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青年誌でH描写無しにラブコメする『かぐや様は告らせたい』を語りたい

累計発行部数は1,000万部越え。押しも押されぬ人気作品となった『かぐや様は告らせたい』。アニメも順調に二期が放送中で毎週本当に楽しみにしているワケだけど。ここから更にアツくなっていく本作の魅力を俺なりに語りたい。

あらすじ(ネタバレ)

将来を期待されたエリートたちが集う名門校・秀知院学園。 その生徒会のメンバーである副会長・四宮かぐやと会長・白銀御行はお互いに惹かれ合っているものの、高すぎるプライドが邪魔をして半年が経っても告白することが出来ない。

素直になれない二人は、いつしか自分から告白することを「負け」と捉え、「いかにして相手に告白させるか」ばかりを考えるようになり、権謀術数の限りを尽くした“恋愛頭脳戦”を繰り広げる。

但し、連載が進むうちに“恋愛頭脳戦”描写および展開は減っていき、極度のツンデレ同士のギャグ色の濃いラブコメとなっている。

作者の赤坂も、「正直『天才たちの恋愛頭脳戦』の看板はそろそろ外すべきではないだろうか」と公言していた。その後、かぐやから告白することによってかぐやと御行の交際が開始する展開となったため、擬人化された『かぐや様は告らせたい』と『天才たちの恋愛頭脳戦』の双方が死亡するという描写がなされた

以上、あらすじにして盛大なネタバレ。さすがWikipediaパイセン、アニメ二期でもここまでは行かないだろうって事をサラッと書いてしまう…そこに痺れる憧れる(まぁ色んなサイトでネタバレしてるから今更だよね)。

以下は俺が本作をみてきた中で、絶対に外せないエピソードだったなと思う所を抜粋してみた。

白金御行 × 四宮かぐや が甘すぎ

この2人に限っては最高のラブコメ製造機と言うほかない。唐突だが、ここでこの2人に関しての俺的ベスト胸キュンエピソードを紹介させてくれ。

一位は間違いなく「花火の音は聞こえない 後編」だ。割と序盤の話で、アニメ一期でもしっかり描かれてたが、この話で本作はヤンジャンの中でも頭一つ飛び抜けたと言える。前編では、暗く悲しいかぐやの境遇をひたすら描く鬱展開だったが、後編でヒーローの様に助ける白金。そしてまさかの後編タイトルを最後の一コマに用いる粋な計らい。ドンドン聞こえる花火の音が、かぐやの鼓動とリンクした演出も久しく見てなかった月曜9時のノリだ。このエピソード以降、かぐやは白金の横顔から目が離せない。読者はこの作品から目が離せなくなった

第二位は無論、文化祭編(奇跡が起きれば、ここまでアニメ二期でやるのかも)。個人的にはこのエピソードもかなり良い。文化祭中に、”白金に告白をする”と決めたかぐやが勇気を出せず、悔し涙を流す心理も圧倒的画力で表現されていた。相手の事がお見通しな2人だからこそ、そんなかぐやの気持ちを察して自ら最高の演出で告白をする話。”文化祭で何かしらのハートを送った男女は結ばれる” なんて、ご都合主義なジンクスが出てきたときは肝を冷やしたが、そこは王道を地で行く(ヤング)ジャンプ。超こっ恥ずかしいことを大真面目にやってのけた。そのウルトラロマンティックな男らしさに乾杯。かぐやは完敗。

三位はかぐやの告白回でしょう。先に描いた文化祭編からすんなりと交際までいかないのが現代のラブコメ。今どきの若者は小学生で付き合うらしいが、このくらい節度あるラブとコメディを何故に道徳の授業で教えない? むしろ保健体育で教えてもいいんじゃないか? うん、脱線した。脳内法廷を繰り広げつつ多重人格が現れ、結果として作品名を無視するという読者にとって最高にハッピーな展開。結局、お互いに告白し合うという2人らしい結ばれ方にスタオペ。「好きな相手と結ばれることの難しさ」をこの2人は見事にラブコメってくれた。

というように最高なんだよこの2人。
(俺、ラブコメラブコメ煩いな。)

石上優 × 伊井野ミコ が尊い

何を隠そう、作者も認める公式裏主人公 × 公式裏ヒロインである。前髪長い系の根暗ヲタクと、正義感が強くで品行方正な風紀委員の2人はバリバリ仲が悪い。そう、目が合うと舌打ちするレベルで悪い。でも実はお互いのことを昔から気にしていて、裏で互いに助け合ってるっていう関係がGOOD(でも互いに気付いてない)。石上のせいで伊井野が腕を骨折しちゃうんだけどね、召使いのように「あーん」と食事を手伝う石上の不憫さに嫉妬の嵐が巻き起こったことは言うまでもない。しかも石上は他に好きな人がいるもんだからそれによって悶着する悶着する。この2人のラブコメは良いぞォ、下手したら主人公と正ヒロインよりも良い

もともと2人とも主人公はれるくらいに性格良い。高校時代に相手の気持ちを慮ることができるのは主人公くらい。でも、それが空回りしまくって2人とも友達少ない(石上に至っては友達いない、むしろクラスの女子は目が合っただけで泣く)ってのも加点対象。どうも俺は孤立してる人を見ると応援してしまうので、孤立してる者同士の酸っぱ過ぎる恋愛模様はこの作品の大きな見所と声を大にして言いたい。最近の原作で見せてくれる伊井野のデレに至ってはハートブレイク過ぎて俺と言う漁船が沈みそうである。

というように、この2人も最高なんだよ。

サブキャラが総じて濃い

最後に、『かぐや様は告らせたい』を語る上で欠かせないファクター・サブキャラについて語りたい。唯一恋愛フラグが立たない女子として藤原書記は、ギャグ要因として超重要キャラと言える。ただ、白金にバレーボールを教える回が本誌で披露された時は、その母性溢れる性格とスタイル抜群な可憐さに、ネット上ではようやく真のヒロインが現れたと話題になったものだ。かぐやの付き人・早坂は実は重度のマザコンで、いつも年齢不相応な振る舞いをしているけど、実際の所は甘えん坊で、恋に焦がれる一人の女の子ってとこが良いよね(となりのヤングジャンプ同人版では見事に同僚の白金と交際)。他にも、子安先輩は石上 × 伊井野の恋愛を語るうえでは外せない重要人物だし、大人な柏木さん報われることなきマキちゃんをはじめ、公式スピンオフ『かぐや様を語りたい』のメインキャラ2人も白金・かぐやへの愛が病的なまでに深く、読者に多くの共感をもたらしてくれる。俺もカレンとエリカの2人と本作について語りたい。

