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ホラー中毒が選ぶ青春を感じるホラー映画【おすすめ5選/小心者向け】

ほぼ毎日ホラー映画を観ている俺はあることに気付いた。あれ、ホラー映画って相当ジャンル細分化できるんじゃね? と。中でも特に俺の琴線に触れたのは”青春”を感じるホラーだ。相反する二つが共鳴した時、えも言えぬエモさが生まれる。

”青春”を感じるホラーとは?

一口にホラーと言っても色々ある。サイコホラー・スリラー・サスペンスホラー等が一番分かりやすい区分け。ジャンルだけで何でこんなに多いのか、”恐怖”の種類がまず多いからだ。このジャンルによる分け方も分かり易くて良いのだが、ホラーを観慣れてない人にとってはホラーはホラーだろう。でも、俺はまず襲ってくるクリーチャーの種類でまず分けられると思っている。幽霊・ゾンビ・サメ・宇宙人、etc…。

個人的に、かの名作『ジョーズ』はサメ映画であってホラー映画ではない。サメが出て来る作品はサメ映画ということにしよう。何故か。物理特化すぎて陰鬱とした恐怖が無いからだ。『13日の金曜日』『悪魔のいけにえ』も俺の中ではホラーではない。そもそも生きてる人間だし。同様の理由で『エイリアン』『ダークスカイズ』といった宇宙人襲来系も除外対象にする。宇宙人が出てきたらSF特化すぎるからだ

つまり、人外(宇宙人以外)が方途を尽くし何故かビビらせながら襲ってくるのがホラーだ。異議もあるだろうが、今回はこの考え方を念頭に、さらに細分化して”青春ホラー”というジャンルを俺が作ったということになる。というより、ここで間引かないと星の数ほどある作品の中から選ぶことになる。あまり前置きばかりが長くなってもピンとこないと思うので、ここからは厳選した”青春ホラー”を紹介したい。

 

 

学校の怪談

あらすじ

夏休みを翌日に控えた、一学期終業式の日の夕方。小学2年生の美夏は、忘れた絵の具箱を取りに学校に戻っていた。するとそこで美夏は、サッカーボールが自分を導くように旧校舎へと転がっていく不思議な光景を目撃する。旧校舎は取り壊しが決まって立ち入り禁止になっていたが、お化けが出ると子供たちの間で噂になっていた。しかし、美夏はボールにつられて中へと入ってしまい、そしてトイレの中で何者かに襲われてしまう。

美夏を心配した、5年生で姉の亜樹は、一人学校を訪れ、何者かに吸い寄せられるように旧校舎へと入っていく。そこにいたのは、イタズラしようと忍び込んでいた同級生の研輔と将太、4年生で双子の兄の均、そして6年生の香織だった。転校してきたばかりで、同級生となじめていなかった亜樹は、研輔達と衝突し、単独で妹を探しにいく。

しかしやがて、5人は自分たちが旧校舎から出られなくなっていることに気づく。そして5人の前に、ただの噂だったはずのお化けが現れた。Wikipediaより引用

「あ~コレね、あったあった!」と言っている顔が浮かびます。みんなのトラウマ製造映画であり、愛すべき青春。青春を感じるホラーとは何ぞや? という疑問に答えるのに、これより適した作品があるだろうか。いや、ない(反語)。学校を舞台にしたホラーは、総じて青春時代を想起させるけども、20代後半~30代にかけての年代に至ってはコレが一番リアルに感じるハズ

 

少年時代の甘酸っぱい恋心

黒髪清純美少女だったころの岡本綾。そして『学校の怪談』(シリーズ1作目)における神キャスティング・THE ミステリアスな女の子。旧校舎で出会いを果たすというボーイ・ミーツ・ガールを演じてくれた。隠れながらそっと手を握ってくる高学年のお姉さんの姿に全少年は精通不可避。ギンガムチェックのノースリーブブラウスがここまで似合っていたら、中村獅童の心が揺らぐ気持ちも超わかる。無論、作中でも淡い恋心を刺激するだけ刺激してラストのクライマックスを盛り上げてくれた。コレコレ、これなんですよ! 良質なホラーは怖がらせながらもしっかりと恋愛要素を盛り込んでくれる。その純度が高ければ高いほど青春メーターはグッと上がるってこと。

 

シリーズ全作が良作

『学校の怪談』シリーズは全4作。無論、同シリーズは他の作品も秀作だ。なんと言っても、てれび戦士だった前田亜季が出演している(しかも2・3ともに)。1995年の初作から比べると、如実にバブル時代の経済成長が反映された舞台設定になっており、学校の設備や時代背景も現代に近づいてくる。このリアルタイムさが良かった。学校・怪談・黒髪の美少女×リアル感=青春ホラーを体現していた本シリーズの1作目・2作目・3作目は、20年の時を経た今でも推せる。

4は無かった、良いね?
マジもんのホラー好きは要チェック!

学校の怪談4

 

 

怪怪怪怪物!

あらすじ

いじめられっ子のリン・シューウェイは、いじめっ子3人とともに、教師から独居老人の手伝いをする奉仕活動を命じられ、そこで2匹のモンスターに遭遇する。彼らは小さい方のモンスターを捕まえて、独自の「調査」と「実験」を始めるが、やがてモンスターは彼らの手に負えなくなっていく。そして、それは恐怖の始まりだった……。本当に恐ろしく、怖いものとは一体…。amazonより引用

ごめん早速『学校の怪談』の前提を覆す形になったけど、この作品に関して言えば、恋愛要素は皆無

 

輝くだけが青春じゃない

いじめられてたシューウェイが、いじめっ子グループと一緒に”怪物”を捕まえるというストーリー。前述のあらすじにもある通り、見つけたのは2匹、ここがミソ。怪物の妹(言い方合ってるのか不明?)にあたる方を捕まえて、学校に匿って行う「調査」と「実験」は子供ならではの吐き気を催す残酷さ。でもシューウェイはこの怪物調査を通していく中で、いじめられっ子ではなく(表面上は)仲間として認められていく。怪物の相手をしている間は自分は虐められないけど、自分と同じように”被害者”として衰弱していく怪物を前に、ある決心をする。

 

1番の被害者は”怪物”

ぶっちゃけると、本作において”怪物”は被害者だ。確かに、人間を襲うし、肉片は有り得ない位はじき飛ばすし、バスの車内を窒息するくらい血潮で染める。でもそれは全部、攫われた妹のためなんだよ。そんな怪物(姉)の気持ちを知ってからは、怪物(妹)への拷問は加速。苦しむ声で怪物(姉)を誘い出して、ブッ殺っしょ? マジこれでイケんべ? みたいなノリで物語はクライマックスへ向かっていく超胸クソ展開。それがシューウェイの作戦と絡み合って爆発的な鈍色の輝きを生んだ。

クリーチャーが襲ってくるホラーとしては異例だが。学生のモラル低下・いじめ問題への警鐘を鳴らし、ホラーの新境地を切り開いた問題作と言える。俺、かな~りマイルドに説明してるけど、普通に気分悪くなる映画だと思う。ただ、観た後は謎の爽快感

”青春ホラー”おすすめ5選、堂々のランクインです。

怪怪怪怪物! [DVD]

 

 

イット・フォローズ

あらすじ

ジェイ(マイカ・モンロー)は、恋人のヒュー(ジェイク・ウィアリー(英語版))とデートを重ねた末、彼と肉体関係をもつ。

その直後、ヒューはジェイにクロロホルムを嗅がせる。目覚めたジェイは、車椅子に縛りつけられている。彼女は、性交によってヒューから呪いを移されたと知る。

その呪いに憑かれた者は、人間の姿形をした「それ」に追いかけられる。「それ」は、ゆっくりと歩き、呪いに憑かれていない者の目には見ることができない。「それ」は、呪いに憑かれた者をつかまえて殺すと、その前に呪いに憑かれていた者を追いかけるという。Wikipediaより引用

『イット・フォローズ』は有名だよね。何となく、サブスクでゴリ押しされてた感ある(俺も一時オススメに滅茶苦茶表示されてた)。性交によって移る恐怖っていう設定は単純に面白いと思ったし、若者の性事情が荒れに荒れてる昨今を風刺したストーリーはむしろ10代~20代こそ観るべき

 

単なる”性病”の具現化じゃない

単純に、性行為によって”何か”に追われる立場が変わるという設定は、普通に考えると性病の怖さを表現しているように思える。でも、よく考えたらちょっと違うよね。

性病を揶揄するなら、”移す”ことで一時的にでも助からない設定にする。あくまでもこれはホラーで、”何か”が襲ってくるという、純粋な恐怖を主軸にした作品だってことだ。自分が助かるために自暴自棄になって誰彼構わず行為に及ぶ描写があるが、コレだとむしろ、SEXが救いとして扱われてるんだよね。また、襲ってくる”何か”は人の姿をしている。これも単純に、触手でグジュグジュのマラとか、等身大の〇〇〇とか、性の権化みたいな化物だったら簡単にトラウマを植え付けることができたハズ。

 

愛がなきゃダメ、絶対!

