今でも想い続けているウルトラ純情野郎。

ミサイルが挨拶みたいな殺人レースにおいて、武器0速度100にカスタマイズした愛車のドライビングテクニックだけで勝負するという、頭のネジが飛んだイケメンリーゼント。相棒のメカニック・フリスビー(C.V.浅野忠信!)の身代わりで前科持ちになり、保釈金返済のために八百長試合を続けるデススパイラルな人生を送る。中々に可哀想な境遇。

作中でもこのフリスビー(C.V.浅野忠信!!)との友情がとても熱い。REDLINE本戦ではドライバー・メカニック・ジャンク屋の三位一体ゴールデントリオで宇宙のキチガイ猛者どもと凌ぎを削ることになるが、走りながらも互いを信じあうその姿は『弱虫ペダル』における福富と荒北の名コンビを彷彿とさせた(主に俺に)。直前まで八百長する気満々だったのに、夢の舞台で走っているJPを観ているうちに「俺は最後までレースが観たいんです!」って、ヤクザ相手にメンチ切るフリスビーには落涙必至

 

「チェリーボーイハンター」
ソノシー・マクラーレン(C.V.蒼井優)

本作のヒロイン。

JPの少年時代からの片想いの相手であり、同時にREDLINE優勝を目指してしのぎを削るライバルでもある。

人生の全てをレースに捧げている一本気でクールな女性であり、大のエンジンオタク。恋愛関係にはさっぱり興味が無く、告って来た相手を片っ端からフる様から「チェリーボーイハンター」と勝手にあだ名が付けられてしまった。

REDLINE出場が夢で、そのために全てを犠牲にしてきたという正真正銘の女性車ヲタ(めちゃくちゃ可愛い)。基本的に純情なので、ロマンティックに攻めてくるJPに対しては非常に好意的だが、昔出会っていることを覚えてないあたり生来の小悪魔とも言える。

また、負けん気が強いところも加点ポイント。REDLINE本戦では初っ端にミサイル爆撃かましてきたリンチマンに対してレース中盤で水没させるお礼参り。可愛いだけじゃなく、強い蒼井優。

 

ストーリーの面白さが限界超えてる

ことごとくハイテンションなんだよ。俺の周りに1人でもこんなにアゲな友達いたら、胃痛と頭痛がジェットコースター乗って襲ってくるハズなんだけど。不思議と不快さは皆無。何故なのか、たぶん起承転結と緩急がしっかりしているからだと思う。

導入部、REDLINE本戦の予選、YELLOW LINEレースの様子から始まり。JP・ソノシーの勝負、ヤクザとのやり取り、リザーバー枠での本戦出場決定。REDLINE準備期間、ソノシーとの再会、出場選手の紹介VTR、レースへの仕込み。ここまでで作品全体の半分近くを要している構成が良い。タイトルに冠しているREDLINE本戦を後半に全て持ってくることで、焦らしつつも、一気に視聴者の心を鷲掴みにした。脚本家、メンタリストですか?

 

軍事的極秘機密満載の
アンタッチャブルワールド

レース開催場所が死ぬほど危険地帯というのも素晴らしい演出と言える。開催地のロボワールドは完全な軍事国家(星)で、全宇宙に配信されるゲリラレースなんてやられたら生物兵器やら条約違反の兵器やら、モロバレ。だから絶対に自国でのレース開催なんて許せないし、不法侵入者絶対殺すマンとなる。つまり、REDLINE出場者は他の参加者と競いつつ、ロボワールドの攻撃(地雷攻撃・絨毯爆撃・衛星攻撃・生物兵器)から逃れなければならない。三竦みのカオス。

でもこれが話としてまぁ~上手くまとまってる。参加者との因縁からレースに参加し始める軍人、目覚める宇宙平和条約違反の生物兵器、それを止めるために衛星レーザーを自国に落とす軍部。この怒涛の流れの中でしっかりレースするREDLINE参加者。マシンを壊されたソノシーに駆け寄るJPからの昔話で仲直りする2人。もう、全部の歯車がゴールに向かってて最高なんだよ

 

そして何よりも音楽が限界超えてる

REDLINE
オリジナルサウンドトラック

手掛けたのはCM音楽界の重鎮、ジェイムス下地さん。”CCレモン”とか”ペプシマン”のCMを作ったという、これまた伝説の御方…。重低音の中にもポップさを含んだバランスの良いサントラ(なんと映画一本で42曲)は、物語の端々で感情を刺激してくる。というかキマる

アニメーションにおいて、音楽の大事さをしっかりと感じさせてくれる本作の存在は日本のアニメ界で「俺たちはこの位やっちゃうよ?これ、越えられる?」という挑戦のようにも感じられる。ぜひともアニメ制作に関わる人達は参考にして欲しい

 

