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密かにファンを増やす中国産アニメ『シザーセブン』を、もう観たか?

中国で大人気のWebアニメがNetflixで観れることはご存じだろうか? 『シザーセブン』は一話15分程度の短編アニメながら、ツボを押さえたストーリーゆえ、日本のアニメファンにも響くのは間違いない。

簡単なあらすじ

主人公のセブンは記憶を失った少年。分かっている事は、ハサミを意のままに操ることが出来ること。言葉を話す青い鶏と一緒に失った記憶を取り戻すために殺し屋稼業を始める。

普段は美容室で仕事をしながら、殺し屋としての動き始めるセブン。でも世の中には強い奴が幾らでもいて、失敗続き。

殺し屋をとして人々と接していく中で、絆が国の危機に一つに集まる時、失われた記憶が取り戻される。基本一話完結のギャグ有り王道ストーリー。

基本的にギャグを主軸に進むストーリーながら、次第に過去が明らかになっていって気が付いたら繋がってる、『銀魂』みたいな感じ。シーズン2まで出てるんだけどね。シーズン1のメインストーリーは10話、番外編が4話の全14話。メインストーリーのラスト3話くらいは少年漫画風のアツい展開だから非常に楽しく観れる。

 

 

C.V. ジャングルポケット斎藤

主人公セブンの声が棒読みと言われれば棒読み。でもその間抜けさがすごく合っていると言えば合っている(ような気がしてくる)。髪を結わえてる時と解いた時(と言うよりも記憶の有無)で、キャラが全く違う。この絶妙な違いを演じたと言えば演じきったのは中々な功績だと思う。

他のキャラに関しても敢えて間の抜けた演技をしているような感じで、全体的に統一感のある演技だったのも、ジャングルポケット斎藤氏の演技を上手く調和していた気がする。

 

 

脚本が予想以上にエンタメしてる

セブンの特技として、ハサミを操る他に変化の術(忍術的な何か)が使える設定なんだけど。これが物語を面白くしてる。殺し屋として色んな所に潜入する時、様々なモノに変化してターゲットに近づく。ある時は石、ある時はココナッツ、弱った魚とか。※ちなみに殺し屋ランクは17369位記憶を無くす前は最強格。

基本的には殺しの為にこの変化を使用していくが、問題解決に適した能力のために依頼内容が万事屋じみてくる。なお、上の画像はシーズン2の戦闘中に猫が犬の歌で感傷的になっている画像だからセブンとは全く関係ない。

 

みんな大好きシーズン1-6話

「脚本が良いなぁ」と思ったエピソードの代表として真っ先に思い浮かぶのが、シーズン1-6話。ある日、少女の殺しを請け負ったセブンが殺しに赴くと「死ぬ前にやりたい事がある」とお願いを請ける。少女の願いはコーラ一気飲み・看護婦さんに注射、元カレに金的攻撃など、素朴な願い。これらを変身能力で解決していくセブン。そして最後の願いが「自分を殺して欲しい」っていう事で、実は少女自身の抹殺を依頼していたことが明らかになるんだけど。結局セブンは今回も殺しの依頼を達成せずに終わることになる。そう完全に『銀魂』のマジメ回。こういう王道エピソードを真面目に演出できる作品は良作。

 


ちなみにシーズン2ではこの少女の病気の由来が明らかになる哀しみのエピソードがあるので必見。というかこの娘めっちゃ可愛い

 

終盤の盛り上がりが異常

シーズン1ラスト、襲ってくる大国の王子。今まで出会った人(殺せなかった人達含む)と協力して立ち向かうも太刀打ちできず、失われた本来の力が目覚める。まさに王道! 正直、ラスト3話くらいは一気に観てしまうクオリティで、ずっと逆作画崩壊してる感じだった。分かりやすく言うと『家庭教師ヒットマン リボーン』の骸戦くらいのアツさはあった。

※『ニンジャスレイヤー』・「パンティ&ストッキング」みたいに、頭身が8になることは決してないから。勘違いは厳禁。でもめっちゃヌルヌル動くから良いよ。

 

 

まとめ

冷酷だった過去、記憶を失って人々と接していく中で目覚める人情、リズミカルなギャグ、と秀逸すぎる脚本。これは観る意味あるなぁと俺は感じたね。ちなみに番外編では主要キャラの過去編紹介ストーリーで、それがシーズン2にも繋がってたりするから全部見た方が楽しめる。

噂ではシーズン3も中国では放送しているとか…?

Netflixで観れるようになればすぐに観ようと思う。

『流転の地球』は日本が完全に中国に負けていることを如実に示していた

SFファンにとって、Netflixで後悔された『流転の地球』は衝撃でしかなかった。ハリウッドにも負けず劣らずのクオリティ・圧倒的な世界観の本作は、中国という国の勢いを現わしていると言っても過言ではない。

あらすじ

地球各地で異常気象や天変地異が起こるなか、その原因は、太陽が老化・膨張し赤色巨星化をたどるためと判明。太陽系そのものが300年ほどで消滅する危機に、世界の国々は団結して「地球連合政府」を設立。

政府は地球を太陽系外に脱出させ、2500年かけて4.2光年離れた別の星系軌道に載せる「流転の地球」計画を決定。

各地に巨大な「地球エンジン」1万基を建設し、太陽系脱出の推力とした。また連合政府は、それと並行して30年かけて巨大な国際宇宙ステーションを建設。ステーションは地球から10万キロの距離を保ち計画のナビゲートを行うこととした。

地球が太陽系から離れたことで荒廃した地表に住めなくなった人々は、政府が「地球エンジン」の地下に建設した都市に暮らし、2500年後の新天地を待ち望むのであった。流転の地球-Wikipedia


本当の意味で「宇宙船地球号」

この映画を観ると、まずスケールの大きさに圧倒される。「え、これハリウッド映画だったっけ?」と思った俺は一回視聴止めてググったくらい。こう思った要因は設定の壮大さにある。

前述のあらすじにもある通り、「地球エンジン」と呼ばれる推力によって太陽系からの脱出を試みるその様は、想像よりも圧倒される。いやいや、地球の自転止めたら停止時のGで人類吹っ飛ぶやろ…と突っ込みを入れたくなるのがSFファンの性なのだが、本作はこの点も見事に描いている。ギブスンもにっこり

重核融合エンジンは石を燃料として推進力を得ているというのだが(そんなに石あるか?とも思ったが、地殻削ってるとしたらまぁイケる)、基本的に人間は地表ではこの地球エンジンのメンテナンスと燃料集めに追われている。その地表での様子が完全に氷河期。そうだね。分かってる。自転止めただけでも太陽に背中向けた側は生命存続不可能の氷の世界になるからな(北極と南極が繋がるイメージ)。だから、本作内での人類は地下に生活拠点を移している。この無理のないSF設定には俺もにっこり

この宇宙船地球号が、予期せぬ事故によって木星の方にハンドル切っちゃって、ぶつかる死ぬどうしようってのがメイン危機のストーリー。

 

 

アメリカ様に無いアジアの価値観

ハリウッド本家の終末系ってさ、ある種ステレオタイプ化してると俺は思うんだよ。「人類滅ぶってよ!」「マジかよ!何とかしようぜ!家族を死なせる訳にはいかない!」「立ち上がれ人類ウォオオ独立記念日じゃァアア」 ←ここまでテンプレ。いや、それが王道で観ててて最高に気持ち良いんだけどさ。

でも『流転の地球』では違った。一言で言えば”東洋の価値観で観る世界の終末”だ。俺たち日本人も、古くから盛者必衰の理を”あはれ”として受け入れてきたDNAが入ってるから何となく想像できると思うんだけど。「地球終わるってよ」「マジかよどうするん?」「死に方とか考えた方が良いかなぁ」「家族が満足して死ねるならそれで良い」「命日に寝る最高のベッド買おうぜ」 と言った人々が終末が近づくにつれて出てくる。”どう生きるか”よりも”どう生きたか”の方に先に視点を合わせる。ちなみに上の会話例は完全に俺の妄想であって、作中ではもっと切迫した様子の中国人が”いとをかし”の精神で絶滅に向き合ってるから安心してくれ