この作品の肝はラスト10分にある。襲ってくる”何か”を仲間たちと協力して撃退し、自分に片思いしてくれてたチェリーボーイと両想いになるんだけどね(万歳!)。この時のセックスは恐怖を伝播させることもなく、薬で眠らされて起きたら縛られてるなんてこともない、幸せな行為としてのSEXなんだよ。

実際のところ、性行為によってトラウマを負う人も少なくない。この物語の主人公(女性)もまた、強姦被害者(しかもドメスティック?)であるかの描写もある。だからこそ、ラストのCherry boy SEXが活きてくる

何が言いたいかというと。この映画は最初に感じた通り、「若者の性事情」への揶揄であることに変わりない。だけど、一時の救いのためだけの性行為に何も意味はなく、愛がなきゃダメですよ! と、 「若者よ。その行為、愛・ありますか?」 と、一歩踏み込んで揶揄ってきた映画だと思うんだよね。これを青春ホラーと言わず何と言う! 性春ホラー

イット・フォローズ(吹替版)

 

 

ゾンビーワールドへようこそ

あらすじ

高校生でボーイスカウトのベン、カーター、オギーはクラブで女の子と遊びたくて仕方がない。

ある日、キャンプを抜け出してパーティー会場へ行く途中、なんとゾンビ化した住人たちが襲ってきた!間一髪のところを美人ウエイトレスに助けられた3人は、ボーイスカウトで 身につけた様々なワザを駆使して、一致団結しようとするのだが…。NBC UEJより引用

実は俺、あんまりゾンビ映画って好きじゃないんだよね。ここまでホラー紹介しといてなんだよって話だけど、俺は血が苦手なんだ。ただそんな俺でもこの『ゾンビ―ワールドへようこそ』は大好き。下手したらゾンビモノでは一番かもしれない

 

笑いあり、涙あり、青春がここにある

高校生にもなってボーイスカウト? まずここがフックになる本作。ボーイスカウトなんて続けてたらモテねぇよ!女とヤレねぇよ!というリビドーが溢れた結果、友情が崩壊する。ここからが祭りの始まりだ。

たぶんジャンル的にはゾンビを題材とした青春映画になるんだろうね。ゾンビ騒動を通して、友情の大切さ、愛する人の為に尽力することの正義を描く。「ゾンビ」ってタイトルにあるだけで、観る気が失せる人もいるかもしれないけど、この映画は誰にでもお勧めできる(下ネタ苦手な清純黒髪女子は除く)。もちろんハラハラ要素もあるし、グロめのゾンビも本気で襲ってくるので、軽めのホラーとして皆で楽しめるだろう。てか超笑える

 

ゾンビはいつだって本気

「超笑える」と言った手前、若干言い辛いんだけど。ゾンビ映画としては超王道設定で、超しっかりしたゾンビが襲ってくる。何だろうね、メイクが良かったのかな。ただ、ここに手抜きが無いからこそ、俺は今ホラー映画のジャンルとしてコレを紹介したいと思ったし、ホラー要素がしっかりしていないと、ぶっちゃけ魅力が半減する。そんなバランス感覚が秀逸な作品と言える。

バストの大きな婦警ゾンビが襲ってきた時に、その豊満な中身がこぼれ、見とれる少年。早く逃げないとヤバい、そんなデッド・オア・ダイな状況でも巨乳ゾンビの胸を揉む。これを観た時に俺は「なんて…青春なんだ…」と感じたんだドン!

少年の心をいつまでも忘れたくない。
そんな風に思わせてくれる青春ホラー。

ゾンビーワールドへようこそ
※プライム会員は吹替版無料で観れるよ

 

 

IT/”それ”が見えたら、終わり。

あらすじ

静かな田舎町で児童失踪事件が相次いで起きていた。

内気な少年ビルの弟が、ある大雨の日に外出し、おびただしい血痕を残して姿を消した。自分を責め、悲しみにくれるビルの前に現れた「それ」を目撃して以来、ビルは「それ」の恐怖にとり憑かれてしまう。

不良少年たちからイジメの標的にされている子どもたちも、自分の部屋、学校、町の中など何かに恐怖を感じるたびに「それ」に遭遇していた。

「それ」の秘密を共有することとなったビルと仲間たちは、勇気を振り絞り、「それ」と立ち向かうことを決意するが……。映画.comより引用

魂沸き心弾むスティーブン・キングの代表作。しかも指揮を執るのは『MAMA』のアンディ・ムスキエティ監督。この時点で面白くないワケが無い。

 

ホラーとして超一級

もうホラー要素に関しては文句ひとつ無い気持ちよさ。単純にビビるシーン多すぎだし、ペニーワイズの人を煽る怖がらせ方も常軌を逸してて最高。巨大化するし、空飛ぶし、血がプッシャーする。住処的に水場での驚かしが多かったりと、ちょっと和製ホラーの怖がらせ方してくるところが日本で大ブレイクした一因かもしれない(ちょっと子供向けの怖がらせ方だけど)。逆にグロテスクな映像が観たい洋ホラー狂にとっては中途半端な感じなのかな? 知らんけど。コレが面白くないって人はスティーブン・キングの描いた本質を理解できてないと思う

 

ホラー×ジュブナイル冒険活劇

思春期の男子特有の下ネタやFワードはありつつも、それを感じさせない爽やかさ。大人たちに頼れない状況の中(というか、登場する大人が総じて病んでる)少年・少女だけで悪に立ち向かう様子は、『スタンド・バイ・ミー』とか『僕らの七日間戦争』の系譜を感じる。小さな街で、スクールカースト底辺が集まったルーザーズクラブの面々が成長し、友情を深め、恐怖に打ち勝つという図式は至高

それに忘れてはならない恋愛要素もしっかりと盛り込んでいるところが素晴らしい。そう、『学校の怪談』でも同じことを書いた気がするが、良質なホラーは怖がらせながらもしっかりと恋愛要素を盛り込んでくれる。紅一点のベバリーが設定年齢的にはちょっと大人っぽくて、それが淡く輝かしい三角関係を生んでドラマティックが止まらない。子供時代、『学校の怪談』ではなく本作に出会っていたら、きっと岡本綾ではなくベバリーに恋をしていた(原作の乱交シーン無くなってて良かった)。

[少年・少女の葛藤]→[悪との対立]→[子供から大人へ] という黄金図式を描いた本作は青春ホラー筆頭。迷ったらコレ

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。

 

 

まとめ

我ながら独善的な5作品セレクトになった感が否めないが、参考程度に見て頂けたのならありがたい。ホラーってさ、色んなアプローチの作品があるから。本当はジャンル分けすることすら難しい。あくまで”青春を感じる”ホラーを選んだという事で(保身)。

あと、タイトルに【小心者向け】と入れてる通り、普段ホラー観ない人でもこれらの作品は観れると思う。というのも、青春要素が増えることによって理不尽な恐怖は緩和されてる。総じてエモく、ホラー入門としても優秀な作品になっているので、興味ある人は視聴をお勧めする。ただし、『怪怪怪怪物!』以外な

良いホラー映画ライフを。

シャマランの系譜を継いだ『アス』は愛すべき変態ホラー映画

鬼才ジョーダン・ピール監督が2019年に発表した『アス』。そして映画ファンなら誰しもが注目した本作。観た結果を簡潔に述べると、同監督の『ゲット・アウト』を超えた的確さで人的恐怖を突いてくる秀作だった。

あらすじ

1986年の夏、アデレード・ウィルソンは両親とともにサンタクルーズにある行楽地を訪れる。ビーチに建てられたミラーハウスに迷い込んだアデレードは、そこで自分にそっくりな少女と出会う。ミラーハウスから戻った彼女はトラウマにより失語症となる。

現在、大人に成長したアデレードは失語症を克服し、夫と二人の子を持つ母になっている。ウィルソン一家はサンタクルーズにあるビーチハウスを訪れる。反対するアデレードを説得し、一家はビーチへ出かける。彼らはそこで友人のタイラー一家と落ち合う。長男ジェイソンはビーチで、腕から血を流しながら立っている男を見る。Wikipediaより引用

斜め後ろから迫るヌメっとした恐さ

アカデミー賞脚本賞獲った『ゲット・アウト』を観た時も思ったけどさ、ジョーダン・ピール監督はたぶん天才。この人の作品は面白い。何が面白いかって、完全に意識の外から金属バットで脳ミソ揺らしてくるところかな。ぬらりひょんでも防げない

中盤で物語が一気に”転”じる。導入部分は「おやおや、ホラーっぽいことやってくれるじゃない!」ってな感じで、ささやかな物理ダメージを負わせてくるんだけど。中盤からは全く別のダメージで恐怖にアプローチしてくる。というより、攻撃されたことに恐怖は感じても嫌悪感は感じないと言う方が近いかもしれない。バットで殴られたら「バット痛い!やめてよぉ!」ってなるじゃん? でもコンニャク巻き付けたハリセンでぶん殴られたら「??????…え?????え?怖…」てなるじゃん。それ(は?)