言わずもがな作画も限界超えてる

製作期間7年、総作画枚数10万枚は伊達じゃない。10秒間で700枚描いてるシーンもあるみたいだけど、魂込めすぎでは?死ぬぞ?  作品のキャッチフレーズである「限界を超えろ」を、スタッフ陣が我先に体現しているという前代未聞のフライング。

ちなみに、俺は作画枚数が多ければ良いアニメ作品というワケではないと思っている。枚数の多さは一つの指標になるが、枚数の多さで言えば『マクロスプラス』でも5秒間にセル画160枚超のシーンがあった。要は”どこまで妥協せず突き詰めるか”なんだよ。そういった意味で、この高速レース作品における作画は完全に変態超人。

※余談
ジブリ映画の作画を参考までに。
『風の谷のナウシカ』5万6000枚
『天空の城ラピュタ』6万9000枚
『もののけ姫』14万4000枚

 

まとめ

俺のFilmarksでのアニメ映画TOP3は『REDLINE』『天気の子』『劇場版 天元突破グレンラガン 螺巌篇』が同列1位なんだけどね。この牙城は一生崩れないと思っている。

こんなに製作者の魂が入った作品は他に無い。

『SAW』シリーズ屈指の犯人”ジグソウ”は人類の敵ではなくダークヒーロー

数あるスプラッタ映画の中でも無類の人気を誇る『SAW』。始まりにして永遠の犯人、”ジグソウ”ことジョン・クレイマーは愉快犯に非ず。そして、狂人ですらなかったと俺は思う。正義を持つ彼はまさにダークヒーロ―。

あらすじ

パパラッチの男性アダムは水の張られた浴槽の中にいた。

栓が抜けて水が抜けていくのと同時に目覚めたアダムは、自身が酷く老朽化した手広いバスルームにいることに気づく。アダムの片足は鎖で繋がれ、部屋の対角線には同じように鎖で繋がれた医師、ゴードンがいた。そして部屋の中央には拳銃自殺の遺体が倒れていた。

鎖はとても外れそうになく、出入り口は硬く閉ざされていた。まったく状況を飲み込めなかったが、アダムは自身のポケットにカセットテープが入っているのに気づく。ゴードンのポケットにはカセットテープと、未使用の銃弾と、何らかの鍵があった。

自殺死体が握るテープレコーダーで、ふたりはそれぞれのテープを再生する。内容はそれぞれへ宛てたメッセージでゲームをしようとささやくのだった。

ソウ (字幕版)


息子を失った悲しみで目覚める

『SAW 4』で明らかになるジグソウ誕生の要因。ジル・タックって言う、ジョンの元妻が『SAW 3』で出てくるんだけど(結婚してたのかよ! カッコいいもんな! と叫んだ)、彼女が麻薬常習犯更生施設の経営者なんだよね。ジョンとの子を身籠っている時に、患者の一人が起こした強盗事件によってお腹の子が流産してしまう。これがキッカケで被験者殺しを始めるんだけど、俺はこれを知った時に漸くジグソウのことが好きになれたね。

「生きていることはそれだけで幸せなんだ、殺人なんて愚かだ」が持論のジョン。おま! お前がそれを言うのか? と俺も初めは思ってた。でも違ったんだよ。彼は必ず被験者(被害者)に助かる道を与える。助かるには五体満足じゃなくなるレベルの無理ゲーが多いんだけど、それぐらいのことしないと生きてる実感得られないよね? という鞭の先の飴。そして被験者に選ばれるのは決まって他人のことを踏みつけて生を搾取してきた社会の闇相手だけ。

ここまで言えば分かると思うけど、ジョン・クレイマーは決して愉快犯ヴィランではない。むしろ、スパイダーマンやバットマンと同じ、ダークヒーローに近い属性を持っている。自分なりの正義をもっているからこそ、多くの視聴者を惹きつけるし、作中でも模倣犯や心酔者、協力者が絶えず出てきたって事だ。

 

”ジグソウ”後継者の存在

ジョン・クレイマーを語る上で欠かせないのが、後継者の存在だ。ぶっちゃけると、初代”ジグソウ”ことジョンは元々末期ガンを患ってて、シリーズ3作目で死ぬんだけど。それから4・5・6・THE FINAL、2017年に『ジグソウ:ソウ・レガシー』までシリーズは続く。これが実に面白いし、話が良く出来てる。てか犯人死んでからの方が長いサスペンスって凄くね?金田一もコナンビックリだよ。つまり、 ジョンが死んでからは後継者がゲームを続けることになる(正確には2から)

アマンダ

『SAW 2』にて、皆のトラウマ・注射器プールにダイブかましたイケイケ姉ちゃん。彼女は後継者というよりは”ジグソウ”心酔者と言っても良いかもしれない。麻薬常習犯にでっち上げられて、病んだ挙句、本当に麻薬ヘビロテし始めたグレイテストウーマンって読んでも良い。ジョンによる「生きている幸福さを気付け」ゲームによって、人としての喜びに目覚め、以降ジョンのゲームのアシスタントとして活躍することになる影の立役者。