かぐや様は告らせたい 1-18巻セット
※最新巻までイッキ読みする猛者用

まとめ

どうだろう。ただのキャラ紹介になった感は否めないが、とにかく、青年誌で直接的なH描写無しにここまで面白い作品は無い(柏木さんのことは言うな、いいね?)。それだけストーリーに惹きつけるものがあるってことなんだと思うよ。アニメも引き続きどこまでやってくれるのか楽しみだし。原作がまた一つの佳境に突入してるから目が離せない。

かぐや様、タイプです。

『ひぐらしのなく頃に』またあのトラウマが復活すると思うと動悸が止まらない

 

言わずと知れた竜騎士07/07th Expansionによるノベルゲーム・アニメ作品『ひぐらしのなく頃に』。この作品への思い入れはちょっと尋常じゃない俺。2020年夏に新プロジェクト始動ということで、このタイミングで必修科目をおさらいしとこう。

あらすじ

昭和58年初夏。山奥の寒村・雛見沢村にて、前原圭一はごくありふれた毎日を過ごしていた。

都会から引っ越してきたばかりの圭一だったが、レナや魅音、沙都子、梨花ら仲良しグループのおかげで、楽しい日常を築き始めていた。

そんなある日、圭一は偶然会ったカメラマンの男性から、村にまつわる怪死事件の存在を知る…。

 

上記がアニメ第1話のあらすじ。全てはここから始まった(懐かしすぎて泣ける)。まず、俺が本作を観たのは高校1年~2年の時だったと思う。当時人間不信に陥っていた俺を、更なる深みに落としてくれた。そんな偉大な作品だと記憶している。それまでも『数宮ハルヒの憂鬱』『らきすた』など、主だったアニメは観てたんだけど、本腰入れて二次元の世界に沼っていった元凶。それが『ひぐらしのなく頃に』だ。

それからの俺はと言えば、TVで放送されているアニメに留まらず。ラノベゲーム・同人を買い漁り、地元でやっていないテレ東のアニメは漏らさずネットで視聴する、所謂クソナード街道をまっしぐら(派生してニコニコ動画、特に東方厨というサイドジョブを有する)。第2の人生が始まったと言っても過言ではない。今となっては感謝しかない、気もする。

 

人間不信を加速させる謎解き

当時は今に輪をかけて人嫌いだった俺。このアニメのおかげで見事に対人恐怖症を克服できて、行きたい大学にも受かったし、可愛い彼女もできた。今思えば、あの時にこのアニメを観始めて本当に良かった。観るか観ないかで悩んでいるそこの君、君にもこのアニメを観ることで明るい未来が待ってる!さぁレッツ視聴! なんて進研ゼミのような展開には当然ならなかった。むしろセンター試験は失敗したし、学校サボって家でアニメ観る生活を満喫してた。彼女はできたよ、画面の中に3人。あれ、おかしいな…昔のこと思い出してるだけなのに涙が…もう歳だな…。

昔語りはここまでにして、内容に触れよう(というか思い出したくない)。まず、何がここまでセンセーショナルだったのかと言うと、当時のアニメには無い手法を取り入れていたというのはあると思う。まず、アニメの中でもいくつかエピソードに分かれているんだけどね、ここに新しさがあった。

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【アニメ一期】

  • 鬼隠し編(1~4話)
  • 綿流し編(6~8話)
  • 祟殺し編(9~13話)
  • 暇潰し編(14~15話)
  • 目明し編(16~21話)
  • 罪滅し編(22~26話)

【アニメ二期】

  • 厄醒し編(1~5話)
  • 皆殺し編(6~13話)
  • 祭囃し編(14~24話)

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※OVA収録エピソードは割愛
これは原作のラノベゲームの特徴でもあるんだけど、各エピソードは独立した世界線になっている。つまり、1~4話の「鬼隠し編」が終わると次の「綿流し編」では物語冒頭からリスタートする。今でこそ『ハルヒ』のエンドレスエイトの偉業(という名の蛮行)や、『リゼロ』で一般的になっているが、これは当時としてはとても新しかった。しかも、推理モノのラノベゲームのシステムとして取り入れられたこの手法の良い点は、前エピソードとの比較で新しい世界で起こっている謎が解明できる点だ。これで視聴者は沼った

 

どう足掻いても絶望な世界

この言葉って、そもそもひぐらしのために作られたんじゃなかったっけ? ってくらいのピッタリな言葉。まず鬼隠し編が終わった時に、この絶望と言う反り立つ壁が顕現する。それからは簡単だ。綿流し編に入ると一瞬救われる気がする。だって世界が元通りになってるんだもん。「良かった~あの絶望は夢だったんやぁ~」て感じで。そしてさらなる絶望が現れる。ターザンロープだ。これには山田勝巳も失笑。天を仰いで涙を流しながら無力さを噛みしめる。そして詩音は笑いながら包丁を研ぐ。

おやおや、コレもしかして信じれば信じるほど馬鹿を観るってやつじゃないかな? かな? と語尾が馬鹿になってくるのも仕方がない。そのくらい当時は衝撃的だった。特に少年時代の繊細なガラスの心には堪えた。そして竜騎士さんの作品には顔芸という代名詞が付いた

 

「目明し編」からが真の本編

「鬼隠し編」「綿流し編」「祟殺し編」「暇潰し編」までが謎が謎を呼ぶ理不尽アニメ。だが「目明し編」からは一気にその風向きが変わる。解答編のスタートである。特に「目明し編」で物語の裏側で起きていたことが明かされ始める(主に「綿流し編」の)。視聴者のフラストレーションと、人を信じる心を地の底まで沈めて置いて、ここから一気に解答で気持ちよくさせるという詐欺師顔負けの手腕。御見それしました。しかもニコニコ動画全盛期だったこともあってか、「you」が神曲と崇められ、多くの歌い手が素晴らしい歌唱力を披露してくれた。

余談。「目明し編」直前の「祟殺し編」12話は放送委員会に引っ掛かり放送中止されるという伝説を残している(同時期に「スクールデイズ」も放送禁止くらってる)。かの有名な”秋葉原連続通り魔事件”や、京田辺警察官殺害事件と時期がかぶってしまったというのもあるが、リアルタイムで観ていた俺は「今更かよ!遅いよ!」と色々な意味でショッキングだった。