 

 

物語が進むほど疑問が増えていく

どんなサスペンスでも、観てると「あ~ハイハイ、こういう展開ね」ってある種の既視感を覚えるんだけど。この映画を観ている時、そんなこと思うことは無い。例えば、全く想像したことない事態が目の前で起こると人間は一瞬フリーズする。「あ…ふーん、へぇ~、ほぉーん」と頭の中が感嘆詞でいっぱいになった結果、処理落ちする。人間なんてそんなもんだ。俺も子供の頃、見知らぬババアの霊が笑いながら寝てる俺をのぞき込んできた時は「わり、俺死んだ」と冷静に何かに謝ったもんな

でも本作は、そんな謎の恐怖絨毯爆撃中でもしっかりとギャグを忘れてない。”Fuck Tha Police”という言葉が皮肉たっぷりにギャグとして用いられるが、このギャグの使いどころはここしかなかったと断言できる。というか、非常に不謹慎で血みどろなシーンでの現代的ギャグなので、笑えるのは狂人か映画玄人だがまさに「恐怖と笑いは表裏一体」これ誰の言葉だと思う? まぁ俺の言葉なんだけど。ちなみにこの監督、元コメディアンらしいんだよね。こういうところに作り手の人間的魅力って出るよな。伏字多い文章書く奴は俺の中で人間的魅力マイナス5ポイント。

 

 

最恐のアハ体験

本作に敬意を込めて、ネタバレが売りの俺だが今回はネタバレ無しでいこうと思う。だから、ここで語るのはこの作品の本質だ。

そもそもタイトル名の『Us』ってさ、”US”つまりアメリカ様そのものを現わしているって説も映画ファンの間では囁かれている。ここまで言えば何となく予想できると思うが、この映画の裏テーマは「持つ者と持たざる者」だ(と、俺は感じた)。

『ゲット・アウト』でも現代社会の闇を描いたってこともあるが、この監督の作品はどうしても”そういうことを暗示してるんだろうな”って目線で観てしまった(たぶん俺みたいに偏屈な考えを持たないで観たらもっと面白いぞ)。ある種ドッペンルゲンガーという化物を錯視させてくれたワケだけど、これは、一つ何かが違っていたら自分自身も貧困のドン底に居たかもしれないんですよ…ということを暗示している。反面、チャンスは絶対にあるという爆発的な閃きも与えてくれるから厄介。相反する絶望と希望(一番絶望)を同時に描くことで、自由の国アメリカを全力で皮肉った。これはそんな作品とも言える。



まとめ

最期までストーリーを観ると、全ての点が一本の線になって、ぐにゃんぐにゃん曲がりながら地平線の彼方に消えていく。ぶっとんだ解答の衝撃は、どこか『シックス・センス』のラストを想起させる。

シャマラン監督の系譜を継ぐ、間違いなく名作。

Netflixで『GREAT PRETENDER』観て将来の夢がコンフィデンスマンになった

”詐欺”を題材とした作品って初めてかも。初めて食べたジャンルの料理って、美味しいのかどうか、比較対象が無いと分からないじゃん。でも美味しい料理は問答無用で美味しい。この『Great Pretender』もそれ。

あらすじ

自称“日本一の詐欺師”こと枝村真人(エダマメ)は、年寄りや旅行客相手に詐欺を働いていた。

そんなある日、標的に選んだ外国人バックパッカーはまさかの同業者だった!

彼の名はローラン・ティエリー。エダマメを気に入ったローランは、ロサンゼルス・ハリウッドで“ある勝負”を提案する。公式サイト 第一話

7月からの+Ultraでの放送に先駆け、Netflixでの1~5話先行配信。ずっと気になってたから昼間っからソッコー観た。結果としては大正解な判断だったと言わざるを得ない。制作は『進撃の巨人』『鬼灯の冷徹』『魔法使いの嫁』『恋は雨上がりのように』のWIT STUDIO。ここ主導の作品はクオリティ高すぎて、本当に観ているだけで楽しい

 

 

騙しのレベルが規格外

常識に囚われない規模で考えられた詐欺の手口は、観ていても全く予測不可能。でも理解した時に「なるほどそういう事か!」ってなるのが気持ち良い。最初からここまで考えてたんだとしたらマジすごいなルパンかよ…と思ってたら、脚本家が古沢良太! 『リーガルハイ』『コンフィデンスマンJP』の立役者が話を考えてるならこのエンタメ具合も秒で納得

冒頭一話で、蛇口に取り付ける浄水器で詐欺を画策してたとは思えない額で指数関数的に取引内容がデカくなっていく様子は、全部観た後で思い出すと鼻で笑えるくらい子悪党。世界はもっと広くて、中でも自由と資本主義のアメリカ様はやっぱり偉大だなって思えてくる

 

 

人生という舞台の一流役者

俺はこのアニメを観て改めて、人生で賢く生きるには演技力が必要なんだなって実感した。生きていく上で、人と接する上で一番大事なことと言っても良い。この作品の登場人物はそれのプロフェッショナルで、最高に痛快なので、生きるのに困っている人は観て損は無い

作中には詐欺師の他に、マフィアも出て来るんだけどね。ロス市警が出てきたと思ったらFBIも出てきて最高にハイ。この鼠算式に登場人物が絡み合っていくのが良いんだよな~。ちなみにマフィア映画らしい格好良い銃撃戦もあれば、息子を大事にする屈強なマフィアの姿もしっかりと描かれるから、洋画好きは結構この時点でハマる。

あと主人公のエダマメが本当に良い奴なんだよ(いや詐欺師なんだけど)。母親を大事にする奴に悪い奴はいない作中に登場する詐欺師が敏腕すぎて、たぶん実力的には下から数えた方が早いんだけど、主人公としての器がしっかりと確立されてるのが超好印象。と言いつつも、俺の推しはもちろんシンシアさんだ。観れば分かる。

 

 

まとめ

何故こんなにも+Ultraは名作をやってくれるのか。何か大きな力が働いているのではとすら思えて来る。てか、何で俺こんなに絵が好きなんだろう…と思っていま調べてたんだけどさ、わわわわわわわわわわわわわわわわわわわわ!キャラデザが! 貞本義行 様やないけ!マジか。ぜんぜん意識しないで見てた。いや、むしろ何で俺気付かなかった? 馬鹿か? 知ってから観たら絶対にそうなのに。「このキャラの感じ、懐かしいなぁ~」とか独り言ほざいてた自分の目ん玉に液晶を擦り付けてやりたい。

6話以降も絶対視聴が決定しました。

ロサンゼルスに乾杯。

密かにファンを増やす中国産アニメ『シザーセブン』を、もう観たか?

中国で大人気のWebアニメがNetflixで観れることはご存じだろうか? 『シザーセブン』は一話15分程度の短編アニメながら、ツボを押さえたストーリーゆえ、日本のアニメファンにも響くのは間違いない。

簡単なあらすじ

主人公のセブンは記憶を失った少年。分かっている事は、ハサミを意のままに操ることが出来ること。言葉を話す青い鶏と一緒に失った記憶を取り戻すために殺し屋稼業を始める。

普段は美容室で仕事をしながら、殺し屋としての動き始めるセブン。でも世の中には強い奴が幾らでもいて、失敗続き。

殺し屋をとして人々と接していく中で、絆が国の危機に一つに集まる時、失われた記憶が取り戻される。基本一話完結のギャグ有り王道ストーリー。

基本的にギャグを主軸に進むストーリーながら、次第に過去が明らかになっていって気が付いたら繋がってる、『銀魂』みたいな感じ。シーズン2まで出てるんだけどね。シーズン1のメインストーリーは10話、番外編が4話の全14話。メインストーリーのラスト3話くらいは少年漫画風のアツい展開だから非常に楽しく観れる。

 

 

C.V. ジャングルポケット斎藤

主人公セブンの声が棒読みと言われれば棒読み。でもその間抜けさがすごく合っていると言えば合っている(ような気がしてくる)。髪を結わえてる時と解いた時(と言うよりも記憶の有無)で、キャラが全く違う。この絶妙な違いを演じたと言えば演じきったのは中々な功績だと思う。

他のキャラに関しても敢えて間の抜けた演技をしているような感じで、全体的に統一感のある演技だったのも、ジャングルポケット斎藤氏の演技を上手く調和していた気がする。

 

 

脚本が予想以上にエンタメしてる

セブンの特技として、ハサミを操る他に変化の術(忍術的な何か)が使える設定なんだけど。これが物語を面白くしてる。殺し屋として色んな所に潜入する時、様々なモノに変化してターゲットに近づく。ある時は石、ある時はココナッツ、弱った魚とか。※ちなみに殺し屋ランクは17369位記憶を無くす前は最強格。

基本的には殺しの為にこの変化を使用していくが、問題解決に適した能力のために依頼内容が万事屋じみてくる。なお、上の画像はシーズン2の戦闘中に猫が犬の歌で感傷的になっている画像だからセブンとは全く関係ない。

 

みんな大好きシーズン1-6話

「脚本が良いなぁ」と思ったエピソードの代表として真っ先に思い浮かぶのが、シーズン1-6話。ある日、少女の殺しを請け負ったセブンが殺しに赴くと「死ぬ前にやりたい事がある」とお願いを請ける。少女の願いはコーラ一気飲み・看護婦さんに注射、元カレに金的攻撃など、素朴な願い。これらを変身能力で解決していくセブン。そして最後の願いが「自分を殺して欲しい」っていう事で、実は少女自身の抹殺を依頼していたことが明らかになるんだけど。結局セブンは今回も殺しの依頼を達成せずに終わることになる。そう完全に『銀魂』のマジメ回。こういう王道エピソードを真面目に演出できる作品は良作。