でも、完全な後継者になれたかと言えば実はそんなことは無い。被験者に対して生の執着を感じさせた後、希望という出口の無いジェノサイドをするだけという生粋のドSマーダーとしての才能が開花。ただただ行うだけのその姿にジョンが失望して怒る場面も(そしてアマンダは泣く、てかこの殺人にも実は理由がある)。

たぶんアマンダみたいに意思の弱いいわゆる普通の人がジョンの知識を得て、ある種の全能感を感じると、同じようになってしまう気がする。アマンダの姿は俺たちだ。自分を救ってくれた人の行いを手伝いたいという一心で、信念の無いまま心を壊した善良な人間だ。だが、”ジグソウ”にここまで心酔させる魅力があるということを、彼女はその命をもって示してくれた

ソウ2 (字幕版)

ソウ3 (字幕版)

ホフマン刑事

そう、刑事なんですよね。真なる後継者は。絶対にジョン・クレイマー捕まえるマンとしてその敏腕を振るっていたホフマンが、実は物語序盤から”協力者”として暗躍(時に表舞台でも活躍)し、二代目”ジグソウ”になったのは偶然ではない。

妹が恋人に殺されるという悲惨な目にあった彼は、捜査中だったジグソウの手口に見せかけて妹の元カレを殺害(リアル・ギロチンカッター)。この一見がジョンにバレ、「自分に従わないと君の殺人、世間にバラしちゃうよ?」 と脅される形で各ゲームの仕掛けや被験者の誘拐に協力するようになる。

ちなみに、『SAW 6』にてアマンダがプライドをギンギンにしてホフマン刑事に喧嘩売るシーンは中々に嬉しい場面。ちょっと頼りにされてるからって調子に乗んなよデクノボウが! と言わんばかりの後継者争いは、ジョンの徳の高さを証明していた。GJ。

そしてこのホフマン刑事はジョン志望後のシリーズに置いて八面六臂の大活躍をしてくれる。いやいや、お前、脅されて協力してたんじゃなかったっけ? こう思った諸兄は正しい。そうなんだよ。はじめは脅されて手伝ってただけだったのに、いつの間に自我に目覚めた? いつの間に殺人テクニック高めた? ゾルディック家で修行した? まぁ、それだけ正義を基に行われる行動には中毒性があるって事なんだと俺は解釈した。頑張って勉強したんだよな。

ソウ4 (字幕版)

ソウ5 (字幕版)

ソウ6 (字幕版)

ソウ ザ・ファイナル (字幕版)

 

蘇り続けるジョン・クレイマー

2010年にザ・ファイナルを公開し、完全に物語の幕を下ろしたかに見えた『SAW』だったが、2017年に『ジグソウ:ソウ・レガシー』で復活を遂げる。「どういうことだってばよ…」「絶対に模倣犯やん…ジョン出てこないやん…」というファンの心配をよそに、作中10年の月日を超えて復活を遂げるジョン・クレイマー。正真正銘不死身の男は更なる正義を執行するのか? …という、夢を見たんだ(大嘘)。

いや、ごめん(笑)。殺し方のバリエーションと物語の深み(あとグロさ)は見事にランクダウンしてたけど、シリーズ全部を観てる人はしっかり楽しめる内容だったよ。逆に、グロ成分かなり抑えめだったから、『SAW』一個も観てない人でもコレから観れるのかもしれない。「たぶんまた10年後とかに続くんだろうなぁ」って、シリーズを超えジャンルと化したのを確信した作品。

ジグソウ:ソウ・レガシー(字幕版)

 

まとめ

わかりやすく言おう。『SAW』シリーズは映画という媒体を用いた海外ドラマだ。全容を知ることで初めて物語の核心が分かってくる。面白さの比較対象として『ストレンジャー・シングス』とタメ張るくらいだと思ってもらって良いと思う(※当俺比)。

SAW ソウ ビリー人形風 マスク

ちなみに言うと、実は俺は『SAW』シリーズが苦手だった。ホラー好きなのに甘いこと言ってんなぁって思われても構わない。俺は血が苦手なんだ。『ジューン・ドゥの解剖』でも血にビビってたくらいの弱虫だ。

だが、『SAW』は全部観た。ひとえにストーリーが良かったのと、ジョン・クレイマーの正義感に心を打たれたからだ。見事に1人”ジグソウ”の心酔者が増えたってワケだ。きっと、俺が殺人を侵したら、この記事がニュースで流れるんだろう。『SAW』は現代の若者の心の闇を刺激した悪質な作品だってな。大丈夫、そんなことにはならない。俺は血が苦手なんだ! むしろ自分の血とか、自分の身体が痛いのは大好きだけどな!