ニコニコ動画や同人作品(そもそもが同人作品だが)、放送禁止という異例の事態もあったが、”ひぐらし”ムーブメントは指数関数的に認知度を増大させることになったってワケだね。

 

一期ラストでの僅かな光明

とは言え、結局は圧倒的絶望のまま終了するんだろうと思われたアニメ一期も最後の最後で救いの可能性が豆粒ほど描かれる。なんと作中で人を信じることの尊さが説かれたのだ。10歳児が包丁をこめかみにズボズボして自殺したり、女の子が笑いながら病院に忍び込んで惨殺する作品でだ。そんなことある? 今までの惨劇も回避できる道があったと? もしかして、アニメ二期ではそのハッピーエンドを描いてくれるの? と。結局は信じる心が大事で、絆こそが世界を救うのか。些か疑問の残る終わり方をしたが、ここで俺の人間不信も治った。単純なんだ。締めるところは締める。大事。この見事な手のひら返しと言うエンターテイメントに視聴者は沼りすぎた結果マントルまで潜ることになる。「絶対に二期を観よう、きっとそこには幸せがあるハズ。部活メンバー全員が笑って過ごす未来が待っているんだ。なんならゲームも買おう」と。結論から言うと淡い期待だった

(TVアニメ化10周年記念)(ひぐらしのなく頃に)
全話いっき見ブルーレイ [Blu-ray] ※全話イッキ見直しする猛者用リンク

まとめ

というわけで、当時のアニメ一期のことを思い出しながら書いていたら「ひぐらし」という一大シリーズの良いところ見所のハイライト記事になりました。

新作オリジナルの展開もやってくれるとは思うけど、絵柄が今っぽくなるだけの新作になる可能性も考えて、ネタバレは少な目。俺の人生を大きく歪ませることになったアニメの筆頭たる作品、きっと今夏の新プロジェクトでも新しい哀しみ感動をもたらしてくれると思う。あ、あとファンにとっては周知だけど、『うみねこのなく頃に』は別ゲームだよ。あっちの方がファンタジー色強いから女性ファン(主に病んでる女子)が多かった印象。男からしたらどっちもメチャクチャ面白いけど、俺は思い入れが強いのは「ひぐらし」かな。

放送されたらまた記事を書くかも。では。

人形恐怖症の俺が『アナベル』に心を射止められて渡米する話

俺的最怖ホラー映画である『死霊館』シリーズ。ホラー大好きな俺でもマジで怖いと泣きながら画面に許しを請う、そんな本シリーズの現状最新作である『アナベル 死霊博物館』を視聴した。

アナベルは物理的媒体であって、コレ自体が悪霊なワケではない。そんな幻想はアナベルの可愛らしい頭突きで飴細工のようにブレイクされ、画面に向かって許しを請う29歳の独身男がここにいた。

 

あらすじ
留守番の夜、少女たちに襲いかかる悪霊の数々。
導くのは”あの人形”

超常現象研究家ウォーレン夫妻の家に、強烈な呪いを持つ一体の人形が運び込まれた。その人形の名は、アナベル。アナベルは地下の”博物館”で、他の呪われし品々とともに厳重に封印された。夫妻が仕事で家を空ける、ある日。娘のジョディは年上の少女のメアリー、ダニエラの3人で一夜を過ごすことに。しかし、ダニエ

ラが”警告 決して触るな”と書かれた博物館に勝手に入り込み、アナベルの封印を解いてしまう。

それは、少女たちの想像を絶する悪夢のはじまりとなった……。

※アナベル人形とは…
実在する呪いの人形。コネチカット州にあるウォーレン夫妻の博物館に厳重に保管されている。強い呪いを持ち、極めて危険な存在の為、現在も毎週神父が祈祷を施している。

 

新作が出るたびに深まる呪い

そもそもアナベル人形は『死霊館』に出てきた霊的媒体の一つに過ぎなくて、こんなにフィーチャーされるとは思ってなかった。ちなみに、シリーズを時系列順に並べると下記の通り。※()内の数字は公開年。

  1. 『死霊館のシスター』(2018)
  2. 『アナベル 死霊人形の誕生』(2017)
  3. 『アナベル 死霊館の人形』(2014)
  4. 『アナベル 死霊博物館』(2019)
  5. 『死霊館』(2013)
  6. 『ラ・ヨローナ ~泣く女~』(2019)
  7. 『死霊館 エンフィールド事件』(2016)

無論俺は全部観てる。『死霊館のシスター』『ラ・ヨローナ ~泣く女~』は完全なスピンオフ作品で、物語的な繋がりはありつつも独立した世界観。この2作品に関しては演出が結構違う。外堀から埋めて恐怖の袋小路に追いつめられる他作品に比べるともっと直接的な恐怖だ。路地裏歩いてたら鈍器でこめかみ殴られる感じ。これはこれで、フリスクを一箱丸々一気飲みした時みたいに気持ちの良い快感があるので、ホラー映画が好きでまだ未視聴の人はマスト失神。

アナベルが登場してからどんどん深堀りされて過去の恐怖話が膨れていってることになるんだけどね。ドンドンとその呪いが強まってる印象。むしろ『死霊館』で初出した時はメチャクチャ丸くなってたんですね姉御! なんてことすら思ってしまう(実質的な害は無かったじゃんかぁ…)。

 

アナベルを基点に暴れる歴戦の悪意

本作ではアナベル人形が悪霊の力を増大させる触媒とともに、自立した殺戮人形のように描かれる(許可なく布団の中に入ってきて良いのは俊雄くんだけだろうが…!! 但し、ニャーと囁いてくれるなら許す)。先天性の人形恐怖症である俺にとっては、手に汗握る拷問の視聴となったのは言うまでもない。とは言え、『死霊館』のあの”逃げ場無し・慈悲無し・救い無し”の圧倒的恐怖に比べれば全然顔を背けずに観れたかなって言うのが本音(単純に俺の脳の恐怖を感じる部分が壊れて来たというのはあるかもしれないが)。「このまま行けば、普通に最後まで余裕」そう思っていた俺が、ラスト30分で悪霊たちに弄ばれ、心を陵辱されたのは語るに及ばず。

 

 

ジェームズ・ワンのホラーに外れ無し

今回は監督じゃなくてプロデュースを担当してるんだけどね。『SAW』シリーズをはじめ『インシディアス』シリーズでも毎回卓越した驚かせ方をしてくれるジェームズ・ワン。彼が絡んでる作品は、観てる人の驚かせ方が本当に秀逸。「絶対ここで驚かせてくるじゃん!」って所で想像の壁を粉砕して絶対に驚かせてくれる。そこに凡百のホラーに感じるような「そう来るかぁ~」なんて悠長な感想を抱く暇はなく、「そッ…そう来ッ…ふふ、来るッか…はッァ」ってなる。最悪過呼吸から喘息になる