 


ちなみにシーズン2ではこの少女の病気の由来が明らかになる哀しみのエピソードがあるので必見。というかこの娘めっちゃ可愛い

 

終盤の盛り上がりが異常

シーズン1ラスト、襲ってくる大国の王子。今まで出会った人(殺せなかった人達含む)と協力して立ち向かうも太刀打ちできず、失われた本来の力が目覚める。まさに王道! 正直、ラスト3話くらいは一気に観てしまうクオリティで、ずっと逆作画崩壊してる感じだった。分かりやすく言うと『家庭教師ヒットマン リボーン』の骸戦くらいのアツさはあった。

※『ニンジャスレイヤー』・「パンティ&ストッキング」みたいに、頭身が8になることは決してないから。勘違いは厳禁。でもめっちゃヌルヌル動くから良いよ。

 

 

まとめ

冷酷だった過去、記憶を失って人々と接していく中で目覚める人情、リズミカルなギャグ、と秀逸すぎる脚本。これは観る意味あるなぁと俺は感じたね。ちなみに番外編では主要キャラの過去編紹介ストーリーで、それがシーズン2にも繋がってたりするから全部見た方が楽しめる。

噂ではシーズン3も中国では放送しているとか…?

Netflixで観れるようになればすぐに観ようと思う。

『流転の地球』は日本が完全に中国に負けていることを如実に示していた

SFファンにとって、Netflixで後悔された『流転の地球』は衝撃でしかなかった。ハリウッドにも負けず劣らずのクオリティ・圧倒的な世界観の本作は、中国という国の勢いを現わしていると言っても過言ではない。

あらすじ

地球各地で異常気象や天変地異が起こるなか、その原因は、太陽が老化・膨張し赤色巨星化をたどるためと判明。太陽系そのものが300年ほどで消滅する危機に、世界の国々は団結して「地球連合政府」を設立。

政府は地球を太陽系外に脱出させ、2500年かけて4.2光年離れた別の星系軌道に載せる「流転の地球」計画を決定。

各地に巨大な「地球エンジン」1万基を建設し、太陽系脱出の推力とした。また連合政府は、それと並行して30年かけて巨大な国際宇宙ステーションを建設。ステーションは地球から10万キロの距離を保ち計画のナビゲートを行うこととした。

地球が太陽系から離れたことで荒廃した地表に住めなくなった人々は、政府が「地球エンジン」の地下に建設した都市に暮らし、2500年後の新天地を待ち望むのであった。流転の地球-Wikipedia


本当の意味で「宇宙船地球号」

この映画を観ると、まずスケールの大きさに圧倒される。「え、これハリウッド映画だったっけ?」と思った俺は一回視聴止めてググったくらい。こう思った要因は設定の壮大さにある。

前述のあらすじにもある通り、「地球エンジン」と呼ばれる推力によって太陽系からの脱出を試みるその様は、想像よりも圧倒される。いやいや、地球の自転止めたら停止時のGで人類吹っ飛ぶやろ…と突っ込みを入れたくなるのがSFファンの性なのだが、本作はこの点も見事に描いている。ギブスンもにっこり

重核融合エンジンは石を燃料として推進力を得ているというのだが(そんなに石あるか?とも思ったが、地殻削ってるとしたらまぁイケる)、基本的に人間は地表ではこの地球エンジンのメンテナンスと燃料集めに追われている。その地表での様子が完全に氷河期。そうだね。分かってる。自転止めただけでも太陽に背中向けた側は生命存続不可能の氷の世界になるからな(北極と南極が繋がるイメージ)。だから、本作内での人類は地下に生活拠点を移している。この無理のないSF設定には俺もにっこり

この宇宙船地球号が、予期せぬ事故によって木星の方にハンドル切っちゃって、ぶつかる死ぬどうしようってのがメイン危機のストーリー。

 

 

アメリカ様に無いアジアの価値観

ハリウッド本家の終末系ってさ、ある種ステレオタイプ化してると俺は思うんだよ。「人類滅ぶってよ!」「マジかよ!何とかしようぜ!家族を死なせる訳にはいかない!」「立ち上がれ人類ウォオオ独立記念日じゃァアア」 ←ここまでテンプレ。いや、それが王道で観ててて最高に気持ち良いんだけどさ。

でも『流転の地球』では違った。一言で言えば”東洋の価値観で観る世界の終末”だ。俺たち日本人も、古くから盛者必衰の理を”あはれ”として受け入れてきたDNAが入ってるから何となく想像できると思うんだけど。「地球終わるってよ」「マジかよどうするん?」「死に方とか考えた方が良いかなぁ」「家族が満足して死ねるならそれで良い」「命日に寝る最高のベッド買おうぜ」 と言った人々が終末が近づくにつれて出てくる。”どう生きるか”よりも”どう生きたか”の方に先に視点を合わせる。ちなみに上の会話例は完全に俺の妄想であって、作中ではもっと切迫した様子の中国人が”いとをかし”の精神で絶滅に向き合ってるから安心してくれ

アジア人って、歴史柄なのか土地への執着が強い気がするのは俺だけ? あと正常性バイアスも一定数機能するよね。皆焦ってるけど、もう諦めて楽しもうぜ。あと最後は家で死にたい、的な。対して西洋文化は、一致団結すれば怖くない思想が強い。同じ終末系というジャンルでも、この違いを見事に表現したのが本作だということ。この東洋的思想が盛り上がりポイントに上手く組み込まれてるのも◎。

流転の地球 ハン・ドゥオドゥオ
ディフォルメフィギュア

まとめ

原作者のケン・リュウ氏が明示したアジア的思想をこのクオリティで映像化できたのは今の時代とても大きい。確立された正義に正解はなく、死生観は人類それぞれということを世界に発信できた。

また、同時にこの価値観を発信したのが日本ではなく中国であるというところも大きなマークポイント(ハイここ、テスト出まーす)。本来であれば日本こそがその価値を一番理解しているハズなのに、成長しつづける中国が経済力と倫理観を示している本作を観た時に、俺はもう「日本…完全に負けちまってるな…」と思った。”発展途上国は国民のモラルが低い”と言われていた中国がここまで精神的成長を魅せつける作品を作ったとなると、立場は完全に逆転し、逆に日本人が大事にしなくなってきたものを考える機会になってきているのかもしれないとすら思える。

日本のSFにも期待したい。

酒を飲んだテンションで『波よ聞いてくれ』の女性陣について書いたから読んでくれ

2020年4月からアニメがスタートし、その魅力を地上波デジタルの波に乗せて拡散している『波よ聞いてくれ』。この面白さ、本当にもっと多くの人に届けたい。

あらすじ

舞台は北海道サッポロ。主人公の鼓田ミナレは酒場で知り合ったラジオ局員にグチまじりに失恋トークを披露するが、翌日に録音されていたトークがラジオの生放送で流されてしまう。

激高したミナレはラジオ局に突撃するも、ディレクターの口車に乗せられアドリブで自身の恋愛観を叫ぶハメに。

この縁でラジオDJデビューしたミナレを中心に、個性あふれる面々の人生が激しく動き出す。

さあさあ、波よ聞いてくれ!!!引用元:原作1話あらすじ

黙ってればスタイル抜群の金髪美女なのに、口と酒グセの悪さからThe 残念な美人ことミナレ。いきなりラジオパーソナリティとして活躍する(The ラジオ局遊撃隊の)トークスキルとその発想力は素人離れしてて本当に奇抜。ちなみに声優の杉山里穂はリアル北海道出身で今回が主演デビューのガチ美人

舞台となる北海道のローカル感。リアリティ味のあるギャグに全振りしたストーリーだけど、ラジオの収録現場・風景を事細かに描くニッチさは漫画に新しい波を生んだ。こんな人達が実際にいたら面白いなぁと思わずにはいられない、ある種”働く女の子シリーズ”の大人(熟女)版。 [補足: 新宿三丁目にあるスープカレー屋さん「東京ドミニカ」がミナレの働くVoyagerのモデルになっている(北海道じゃない)。]

波よ聞いてくれ(1)
(アフタヌーンコミックス)

ヤバくて良いオンナしかいない

作者:沙村広明さんの、『無限の住人』の頃からの悪癖特徴なんだけど。登場する女性がことごとくヤバい。主人公のミナレのヤバさと魅力はアニメを観れば開始10秒で実感できる。でも他の女性陣も総じて性格・性癖ともに歪みきった女性だということを忘れてはならない。この作品の良さは女性陣にある。原作読者の俺がその魅力の一端を紹介しよう。

 

 

 

鼓田ミナレ

推しも推されぬ主人公。生き意地の悪い女日本代表と言えるその思考回路には毎話感服する。ダメ男を好きになる母性と、抜群の行動力がフュージョンして人生がゴテンクス(失敗)。また、恰幅の良い男が性的に好みで、宗教団体に拉致監禁された時に美少年をハニートラップ役にあてがわれても肉体関係を拒絶する意志の強さを持つ。得意技はフランケンシュタイナー。黙ってれば美人。