正義を貫いたダークヒーロ―に献杯。

俺は恋人が死んだら悪魔と契約してでも絶対に蘇らせるけど

敬愛するS.キングさん。
彼が『ペット・セメタリー』で描く人間の業とは。

原作あらすじ

メイン州の田舎町に家を購入した若い医者のルイス・クリードは、妻のレーチェルと幼い娘のアイリーン、生後間もない息子のゲージ、アイリーンの愛猫チャーチルという家族を持つ、典型的な「幸せな一家」である。庭には細道があり、その昔、町の子供たちが造ったペット霊園がある裏山に続いている。隣家にはジャド・クランドルとその妻という老夫婦が住んでいる。

レーチェルが子供たちを連れて実家に帰省していたある日、猫のチャーチルが車に轢かれて死んでしまう。まだ身近な「死」を受け入れたことのない幼い娘にどうやって説明するか悩むルイスは、詳しい事情を聞かないままジャドに連れられて、チャーチルの死体を裏山からさらに奥に分け入った丘に埋める。すると次の日、死んだはずのチャーチルが家に帰ってきた。だが、帰ってきたチャーチルは腐臭を発しヒョコヒョコ歩く、全く別な“何か”のようだった。

釈然としないまま過ごしていたある日、今度は最愛の息子ゲージがチャーチルと同じように轢死してしまう。悲嘆にくれるルイスに、ジャドはチャーチルを埋めた場所にまつわる忌まわしい事実を語り、「あの場所に二度と近づくな」と釘を刺す。しかし、亡くなった息子への愛が、ルイスに決して超えてはいけない一線を超えさせてしまう。

 

これが原作版のあらすじ。2019年のリメイク版に関しては少し内容が変わる。まず死ぬのが息子じゃなく娘。息子よりも歳上の、人格が形成された後の子供を亡くすことで、より”人が死んだ感”が強調されている。

 

にゃんこに助演俳優賞あげたい

最初に蘇る猫がモフモフフワフワでめちゃくちゃ可愛い。物語序盤はザ・幸せな家族の様子が垣間見られるんだけどね、その幸せをさらに強調するかのようなチャーチルの演技はまさに百城千世子。猫好きは必見だ。だが蘇った後は別猫のように様変わりしてしまう。ロアナプラ出身の猫さんでしたっけ? そんな感じに演じ分けをするこの賢いにゃんこは一体何者なんでしょうか。その演技は全アクター中随一で間違いなくレッドカーペットで助演賞

 

不幸だとしても抗えない人間の業

泥だらけで黄泉帰ってきた娘をルイスが洗ってあげるシーンがあるんだけどね。ここリメイク版の好改変ポイントだと思う(本来なら戻ってきてすぐにジェノサイドを始める子供が描かれる)。このシーンのおかげで、父が本当に娘が帰ってきたことを喜んでいるっていう心理が深まった。

そもそも、ルイスは医者という職業柄、死者を蘇らせるってことにはかなり否定的な立場のハズなのに。ペットセメタリーの魔力を知ってしまった以上、どんな悲惨な結果になろうとも最愛の娘だけは蘇らせたいという人間の真理(というより、親の真理?)が表現されてるんだよねこの脚本。

気持ちはわからんでもない。まだ子供がいない人間には中々理解し難いかもしれないが、例えば恋人だとしたらどうだろうか。本当に大好きな恋人が死んでしまったら、どんな手段を使ってでも蘇らせて、もう一度会いたいと思わないだろうか? そう、『シャーマンキング』のファウストのように。悪魔に魂を売ってでも。それが愛であり、人間だと思うんだよね。

だがそれは間違いなのかもしれない、本作では”蘇らせた人間も、蘇った人間も永遠に苦しむ”という事が説かれる。死から蘇ることは想像を絶する苦しみだし、死を冒涜したことで「永遠に地獄の炎で焼かれる」とアイリーンが語る(言ってることは理解できるが、性格変わりすぎ)通り、人間の愛にも超えてはいけない一線があるのかなって思った次第。

 

死について考えることは愛に繋がる

ちょっと脱線するけど、イスラエルの大学で行われた実験で面白いものがある。それは「死について考えることで恋人への愛情が増す」という中々に興味深い実験。「自分が今生きているのは、生きる気力を与えてくれる人がいるから」という考えに至るそうだ(恋人がいない場合はモノや組織に置き換わる)。これも面白いよね。終わりを意識することで、より今の状況を意識するということ。幸せな状況を当たり前のように享受してしまう人間の業を現わしてる。『ペット・セメタリー』でS.キングが言いたかったのはこう言う事なんだと思うんだよね。「今を大切にすることほど大切なことはありませんよ。」って。むむ、深い。

 

まぁ、でも、ここまで理解してても、
当事者になったら悪魔に助けを乞うんだろうなぁ…。
それが「人間って面白ッ!」byリューク な所。

ペット・セメタリー(字幕版)

 

まとめ

本作は、かなり大人向けの作品として完成してると感じた。ジャンルはホラーというよりモラル。自然の摂理にだけは逆らってはいけませんよ? ということを暗示しつつ「でも、人間はそういうワケにはいきませんよね~」という茶目っ気たっぷりの裏返し