 

映像の作り方が上手いっていうのは当然として、音の使い方が上手いように感じるのは俺だけなんだろうか。前菜のように不安をそそるBGMで恐怖心を刺激しつつ、最怖ポイントでとびっきりのメインディッシュを心臓に直接叩きこんでくる。あとは、何よりもストーリー(脚本)がメチャクチャ良いんだよね~。俺が何で『死霊館』が一番好きかって、ホラーとして最上級の構成になってるんだけど、それ以上に「家族愛、大事!」という感動が表現されてるんだよ。なんか上手く言えないけど。そこに名作スペシャリテ足りうる味わい深さがある。観終わった後に「あぁ、観て良かったな…」と恍惚に浸れる自慰ホラー、最高だと思わないか。

 

新作にも期待しかない

今回で一旦、アナベル人形から派生した作品は小休止。でも『死霊館』の直接の系譜としてウォーレン夫妻の新作『The Conjuring: The Devil Made Me Do It』が2020年(コロナショックで2021年かな)に制作されてるし、ヴァラク(ウォーレン夫妻を殺すためならイギリスまで出張することも厭わないシスターのコスプレした悪魔)が規格外のビビらせ方をしてくる『死霊館のシスター』の系譜で2の制作が発表されてる。あと個人的には一番楽しみなんだけど、『死霊館 エンフィールド事件』に出てきた”へそ曲がり男”のスピンオフ作品『The Crooked Man』も制作中らしくて、もう本当に楽しみで仕方がないんだよ。観た過ぎるからアメリカで放送されたら渡米しようかなってぐらい。

ホラー好きは観て絶対に損しないこのシリーズ。純粋に人に勧められるのホラーってあんまり無いじゃん、ここにありますよ。

死ぬほど気乗りしないけど恋人と一緒に観るのも良いと思う。途中の怖いシーンで彼女は彼氏にくっ付けるし、視聴後の家族愛には感動待ったなし。そうそう、恋人と観るなら観るなら絶対に『死霊館のシスター』が良いですよ。

死霊館のシスター(吹替版) ※恋人と観る猛者用

目ん玉かっぽじって恐怖に慄け。

殺人犯の10人に1人は相手が好き過ぎて殺すという矛盾統計

『花とアリス 殺人事件』の、何とも言い難い名作オーラを感じつつも、つい最近まで未視聴だった俺を殴りたい。これは現代における愛憎の一例、と見せかけた友情物語だ。

史上最強の転校生、アリス。史上最強のひきこもり、花。二人が出逢ったとき、世界で一番小さな殺人事件が起こった。

石ノ森学園中学校へ転校してきた中学3年生の有栖川徹子(通称アリス/声:蒼井優)は、一年前に3年1組で起こった、「ユダが、四人のユダに殺された」というウワサを聞かされる。さらに、アリスの隣の家が<花屋敷>と呼ばれ、近隣の中学生に怖れられていることを知る。その花屋敷に住む「ハナ」ならユダについて詳しいはずだと教えられたアリスは、花屋敷に潜入する。

そこで待ち構えていたのは、不登校のクラスメイト・荒井花(通称ハナ/声:鈴木杏)だった…。

 

登場人物の軽快な会話が気持ち良い

「コラぁこの悪魔! 手羽先欲しいか? やらねぇよ~!」という仕草と発言ともに登校中にエンカウントした危険度AAAランクの男子生徒に対して「朝っぱらから鶏肉しゃぶりながら人の事罵りやがって、手前の方がよっぽど悪魔っぽいんだよコノヤロー」とアリスが言うシーン。この時俺は、この映画面白いじゃん…と確信した。ぶっちゃけこのシーンだけでも見て欲しい。西尾維新作品みたいな、登場人物の言葉のドッジボールで相手をジワジワと蔑むのが好きな人は、きっと俺みたいにココでこの作品にのめり込む。

 

次々と明かされる教室の秘密

転校してきたアリスは「1年前、教室で殺人事件があった」という眉唾の噂を耳にする。その死んだ男子生徒の座っていた席に座ったからという理由で、クラスメイトに遠巻きに避けられる流れ。調べていくとどうも「男子生徒は4人のユダに殺された」「死んだ男子生徒の名前はユダ」「ユダには妻が4人いた」と一見理解不能な暗号めいた情報だけが集まっていく。もう本当に出てくるキャラがブッ飛び気味で軽快(警戒)。そして、このサスペンス染みた展開で、どういうことだろう? と一瞬でも考えたとしたらもう最後まで観るしかない(そう、俺のように)。

 

詳細を調べようと、殺人事件のいきさつを把握しているという花の家に乗り込むアリス。ここでようやく花とアリスのゴールデンコンビが邂逅する(つまり、なんと作品全体の半分近くを消化するまで主人公の一人である花は出てこない )。

 

罵りながら深まる友情

ここからは正直、前半の導入部とは全く違う作品になる。花とアリスの一夜の大冒険編って感じ(やってることはただのストーキングとパパ活)。ユダの生死を確かめるべくユダの父親を追う2人。まず、この時の2人のすれ違いとアプローチの違いが面白い。花は理詰めで綿密な計画を立てるタイプ。アリスは行き当たりばったりだけど、その人当たりの良さから結局上手く行っちゃうタイプ。この2人が揃うことでの相乗効果が深みのある物語を生んでる。

アニメの世界にとどまらず、頭脳派タイプと行動派タイプが揃った時にお互いの良さが爆発的に向上するってのは良くある話だ。ヒーローにはサイドキックが必要だもんな。まぁ、花とアリスの場合はどっちも行動派だし、どちらも特に猪突猛進馬鹿ってワケではないのだが、要は長所の話。

 

車の下の告白

このシーンの殆どが花の語り(回想&罪の告白)で構成されてる。でもここがこの物語における謎の解答パートだ。ここで一気に全ての謎が解けていくのが最高に気持ち良い。花には最初から全部わかっていて、その上で、アリスを一日付き合わせていたというのもなんか面白い。っていうかユダの真相と最期の瞬間がかなり面白い(いや、アナフィラキシーは馬鹿にしちゃいかん! 俺もクマバチに首の動脈付近を3回ほど刺されたことあるけど、あれ本当に泡吹いて悶絶して糞尿垂れ流すからなッ)。