 

 

 

南波瑞穂

家賃の払えなくなったミナレを家に泊めてあげるだけでなく、「いつまでもここに居れば良いじゃないですか」と甘言を囁く天使。しかしてその実態は構成作家(官能小説家)の久連木に高校時代から想いを寄せて同じ職場に就職を果たす対戦車地雷。現実にいたら一番可愛いけど一番地雷。また、精神的に思い詰めると包丁を備前長船なみの切れ味になるまで研ぐ(地雷)。でももし付き合ってたら年内にプロポーズする。普通に可愛い女性。

 

 

 

城華マキエ

交通事故を起こした兄の責任を取ってVoyagerで無償労働することになる黒髪の麗人。過保護な兄の束縛から逃れることができ、人生の喜びを見出だしつつあるが、実は卓越したラジオはがき職人。この綺麗な容姿で「網走刑務所の囚人の作った家具だけでトータルコーディネート」「膣をどこかに忘れてきた」というネタを投稿する類まれなるセンスを有する引き籠り。『無限の住人』に登場した作中最強の剣客ではない。

 

 

 

芽代まどか

ミナレの甲高い声色とは違い、人を安心させるリアジェリング・ウィスパーボイスの持ち主。アニメではカット? されてたけど、ミナレに対して対抗心のような興味を示しまくって公園のベンチで日本酒飲みを強制してくる可愛いババァ。突然パンチの聞いた酔いどれ説教されたミナレも思わず幣舞橋の銅像」と貧乳具合をディスるも、翌日にはこれを自虐ネタとして口撃してくるあたり百戦錬磨の性格悪さ。正直アニメではその魅力はまだ一切魅せれてない(二期フラグ?)黙ってればスレンダー美人。

 

 

まとめ

基本的に皆、黙ってれば美人なんだよ。というか、現実でも結構そうだよ。女性というものは可愛い存在だ。でも、男が真に惚れるのはそこじゃないからな。結婚という悪徳契約交わしてでも一緒に居たいと思える女性は、総じて可愛さ+αを持っているワケで。だからこそ一緒に居たくなる。この作品に出てくる女性キャラは、皆その辺を兼ね備えていると言っても良いような気がしてきたと思ったら酩酊して頭が痛いからたぶん酒のせいで思考回路がまとまってないんだろう。忘れて

ちなみに、アニメでどこまでやるのかってのは今後この作品に大きく関わってくると思う。ぶっちゃけ宗教団体編は「ラジオ要素どこいった!?」ってなるけど、一番面白いからやって欲しいな。(でも尺的に無理だな)。山中で消えた律子(天井裏で死んでなかった人)も出てくるし。官能小説家・ミナレ・瑞穂の大冒険でようやく一区切りする感あるしな。あとこのエピソードの終わり方が神

アニメが面白いと思った人は原作もぜひ。

悪魔×悪霊×化物が襲ってきた『死霊館 エンフィールド事件』が実話な件

『死霊館』シリーズが好き過ぎる。”史上最長に続いたポルターガイスト現象”と社会的に記録されている「エンフィールド事件」において、ウォーレン夫妻が立ち向かった悪魔・悪霊・化物。コレが実話をもとに作られていると言うのがまた、好き過ぎる。

あらすじ

ロンドン北部に位置するエンフィールドで、4人の子供とシングルマザーの家族は、正体不明の音やひとりでに動く家具が襲ってくるなど説明のつかない数々の現象に悩まされていた。

助けを求められた心霊研究家のウォーレン夫妻(パトリック・ウィルソン、ヴェラ・ファーミガ)は、一家を苦しめる恐怖の元凶を探るため彼らの家に向かう。

幾多の事件を解決に導いた夫妻ですら、その家の邪悪な闇に危機感を抱き……。シネマトゥデイ

『死霊館』シリーズ時系列

①『死霊館のシスター』(2018)
②『アナベル 死霊人形の誕生』(2017)
③『アナベル 死霊館の人形』(2015)
④『アナベル 死霊博物館』(2019)
⑤『死霊館』(2013)
⑥『ラ・ヨローナ 泣く女』(2019)
⑦『死霊館 エンフィールド事件』(2016)

上記の通り、実は映画が発表されたのはシリーズ3番目なんだけど、実際に怪現象が起こった時代は一番最近なんだよ。舞台である1977年~1979年、イギリスのエンフィールドで起こった一連の事件は怪奇現象の記録が山のように残ってる。メディアもこぞって問題を取り上げて(一時は子供のイタズラとして総スカン食らったが)、結果的に、ヤバすぎる霊障の数々に科学的な説明が出来な過ぎて社会的に認められたという実話。これが100年前とか1000年前とか現実味の無い遥か昔じゃなくて、極々最近の事ってところに夢がある。

死霊館 エンフィールド事件(吹替版)

 

悪魔×悪霊×化物

悪魔「ヴァラク」

『死霊館のシスター』(原題:THE NUM)でスピンオフ化もされた驚異のシスター(悪魔)、霊圧がグリムジョー位ある。この作品に至っては『サイレント・ヒル』なみに恐怖が襲ってきて「としまえん」のお化け屋敷くらい小便チビりそうになるから是非とも恋人と観て欲しい。

死霊館のシスター(吹替版)

 

悪霊「ビル・ウィルキンス」

被害にあったハーパー家の次女に憑依して、数々の記録媒体に残った伝説的悪霊。実際の記録ではビルだけじゃなくて老女や幼い女の子の霊も目撃されてるけど、一番メディア受けに成功したのがビルおじいちゃん。作中ではヴァラクの傀儡で、実はそんなに悪い奴じゃなかったんじゃないかと仄めかされている。実は一番被害者っぽい。

 

化物「へそ曲がり男」

マザーグースの一節に登場する”背中曲がり男”こと「crooked man」がモデルの化物。作中に登場する3体の中では一番実害が無い(犬に化けて家宅侵入・刺し殺そうとしてくる位)。また、スピンオフ化が決定しており、ファンが多いのも頷ける謎の妖艶さを持っている。俺もぬいぐるみとか欲しい。彼に関しては偶々居合わせたお祭りに参加した感が強いが、ヴァラクに操られてなかったとしたら、それはそれで不思議で怖い存在。

 

次女の特異さが際立つ

なんと同時に3体も襲ってきた「エンフィールド事件」。実際に憑依されたり、触媒になったのはほぼ次女ちゃんだけなんだけど。噂では高位の霊力持ちだったとか…。『ブリーチ』で言うところの織姫。だからこそこんなにたくさん襲ってきたってワケなんだよ。今ごろ三天結盾とか使えるようになってるんだろうな


家族愛こそが闇に対抗する武器

例によって本作でも、悪霊に対抗するには”愛情”が至高の武器という演出がされている。これだから「死霊館」シリーズは止められない。涙と涎が止まらない。勇気がなく、いつも母親に怒られてばかりの末っ子が「コレ食べて元気出して」と心霊現象に意気消沈している母親を気遣う場面。これには辛い中でも、忘れてはいけない大事なものが描かれていた。ジェームズ・ワン監督のホラーに外れ無し

 

まとめ

実話を基にした話っていうのは、得てして地味なモノになりがちなんだけど。『死霊館 エンフィールド事件』はエンターテイメント作品として抜群に良く出来ている。

しかも、ホラーファンにとってこの作品が事実を基にして作られていることは、大きな意味を持ってくる。実際の所どのように除霊が行われたかは定かではないが、「事実は小説より奇なり」という言葉の通りこんなに綺麗にまとまっていなかったのは確かだろう。ただ、2年以上にも及ぶ怪奇現象・メディアバッシングに対して、親子の愛無くしては乗り越えられなかったのは想像に難くない。そこまで想像させることが出来るのはジェームズ・ワン以外には有り得ないと俺は思う。

これからも、愛情の尊さを魅せ続けて欲しい。

鬱上級者がアニメ上級者に観て欲しい鬱アニメ【おすすめ5選/上級者向け】

鬱経験者の俺が自信を持ってオススメする鬱アニメ。

はじめに言っておこう。この記事では『School Days』とか『SHUFFLE!』は取り上げない。一世を風靡したこれらの作品は、俺の中で観ていて当たり前のバイブルだからだ(同じ理由で『魔法少女まどか☆マギカ』『がっこうぐらし!』等も無し)。この記事では、アニメ好きでも意外と観ていない作品をフィーチャーしたい。

『なるたる』(2003)

あらすじ

ある日、祖父母の実家に遊びに来ていた玉依シイナがヒトデのような謎の生き物「ホシ丸」に出会い、またそれがきっかけで「竜の子」、「竜骸」などと呼ばれる謎の存在、そしてそれらと「リンク」することで竜の子たちを操るさまざまな子供たちと出会い、交流を深め、時には戦う事になりながらも成長していくオムニバス形式のファンタジー作品。

ひらがな四文字のアニメは萌え豚御用達だと誰が決めた? 『ぼくらの』作者である鬼頭莫宏と言えば大まかな内容は分かるハズ。作者自身が「当時病んでおり、無意識的に精神状態が反映された」と語る通り、生粋の鬱作品。より社会に対しての怨恨が濃かった時期の作品と言い換えても良い。