こういう、人間の中の触れづらいツボを突いてくるからS.キング作品はたまらない。

40年かけて一つの物語を描いた2人の監督と『ドクター・スリープ』に御礼申し上げます

『シャイニング』の続編として2019年に公開された『ドクター・スリープ』。結論から言うと、最高だった。

あらすじ

40年前の惨劇を生き延びたダニー(ユアン・マクレガー)は、心に傷を抱えた孤独な大人になっていた。

父親に殺されかけたトラウマ、終わらない幼い日の悪夢。そんな彼のまわりで起こる児童連続失踪事件。ある日、ダニーもとに謎の少女アブラ(カイリー・カラン)からメッセージが送られてくる。彼女は「特別な力(シャイニング)」を持っており、事件の現場を”目撃”していたのだ。

事件の謎を追う二人。やがて二人は、ダニーにとって運命の場所、あの”呪われたホテル”にたどりつく。

呪われたホテルの扉が再び開くとき、すべての謎が明かされる。

 

フラナガン監督ワールド超新星爆発

監督のマイク・フラナガンはホラー好きなら知らないものはいない『オキュラス 怨霊鏡』の監督だよね。この作品の時から超常現象の魅せ方が半端なく上手かったし、『ジェラルドのゲーム』でも感じさせてくれた、”スティーブンキングへのリスペクト”。これが爆発した結果またすごいモノ作ったなって感じ。

「シャイニング」原作改変について

ここで多くの人が曖昧なママに知識として入れているであろう事に触れときたい。前作『シャイニング』で物議を醸した原作改変。これが何のことか、ちゃんと把握してない人は本当に勿体ない(それに、たぶん『ドクター・スリープ』を楽しめない)。

シャイニング [Blu-ray]

まず、前作のキューブリック監督が作った映画版『シャイニング』。これは実はスティーブン・キングの原作を大きく改変した内容になっていたってのは有名な話。俺が把握してるのは下記。

 

映画版における原作との違い

①ホテルはあんな迷路みたいな作りじゃない
②ホテルの内装はもっとモダン(裏側は黒いが)
③物語の主軸が怨霊じゃなくホテルになってる
④結末でホテルが燃えない

たしか大まかにこんな感じ。どうしてこうなったかってのは諸説あるけど(どっかにキューブリック監督の取材とか残ってるのかな?)、単純にハンディカム使いたかったってのが一つ。あとは映画を作る上で、当時流行ってたホラー要素を取り入れたかったってのが一つ。あとは、普通に原作の内容が好きじゃなかった説もある。こう並べると、中々に自己中心的な考え方してるように見えるけど、キューブリック監督の気持ちも分かる。新しいガジェット使って芸術的なホラー映画取れば絶対売れるもんな。原作長くて暗くて気持ち悪いもんな。実際、半端なく大衆にウケたし、でも流石のキング先輩も憤慨

そもそも原作のテーマ「再生」だしね。映画版の結末にキングさんが怒るのは当然…。こういった経緯があって、なお、この『ドクター・スリープ』でダニーが再び立ち上がる姿を強調して描いたフラナガン監督はヤベェ

しかもその描き方が本当に秀逸。偉大なる先輩に敬意を表するように、映画版『シャイニング』で描かれなかった小説版のプロットリスペクトで物語が作られてる。しかもそれだけに横着せず、映画界でも高い評価を得ているキューブリック監督のストーリーと、芸術的な意匠も、しっかりと受け継いだ二つの意味での”続編”になってた。

まぁ、『シャイニング』のサイコホラー感・芸術性が好きな人にはあんまりウケないだろうなぁってのは強く感じた。人それぞれだから仕方ない。『時計仕掛けのオレンジ』、観直そうぜ!

 

千里眼&ドクタースリープ vs オカルト集団

本作はサイキック集団との戦いがメインストーリーになる。サイキック集団っていうかオカルト集団だけど。怨霊的な恐怖じゃなくて、しっかりと人間の闇を描いてくれる当たりが嬉しい。あと何より、この集団のボス的存在を演じたレベッカ・ファーガソンが美しすぎる。観てる時に「ん~?この人なんかのホラーに出てたな~、叫んでくれれば悲鳴でわかるんだけどな~」って思ってたけど終始分からなかったからググった。『ポゼッション』だった

キャンピングカーで移動しながら世界を裏から見続けるっていう立ち位置が格好良いし、とてつもなくヒッピー。服装もお洒落で、こういうちょっとした点にキューブリック作品の続編感を漂わせててGOODでした。

話の内容もメチャクチャ良くて、ストーリー的に矛盾がないようにお互いの対立する理由が構築されてて、戦いも想像よりオカルト。『ハンターハンター』みたいな感じ。マジで。

ここからどうやって”あのホテル”に辿り着くんだろう…ってずっとワクワクしながら観てたんだけど、やっぱり分かってるね、ここぞというクライマックスで悪夢復活

 