何よりも、ここで自分の感情を吐露する花の描写・鈴木杏の演技が絶妙なんだよ。アリスの声を当ててる蒼井優も、このシーン以降は少し敵意の無くなった声になって、感情を表に出した花に対して一気に心の距離が縮まったっていうのが表現されてる気がした。このシーンにこの映画の良さと、主題である花とアリスの全てが詰まっていると言っても決して過言ではない。この夜、ゴールデンコンビは誕生した。

 

友情のはじまり

「あたしのダチがアンタに話があるんだよ」ってアリスが言うシーン。いつのまにかダチになってる!  いいぞこういう友情物語は好きだ。一気に世界が明るくなった気がする。このセリフを聞くためにこの映画を観たんだ。

殺人事件の10%は痴情のもつれ・男女関係のトラブルで相手を殺してるって法務省のデータを見たことがあるけど、まさにそれを暗示しているかのような世界一小さい殺人事件でした。でもそれで深まる絆もあるから愛ってのは難しい(自分には愛なんてよくわからん)。

花とアリス殺人事件
※視聴用リンク

というワケで、『花とアリス 殺人事件』良い作品でした。

実は実写版は観てない(本作はロトスコープを用いたアニメ)んだけどね。そっちもファン多いからタイミングで観てみようと思う。本作で描かれた友情の始まりに対して、友情の終わりが描かれているみたいだからなおのこと楽しみ。

『としまえん』行こうって言う女は絶対に信用しちゃダメ、絶対

開始早々にモブが犠牲になる映画。それが『としまえん』。作中のニコ生実況者が早々にエスケープする時点で感じる通り、これは駄作だ。でも見てしまう。それがホラー好きってもんだ。

 

簡単なあらすじ
老舗遊園地としまえんを舞台に、都市伝説の『としまえんの呪い』を実践した仲のいい女子大生5人組が、一人ずつ姿を消していくという、元NGT48の北原里英が主演したジャパニーズホラー映画。

撮影には『としまえん』が全面協力し、実際の都市伝説の噂も背景にして怖さを演出。

 

小休止とみせかけて

正直に言おう。俺は『自殺サークル』『高速ばあば』、もしくは『ひとりかくれんぼ』と同じ類だろうと思ってこの作品を視聴した。つまり、小休止だ。ホラー映画観すぎの脳ミソのご褒美タイムとでも言えば聞こえは良いだろうか。俺的最恐ホラーは『死霊館』なんだけどね、ジェームズ・ワン監督レベルのホラーを一日に3本とか観てると脳が疲れるんだよ。「あの~!そろそろ休憩頂いても良いでしょうかァ!?」って、脳が半ギレで抗議してくる。バイトですら休ませなきゃコンプラ的にNGな昨今、脳も休ませなきゃイカン。

さぁ本題に入ろう。本作は現実にもある遊園地・としまえんを舞台にしたホラー映画だ。女子大生5人がとしまえんのお化け屋敷を訪れてからストーリーは動き出す。開始15分で取り敢えず一人餌食になるんだけどね。そこからが本番。最初餌食になった女子大生から芋づる式に蔓延していく被害の嵐。そう、『着信アリ』と似た構成だ。柴咲コウ好きの俺はここで一回当時の恐怖を想起した(ちなみに堀北真希の方が好き)。

毎回この手のJホラーを観ると、なまじストーリーが入り組んでいるモノが多く。その上、答えは視聴者に丸投げするというクリエイティビティを履き違えまくっているから厄介だ。脳を休ませることすら叶わんのかコイツらは。

 

そもそも「としまえん」と言えば

昔から「お化け屋敷」には本物が出るとホラー好きの間で噂されていた(というか、ホラー好き以外にも結構有名かも? なんかみんな知ってる気がする)。俺が知ってるだけでも火の玉が見えるとか、全自動&スタッフ無しで運営してるハズなのに”明らかに機械じゃない何か”を見たりとか。まぁ、俺は心霊スポットには行かないと心に決めているので体験してないんですけどね…。ホラーは映画だけで十分だ。

他にもミラーハウスに幼女の霊が出るとか、古い洋館(個人的にはこっちの方がヤバイ)は取り壊しようとする度に呪いが降りかかるとか、怖い噂が絶えない。それをどんな感じで映画化してくれるのかなぁと思ったらまさかの噂スポットてんこ盛りで、そこに関しては「やるな」と思ったのが本音。中々にツボを弁えておる。と、思っていたが本編全体に関してはやっぱり内容がよく頭に入ってこなかった(ちなみに作中後半クライマックスの主戦場に選ばれたのは「電気室」)。強制的に脳を休ませるため、俺は考えることをやめた。

zoom飲み翌日の二日酔いの脳ミソにとってはちょうど良かったと言える。

キタリエは可愛い。

映画『としまえん』
※この記事を読んでも観たい猛者用リンク

俺はただ愚直にトロイメライ聴きながら『かくしごと』の大蛇足を待つ

久米田康治先生の作品『かくしごと』。

2020年4月からアニメ化を果たし、一気に人気が出ているであろう今作。先生の数少ないファンとして、噛めば噛むほど味が出てくるであろうこの作品の魅力を紹介したい。本記事に伏字が多いのは愛ゆえである。

 

あらすじ
隠し事は、なんですか?

ちょっと下品な漫画を描いてる漫画家の後藤可久士。一人娘の小学4年生の姫。可久士は、何においても、愛娘・姫が最優先。親バカ・可久士が娘・姫に知られたくないこと。それは……自分の仕事が「漫画家」であること。 自分の”かくしごと”が知られたら娘に嫌われるのでは!?