アジア人って、歴史柄なのか土地への執着が強い気がするのは俺だけ? あと正常性バイアスも一定数機能するよね。皆焦ってるけど、もう諦めて楽しもうぜ。あと最後は家で死にたい、的な。対して西洋文化は、一致団結すれば怖くない思想が強い。同じ終末系というジャンルでも、この違いを見事に表現したのが本作だということ。この東洋的思想が盛り上がりポイントに上手く組み込まれてるのも◎。

流転の地球 ハン・ドゥオドゥオ
ディフォルメフィギュア

まとめ

原作者のケン・リュウ氏が明示したアジア的思想をこのクオリティで映像化できたのは今の時代とても大きい。確立された正義に正解はなく、死生観は人類それぞれということを世界に発信できた。

また、同時にこの価値観を発信したのが日本ではなく中国であるというところも大きなマークポイント(ハイここ、テスト出まーす)。本来であれば日本こそがその価値を一番理解しているハズなのに、成長しつづける中国が経済力と倫理観を示している本作を観た時に、俺はもう「日本…完全に負けちまってるな…」と思った。”発展途上国は国民のモラルが低い”と言われていた中国がここまで精神的成長を魅せつける作品を作ったとなると、立場は完全に逆転し、逆に日本人が大事にしなくなってきたものを考える機会になってきているのかもしれないとすら思える。

日本のSFにも期待したい。

酒を飲んだテンションで『波よ聞いてくれ』の女性陣について書いたから読んでくれ

2020年4月からアニメがスタートし、その魅力を地上波デジタルの波に乗せて拡散している『波よ聞いてくれ』。この面白さ、本当にもっと多くの人に届けたい。

あらすじ

舞台は北海道サッポロ。主人公の鼓田ミナレは酒場で知り合ったラジオ局員にグチまじりに失恋トークを披露するが、翌日に録音されていたトークがラジオの生放送で流されてしまう。

激高したミナレはラジオ局に突撃するも、ディレクターの口車に乗せられアドリブで自身の恋愛観を叫ぶハメに。

この縁でラジオDJデビューしたミナレを中心に、個性あふれる面々の人生が激しく動き出す。

さあさあ、波よ聞いてくれ!!!引用元:原作1話あらすじ

黙ってればスタイル抜群の金髪美女なのに、口と酒グセの悪さからThe 残念な美人ことミナレ。いきなりラジオパーソナリティとして活躍する(The ラジオ局遊撃隊の)トークスキルとその発想力は素人離れしてて本当に奇抜。ちなみに声優の杉山里穂はリアル北海道出身で今回が主演デビューのガチ美人

舞台となる北海道のローカル感。リアリティ味のあるギャグに全振りしたストーリーだけど、ラジオの収録現場・風景を事細かに描くニッチさは漫画に新しい波を生んだ。こんな人達が実際にいたら面白いなぁと思わずにはいられない、ある種”働く女の子シリーズ”の大人(熟女)版。 [補足: 新宿三丁目にあるスープカレー屋さん「東京ドミニカ」がミナレの働くVoyagerのモデルになっている(北海道じゃない)。]

波よ聞いてくれ(1)
(アフタヌーンコミックス)

ヤバくて良いオンナしかいない

作者:沙村広明さんの、『無限の住人』の頃からの悪癖特徴なんだけど。登場する女性がことごとくヤバい。主人公のミナレのヤバさと魅力はアニメを観れば開始10秒で実感できる。でも他の女性陣も総じて性格・性癖ともに歪みきった女性だということを忘れてはならない。この作品の良さは女性陣にある。原作読者の俺がその魅力の一端を紹介しよう。

 

 

 

鼓田ミナレ

推しも推されぬ主人公。生き意地の悪い女日本代表と言えるその思考回路には毎話感服する。ダメ男を好きになる母性と、抜群の行動力がフュージョンして人生がゴテンクス(失敗)。また、恰幅の良い男が性的に好みで、宗教団体に拉致監禁された時に美少年をハニートラップ役にあてがわれても肉体関係を拒絶する意志の強さを持つ。得意技はフランケンシュタイナー。黙ってれば美人。

 

 

 

南波瑞穂

家賃の払えなくなったミナレを家に泊めてあげるだけでなく、「いつまでもここに居れば良いじゃないですか」と甘言を囁く天使。しかしてその実態は構成作家(官能小説家)の久連木に高校時代から想いを寄せて同じ職場に就職を果たす対戦車地雷。現実にいたら一番可愛いけど一番地雷。また、精神的に思い詰めると包丁を備前長船なみの切れ味になるまで研ぐ(地雷)。でももし付き合ってたら年内にプロポーズする。普通に可愛い女性。

 

 

 

城華マキエ

交通事故を起こした兄の責任を取ってVoyagerで無償労働することになる黒髪の麗人。過保護な兄の束縛から逃れることができ、人生の喜びを見出だしつつあるが、実は卓越したラジオはがき職人。この綺麗な容姿で「網走刑務所の囚人の作った家具だけでトータルコーディネート」「膣をどこかに忘れてきた」というネタを投稿する類まれなるセンスを有する引き籠り。『無限の住人』に登場した作中最強の剣客ではない。

 

 

 

芽代まどか

ミナレの甲高い声色とは違い、人を安心させるリアジェリング・ウィスパーボイスの持ち主。アニメではカット? されてたけど、ミナレに対して対抗心のような興味を示しまくって公園のベンチで日本酒飲みを強制してくる可愛いババァ。突然パンチの聞いた酔いどれ説教されたミナレも思わず幣舞橋の銅像」と貧乳具合をディスるも、翌日にはこれを自虐ネタとして口撃してくるあたり百戦錬磨の性格悪さ。正直アニメではその魅力はまだ一切魅せれてない(二期フラグ?)黙ってればスレンダー美人。

 

 

まとめ

基本的に皆、黙ってれば美人なんだよ。というか、現実でも結構そうだよ。女性というものは可愛い存在だ。でも、男が真に惚れるのはそこじゃないからな。結婚という悪徳契約交わしてでも一緒に居たいと思える女性は、総じて可愛さ+αを持っているワケで。だからこそ一緒に居たくなる。この作品に出てくる女性キャラは、皆その辺を兼ね備えていると言っても良いような気がしてきたと思ったら酩酊して頭が痛いからたぶん酒のせいで思考回路がまとまってないんだろう。忘れて

ちなみに、アニメでどこまでやるのかってのは今後この作品に大きく関わってくると思う。ぶっちゃけ宗教団体編は「ラジオ要素どこいった!?」ってなるけど、一番面白いからやって欲しいな。(でも尺的に無理だな)。山中で消えた律子(天井裏で死んでなかった人)も出てくるし。官能小説家・ミナレ・瑞穂の大冒険でようやく一区切りする感あるしな。あとこのエピソードの終わり方が神

アニメが面白いと思った人は原作もぜひ。

『SAW』シリーズ屈指の犯人”ジグソウ”は人類の敵ではなくダークヒーロー

数あるスプラッタ映画の中でも無類の人気を誇る『SAW』。始まりにして永遠の犯人、”ジグソウ”ことジョン・クレイマーは愉快犯に非ず。そして、狂人ですらなかったと俺は思う。正義を持つ彼はまさにダークヒーロ―。

あらすじ

パパラッチの男性アダムは水の張られた浴槽の中にいた。

栓が抜けて水が抜けていくのと同時に目覚めたアダムは、自身が酷く老朽化した手広いバスルームにいることに気づく。アダムの片足は鎖で繋がれ、部屋の対角線には同じように鎖で繋がれた医師、ゴードンがいた。そして部屋の中央には拳銃自殺の遺体が倒れていた。