軽~いバトル中心のストーリーかと思いきや。物語の途中から少年少女の精神状態・思春期に抱える人間関係の悩みが主題となってくる。その歪曲したジュブナイルに共感したら最後、抜け出せない鬱ラッシュ・マウンテンに乗車完了。シートベルトの準備はOK? むしろこの辺で心にダメージ負うくらいならこの先観ることは不可能なので、途中乗車するなら4話~5話がベストかもしれない。ぜひ心と相談して観てくれ。

 

内容とはかけ離れた陽気OP

このOPが醜悪 !  何故にこんなにも本編とはかけ離れた映像にしたのかは不明。一見すると日常系萌えアニメに分類されるこのOP映像と、日常の中の希望の存在を仄めかす歌詞は多くの視聴者を騙した(ちなみにフルで聴くとちゃんとハートフルボッコ歌詞してる)。というかそもそもキッズステーションで放送すな

TBSの地上波放送では、12話の一部が倫理委員会によりカットされるという鬱アニメ認定試験も無事突破。間違いない鬱作品と言える。ちなみに、原作はアニメよりも細かくストーリー回収してくれてるからより深部へ挑戦したい人は原作を読むことをオススメする(責任は取らない)。

なるたる(1) (アフタヌーンコミックス)


『ベルセルク』(2016)

あらすじ

“自分の国を持つ”という大きな野望を持つグリフィスは絶対的な力を持つ「ゴッドハンド」の五人目の守護天使となることと引き換えに自分が最も大切にしていた者たちを生贄に奉げた。

生贄の儀式の生き残りでありグリフィスの片腕であったガッツは身の丈を超える巨大な剣を持つ「黒い剣士」となり、仲間を裏切って無残に殺したグリフィスへの復讐のために世界を旅する。

日本が誇るダークファンタジーの巨塔。海外からの評価の方が高くて、俺の周りの漫画好き・アニメ好きでも意外と観てない作品の筆頭。原作40巻くらいしか出てないのにね。まぁ、内容が濃すぎて一人の男の鬱人生体感できるからな

中世ヨーロッパ風の”剣と魔法の世界”の王道を素で行くと聞けば、多少なりとも興味を持ってくれる人はいるかもしれない。だが、そんな軽い気持ちで観ると熱いフライパンで焼かれる冷凍ステーキのように苦しむことになる。

 

親友全員と恋人を同時に失う拷問展開

人理を超えた存在になれる券が当たったから人生の友全員生贄に捧げるでござる!という人間の業を描く胸糞王道ストーリー(でも、辛かったんだもんな!そりゃ人間辞めたくなるわという同情要素もある)。しかも特筆すべきはその人生の最底辺部分が描かれるのは作中中盤の過去編という残酷さ。こんなこと抱えて生きてたのかよ…ってなる。

真のダークファンタジーにおける悪魔どもは相手が男だろうが犯すし四肢でキャッチボールしながら大切な人を嬲る。信じ切っていた親友に裏切られ、悪魔たちに心と身体を凌辱される仲間を見ながら、なお生き続けた男の物語を観れば鬱間違いなし。例の如く、原作の方が数倍精神病めるし、辛すぎて人間辞めたくなるから読んで欲しい(絵の描き込み具合が日本トップレベル)。ハリーポッター好きな人とか、百味ビーンズの絶望味だと思えばちょっとワクワクするのでは?(しない)

ベルセルク 1 (ヤングアニマルコミックス)

 

『最終兵器彼女』(2000)

あらすじ

北海道の何も無い、でも坂ばかり多い街に住んでいた僕(シュウジ)。

ある日靴箱の中に手紙が入っていた。ちせからの手紙。僕らは、彼氏と彼女になった。 ちせと本当の彼氏、彼女になってからしばらくしたある日、町でタケやノリと買い物をしていたらいきなり僕達の日常が終わった。

そこで見てしまった、彼女。ちせ。

僕達は、恋していく。

ごめん、これは流石に有名すぎたかも。でも案外ちゃんと観てる人少なくない? アニヲタなんですぅ~って言ってる奴だいたいこれ観てなくない? にわか判別アニメと言っても良いかもしれん。

戦争に巻き込まれて無双していく物語は数あれど、最終兵器になる事の悲しさをここまでリアルに描写したのは本作くらい。ただの一般人がいきなり最終兵器になってジェノサイドするが、「それでも恋がしたい」という万国共通時代不問の乙女の心情が見事に北海道の地を舞台に顕現。ちなみに実写版、あれはダメだ忘れろ。

 

愛が純粋だからこそ病む

これたぶん、キャラの年齢が大人だと全く違う作品になったと思うんだ。高校生の恋愛をしながらの兵器生活だからこそ、日常の素晴らしさと憧れが際立つ。俺がこれを観たのも高校生だったからかな…「この作品観て一緒に泣けるような子と結婚したいな…」って思った記憶がある。話が遥か過去に飛躍したが、そのくらいリアルな心情が描かれてた。

原作は原作で、儚い気持ちを上手に表現している点が◎。

最終兵器彼女全7巻 完結セット (ビッグコミックス)

 

『今、そこにいる僕』(1999)

あらすじ

剣道場から帰る道の途中でシュウは、廃工場の一番高いエントツのてっぺんで佇んでいる見知らぬ少女のララ・ルゥを見つけた。

少女に興味を持って話しかけるが、少女は無言で夕日を見つめている。そんなとき突然、空間の彼方から彼女を狙ってやってきた奇怪なロボットの集団が迫ってきた。

ララ・ルゥを助けようとしたシュウはエントツから真ッ逆様に落ちてしまい、目覚めたらヘリウッドという知らない世界に連れてこられていた。

ちょっとジブリっぽい絵柄で可愛らしいキャラが特徴(というかだいたい他の作品もそうだけど)。この絵柄で、王道のボーイ・ミーツ・ガールを描く少年少女の成長物語…かと思いきや、ひょんなことから異世界に連れてこられたヒロインが強姦される(しかも妊娠する)という鬱病発症特効薬。


戦争×終末×絶望のトリプルコラボ

異世界で王女を助けるために、兵隊として奮闘する少年の頑張りをひたすらに見守るというだけでも十分鬱要素があったのだが。物語終盤にかけての報われなさが異常。なんでこんな子供たちがこんな目に…という理不尽さで、怒涛の如く畳みかけてくる哀しみは最終回でピークを極め、「いつか…また一緒に夕陽みようね?」というララ・ルゥの最期の虚無感でご飯3杯は食べれるくらい、心にぽっかり穴が空く

今、そこにいる僕

 

 

『TEXHNOLYZE』(2013)

あらすじ

絶望と暴力に支配され荒廃した都市・流9洲(ルクス)。地下にあるこの街は、地上との通行を遮断され、吹き溜まりのような場所と化すも特権階級である“クラース”とギャング的な自警団である“オルガノ”によりかろうじて維持されていた。

ある日、この地に一人の男が地上から通風孔を通って降りてきた。男の名は吉井。ある野望を遂行すべく降り立ったこの男を迎えるのは、賭けボクシングで生計を立てるも瀕死の重傷を負った少年・櫟士、近い未来を見ることの出来る少女・蘭、街の声を聞くことの出来るオルガノの長・大西京呉、そして未来の義肢である「テクノライズ」の技術に魅せられたクラースの科学者・ドク。

この男の来訪により、やがて流9洲は街全体を巻き込んだ事件へと発展していく。

最後は『TEXHNOLYZE』(テクノライズ)。「鬱アニメを語る上で、この作品は絶対に外せないでしょ!」っていう超名作。台詞という台詞が無い第一話は当時ネットで話題になった本当の問題作でもある。

安易な気持ちで観ると絶対に途中で挫折するから、本当に鬱になるアニメを探してるっていう人だけ是非ともチェックして欲しい。話自体がかなり面白い(面白いとは言ってない)し、物語終盤の盛り上がりというか加速具合は比肩する作品無し(かなり人を選ぶ)。「は?何このアニメ?」という感想を抱くことになるが、一気に観ることでその疑問はなんとなく解消されていく

 

心・身・誠・救・済!!!