” 愛と笑い、ちょっと感動のファミリー劇場がはじまるーー”

 

ここにきて新境地

曰く、久米田先生が”アニメ化を目論んだ”ことであろう『行け!! 南国アイスホッケー部』(短命に終わったワケではなく、先生のベストヒット作品)。『勝手に改造』『さよなら絶望先生』と子供の頃から読んできた自分にとっては(というか他は知らない)、本作のハートフルさに新境地を感じずにはいられない。

そもそも、俺が最初に先生の作品を読んだのは『勝手に改造』からなんだけどね。その社会風刺を含んだ一話完結の服を着ないギャグの数々に、「こんな漫画が存在して良いのか」と小学生ながらに疑問を持ったのを覚えている。後に知ることになるが、この系譜は『行け!! 南国アイスホッケー部』の途中から狂人のごとく発揮された久米田先生の持ち味。『さよなら絶望先生』がアニメで人気になり認知度が一気に向上したことで、この作風にハマる人が続出した久米田節ってやつだ。やりたいことをヤリまくり”終わり良ければ全て良し”の精神に溢れた名誉ある撤退最終回を繰り返す、少年誌らしからぬ無二の作者と言える。

そんな俺からみたら、本作は異端だ。今まで学園生活モノが多かった中、家庭・仕事場という全く違うフィールドを軸にした物語展開。家族愛をテーマに据え、しかもその内容がしっかりと父と娘の愛の深さを描いているから驚きである。どうした? 久米田どうした? 遅れてやってきた悟り世代か? と初めて読んだ時は衝撃を受けた(アニメに至ってはキラキラと輝きすぎていて、一瞬、先生の作品だとわからなかったぐらいだ)。だから、あえて新境地という言葉を用いたい。

 

久米田康治節は健在

コレコレコレぇ! 過去作を見てきた人達にとって、無くてはならない要素。それが社会風刺ネタ(画像はアニメ4話「ノルマエ・ナマエ」より抜粋)。今思えば、誰もが思っていることを全国誌で大っぴらにネタにするそのブラックジョークから学んだことは多く(「ダメ絶対音感」の話とかね)。例えば『勝手に改造』では、巷で”お洒落キング”なるものが流行っていた頃、作中で”お洒落先生”なるものが若者のファッションを悪意のある目線から酷評するような表現があった。その痛快さは、さながらポスト池上彰。些か脱線するが、池上彰と言えば、2013年の参院選で公明党議員に対し「政教分離の憲法違反への言及」でお茶の間をシニカルな空気に変えた。これを週イチで行っていたのが久米田康二であると言えば、言い得て妙。同作品の鋭い切り口を受け継ぐコンテンツ、それが『かくしごと』という作品なんだ。

 

新境地の先に何を魅せてくれるのか

1話冒頭、姫が18歳になって昔の実家を訪れる。そこで父の「隠し事」が「書く仕事」だったということを初めて知るというストーリーなのだが。実はこの18歳編はしばらくナリを潜める(単行本では毎巻描かれる)。再びこの未来編が原作で動き出したのは実は最近のことで(2020年4月くらい)、それからというもの、本編としてメインに描かれてきた姫10歳~11歳の過去編と絡み合いながら、空白の時間で何があったのかがドンドン明らかになってきている。

原作はここからいよいよストーリーの核心部分に触れ、面白くなってくるところなので、期待しかない。特に打ち切り最終回への畳みかけ伏線の張り方には勝手に定評を感じているので、一体どんな形で物語をまとめてくれるのか、楽しみで仕方がないのが本音だ。家族愛がテーマなので、ハッピーエンドになるだろう。という前提がありつつ、久米田先生だったらいつも通り想像を超えたエンディングを魅せてくれるだろうと過度な期待でプレッシャーをかけたい。すごいなー漫豪さすがだなー。

 

色々と言いたい放題言ってしまったが、本作での姫の台詞の一つである「言いたいことがあったら漫画で描けよ」を自ら体現する作風が大好きなので、気になった人は暇な時に観て欲しい。

これは仮設だが、久米田先生自身に娘がいることが某漫画家のツイートで世間にバレている。もしかしたら作者自身も娘に自分の仕事を内緒にしており、これは事実に基づいた一部ノンフィクションの可能性も…?

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面白いよ。

静かなパニックという矛盾した恐怖はヤバめのFLOWで唐突に湧き出す

トロント国際映画祭で2017年の「カナダ映画10」にも選ばれたという『飢えた侵略者』。ホラー好きにとっても楽しめる、新しいゾンビ映画の表現がここにあった(面白いとは言ってない)。

簡単なあらすじと全体の雰囲気

冒頭からゾンビが発生。ゾンビと戦う者、協力して生き抜こうとする者など、それぞれの形で新しい生活を送るカナダ人たち。主人公たち一向は過激派ではなく、基本的に逃げることを主な活動としてるんだけどね、ここがこの映画の肝。逃げることを行動の指針にしているから過度な物音を立てるのは厳禁なワケで、それがこの作品全体の雰囲気を見事に作り出してる。よくあるゾンビ映画って主戦場が市街地だから、結構ドンパチやったり騒がしいものが多いんだけど。これは作中のシーーーンとした「音、立てんなよ! 耳をすませよ!」っていう空気感で構成されてる。カナダの広大な大自然と共鳴して、雰囲気イケメンな映像。俺が一回見て理解できたのはこのくらい。

 

空間の使い方がとにかくカナダ

贅沢な構図。ただ突っ立ってこっちを見てる可愛い親子も、森との対比で妙に奇妙に見えてくるから不思議(実際かなり奇妙だが)。

 

でも襲う時は速いし煩い

え、急に!? 何でさっきまでそんなに静かだったのに、急に!? って感じで襲うときは速いし煩いというギャップ。ひと思いに襲ってくれよ!と感じる。ゴジラみてぇに叫びながら襲ってくる”静と動”の使い分けエキスパートゾンビ。たぶん球技全般で脅威の記録出せるよ。バドミントンとかおすすめです。

 

モニュメント

作中、ゾンビが謎のモニュメントをゴミで組み立てているシーンがあった。「ナニコレ」と口から出てきたのがまさに俺の正直な感想だが、モニュメント以上に気になるのは周りを取り囲んでいるゾンビさん方。何故かピーンと突っ立ってる。死んだ? あ、いや、死んでるのか。静寂と合わさって新興宗教のミサみたいな雰囲気を醸し出してる。と、思ったらヒッピーな恰好したイケメンおじいちゃんゾンビが甲高い奇声あげてこっちに向かってくる。突然。「中々に面白い表現だなぁ」と思った。怖いって言うより、何か良く分からない行動をしている人、めっちゃ怖い。っていう恐怖。森の中で全身白装束の集団に出会ったら俺だって逃げる。これはゾンビ映画の皮を被っているだけで、人間って、こんな風に動くと(動かないと)怖いでしょ? っていう新しいヒトコワとも言えるかもしれない。

 

まだまだ恐怖には先がある

俺は全然詳しくないからただの想像なんだけど、カナダってさ、こういう空気感をすごく大事にしてる気がする。土地が広いからこういう静寂そのものの恐怖を敏感に感じるのかな。

確かに、誰もいない教室とか、田舎の家で留守番してる時とか、いつもは賑やかな場所が急に静かで物音一つしないと、謎の恐怖感に襲われた経験あるもんな。

この作品はそんな子供のころの単純な恐怖を思い出させてくれたように感じる。あと、今のホラーって結構固定観念が積み重なってきてるというか、こういう面白い表現も飲み込んで行けば、世界中が恐怖する万国共通ホラー作品が生まれるんじゃないかなって思いました◎。

ホラーもっと盛り上がれ。

謎アニメ『ミッドナイト・ゴスペル』の正体はアートマン用の電子ドラッグ

『ミッドナイト・ゴスペル』とは?