鎖はとても外れそうになく、出入り口は硬く閉ざされていた。まったく状況を飲み込めなかったが、アダムは自身のポケットにカセットテープが入っているのに気づく。ゴードンのポケットにはカセットテープと、未使用の銃弾と、何らかの鍵があった。

自殺死体が握るテープレコーダーで、ふたりはそれぞれのテープを再生する。内容はそれぞれへ宛てたメッセージでゲームをしようとささやくのだった。

ソウ (字幕版)


息子を失った悲しみで目覚める

『SAW 4』で明らかになるジグソウ誕生の要因。ジル・タックって言う、ジョンの元妻が『SAW 3』で出てくるんだけど(結婚してたのかよ! カッコいいもんな! と叫んだ)、彼女が麻薬常習犯更生施設の経営者なんだよね。ジョンとの子を身籠っている時に、患者の一人が起こした強盗事件によってお腹の子が流産してしまう。これがキッカケで被験者殺しを始めるんだけど、俺はこれを知った時に漸くジグソウのことが好きになれたね。

「生きていることはそれだけで幸せなんだ、殺人なんて愚かだ」が持論のジョン。おま! お前がそれを言うのか? と俺も初めは思ってた。でも違ったんだよ。彼は必ず被験者(被害者)に助かる道を与える。助かるには五体満足じゃなくなるレベルの無理ゲーが多いんだけど、それぐらいのことしないと生きてる実感得られないよね? という鞭の先の飴。そして被験者に選ばれるのは決まって他人のことを踏みつけて生を搾取してきた社会の闇相手だけ。

ここまで言えば分かると思うけど、ジョン・クレイマーは決して愉快犯ヴィランではない。むしろ、スパイダーマンやバットマンと同じ、ダークヒーローに近い属性を持っている。自分なりの正義をもっているからこそ、多くの視聴者を惹きつけるし、作中でも模倣犯や心酔者、協力者が絶えず出てきたって事だ。

 

”ジグソウ”後継者の存在

ジョン・クレイマーを語る上で欠かせないのが、後継者の存在だ。ぶっちゃけると、初代”ジグソウ”ことジョンは元々末期ガンを患ってて、シリーズ3作目で死ぬんだけど。それから4・5・6・THE FINAL、2017年に『ジグソウ:ソウ・レガシー』までシリーズは続く。これが実に面白いし、話が良く出来てる。てか犯人死んでからの方が長いサスペンスって凄くね?金田一もコナンビックリだよ。つまり、 ジョンが死んでからは後継者がゲームを続けることになる(正確には2から)

アマンダ

『SAW 2』にて、皆のトラウマ・注射器プールにダイブかましたイケイケ姉ちゃん。彼女は後継者というよりは”ジグソウ”心酔者と言っても良いかもしれない。麻薬常習犯にでっち上げられて、病んだ挙句、本当に麻薬ヘビロテし始めたグレイテストウーマンって読んでも良い。ジョンによる「生きている幸福さを気付け」ゲームによって、人としての喜びに目覚め、以降ジョンのゲームのアシスタントとして活躍することになる影の立役者。

でも、完全な後継者になれたかと言えば実はそんなことは無い。被験者に対して生の執着を感じさせた後、希望という出口の無いジェノサイドをするだけという生粋のドSマーダーとしての才能が開花。ただただ行うだけのその姿にジョンが失望して怒る場面も(そしてアマンダは泣く、てかこの殺人にも実は理由がある)。

たぶんアマンダみたいに意思の弱いいわゆる普通の人がジョンの知識を得て、ある種の全能感を感じると、同じようになってしまう気がする。アマンダの姿は俺たちだ。自分を救ってくれた人の行いを手伝いたいという一心で、信念の無いまま心を壊した善良な人間だ。だが、”ジグソウ”にここまで心酔させる魅力があるということを、彼女はその命をもって示してくれた

ソウ2 (字幕版)

ソウ3 (字幕版)

ホフマン刑事

そう、刑事なんですよね。真なる後継者は。絶対にジョン・クレイマー捕まえるマンとしてその敏腕を振るっていたホフマンが、実は物語序盤から”協力者”として暗躍(時に表舞台でも活躍)し、二代目”ジグソウ”になったのは偶然ではない。

妹が恋人に殺されるという悲惨な目にあった彼は、捜査中だったジグソウの手口に見せかけて妹の元カレを殺害(リアル・ギロチンカッター)。この一見がジョンにバレ、「自分に従わないと君の殺人、世間にバラしちゃうよ?」 と脅される形で各ゲームの仕掛けや被験者の誘拐に協力するようになる。

ちなみに、『SAW 6』にてアマンダがプライドをギンギンにしてホフマン刑事に喧嘩売るシーンは中々に嬉しい場面。ちょっと頼りにされてるからって調子に乗んなよデクノボウが! と言わんばかりの後継者争いは、ジョンの徳の高さを証明していた。GJ。

そしてこのホフマン刑事はジョン志望後のシリーズに置いて八面六臂の大活躍をしてくれる。いやいや、お前、脅されて協力してたんじゃなかったっけ? こう思った諸兄は正しい。そうなんだよ。はじめは脅されて手伝ってただけだったのに、いつの間に自我に目覚めた? いつの間に殺人テクニック高めた? ゾルディック家で修行した? まぁ、それだけ正義を基に行われる行動には中毒性があるって事なんだと俺は解釈した。頑張って勉強したんだよな。

ソウ4 (字幕版)

ソウ5 (字幕版)

ソウ6 (字幕版)

ソウ ザ・ファイナル (字幕版)

 

蘇り続けるジョン・クレイマー

2010年にザ・ファイナルを公開し、完全に物語の幕を下ろしたかに見えた『SAW』だったが、2017年に『ジグソウ:ソウ・レガシー』で復活を遂げる。「どういうことだってばよ…」「絶対に模倣犯やん…ジョン出てこないやん…」というファンの心配をよそに、作中10年の月日を超えて復活を遂げるジョン・クレイマー。正真正銘不死身の男は更なる正義を執行するのか? …という、夢を見たんだ(大嘘)。

いや、ごめん(笑)。殺し方のバリエーションと物語の深み(あとグロさ)は見事にランクダウンしてたけど、シリーズ全部を観てる人はしっかり楽しめる内容だったよ。逆に、グロ成分かなり抑えめだったから、『SAW』一個も観てない人でもコレから観れるのかもしれない。「たぶんまた10年後とかに続くんだろうなぁ」って、シリーズを超えジャンルと化したのを確信した作品。

ジグソウ:ソウ・レガシー(字幕版)

 

まとめ

わかりやすく言おう。『SAW』シリーズは映画という媒体を用いた海外ドラマだ。全容を知ることで初めて物語の核心が分かってくる。面白さの比較対象として『ストレンジャー・シングス』とタメ張るくらいだと思ってもらって良いと思う(※当俺比)。

SAW ソウ ビリー人形風 マスク

ちなみに言うと、実は俺は『SAW』シリーズが苦手だった。ホラー好きなのに甘いこと言ってんなぁって思われても構わない。俺は血が苦手なんだ。『ジューン・ドゥの解剖』でも血にビビってたくらいの弱虫だ。

だが、『SAW』は全部観た。ひとえにストーリーが良かったのと、ジョン・クレイマーの正義感に心を打たれたからだ。見事に1人”ジグソウ”の心酔者が増えたってワケだ。きっと、俺が殺人を侵したら、この記事がニュースで流れるんだろう。『SAW』は現代の若者の心の闇を刺激した悪質な作品だってな。大丈夫、そんなことにはならない。俺は血が苦手なんだ! むしろ自分の血とか、自分の身体が痛いのは大好きだけどな!

正義を貫いたダークヒーロ―に献杯。

『スタージル・シンプソン:SOUND&FURY』で創造における解答設定の大事さを説きたい

Netflixに現れた謎アニメ映画『スタージル・シンプソン:SOUND&FURY』はもうご覧になっただろうか? その実態は『ニンジャ・バットマン』のスタッフで送る、40分を超えたアニメーションMV。

スタージル・シンプソンとは?