まずOPがインストゥルメンタル。あぁ…これヤバいやつや…感満載の開幕に心をやられている暇はない、本当の絶望は遥か彼方。と言っても、これは俺の感想だから。嵌る人は本当に自分の人生の1ピースかのようにド嵌りするし、1話からメチャクチャ面白いっていう視聴者もいる(ピカソの生まれ変わりとかですかね)

肝心の物語はSF任侠モノ…って言うのが一番近いのかな。進化した人間が幸せになる訳ではなく、最期に向かう退廃した世界で、どう人間は生きるのかっていう事を考えさせられる作品だった。見せかけのカッコ良さや可愛さ、そんなものどうだってよくなる。完全に希望の立たれたラストシーンで逆に希望すら見えてくる気がした俺は少し重篤な気すらした。何を言っているか分からないと思うが観れば分かる。それほどに深い。繰り返しになるが、「これが自分の人生に足りなかったアニメだ」って人、本当にいるからな

TEXHNOLYZE 全8巻セット

まとめ

以上、鬱だった俺も認めるアニメ上級者にこそ観て欲しい5作品でした。むしろ、この5作品観たら鬱アニメマイスター名乗って良いと思う。

「意外と観られてない」って言っても観てる人は観てるし、何ならこの記事を探し出すくらい鬱への探求心を持っている人は既に全部視聴済みかもしれない。そんな人は、『ベルセルク』以外は結構昔の作品が多いし、懐かしいなぁと思いながら笑ってくれれば嬉しい(笑えるくらい心が壊れているなら)。

観てない作品が一つでもあった人は、死にそうに辛い境遇の時に視聴して欲しい。より作品にのめり込めるし、良くも悪くも人生を変えてくれる作品になると思う。

大切なことは観て何を想うかだ。人はどれだけ絶望の中にいたとしても、希望を見出だすと俺は信じています。

俺は人生で一番面白かったアニメ映画と問われたら『REDLINE』と答える

人生において、傑作と言うべきアニメに出会うことが稀にある。
俺にとって、その代表作品が『REDLINE』ってワケだ。

御所アニメーター小池健・川尻善昭・大平晋也、当時ガイナックスに所属していた大平晋也・すしお、伝説級のクリエーターが集ってCG無しの手書き と言えば、アニメ文化に造詣の深い者なら察するだろう。

2010年に公開された本作。10年を経てもなお衰えず「笑い120%、涙120%、熱量1200%」で輝く魅力を、俺なりに紹介したい。

あらすじ

物語の舞台は、地球から2万1千光年離れたM3星雲という星系。 そこでは一時に数多くの知的生命が誕生し、ほぼ惑星一つ単位で文明が生まれた。 が、違う文化を持つ種族の間では摩擦が起き、紛争が起こり、やがて星雲全体を巻き込む宇宙戦争へと発展してしまう。

2度に渡る大戦が終わりひとまず宇宙平和条約が結ばれたものの、経済は泥沼化し、一部の星では軍事目的の技術研究も未だに行なわれており、現代の地球と同じ平穏と緊張と閉塞感が背中合わせにある時代が訪れていた。

そんな中、2度の大戦をまたいで尚絶大な人気を得て興行されている娯楽があった。 宇宙最速を決める5年に一度のカーレースの祭典、”REDLINEグランプリ”である。

電動ゴマと呼ばれる反重力エンジンを積んだエアカーが主流になりつつあるこの時代に、 敢えて旧来の燃料エンジンを積んだ四輪車で走るというマニアックさと、エンジンに関する事以外は禁止事項が無くどれだけ大きかろうが武器を積もうが何でもアリという過激さと能天気さで人気を博しているガチンコバトルレースだ。

そのREDLINEも8回目を数え、犬型獣人族の住むドロシー星にてREDLINE参加権残り一枠を賭けた最終予選レース、YELLOWLINEドロシー星大会が行なわれる。 まるで重戦車か戦闘機、あるいはその両方を足した様な姿の車達が激戦を繰り広げる中、一台だけただの車同然と言えるマシンが走っている。

マシンの名は”トランザム”。

それを駆るレーサーの名は、
“スゴク優しい男、JP”。

REDLINE
コレクターズ・エディション [Blu-ray]

 

木村拓哉&蒼井優のW主演

神キャスティング、この一言に尽きる。

というかコレ社会的に認知されてなさ過ぎない? 俺も当時、吉祥寺のバウスシアターに偶然迷い込んで観るまで知らなかったぞ。キムタクに関しては2004年の『ハウルの動く城』以降、沈黙を破ってのまさかの出演。つまり、ジブリの次に選ばれたのがこの作品なんだよ。蒼井優も『鉄コン筋クリート』から4年ぶりの声優挑戦。演技に関しても全く問題ない、むしろ超ハマり役

 

「すごく優しい男」
JP(C.V.木村拓哉)

本作の主人公。

本名:ジョシュア=パンクヘッド。鬼盛りリーゼントに革ジャンという厳つい格好でキメているが、中身はレースを愛する純朴な青年。

少年時代に一目惚れした少女ソノシーを今でも想い続けているウルトラ純情野郎。

ミサイルが挨拶みたいな殺人レースにおいて、武器0速度100にカスタマイズした愛車のドライビングテクニックだけで勝負するという、頭のネジが飛んだイケメンリーゼント。相棒のメカニック・フリスビー(C.V.浅野忠信!)の身代わりで前科持ちになり、保釈金返済のために八百長試合を続けるデススパイラルな人生を送る。中々に可哀想な境遇。

作中でもこのフリスビー(C.V.浅野忠信!!)との友情がとても熱い。REDLINE本戦ではドライバー・メカニック・ジャンク屋の三位一体ゴールデントリオで宇宙のキチガイ猛者どもと凌ぎを削ることになるが、走りながらも互いを信じあうその姿は『弱虫ペダル』における福富と荒北の名コンビを彷彿とさせた(主に俺に)。直前まで八百長する気満々だったのに、夢の舞台で走っているJPを観ているうちに「俺は最後までレースが観たいんです!」って、ヤクザ相手にメンチ切るフリスビーには落涙必至

 

「チェリーボーイハンター」
ソノシー・マクラーレン(C.V.蒼井優)

本作のヒロイン。

JPの少年時代からの片想いの相手であり、同時にREDLINE優勝を目指してしのぎを削るライバルでもある。

人生の全てをレースに捧げている一本気でクールな女性であり、大のエンジンオタク。恋愛関係にはさっぱり興味が無く、告って来た相手を片っ端からフる様から「チェリーボーイハンター」と勝手にあだ名が付けられてしまった。

REDLINE出場が夢で、そのために全てを犠牲にしてきたという正真正銘の女性車ヲタ(めちゃくちゃ可愛い)。基本的に純情なので、ロマンティックに攻めてくるJPに対しては非常に好意的だが、昔出会っていることを覚えてないあたり生来の小悪魔とも言える。

また、負けん気が強いところも加点ポイント。REDLINE本戦では初っ端にミサイル爆撃かましてきたリンチマンに対してレース中盤で水没させるお礼参り。可愛いだけじゃなく、強い蒼井優。

 

ストーリーの面白さが限界超えてる

ことごとくハイテンションなんだよ。俺の周りに1人でもこんなにアゲな友達いたら、胃痛と頭痛がジェットコースター乗って襲ってくるハズなんだけど。不思議と不快さは皆無。何故なのか、たぶん起承転結と緩急がしっかりしているからだと思う。

導入部、REDLINE本戦の予選、YELLOW LINEレースの様子から始まり。JP・ソノシーの勝負、ヤクザとのやり取り、リザーバー枠での本戦出場決定。REDLINE準備期間、ソノシーとの再会、出場選手の紹介VTR、レースへの仕込み。ここまでで作品全体の半分近くを要している構成が良い。タイトルに冠しているREDLINE本戦を後半に全て持ってくることで、焦らしつつも、一気に視聴者の心を鷲掴みにした。脚本家、メンタリストですか?

 

軍事的極秘機密満載の
アンタッチャブルワールド

レース開催場所が死ぬほど危険地帯というのも素晴らしい演出と言える。開催地のロボワールドは完全な軍事国家(星)で、全宇宙に配信されるゲリラレースなんてやられたら生物兵器やら条約違反の兵器やら、モロバレ。だから絶対に自国でのレース開催なんて許せないし、不法侵入者絶対殺すマンとなる。つまり、REDLINE出場者は他の参加者と競いつつ、ロボワールドの攻撃(地雷攻撃・絨毯爆撃・衛星攻撃・生物兵器)から逃れなければならない。三竦みのカオス。

でもこれが話としてまぁ~上手くまとまってる。参加者との因縁からレースに参加し始める軍人、目覚める宇宙平和条約違反の生物兵器、それを止めるために衛星レーザーを自国に落とす軍部。この怒涛の流れの中でしっかりレースするREDLINE参加者。マシンを壊されたソノシーに駆け寄るJPからの昔話で仲直りする2人。もう、全部の歯車がゴールに向かってて最高なんだよ

 

そして何よりも音楽が限界超えてる

REDLINE
オリジナルサウンドトラック

手掛けたのはCM音楽界の重鎮、ジェイムス下地さん。”CCレモン”とか”ペプシマン”のCMを作ったという、これまた伝説の御方…。重低音の中にもポップさを含んだバランスの良いサントラ(なんと映画一本で42曲)は、物語の端々で感情を刺激してくる。というかキマる

アニメーションにおいて、音楽の大事さをしっかりと感じさせてくれる本作の存在は日本のアニメ界で「俺たちはこの位やっちゃうよ?これ、越えられる?」という挑戦のようにも感じられる。ぜひともアニメ制作に関わる人達は参考にして欲しい

 

言わずもがな作画も限界超えてる

製作期間7年、総作画枚数10万枚は伊達じゃない。10秒間で700枚描いてるシーンもあるみたいだけど、魂込めすぎでは?死ぬぞ?  作品のキャッチフレーズである「限界を超えろ」を、スタッフ陣が我先に体現しているという前代未聞のフライング。