一言で言えば、アメリカの制作会社がNetflixに投じた劇薬だ。この作品に触れた者は「生きるって一体どういうことなんだろう?」という疑問を感じずにはいられない。もしくはタブレットの画面をそっと閉じるだろう。

簡単なあらすじ

主人公のクランシーは、宇宙の何処かで多元宇宙に向けて個人ラジオを放送するキャスター(なお、リスナーは1人)。突撃型のYoutuberさながら、様々な宇宙に取材に赴き(赴き方は現在の地球のテクノロジーでは理解不能なため割愛するが、卑猥)、その星での有識者をゲストとしたゲリラストリーミング番組を配信する。

ゾンビが蔓延する星に降り立った第一回放送では、大統領と一緒にゾンビを殺しながら「薬は合法化すべきか?」と議論を交わし、しゃべくっている間に特効薬が完成し星は救われた。ように思えたが、内臓飛び出した大統領はたぶん死んだしあの星も長くは保たないと思う。途中「生きるとは?」という議論が大統領との間で勃発したが、ゾンビに襲われながら妊婦が新生児を生む瞬間を見せたり、ゾンビの視点からの幸福=無為自然であり真の解脱を明示してくるというとってもキチガイアニメ。

クランシーは東洋仏教の思想が強い。あとどうやら毎回登場するゲストの中の人は現実世界の有識者とのこと。

 

「まともな世界は無いのか?」

常時サマー・オブ・ラブを体現したかのようなリラックスっぷりのクランシー。お前直前まで一つの星の終わる瞬間見てただろ。何でそんな安らかな顔でFMミュージック流してやがると突っ込みを入れたくなるが、これが彼の日常なんだろう。

自然味溢れる星に降り立ったと思ったらしゃべるカバと議論を交わす。議論を交わしながら狩猟され、ミンチにされ溶け合いながらも「愛とは?」という議論を続ける姿は超精神体としての神そのものだ。

彼の眼と体験を通して見る通り、”まともな世界”などこの世には存在しておらず。世界は何処も何かしらの問題を抱えているという事が主張されている。

 

「言葉は神だよ」

魚人間の姿をした臨済宗指導者もが出てきたところで、俺も流石に気付いたよ。このカートゥーンアニメは、悟り探求者たちのインスタライブに合わせて奇天烈なアバターがアンサンブルを奏でる脳内遠心分離機だということにね。ポックルだったら「あっあつあっあっ」って言いながら水見式の方法をピトーにバラしちゃうような、そんな感じ。

「東洋は悟りを開くことで真実に至ろうとするが、西洋では魔術を用いて悟りへの速度をブーストしたんだ」と魚人間が話している姿を見ながら、俺も、あっあっ…なるほどね~。なんて、考える力を失くしながら納得していた。これは新手の催眠術式か?

「僕らはハヌマーンがサルの神様と言われてもピンとこないよね。HAHAHA!」いや笑いどころ個性的すぎんかお前ら。 さながら仏教大学の教授会。だが、この時俺は既にこのアニメの術中にハマっていた。

考え続けることを美徳とする人間社会の多くの宗教。ただ、世間の人たちは現実に不満だらけ。本来は後ろではなく前向きにエネルギーを注ぐべきなのに、なぜ多くの人がそれをできないのか。

覚せい剤でラリってるミレニアム世代は今を輝かせることに必死で未来を見ていない。何故か。それは欲望を制御できていないからだ。欲望があるから人は不満を抱くし、気持ちのいいドラッグを鼻から掻き入れて脳をシェイクする。時にはこの停滞が必要な時もあるかもしれない(トリップ中に気付くこともあるらしい、例えば、オーガニズムが悟りの境地だということ)が、前に一歩進むために必要なことは考えることだ。

自分自身を。このイカれたアニメはその重要性を見事なまでのFuckin animationと、言葉を用いて説いてくれている。つまりマインドフルネス推奨アニメ。ナマステックス!

 

「監獄は自分の頭の中にあった」

このサイトの記事を読んでいる人は気付いてると思うが、俺は答えの無い問いかけが好きなんだ。俺自身は心理学部を卒業したが、姉が哲学を学んでいた影響もあるかもしれない。これだけで安定した収入があれば四六時中こういう答えの無い、どこに向かっているのかも分からない様な無駄な事を考えていたい(でも本音では無駄だとは思っていないから厄介★)。

自分の体も含めて、今見ている世界は自分自身の精神に内包されている。つまり、心を決めれば、自分を中心とした世界はそのように動くってことを、頭の中で整理できた良いアニメだった。Netflixに突然現れた謎の作品だと思っているそこの貴方、もう入口には立っていますよ。一緒に真理の扉を開けましょう◎(身体を放棄しろ!電子の世界で生きるぞ!は名言)。

ただ、軽い気持ちで見ると精神が宇宙の洗濯機に放り込まれるから、心して。もしくは観ない方が良い。

価値観の違いが自由を阻害するなんて決めつけてるのはきっと自分自身

いよいよNetflixで独占先行配信された『BNA』7話~12話。
早速全話視聴したから感想を。※チラっとネタバレしつつも大事なところには触れない紳士スタイルの記事をお送りします。

 

ちなみに、『BNA』に関しては前にも記事を書いているので、1話~6話を未視聴の人はそちらから合わせて読んで欲しい。

 

遂に物語は核心へ

あれ、”獣”人ってなんだっけ? みちるは元から獣人としてのスペックを遥かに超えていたけど、後半戦では獣人の概念を疑うような現象が多々起こる。いや、そもそも獣人の概念なんて俺も知らないけど。そんな突っ込みを入れている間に、本編では銀狼伝説の真実、市長と士郎の出会いなど矢継ぎ早にぶっちゃけエピソードが明かされていく。ここにきて爆発的な加速をみせるシナリオ。でも、この環状線をアクセルベタ踏みで走る飛ばし屋みたいな勢いこそTRIGGER。