1978年、アメリカケンタッキー州ジャクソンに生まれる。父親の影響でブルーグラスやカントリー・ミュージックに触れ、次第にロックやソウルなどジャンルレスな音楽を吸収していった。高校卒業後、アメリカ海軍に入隊し、90年代後半に日本へ。川崎から横須賀の基地へ通い、週末には東京へ繰り出すという生活を送っていた。海軍生活を終え、本国にて鉄道会社に就職し、仕事も順調であったが、最愛の妻の最大級のサポートから、ナッシュビルに拠点を移し、音楽への道を再び志すことになった。2013年、ファースト・アルバム『High Top Mountain』を自主制作し、全米で31位を記録。2014年にセカンド・アルバム『Metamodern Sounds In Country Music』をリリースし、アメリカン・ミュージック・アワードでは「2014年に最も飛躍したアーティスト」に選出され、第57回グラミーではベスト・アメリカーナ部門にノミネートされるなど全米で大ブレイクを果たした。2015年には大型フェスティバルBonnaroo、Lollapallozaに出演し、数々の人気番組にも登場するなど、凄まじい勢いで全米での知名度を高めていった。

全米中のレコード・レーベルの争奪戦ののち、アトランティック・レコードと契約し、メジャー・ファースト・アルバム「A Sailor’s Guide To Earth」をリリースし、iTunes初登場で総合チャート1位(US)、カントリーチャート1位(US)、インディーロックチャート1位(US)を総ナメ。そしてアルバムはBillboard全米チャート3位を記録した。

第58回グラミーでは、同アルバムが主要部門である「最優秀アルバム賞」、そして「最優秀カントリー・アルバム賞」にノミネートされその動向にも期待がかかる、全米が最も注目している「アメリカ音楽界の最重要シンガー・ソングライター」である。

 

要するに、最高に現代っぽくしたモダンカントリー。音楽にそれほど明るくない俺、このMVで初めてじっくり聴いてみたが、流石アメリカ様が認めたサウンド。存外良い…というか、オルタナ的にジャンルを超えた新しいカントリーソング、超良いぞ。

サウンド&フューリー
※本作で使われた楽曲収録アルバム

 

ストーリーは世紀末の復讐劇

簡単なあらすじ

過去編

突然スーツ姿の男2人組に家を襲われ、平穏だった日常は終わりを告げる(たぶん神職の刀鍛冶の家系?)。1人は銃、1人は毒を用いた搦め手を巧みに用いて、刀鍛冶の一族を惨殺。

無事助かった女の子と、その父。父は一族の復讐のために亡くなった友の魂を宿した二振りの刀を打つ。あと一歩のところで復讐が成るところだったが、娘を人質に取られ惨敗。

娘は刀に宿った魂の助力もあり、その場から父と刀を持って炎のなか逃走。いつの日か必ず復讐すると誓い、今は力を蓄え成長し強くなることを学ぶ。

未来編

舞台は近未来。荒野を駆ける車に乗り込むのは甲冑姿の女の子。歳は高校生くらいかな? この年齢になるまで身を潜めていたことに驚き。

復讐の対象である2人は世界を牛耳っていた。殿様よろしく、奴隷たちから過剰な搾取をするゲスっぷり。その2人に、真正面から復讐をしかける女の子。

果たして、復讐は成るのか!? そんな話(だと思う)。

 

MVとしてのアニメーション演出

なんであらすじ紹介なのに「たぶん」とか疑問形使うんだよって話だよね、うるさいなぁぶっ殺すよ? 。いや申し訳ない。なんせセリフが一切ない作品だからさ。

本作の音はスタージル・シンプソンの楽曲のみ。だから映像は全部楽曲の良さを惹き出すために作られているってことなんだよ。途中途中で、敵のマッチョとダンス始めるインド映画みたいなシーンがカットインするし、にっくき敵役も鋭い踊りを魅せる

故に、ストーリーは観た人自身で想像するしかない。だから上にかいた「あらすじ」も決して正解じゃないと思うんだよね。コレがこの作品の面白い所だと思う。

 

※クリエイティブを履き違えてはいけない

ちなみに…「内容はそれぞれのご想像にお任せします」ってスタンス、基本的に俺は嫌いなんだけどね。いや、ちゃんと答えを持ってるなら良いんだよ。許せないのは作った側が明確な答えを見つけきれてないのに、さも”答えは万人の心の中にあります…”みたいな達観した感じでナゾナゾをぶつけてくるのが大っ嫌いなんだ。いや、ちゃんと伝わってますよ? 貴方がちゃんと無能で物事を最後まで成し遂げられない小物だという事はね。曖昧なママ世に出したモノってのは、曖昧なママ世に伝わるからね。だから答えを設定するのが大切なんでしょ。しかもその答えに独創性があり過ぎてもダメ。受け取った側は、「あ、はい…(コイツ何言ってるんだ?)」で終わるのがオチだからね(俺も編集の時に嫌と言うほど経験した)。自己満足のクリエイティブは絶対に世に評価されない。偉大なるこのことをクリエイター諸兄は心に刻んで欲しい(一般大衆のマイノリティレポートでした)。

でも本作に関してはその嫌悪感は全く無かったかな。だってこれMVやし。ハナからストーリーは後付けというか。本当の意味で”音楽を聴きながら観た人”に想像させることを目的としてる、そんな気がした。むしろ、映像をフォーカスして観た時は楽曲がストーリーを想像する手助けをしてくれる。良い相乗効果が生まれてるとすら思ったね(え、何様?俺様です)。

もちろん、映像はクオリティ高くて観てて気持ち良い。まぁ俺、『ニンジャ・バットマン』大好きだし。あ、良かったらこっちも観て。

ニンジャバットマン

 

まとめ

色々偉そうなことを書いたけど、俺はクリエイターではないので意識高いクリエイター様方は右から左へ聞き流して頂きたい。

どんなことにも言えるけど、中途半端な奴は何をしたって中途半端だし、言動の節々に中途半端さが出てる。本気で物事に取り組んだ経験がある人にとっては、何故かすごく腹立たしく感じる部分だってことは、老若男女問わず人類の総意かと。

と言いつつ、俺も中途半端なんだけどね。

耳が痛い(いや、この場合は目?)

国民的人気作『鬼滅の刃』を最終話まで読んだ時、強くなれる理由を知った

連載開始当初から異質な雰囲気を放っていた『鬼滅の刃』。

アニメ化が尋常じゃなくバズった結果、普段アニメに興味の無い層も巻き込んで一大ブームを起こしたことは記憶に新しい。

そんな本作が2020年5月18日発売の週刊少年ジャンプで堂々完結。ずっと好きだった作品が一区切りしたということで、満を持してその良さと、炭治郎が強くなれた理由について俺なりに語りたい。

あらすじ

時は大正。主人公・竈門炭治郎は亡き父親の跡を継ぎ、炭焼きをして家族の暮らしを支えていた。

炭治郎が家を空けたある日、家族は鬼に惨殺され、唯一生き残った妹・竈門禰豆子も鬼と化してしまう。禰豆子に襲われかけた炭治郎を救ったのは冨岡義勇と名乗る剣士だった。義勇は禰豆子を「退治」しようとするが、兄妹の絆が確かに残っていることに気付き剣を収める。

義勇の導きで「育手」鱗滝左近次の元を訪れた炭治郎は、禰豆子を人間に戻す方法を求め、鬼を追うため剣術の修行に身を費やす。

2年後、炭治郎は命を賭けた最終関門である選別試験を経て、「鬼殺隊」に入隊する。

 

正直、このあらすじ自体メチャクチャ懐かしいけど。こうして始まった物語は、大きく3つに分けられる。ここからは各編毎に成長する炭治郎のハイライトと、印象的な場面を紹介しながら物語の本質について語っていく。

 