ちなみに、俺は作画枚数が多ければ良いアニメ作品というワケではないと思っている。枚数の多さは一つの指標になるが、枚数の多さで言えば『マクロスプラス』でも5秒間にセル画160枚超のシーンがあった。要は”どこまで妥協せず突き詰めるか”なんだよ。そういった意味で、この高速レース作品における作画は完全に変態超人。

※余談
ジブリ映画の作画を参考までに。
『風の谷のナウシカ』5万6000枚
『天空の城ラピュタ』6万9000枚
『もののけ姫』14万4000枚

 

まとめ

俺のFilmarksでのアニメ映画TOP3は『REDLINE』『天気の子』『劇場版 天元突破グレンラガン 螺巌篇』が同列1位なんだけどね。この牙城は一生崩れないと思っている。

こんなに製作者の魂が入った作品は他に無い。

『SAW』シリーズ屈指の犯人”ジグソウ”は人類の敵ではなくダークヒーロー

数あるスプラッタ映画の中でも無類の人気を誇る『SAW』。始まりにして永遠の犯人、”ジグソウ”ことジョン・クレイマーは愉快犯に非ず。そして、狂人ですらなかったと俺は思う。正義を持つ彼はまさにダークヒーロ―。

あらすじ

パパラッチの男性アダムは水の張られた浴槽の中にいた。

栓が抜けて水が抜けていくのと同時に目覚めたアダムは、自身が酷く老朽化した手広いバスルームにいることに気づく。アダムの片足は鎖で繋がれ、部屋の対角線には同じように鎖で繋がれた医師、ゴードンがいた。そして部屋の中央には拳銃自殺の遺体が倒れていた。

鎖はとても外れそうになく、出入り口は硬く閉ざされていた。まったく状況を飲み込めなかったが、アダムは自身のポケットにカセットテープが入っているのに気づく。ゴードンのポケットにはカセットテープと、未使用の銃弾と、何らかの鍵があった。

自殺死体が握るテープレコーダーで、ふたりはそれぞれのテープを再生する。内容はそれぞれへ宛てたメッセージでゲームをしようとささやくのだった。

ソウ (字幕版)


息子を失った悲しみで目覚める

『SAW 4』で明らかになるジグソウ誕生の要因。ジル・タックって言う、ジョンの元妻が『SAW 3』で出てくるんだけど(結婚してたのかよ! カッコいいもんな! と叫んだ)、彼女が麻薬常習犯更生施設の経営者なんだよね。ジョンとの子を身籠っている時に、患者の一人が起こした強盗事件によってお腹の子が流産してしまう。これがキッカケで被験者殺しを始めるんだけど、俺はこれを知った時に漸くジグソウのことが好きになれたね。

「生きていることはそれだけで幸せなんだ、殺人なんて愚かだ」が持論のジョン。おま! お前がそれを言うのか? と俺も初めは思ってた。でも違ったんだよ。彼は必ず被験者(被害者)に助かる道を与える。助かるには五体満足じゃなくなるレベルの無理ゲーが多いんだけど、それぐらいのことしないと生きてる実感得られないよね? という鞭の先の飴。そして被験者に選ばれるのは決まって他人のことを踏みつけて生を搾取してきた社会の闇相手だけ。

ここまで言えば分かると思うけど、ジョン・クレイマーは決して愉快犯ヴィランではない。むしろ、スパイダーマンやバットマンと同じ、ダークヒーローに近い属性を持っている。自分なりの正義をもっているからこそ、多くの視聴者を惹きつけるし、作中でも模倣犯や心酔者、協力者が絶えず出てきたって事だ。

 

”ジグソウ”後継者の存在

ジョン・クレイマーを語る上で欠かせないのが、後継者の存在だ。ぶっちゃけると、初代”ジグソウ”ことジョンは元々末期ガンを患ってて、シリーズ3作目で死ぬんだけど。それから4・5・6・THE FINAL、2017年に『ジグソウ:ソウ・レガシー』までシリーズは続く。これが実に面白いし、話が良く出来てる。てか犯人死んでからの方が長いサスペンスって凄くね?金田一もコナンビックリだよ。つまり、 ジョンが死んでからは後継者がゲームを続けることになる(正確には2から)

アマンダ

『SAW 2』にて、皆のトラウマ・注射器プールにダイブかましたイケイケ姉ちゃん。彼女は後継者というよりは”ジグソウ”心酔者と言っても良いかもしれない。麻薬常習犯にでっち上げられて、病んだ挙句、本当に麻薬ヘビロテし始めたグレイテストウーマンって読んでも良い。ジョンによる「生きている幸福さを気付け」ゲームによって、人としての喜びに目覚め、以降ジョンのゲームのアシスタントとして活躍することになる影の立役者。

でも、完全な後継者になれたかと言えば実はそんなことは無い。被験者に対して生の執着を感じさせた後、希望という出口の無いジェノサイドをするだけという生粋のドSマーダーとしての才能が開花。ただただ行うだけのその姿にジョンが失望して怒る場面も(そしてアマンダは泣く、てかこの殺人にも実は理由がある)。

たぶんアマンダみたいに意思の弱いいわゆる普通の人がジョンの知識を得て、ある種の全能感を感じると、同じようになってしまう気がする。アマンダの姿は俺たちだ。自分を救ってくれた人の行いを手伝いたいという一心で、信念の無いまま心を壊した善良な人間だ。だが、”ジグソウ”にここまで心酔させる魅力があるということを、彼女はその命をもって示してくれた

ソウ2 (字幕版)

ソウ3 (字幕版)

ホフマン刑事

そう、刑事なんですよね。真なる後継者は。絶対にジョン・クレイマー捕まえるマンとしてその敏腕を振るっていたホフマンが、実は物語序盤から”協力者”として暗躍(時に表舞台でも活躍)し、二代目”ジグソウ”になったのは偶然ではない。

妹が恋人に殺されるという悲惨な目にあった彼は、捜査中だったジグソウの手口に見せかけて妹の元カレを殺害(リアル・ギロチンカッター)。この一見がジョンにバレ、「自分に従わないと君の殺人、世間にバラしちゃうよ?」 と脅される形で各ゲームの仕掛けや被験者の誘拐に協力するようになる。

ちなみに、『SAW 6』にてアマンダがプライドをギンギンにしてホフマン刑事に喧嘩売るシーンは中々に嬉しい場面。ちょっと頼りにされてるからって調子に乗んなよデクノボウが! と言わんばかりの後継者争いは、ジョンの徳の高さを証明していた。GJ。

そしてこのホフマン刑事はジョン志望後のシリーズに置いて八面六臂の大活躍をしてくれる。いやいや、お前、脅されて協力してたんじゃなかったっけ? こう思った諸兄は正しい。そうなんだよ。はじめは脅されて手伝ってただけだったのに、いつの間に自我に目覚めた? いつの間に殺人テクニック高めた? ゾルディック家で修行した? まぁ、それだけ正義を基に行われる行動には中毒性があるって事なんだと俺は解釈した。頑張って勉強したんだよな。

ソウ4 (字幕版)

ソウ5 (字幕版)

ソウ6 (字幕版)

ソウ ザ・ファイナル (字幕版)

 

蘇り続けるジョン・クレイマー

2010年にザ・ファイナルを公開し、完全に物語の幕を下ろしたかに見えた『SAW』だったが、2017年に『ジグソウ:ソウ・レガシー』で復活を遂げる。「どういうことだってばよ…」「絶対に模倣犯やん…ジョン出てこないやん…」というファンの心配をよそに、作中10年の月日を超えて復活を遂げるジョン・クレイマー。正真正銘不死身の男は更なる正義を執行するのか? …という、夢を見たんだ(大嘘)。

いや、ごめん(笑)。殺し方のバリエーションと物語の深み(あとグロさ)は見事にランクダウンしてたけど、シリーズ全部を観てる人はしっかり楽しめる内容だったよ。逆に、グロ成分かなり抑えめだったから、『SAW』一個も観てない人でもコレから観れるのかもしれない。「たぶんまた10年後とかに続くんだろうなぁ」って、シリーズを超えジャンルと化したのを確信した作品。

ジグソウ:ソウ・レガシー(字幕版)

 

まとめ

わかりやすく言おう。『SAW』シリーズは映画という媒体を用いた海外ドラマだ。全容を知ることで初めて物語の核心が分かってくる。面白さの比較対象として『ストレンジャー・シングス』とタメ張るくらいだと思ってもらって良いと思う(※当俺比)。

SAW ソウ ビリー人形風 マスク

ちなみに言うと、実は俺は『SAW』シリーズが苦手だった。ホラー好きなのに甘いこと言ってんなぁって思われても構わない。俺は血が苦手なんだ。『ジューン・ドゥの解剖』でも血にビビってたくらいの弱虫だ。

だが、『SAW』は全部観た。ひとえにストーリーが良かったのと、ジョン・クレイマーの正義感に心を打たれたからだ。見事に1人”ジグソウ”の心酔者が増えたってワケだ。きっと、俺が殺人を侵したら、この記事がニュースで流れるんだろう。『SAW』は現代の若者の心の闇を刺激した悪質な作品だってな。大丈夫、そんなことにはならない。俺は血が苦手なんだ! むしろ自分の血とか、自分の身体が痛いのは大好きだけどな!

正義を貫いたダークヒーロ―に献杯。