呪われたホテル再臨

来ましたファンサービス!ほぼ全ての視聴者が待ち望んでいたであろう映像を見事に魅せてくれた。ニクい、ニク過ぎるぞ。

 

親父がパッカーンしてきた伝説のドア先輩も、お変わりないご様子で安心しました。ダニーボーイ分かってるよね? ここでやること分かってるよね? という全視聴者満場一致の願いも叶い、パッカーンからヒョッコリしてくれるダン。素晴らしい。

 

庭園迷宮も「無限城か?」って位の広さでパワーアップして復活。前作では追われる身だったから恐怖のバトルフィールドでしかなかったけど、このラビリンスウォールたぶんDEF/3000はあるな。こっからマジでキューブリック監督リスペクトの嵐。

 

おばぁちゃんも双子ちゃんもバーテンもホテルの中で元気にしてたようで嬉しい限り。てかダン、召喚士の才能あるからジョブチェンジした方が良いよ。このメンツならきっと魔王とか倒せる

この辺は観てない人の為にダイジェストだけで終わらせとこう。

本当に『シャイニング』ファン涎垂。
絶対に満足できるし、終わった後に愉悦に溢れます。

ドクター・スリープ(吹替版)

 

まとめ

さすがフラナガン監督。この一言に尽きる名作だった。噂では『心霊電流』も彼が監督になる可能性が高いんでしょ? もう既に面白いことが分かる。期待しかない。

モダンホラーの帝王ことスティーブンキングの伝説は続く。

親しくない奴から貰うプレゼントには人生撃滅爆弾が入ってると思った方が良い

人はプレゼントというものを盲目的に好意的なモノと考える傾向がある。だけど、それって結構危険だよね。善意ともとれる行動に実は裏があるなんてことは、世の中ザラにある。それを見事にカタチにしたのが、映画『ザ・ギフト』。

ザ・ギフト (吹替版)

あらすじ

情報セキュリティ会社に勤めるサイモンは、妻ロビンとともに新しい街に引っ越してきた。仕事は順調で、ふたりは豪華な自宅を購入し、順風満帆の人生に思えた。

そんなある日、学生時代の同級生ゴードン・モズリーに出会う。そして後日、ゴードンから引越祝いとして豪華なワインが届けられた。

ロビンはワインの返礼として、彼を自宅の夕食に招いた。食事の間、ゴードンはまるで親友だったかのように語り、実は高校時代彼とはあまり親しくなかったサイモンは不快感をおぼえる。ロビンには、彼は見かけよりいい人には違いないと思えた。

後日、二人が仕事仲間のパーティーから帰ると、ゴードンから「ギフト」として、庭の池に鯉が泳いでいた…。

地獄の黙示録をギフトしてくる男

THE GIFT

そんな奴いるか? と思った俺はホラー好き失格?

あらすじからも感じる通り、終始何かがおかしい印象を受ける本作。俺の友達が『地獄の黙示録』を俺にプレゼントしてきたら割とベストフレンド認定するけどね「よくわかってんじゃん」って。そもそもなんだけどさ、人から貰った飲み物とか口に入れたくなくないですか? 毒とか入ってるかも知れないじゃん(完全に人間不信なクズの意見なので聞き流してください)。だからチョコも苦手なんだよ。

ここで俺の猜疑心に関して触れようか。基本的には性善説を提唱する俺、だが世の中には悪人も存在するってことも良く理解している。吐き気を催す邪悪なる存在が同じ世界に生きているってことをこの30年弱の人生で嫌と言うほど理解した。

わぁ~この人、本当に心の底からクッソ♪ 運悪くトラック突っ込んでこないかなぁ今すぐ コイツの横っ腹に。なんて思った事も何度もあった。でもそんなことを思うってことは俺も悪の部類に入るんだよね。心が綺麗な人はきっとこんなこと微塵も思わずに他人を信じれる。そんな天使が存在するってことも理解している。だからこそ、俺は友達を無駄に作らない。俺みたいな悪が人と関わったらきっとその人に悪影響を与えてしまう。あと俺の人間強度が下がる。これが真の性善説提唱者よ。

 

考え得る限り最悪のギフトとは?

THE GIFT

そんな俺でも自らの手で他人を貶めるようなことは出来ない(これ以上魂を汚したくないからな)。でも、こんな風に心のテトラポッドが機能してるのは、俺が甘い人生を送ってきたからなんだと思う。きっともっと他人から辛い目に合わされた人生を送ってきた人ってのは、自らの何を犠牲にしても復讐の炎に身を焦がすんだろう。そこに潤いは皆無。この映画の脚本はそういう人物もいるんだよって事にフォーカスしてる。

あと、この作品における面白い見所として、一度悪に染まった人間は死ぬまで悪ですよってことが表現されている気がした。

清く正しくあることは無理かもしれない。これはそう人類に訴えてくる作品だ。それでも、闇堕ちしないように正しく抗う人生は輝きを放ってると思うし、そう信じたいけどね。そう、お気づきかも知れないが俺は正論という鎧で自分を守る弱虫