竈門炭治郎立志編

アニメ一期が該当する。

自分の留守中に家族が全員惨殺されてて、妹が鬼になって混乱してたら突然現れたお兄さんに罵倒される。だから2年間修行したマン

ザ・理不尽な運命に立ち向かう不幸な少年は、妹を救う為だけに2年も山籠もりして岩も切れるようになる。修行中には皆のパパ・鱗滝さん、錆兎、真菰に出会い、最終戦別では後に同期となる五感組との邂逅を果たす。ぶっちゃけこの序盤が一番面白いし、後の物語の中でも重要人物になるキャラがドンドン出てきた。

 

辛い運命の中で育まれる愛情

最終戦別から戻った炭治郎に駆け寄って抱き着く禰豆子と鱗滝さん。この時に「よく…生きて戻った」って、仮面の下で感極まって泣く鱗滝さんの姿には本当の優しさが溢れ出てた。

ここで注目したいのは、鱗滝さんの愛情だ。年端も行かない兄妹が巻き込まれた運命に心から同情して、厳しく特訓する中にも少しずつ父親のような素振りを見せるようになる。そして最終戦別から戻ってきた時のこの反応。もうパパだろう

作中において、炭治郎の父・炭十郎が大きな意味を持ってるのはファンなら周知の事実。だが、物語開始時には既に死去しているし、序盤では回想ですら姿が描かれない。その代わりとしての役割を担っていたのが鱗滝さんだと思うんだよね。

つまりこの最序盤においては、妹の為に頑張る炭治郎の「兄妹愛」、それを支える鱗滝さんの「家族愛」が描かれていた。そう考えてみると、この作品全体の主題が見えてくる。

 

vs累(十二鬼月・下弦の伍)

恐怖政治で家族ごっこをしながら山に引き籠る、ちょっと歪んだ癖をお持ちの鬼との戦いを例に見てみよう。これは炭治郎にとって初めての十二鬼月との戦いでもある。下弦の伍なので、後に見るとただのザコ鬼なのだが序盤・竈門炭治郎立志編においては完全にボス級。.hackでいうスケィス、TOFにおける現代編のダオス、FF7Rにおけるセフィロスってところだ。とりあえず初撃で刀折ってくる。

炭治郎と禰豆子の慈しみ合う関係に嫉妬して、禰豆子を妹に欲するという現代なら完全に事案。だが家族愛に執着する敵の存在がここで丸々1話使って描かれるという好演出。ここまで話すともう分かると思うけど、『鬼滅の刃』という作品で説かれ続けるのは、”愛によって人は強くなれる”という事だと思ってる。この決戦で注目したいのは、歪んだ累の家族愛に対して炭治郎&禰豆子の兄妹愛が正しく勝利を収めることだ(あと、蟲柱の笑いながら毒を打ち込む狂気)。

 

本当の家族愛を思い出す鬼

結果で言えば、禰豆子の血鬼術”爆血”と炭治郎のヒノカミ神楽”炎舞”コンボでも倒すことは出来なかったワケだけど。アニメ19話の演出は神がかってたね。『ナルト 疾風伝』のサクラvsサソリ戦くらい動いてたし、アツかった。あと夢の中で母が出てきて鼓舞してくる演出もGJ。個人的にはこの後の20話で富岡さんに瞬殺された累の死の際、人間の時の親(自分で殺した)を思い出して謝りながら消滅していく姿に涙が止まらなかった。家族って、素晴らしいんだなぁって。『鬼滅の刃』ブームに乗っかっただけの有象無象は19話のヒノカミ神楽の演出にばかり注目して、20話はアウト・オブ・眼中だけど、この話を地上波でやったことは物凄いことだからね。アニメ一期におけるベストエピソードと言って良い。

ちなみにこの後の柱合会議もベストエピソードである(矛盾)。御屋形様が鬼滅隊員のことを「私の子」と呼ぶのもこの作品が家族愛をテーマにしてることの一端だよね。

 

無限列車編

父親から受け継いだヒノカミ神楽が鬼との戦いでの武器になるとして、炎柱・煉獄さんに話を聞きに行くエピソード。ここから皆の先輩、柱の面々も話に加わってくる。ストーリーが一気に加速するし、戦いも異能の嵐でド派手になるのがこの無限列車編以降。ここから先の戦いに比べれば、アニメ一期は児戯

 

vs魘夢(十二鬼月・下弦の壱)

乗客200人を乗せた列車と融合して襲ってくるいきなりの規格外展開。夢の中に引き込んでその中で自害しないと目が覚めないという覚悟無き者に対してはチート能力を持つ。「どんな鬼狩りだって関係ない、人間の原動力は心だ精神だ」と精神的に心を圧し折りながら幼気な子供達を洗脳して差し向けてくる悪鬼との戦いは煉獄さんがいなかったら普通に死んでたレベル。

ちなみに、ここで煉獄は家族の夢を見る。父親が自分同様に炎柱になったが急に辞めて、弟と一緒に「頑張って生きような」っていうシーンは今思うと中々に死亡フラグ

 

vs猗窩座(十二鬼月・上弦の参)一回目

煉獄さんの殉職戦。え、上弦って強杉内?と読者に印象付けるためだけの戦闘。ここでの戦闘に関しては語ることは他にない。でもこの後の煉獄さんの言葉には意味があったよね。これ以上良いこと言ってくれる先輩はいないだろうと今でも思ってる伝説の死に様だった。戦闘中の母親の回想で「強く優しい子の母になれて幸せでした」、最後は母親に「立派でしたよ」と言われながら息を引き取るのは、柱であっても同じ人間であること、その強さが家族のために鍛えられたものであるということを如実に表現していた。猗窩座についてはこの後に語るけど、上弦の壱の黒死牟の次に古い鬼という設定。そりゃ強い。そして、何を隠そう猗窩座は俺の一番好きな鬼であり、この記事で一番フィーチャーしたい鬼なんだよね。

物語はここから佳境に入ります。

 

vs妓夫太郎(十二鬼月・上弦の陸)

 

vs玉壺(十二鬼月・上弦の伍)

 

vs半天狗(十二鬼月・上弦の肆)

いやぁ、強かった。だが省略します
気になる人は9巻からの原作を読むべし。

鬼滅の刃 9 (ジャンプコミックス)

ここまでが中盤。原作内でも一番長く描かれた、鬼との死闘編と言い換えても良い。物凄くお粗末に省略したけど、それぞれの鬼との戦いと、柱たちの飛び散るパトスに本誌読者は毎週語るのが止まらなかった。俺も本当は書きたいんだよ? 決して書くのが疲れてきたワケじゃないよ? 頑張れ頑張れ! 俺はここまでよくやってきた!俺はできる奴だ!!

物語は最終局面・無限城編へ。

 

最終章 無限城決戦編

ここからは本当に瞬き禁止の戦いしかない。基本的には一体の鬼に対して数人の鬼狩りで攻略していくバトルロワイヤル方式になるんだけど。もうその時点で上弦の鬼たちの強さを物語ってる。一体一体がかなり長生きしてるのもあるけど、全員ラスボス級。さぁ紹介していこう。

 

vs獪岳(十二鬼月・新 上弦の陸)

 

vs童磨(十二鬼月・上弦の弐)

 

vs黒死牟(十二鬼月・上弦の壱)

省略します。

いや、待ってくれ、言いたいことは分かる。こいつらとの戦いは全部、省く事なんて出来ない超魅力的なエピソード揃いだ。善逸が雷の兄弟子穴埋め上弦と戦うのなんてクッソ胸アツだし、童磨戦とか俺超好きだからね。黒死牟戦に至っては柱クラス4人がかりというパレード、もう涙が止まらなかったさ。だが分かってくれ、ここで語りたいことは別にある。そして鳴女に至っては画像探すのすらダルい

 

vs猗窩座(十二鬼月・上弦の参)二回目

キ、キター!
そう、俺が語りたいのは猗窩座なんだよ!