法定速度を超えたまま、最大の謎である主人公みちる・親友なずなの2人が獣人になった原因も明らかになる。すごいサラっと書いてるけど、ここまで中々にモヤモヤ展開。みちるの一生懸命さが報われないような展開が続くからだ。6話までの時点だと、みちるがいっつも空回りしている軸の無い人間のように感じてた人もいるかもしれない。何を隠そう、俺も少し思ってた。けど、実はみちるは最初からブレてない。みちるはいつも”他人のこと”を想い続けていた。いつだって他人を心配して、親友のことを心配していた。その時その時の心配する相手によって行動の指針が変わるから、傍から見るとフラフラっとした人格っぽかったんだよね。物語後半になってようやくみちるの性格が理解できた気がする。

 

見てないところにこそ、真実はある

水面下で動いていた問題(ニルヴァジールシンドローム…名称が長い…でも響きが良い)が表に出てきて、噛み合い始める歯車。みちるだけの問題だと思っていた事が、ここで一気に獣人全員の問題になる。あれ、この物語、悪役が誰もいないんじゃ……? こんなに平和な作品があって良いのだろうか。いつものTRIGGERだったらグゥの音も出ないほどの超・悪が出てきて今までの敵と仲直りしながら打倒するハズ。来るか来るか…来てしまうのか、この優しい世界にも絶対悪が…。と、思ったらやっぱり来ました。 でも、悪はまさかの勢力。立場によって何者も悪に成り得るという良き例。※ラスボスは期待通りの人物だった。

 

絶対悪は絶対に悪の言葉を吐く法則

なんとも面白い展開。流石TRIGGER。最大の敵は最初から登場していたし、最大の味方はいつだって自分自身。獣がメインの話を非常に上手くまとめてきた。コレコレコレぇ! この展開を!待ってたんだよォ!あと相変わらずラストバトルの時のBGMが絶対に盛り上がるって凄いことだと思う。「それが世界の真実!」って叫びながら攻撃してくるのはラスボスの特権だよね。

 

「どう生きるかは自分で決める」

”強い女の子”はいつ観てもカッコ良い。物理的な話じゃなく、精神的に強い子ね(物理的に強くないとは言ってない)。そしてクライマックスの盛り上がりと表情の描き分けが尋常じゃない。たぶん一発で12000kcalくらいは消費してるんじゃないかって位の熱量。作画も同じ位カロリー消費してるのでは? 確実に螺旋エネルギー使ってるわ、コレ。最後はお家芸・全力ってところがGOOD。畳みかけつつも、物語は綺麗に折りたたまれるように終わってくれました。

 

「今の自分、結構好きなんだ」

この言葉がみちるの口から聞けただけで俺は満足です。自分のことを自分の意思で決めた子はの眼は輝いてる。人と獣人、2つの種族を体験し、真に理解しているのは、みちるとなずなの2人だけ。その上で選び取るこれからの自分。TRIGGERらしく、種族間のギャップに悩みつつも確実に喜びを得ていくという、センシティブな問題を描き切った良い作品でした。

依存症の俺は次回作も楽しみにしてます。
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いよいよこの国は女子高生が無駄に消費される世の中になった

この春ドラマ化もされた『女子高生の無駄づかい』について。

※この記事は作中のアダ名(キャラ名)でお届けしています。決して悪口ではないから安心して欲しい。そしてこの作品には馬鹿しか出てこない、重ね重ね、安心して欲しい。

 

JKが女子高生活を無駄に浪費する

意識が再来年までトんじゃってる系の馬鹿こと、バカが一応主人公として物語の中心にいるワケだけど、”中身の無いスッカスカのパン”と揶揄される通り、脳の容量が小さいマジモンの馬鹿だからこその愛らしさは一見の価値アリ。加えてバカと仲の良い2人、こいつらがまた問題だ。「昨日何食べた?」の問いに対して『徒然草』と返す姿にアッファ! とトゥンクしてしまう男子学生がいる通り、一見すると容姿端麗・頭脳明晰のロボ。ボカロPをマイケルジャクソンのように神聖視して、BLをこよなく愛する(生モノもイケるあたりが激しく問題)。美味しいモノを食べるとキレ口調になるヲタ。この3人が揃うことで奇跡のケミストリーが発生している。個人的にはヲタが一番ヤバイ、と見せかけて一番可愛い。作中唯一と言っても良いほどマジメな回(女子大生好きのクラス担任のワセダがヲタの好きなボカロPだという事がクリスマス・イヴのコミケで判明する回)は必見だ。

 

登場キャラの癖が濃い

他にも独創的な女子高生が登場するが、とにかく全員が非常に魅力的な社会のゴミである。これがこの作品の人気の秘密と言える。

というか何時の間にかロリ・マジメ・リリィの3人が仲良くなってるのすごく嬉しいよね。何だかんだでマジョ(画像左下の???)もロリのこと気に入ってるし、やはり性根が清く正しい女の子は万物に好かれるということだろう。いや、待て、でも今出てきた奴ら半数が激しくレズ気質持ってるから(約一名、友達のお母さんが綺麗だったらキス顔で待機する本物のレズ)ロリちゃん気を付けて。見た目は高校TOP3だからなまじ絵になるのがまた危険。マジョにいたってはアルパカの胎児のミイラを持ち歩き、それを御守りと称してクラスメイトに善意であげようとするあたりが本物。いわゆる黒魔術系女子高生まで網羅している。なんだこのジャンル。あぁ、ヤマイは保健室でドラゴンの末裔としての逸話を後世に伝えるためサボってるよ。

アニメ最終回では、この一癖も二癖もあるハミ出し女子高生たちが『ドラゴンボール』さながら一つにまとまって、ある一つの問題に立ち向かう。その姿に謎の感動を覚える…可能性は0ではなかったのだが、ガンギマリした女子高生たちの頑張る姿に一種の連帯感の様なモノだけ を感じた。つまり感動はあまり無かった。

 

実はまだこの先にヤバイ奴らが待ってる

「アニメ二期もやったらノラとヒメも出てくるのかなぁ…楽しみだなぁ…」気が付くと俺はそんなことを考えていた。…!? 馬鹿な…俺は今何を期待した? アニメ一期を気が付いたら全部観てしまった(二週はした)だけでなく。二期も望んでいる、とでも言うのか? …認めるしかない。この作品には謎の中毒性があるということを。ラーメン二郎だって、一度食べるとまた食べたくなるんだろ? きっとそれと一緒だよ。そういうことにしよう。

たぶんまた観る。面白いよコレ。

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