 

まとめ

観る前は全然期待してなかったんだけど、この映画を観終わった後の胸クソ悪さは近年類を見ない。良かった。ただ、俺とは相反してスカッとする人もいるのかもしれない。こればっかりは人を選ぶと思う。というより、誰に感情移入するかで結末が変わる感じかな。

ただ、俺が一番苦手な結末だったとだけ言っておこう。

覚悟できる精神的なドMだけが観て欲しい作品。

全力で作られたB級映画はA級映画を超えてるし時代も超えてくる

2020年7月に続編が発表される『ゴーストバスターズ』。子供の頃にTVで放送されていたのを観ていた人も多いかと。何を隠そう俺もその一人だ。子供ながらにその世界観にドハマりしたくらい、万国共通の名作。ホラーコメディとして今観ても色褪せない良さがここにある。

初代 ゴーストバスターズ

あらすじ
ニューヨークのコロンビア大学で超常現象や幽霊・霊体の研究を行っていたピーター・ヴェンクマン博士(ビル・マーレイ)、レイモンド・スタンツ博士(ダン・エイクロイド)、イゴン・スペングラー博士(ハロルド・ライミス)の冴えない研究者3人。ある日、「経費の無駄遣い」と一方的に研究費を打ち切られ大学を追い出されたことをきっかけに、借金を重ね、科学的に超常現象全般を扱い幽霊退治を行う会社「ゴーストバスターズ」を開業。

ゴーストバスターズは爆発物所持等の容疑で拘留されるが、「門の神ズール」にとり憑かれたディナと「鍵の神ビンツ」にとり憑かれたルイスが出会うことでゴーザが復活すること、二人の住む高層ビルは、ゴーザを崇拝しこの世の終りを祈る秘密結社の信者イヴォが特殊な設計によって建築したもので、屋上が異次元と現実世界との接点になっていたことをつきとめる。4人はレニー市長の希望で呼び出され、幽霊騒ぎを収拾するために活動を再開する。

 

キャストがハマり役

まず、観直して衝撃的だったんだけどさ。この作品、シガニー・ウィーバー出てたんだな(『エイリアン』のリプリー役と言えば一番わかりやすいかも)。子供の頃見てた時には俳優とか気にして観てなかったから全然知らなかったよ。まぁ、今でも全然気にして観てないけど。ただ、妖艶なリプリーが「あなた鍵の神?」って聞いてくる姿が観れただけでも、個人的には観直した甲斐がある。他の俳優陣も、もう「コイツ等しかいないでしょ!」ってレベルで物語にハマってるのは今も昔も変わらない感想となった。

 

チープさが逆に良い

84年に公開された映画ということもあるが、ゴーストの演出が2020年に観ると軒並みチープ! だがそこが良い。”破壊の神”がマシュマロマンとして顕現するか? ゴーストぶっ飛ばしたらマシュマロまみれになる作品が他にあるか? 俺は知らないね。良かった。ゲロぶっかけられながらレーザー光線で戦う姿がやけにカッコ良く見えたのは俺が子供心に下品だったからではなくて、この作品が良すぎたんだな。ちなみに、音楽も超ハマってる。深夜の低予算コマーシャルをイメージして作ったというテーマソングはこの作風にドンピシャだし、誰の耳にも残りやすい。日本で言えばジャパネットたかた並にキャッチー


ゴーストバスターズ (吹替版)
※今ならプライム会員特典で観れる

80年代の映画ってなんでこんなに良いんだろう。発展途上の時代性が反映されているというか、空気感が良いよね。低予算でも工夫してるところは今でも見習う出来だと思うし、何よりお金がなくてもアイデア次第で面白いものは作れるんだぞ! っていうゴールデンエイジ。これはその代表作だと今は思う。

 

続編 ゴーストバスターズ2

あらすじ
前作から5年。破壊神からニューヨークを救った彼らだったが、破壊した建物などの賠償金を市と州より請求された上、数々の違法行為の責任を押し付けられ「ゴーストバスターズ」社は破産してしまい、依頼もぱったりと来なくなった。

市民も彼らと超常現象を忘れ去り、4人組もそれぞれ別の道を歩んでいた。ピーター・ヴェンクマンはテレビ番組の司会者(担当番組の視聴率は最悪)、エゴン・スペングラーは研究所で心理学を研究、レイモンド・スタンツはオカルト書専門の本屋を営むかたわらウィンストン・ゼドモアと共にゴーストバスターズの仮装をして、パーティーに芸人として出ていた。

 

こっちの方が周知されてる説

正直に言おう、俺はこっちが初代ゴーストバスターズだとずっと思ってた。「マシュマロマンが出てくるのが2だったけなぁ~」と、うろ覚えのままにアホ面晒してた。たぶん、俺が生まれた年代的に日曜洋画劇場とかでTV放映が多かったのはこっちだったってのはあるかもしてないけどね。前作から僅か5年後の89年発表だけど、高度経済成長期だったこともあってかCG技術が向上(ただしチープさは変わらず)。ゴーストの表情もより豊かになった(そう、オニオンヘッドのゲロもより豊かになった)