実は女性は絶対に食べないという紳士鬼。というかさ、原作読んでる時、この戦い…なんか長くね? って思わなかった? この記事も大概長ぇけどな)そりゃあそうだろう。猗窩座ほど上弦で物語の主題に沿った敵はいないからな。あとアニメが人気過ぎて引き延ばされてたからな。

お気づきだっただろうか、猗窩座の技は全て生前の想い出が反映されている。「破壊殺・羅針」の陣の形、これ人間の時に妻だった恋雪が付けてた髪飾りと同じ文様なんだよね。大切な人の身に着けていたものとそっくりな陣が戦闘の最初に絶対に繰り出す技って、お前めっちゃ未練あるやん。そんな技。

技名すべて生前の想い出が由来

  • 脚式「冠先割/流閃群光/飛遊星千輪」
  • 砕式「万葉閃柳」
  • 滅式「鬼芯八重芯」
  • 終式「青銀乱残光」

全部花火の名前由来。大切な人と大切な約束をした時の背景が技名の由来って。お前めっちゃ未練あるやん。ちょっと、なんか、もう良い奴やん。さらに言うと、全身に入ってる刺青模様だけど。これにも設定がある。江戸時代は盗みを行うと刺青刑っていうのを受けたんだけどね。この刺青は病床の父親の為に薬を盗んでいた猗窩座の罪の意識が現れた結果なんだよ。そろそろ根が良い奴すぎて泣けてくる

極めつけは名前の由来。猗窩座って名前は無惨が名付けてるんだけどね。原作155話のタイトルにもある通り「役立たずの狛犬」っていう意味が含まれている。意味は「住処を守れなかった犬」。狛犬は守るものがあって初めて存在意義がある。でも守りたかった妻を毒殺されて居場所を失った猗窩座にはもう守るべきモノが無い。だから役立たずの犬。そんな意味がある。

 

とっくに失っていた強くなれる理由

そのことを思い出したんだろうね。炭治郎に首を切られても克服して、さぁ~、まだまだ死闘は終わらんぞい!ってなりそうだった恐怖の場面、結局最後は自決して消えていったワケだけど、これは何でなのかって所に繋がってくる。ここで首を切られたショック&恋雪に「もうやめて」と言われたことで自分の過去を思い出す猗窩座は、自分にはもう守るべき大切な人がいないことに気付いたんだよ。自分が強くなろうとしたのは、大切な人を守るためだったという事を思い出した。だからこその自決。だからこその炭治郎への感謝。強さを求めるのは、強くないと誰も守ることが出来ないからで、だから弱者である自分が嫌いだった。もう自分には強くなる理由も、強くなれる理由もないことに気付いたってことだ。感動をありがとう…。そして『鬼滅の刃』という作品のテーマを体現した良い人生・鬼生でした。

 

vs鬼舞辻無惨

略。長い、強い、白髪おじさん。
気になる人は最新巻を待ちましょう。

 

最終話「幾星霜を煌めく命」

舞台は現代。大正時代だった本編からすると、3世代くらい後の話。そこには炭治郎とカナヲの面影ある男の子2人が明らかな主人公オーラを出している世界だった。いや、なんだこれ。「妹が罪なき人の命を奪った時は腹を切って死ね」と鱗滝さんに言われていた時を考えると、同じ作品とは思えない位のハッピーエンドじゃないか!? こんなに幸せになってて良いの? しかも我妻性で善逸と禰豆子の面影ある2人が姉弟設定だと…つまり…善逸、おまえ良かったな…。

 

うぉおおお!これを、これを見たかったんだ!と叫びたくなる気持ちをグッとこらえて幸せな2人を祝福しましょう。「また人間に生まれ変わったら、私のことお嫁さんにしてくれる?」の有言実行。伊黒先輩マジ格好良いっス。この定食屋あったら1日4回は通う。柱全員、死んだメンバーは(ほぼ死んだけど)幸せな未来でちゃんと転生できたようで何より。

 

俺はこのコマを見て泣いた。富岡さんと錆兎と真菰だと…? この話は本当にファンのために描いてくれたんだなとギャオウした。生きていれば柱になってたであろう実力者の2人、死ぬはずだった富岡さん、今度は守るべき友として人生を送れているという幸せ。そしてこの姿を見れた幸せ。感謝です。

愈史郎は唯一の鬼として生き続けているっていうのも中々に良いラストだと思った。しかも珠世さんの絵を描き続けるという狂気の愛情。それでこそ愈史郎。合法ショタ。素晴らしい。

あとさ、ラストで描かれた竈門家の様子、先祖の写真を額縁に入れて飾ってるあれ、最高だよね。みんな笑顔で。ちゃっかり村田が入ってるのも嬉しい。

週刊少年ジャンプ(24) 2020年 6/1 号 [雑誌]

というように、ファンの期待をこれでもかと裏切らず描き切った見事な最終回でした。この作品を読んでて良かったなぁと心から思えた。

 

まとめ

守るべき大切な人達と当たり前に一緒にいられる世界で、鬼と戦うことがない幸せな世界。もう刀を持つ必要もないし、鍛える必要もない。けど、炭治郎の面影を色濃く受け継いだ炭彦くんは人並み外れた運動神経を持ってたよね。ここが面白いなって思った。

強くなる理由のない世界で、強いという設定。それはきっと炭治郎の「大切な人をもう2度と失いたくない」強い想いが現れたんじゃないかな。鬼はいないけど、幸せな世の中だけど、危険なことはたくさんあるし、何が起きるか分からない。だから、作中ずっと抗い続けた炭治郎の想いが成就して、子孫にも受け継がれてるんじゃないかと思った次第。炭治郎が、鬼殺隊が強く在れたのはいつも「大切な人を守るため」だったから。

ということで気持ちよく読了。
まったくもって良い作品でした。

俺も強くありたい。守るために。

『あひるの空』を漫喫で読んで泣く、これも一つの青春のカタチだと思うんだ

2004年の連載開始から、スポーツ漫画として最前線を走り続ける『あひるの空』。バスケと言えば、かの有名な歴史的ジャンプ漫画を思い浮かべがちだけど、ぶっちゃけ『スラムダンク』にも負けてない。と言うより、ジャンルが違う。これはバスケを題材にした青春大作だ。

あらすじ

九頭龍(くずりゅう)高校に入学した身長149cmの車谷空は、母親に誓った「高校最初のバスケの大会で優勝」の実現のためにバスケットボール部に入ろうとする。

しかしバスケ部は花園百春・千秋兄弟を始めとする不良達の巣窟になっており、部活動などできる状況ではなかった。だが、しつこく食い下がる空の純粋なバスケへの熱にかつてバスケをやっていた百春、千秋たちは心動かされていく。

そして空達のバスケット生活が始まった。

あらすじの時点で漂う「あ、バスケするまでが長いな」感。そんな印象を受けたのなら、正しい。俺も当時マガジン読みながら同じこと思った。そういう意味でも『スラムダンク』とは全く異なる滑り出しで(湘北高校はバスケ部がちゃんと機能していたからな)、どちらかと言えば『ルーキーズ』にジャンルとしては近いかもしれない。しかも特筆すべきは空の伸長が149㎝ってトコ。これが物語に大きく関わってくるし、小さいのに3Pシューターって事に誰もが心動く物語性があるんだよ。

更に言えば、この作品において”未来はない”。と言うと語弊があるが、主要メンバーの中でバスケを人生の柱にして、これでメシ喰っていくっていう人間性はあまり描かれない(横浜大栄の白石・豹、トビくらい?)。人生における高校時代を刹那的に描くことに特化しているからこその名作、青春漫画と言える。もし未来編を描くのだとしたら、連載終了後にTwitterとかで発表して欲しい。ただ、千秋の大学生編は観たい。

 

アニメ 『あひるの空』

アニメ、めっちゃ良いよね~。原作読んでる人は分かると思うけどさ、画力高くて、線が独特で、それが物語の雰囲気的にも良い演出になってるからさ。絶対にアニメじゃなくて紙で見た方が映える作品だと思ってたけど。良い意味で裏切ってきて、しっかり原作準拠クオリティに驚きながら観てる。