 

ファンが望む展開盛り沢山

前作で「鍵の神」に依り代として被害にあったルイスがさりげなくゴーストバスターズと関わっている所がアツい。ちゃっかりサブカルな受付嬢とこれでもかと良い感じにイチャイチャってるの◎! あとラストではゴーストバスターズとして覚醒する展開も最高(お前、弁護士だろ)。NYっていう場所柄というのもあるが、この仲間が増えていく感じ、『血界戦線』に通じるところがあるんだよな~。登場人物もコミカルだし、アメリカンジョークがお洒落。あとデコ車もクール。とにかく、1の良い所を伸ばした印象。自由の女神をリーサルウェポンとして使うあたり、アメリカ様のアメコミ精神が現れてる。

ゴーストバスターズ2 (吹替版)
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ストーリー的には街一つが直接的に関わってくるので、壮大になった感じ。ただ流石なのはやっぱり音楽だな。ここで盛り上がって欲しいって所で見事にアゲな音楽流してくれる。こういう細かい所がよりクオリティ上がってるから、興行収入的には1の方が良かったみたいだけど俺は2の方が好き。

 

リブート版 ゴーストバスターズ

あらすじ
コロンビア大学で教鞭をとっていた素粒子物理学者のエリン・ギルバートは終身雇用の審査を目前に控えていた。しかし、以前共著した「過去からの幽霊」という本を手にした男性がオルドリッチ屋敷の幽霊騒ぎについて相談に来たことがきっかけで、エリンは本の共同執筆者であるアビー・イェーツと再会。アビーの共同研究者で原子力エンジニアのジリアン・ホルツマンを加えた3人で幽霊騒動の屋敷を訪れ、幽霊に遭遇。その動画を公開したことで超常現象の研究をしていたことが大学に発覚し、終身雇用どころか失職してしまう。アビーを頼ったエリンだったが、アビー達も同様に職を失ってしまう。

3人は幽霊研究というだけできわもの扱いされる現実に直面するが、幽霊の実在を証明した初めての科学者となるべく幽霊を捕獲し、管理下に置いて研究するために「超常現象究明研究所」を設立する。受付担当のケヴィン・ベックマン、地下鉄職員のパティ・トーランを仲間に加え、街中で暴れ出した幽霊退治に乗り出す。

元々は2の続きを描く予定だったらしいけど、諸事情によりリブート版に変更になった本作。導入部分などは現代風になっているが、大よその展開は同様。ただ大きく異なるのはメインメンバーが女性っていう点だろう(唯一の事務所男メンバーは馬鹿が服着て歩いてる、ただしイケメン)。変わらない点として、安定にオカマが出てくる。そして初代同様にユーモアに富んだメンツがゴーストの吐瀉物にまみれる

 

驚かし演出が劇的に進歩

2016年発表ということで、前作から27年も間が空いた。正直どうなるもんかと肝を冷やしたが、映画技術が向上したのはホラーコメディにとっては追い風。ゴーストのCGがより滑らかになったし、驚かし方もちゃんと時代に合わせて成長していた。初代に見られたチープ感も、あれはあれでホラー映画の醍醐味ではあるのだが、綺麗な幽霊が観れるならそれに越したことは無い。この点に関しては素直にグッジョブと言いたい。しかしゴーストは潰れると液状化するところは変わらない

 

世界観の作り方がより秀逸に

なんだろうね。歴史を経て設定がリアルな現代になったことで、よりヘルサレムズ・ロットっぽさが増した。小道具とかの演出も良いんだよ。何か雑多で混沌というか(事務所が中華料理屋の2階ってのもあるが)。路地裏でいともたやすく行われる新武器の実験が危険すぎて、逆にNYが好きになる。

賛否両論のリブートだったけど、結果的には歴史を踏襲した秀作になったと俺は感じた。本気でB級映画を作るとこうなるんだぞって好例(たぶん予算的には十二分にA級)。女性メンバーになったことでよりポップさが増してるから、初代を見てなくても楽しめる作品かと。一言で言えば、普通にめっちゃ面白いぞ。


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まとめ

こんなに年代を超えて愛されている作品もないかと。ロゴ良し・音楽良し・脚本良しという3拍子揃った作品がカルチャーとして後世に残らないワケが無いってことだろう。しかもストーリーに関しては、元祖”ヲタク無双”モノと言える。ヲタクの心の奥底にあるヒーロー精神を刺激した結果、熱狂的ファン層を確立したってのもあるかもね。

珍しく、すごくベタ褒めした感があるけど。SFは80年代~90年代の作品の方が好きだから仕方がない。今年の最新作『ゴーストバスターズ/アフターストーリー』も期待。

あれ、夏に観る映画…多くね…?