 

まさかの4クール放送

俺、てっきりクズ高校のスタメンが全員揃ったところで「俺たちの戦いはこれからだ…!!」っていうありきたりな残念エンドでアニメ終わらせると思ってたんだけど。まさかの4クール! 全く把握してなかった俺は、「いや終わらないんかーい、最高かよ~」って一人深夜に興奮してしまった。不覚。ただ、原作読んでた時はここまで来るのに本当に時間かかったから嬉しいな。俺、コンビニで立ち読みしながら泣いたからね。「ついに、ついにフルメンバー揃ったぁ」って。ここから怒涛の快進撃が始まるんだ!って。このことについては後で語るが、この時の俺はこの作品について何にも分かってなかった

青春の音が聞こえる演出

あとアニメになったことで何が良いかって言えば。(まぁ、これ以外の作品でも言えることなんだけど)音が付いたってことかな。でも他作品とは良さ具合が全然違くて、”青春の音”が追加されてるんだよ。バッシュが体育館の床を擦る音、ボールがバウンドして天井から響く音、ボールがゴールリングに当たらずネットをくぐった時の気持ちの良い音(蘇らせる…何度でもよッ!)。漫画には文字から想像する無限の可能性があるけど、実際に物語と一緒にSE聴くと、「あぁ~良いわぁ~」ってなるのが本音。

特に、30話で空のお母さん(車谷由夏・元日本代表)が空の試合を内緒で見に来た時に、体育館に響く音に耳を澄ませて「懐かしいわ…この音」っていうシーンの深みが爆発してたね。俺も学生時代、部活中に体育館の窓から外にプリズンブレイクして、風に当たりながら「良い風だ…」なんて呟いてたな…SNSじゃなくてリアルに。

というように、原作ファンであっても楽しめる(てかぶっちゃけ懐かしすぎて涙出てる気がする)。アニメ4クールでどこまでやってくれるのかも楽しみポイントだけど。横浜大栄メンバーがどんな感じで動くのかってのも要チェックだよね。マジで鷹山はやく出てきて欲しい。

 

原作 『あひるの空』

あ、ここからは猛烈にネタバレを含むので、アニメ派の人はご退室ください。

まず、現在単行本は50+1巻まで出てる。結構出てるなって思った? それはそうだろう。俺が中学の時からやってる作品ですから。チャリで来てたヤンキーもスーツ着て会社勤めするし、コミュ障だった俺が処世の為にアルカイックスマイルを会得するくらい、たっぷりと時間はあったからな。

 

あひるの空 THE DAY(1) (講談社コミックス)

そんな原作。最新巻でまさかの『あひるの空 THE DAY』とタイトル変更したのは衝撃だった。一個前の50巻がやけに分厚いから、本屋で並んでるのを見た時に「え! 最終巻!?」ってドキドキしちゃったよ(苦渋の決断で、マガジン本誌は2年くらい前に買うのを止めた)。そしてネーミングがストレートで潔い。”THE  DAY”って! 読者にとって待望のあの日をついに描いてくれてるってことか! って一目で理解した。タイトル見ただけで涙が出そうだったね。『はじめの一歩』で一歩と宮田が戦うみたいなもんだよ。

 

伝説の練習試合から1年

現実では13年。伝説のクズ高vs横浜大栄の練習試合は、俺の中で今アニメでやってる新庄東和戦と同じくらいアツい。この戦いで作品の根幹が完成した。空と鷹山の”来年”の約束は俺たち読者にとっての”未来”の希望になった。

運動系の部活やってた人達は多少なり経験してると思うんだけどさ。顧問の先生が仲良かったり、地域が一緒だったりすると、自然と仲良くなる他校の顔見知りができる。そんな中で、腐れ縁というか、不思議と公式試合でも良く対戦する奴が出てきたり。勝ったり負けたりを繰り返す中で生まれる感情は、友情とは全然違うんだけど、大事なんだよな。そんな相手とする再戦の約束ほど、青春を懸けるに値するものはない。ん? あぁ、俺にもそんな奴がいたよ。俺がやってたのバドミントンだけどな

とにかく、この約束でこの物語のゴールが確定した。物語の中の全てが結末に向けて動き出した。そういう意味では、アニメ版は未だ始まってもいないんだな。空と鷹山がした約束ってのはそのくらい重みがあったし、この試合で、トビ・豹、千秋・白石、百春・ヤックも各々に相手をライバル認定(こうして並べると大栄メンバーのステ高すぎて個別に潰されそう)。峯田もちゃっかり2年目は公式戦でスタメンデビューしてるし。いかん、文に収集がつかなくなってきた。要は、伝説の続きが今ようやく始まったんだなって、すごく実感してる。

 

今日の大切さは終わってから気付く

学生時代は、当たり前だけど全ての人間が明るく過ごせるワケじゃない。どんなに部活を頑張りたくても、家庭の事情や過去の経験から部活に入りたくても入れない人もいる。そういう”恵まれてない”他人を人間(特に中高生くらいの若い時代)は無意識に無視する傾向があるように感じる。俺もそうだった。不思議と、そういう可哀想な人(って言い方は正しくないと思うが)のことは視界に入っても認識してなかった。イジメとかそういう話じゃなくて、人間ってそういう生き物なんじゃないかと思うんだよね。

この作品を読んでると、そんな子供の時のフィルターがかかった景色が脳裏に浮かんでくる。無意味だと思って嫌々やってた体育館のモップ掛けも、誰かがやりたかった青春だったのかな。

もしかしたら、それは今も変わらないのかもしれない。俺も、めでたく今年で30歳を迎えるワケだけど(人生最終章始まったなって感じ、既に死にたい)。気付けば終わる20代、「精一杯生きたか?」 そう問われれば「生きた」と言える(主に仕事が辛すぎて)。でも、アッと言う間だったなぁって思うんだ。そして、一生懸命すぎて周りが見えてなかったとも思える。ふと周りに目を向けたら、自分よりも過酷な境遇の人間なんて幾らでもいて。そんな人達に胸を張って話しかけて、一緒に笑い話できるような、そんな人間になりたいな、30代は。だっていま生きれてる今日は、誰かがやりたかった青春かもしれないから。刹那的な今この瞬間を苦しんでいる人間がいるのなら、俺の眼が届く範囲くらいは一緒に楽しめるように努力したい。青春に年齢なんて関係ないんだよ。

 

あひるの空 コミック 1-40巻 (講談社コミックス)
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まとめ

この作品は甘くない。奇跡はめったに怒らないしご都合主義な少年誌的展開はない(まぁ、多少はある。異常に僅差で勝つ)。人生の辛さと楽しさを見事に教えてくれる。ゆえに一年目の夏の大会は一回戦で敗退する。そして二年目の横浜大栄高校との試合(THE DAY)も負けることは公式で確定してる。コレがこの作品の良いところ。青春の酸いも甘いもしっかりと描き切る(ここに書くとキリがないから書かないけど、里見西の新と円の未来編とか、授業サボって体育館で隠れながら円が空に「同じ位好きな人がいるの」って言う幸せな失恋回とか、女性目線の青春もしっかり描かれてるんだよ!最高なんだよ!)そこが良いんだよ。

なんか途中すごく懐古主義的な独白になってしまったけど、不快に感じた人がいたらゴメン。たぶんシャッフル再生してるApple Musicからミスチルの『sign』流れてきたからだわ。あと、もしアニメ新規・もしくは原作未読でここまで読んじゃった不幸な人は、アニメを機に原作も読んでください。大丈夫、こんな記事に書いてあることぐらいネタバレした上で読んでも全然楽しめる。そもそもネタバレで霞むような作品じゃない

大人になって読めば読むほど響く。

俺は漫喫で声出して泣いた。

俺的2020上半期アニメ・オブ・ザ・イヤーは間違いなく『空挺ドラゴンズ』

「2020年良かったアニメ作品は?」と聞かれた時、いの一番に頭に浮かんでくる作品、それが『空挺ドラゴンズ』(2020_05_14現時点)。

あらすじ

各国が龍と呼ばれる生物から生産できる食料や資材を欲して空を目指してから半世紀後の時代。世界には、飛行船に乗って捕獲した龍を加工して売りさばく龍捕りと呼ばれる職業が誕生した。希少となった現役の捕龍船クィン・ザザ号には、龍が大好物のミカを始め、新人龍捕りのタキタや龍捕りの父をもつジロー、諸事情で地上を旅立ったヴァナベルなど様々な龍捕りが搭乗しており、それぞれが事情や目的をもって共同生活を営みながら空の旅を続ける。

 

過酷な航海の中でも輝く日常

重労働で龍が取れないと賃金も低く、空を飛び続けるだけでも相当な労力を要するという超絶ブラックな職場ながら、乗組員の笑顔がとても眩しい。たまに港街に降りた時なんか、一張羅を着て陸の娯楽を堪能する姿に生命力を感じる。ただ、この解放っぷりは「いつ死んでもおかしくない」という感情が行動として表に出た結果なんだが地下から地上に出れた時のカイジみたいなもんだ。ひと時の楽しみだと割り切っているからこその切なさも微妙に漂わせる。その姿とこれを表現した作者に拍手。

 

若手乗組員の成長物語が泣ける
(ジロー成長物語)

若手と言ってもジローとタキタしかいないけど。オジサンばっかの中で歴の浅い2人は思春期ということもあって、旅の中で精神的な成長を経験していく。その描かれ方が最高。街で出会った女の子(カーチャ)とひと夏の恋ならぬひと街の恋をするんだけどね。街を発つ朝、一度も街から出たことが無いというカーチャの為に空中ドライブを敢行。その粋な演出が甘酸っぱいながらも見事なジュブナイル。空で朝焼けを見ながら「君も一緒に(行こう)…」って言おうとするジローに対して、後ろから泣きながら抱きしめて「舌、噛んじゃうよ」と、やんわり断るカーチャも非常に情緒的なんだよ。

明らかにお互い好きなのに、空と陸、2人の境遇と立場を考えて別れを決意する姿にドラゴンも霞むほどの輝きを見た。この後ジローは髪を短く切る(しかも切るのはカーチャってのがまた良い…)。失恋後のキャラデザ変更、ちょっと大人になった少年の成長の表し方を本当に分かってる。

 

若手乗組員の成長物語が泣ける
(タキタ成長物語)

龍の回廊での小型龍捕龍中に超高度から落ちるタキタ。120%死んだと思われたが、何と地上まで龍にしがみ付いていたことで地面に落ちても生きていたというご都合奇跡。だが、この陸でタキタが成長を果たすということの方が、視聴者的にはよっぽど奇跡だった。

自分が捕まってきた龍が落ちたのはその親龍の子がいる住処(付近?)。そこで、生きるために子が見ている隣で親を解体・調理するという中々に倫理委員会案件。最初は嫌がっていたタキタが身体を回復するために泣きながら親龍を食す姿は必見。居合わせたマタギの姉さん(アスケラ)の「仕留めた獲物はちゃんと食べる。食べた分だけ良く生きる」にはこの世の摂理が含まれてた。それを聞いたタキタはまた号泣。そして食べる(タキタ可愛い)。結局、この後この龍の子を天空の群れに戻すために再び空を目指します。この流れ本当すこ。その過程でのクィンザザ号メンバーとの再開シーンはアニメでの一番の盛り上がりポイント(っていうか最終回冒頭はこの話→龍の回廊)。

 

捕食されるだけじゃない龍の魅力

この作品が龍をただの獲物として扱う作品なら、俺はここまで惹かれなかったと思う。時には神秘的に、時には気色悪く、人知の及ばない”空の神”として描かれているからこそ、龍を獲ることの困難さがしっかりと感じられた。

少し、俺の中で印象的だった龍をエピソード毎に紹介したい。

 

光る龍

アニメ3話「光る龍と」にて、神秘的な龍との邂逅。この話は序盤の話の中でも群を抜いて心を揺さぶってきた。まず導入から”嵐の中で光る龍に救われた”という伝説話をジローが語る流れが良い。船乗りの間の伝説ということで真に受ける者が少ない中、ミカだけは「いや、いるかもしれねぇぞ」って否定しない(食べたいだけかもしれないが)。結論から言うと”光る龍”はいた。しかも嵐の船を救うっていう聖人のような習性と見た目。子供の頃の夢物語が実現したことでジローも思わず笑っちゃうところが◎、少年の成長を感じ、物語全体に深みをもたせる話となった。雷雲の中に常に晒されてるからか、メチャクチャに帯電したけど、スタンランス効かないんじゃ…

 

超大型龍

アニメ最終回でその姿を見せた、龍の回廊のバカでかい超大型龍。ゲームだったらクリア後に現れるクラスの裏ボス級。え、何、天空にはこのレベルのボスがうろついてるの…? 普通の龍が二階建てアパートだとしたら六本木ヒルズくらいでかい、月並みに言って規格外。コイツの存在を最終回で魅せてくれたことによって、龍の底知れない恐ろしさと神々しさを余韻としてもたらした。ちなみに作中ではコイツは捕龍できず。またどこかで出てきたらかなり胸アツ。FF5で言うところのオメガ

 

まとめ

どうだろう。平時はさながら某ファミレス漫画のようなワイワイ感ある労働環境。ひとたび龍に出会えば一触即死のリアルな捕獲描写。そこに龍の料理のスパイスが効くことで見事に現代版・漁師作品が完成した作品なんだよ。ジブリのパクリとか色々言われているが、そんなことはない。圧倒的なオリジナル性がこの作品にはある。というか、仮にパクリだとしても良いんだよ。リアルタイムでジブリ並の作品見れてるって歴史的快挙だからな。チョー気持ち良い

空挺ドラゴンズ コミック 1-8巻セット
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他、『空挺ドラゴンズ』の人気商品はこっち

ちなみに、原作ではミカのちょっぴりセンチメンタルな成長が描かれる展開が見れるし、より人間ドラマが濃くなってる。アニメにハマった人は原作も見て損はない(特にナウシカ好きは読んだ方が良い)。

殺人犯の10人に1人は相手が好き過ぎて殺すという矛盾統計

『花とアリス 殺人事件』の、何とも言い難い名作オーラを感じつつも、つい最近まで未視聴だった俺を殴りたい。これは現代における愛憎の一例、と見せかけた友情物語だ。

史上最強の転校生、アリス。史上最強のひきこもり、花。二人が出逢ったとき、世界で一番小さな殺人事件が起こった。

石ノ森学園中学校へ転校してきた中学3年生の有栖川徹子(通称アリス/声:蒼井優)は、一年前に3年1組で起こった、「ユダが、四人のユダに殺された」というウワサを聞かされる。さらに、アリスの隣の家が<花屋敷>と呼ばれ、近隣の中学生に怖れられていることを知る。その花屋敷に住む「ハナ」ならユダについて詳しいはずだと教えられたアリスは、花屋敷に潜入する。

そこで待ち構えていたのは、不登校のクラスメイト・荒井花(通称ハナ/声:鈴木杏)だった…。

 

登場人物の軽快な会話が気持ち良い

「コラぁこの悪魔! 手羽先欲しいか? やらねぇよ~!」という仕草と発言ともに登校中にエンカウントした危険度AAAランクの男子生徒に対して「朝っぱらから鶏肉しゃぶりながら人の事罵りやがって、手前の方がよっぽど悪魔っぽいんだよコノヤロー」とアリスが言うシーン。この時俺は、この映画面白いじゃん…と確信した。ぶっちゃけこのシーンだけでも見て欲しい。西尾維新作品みたいな、登場人物の言葉のドッジボールで相手をジワジワと蔑むのが好きな人は、きっと俺みたいにココでこの作品にのめり込む。

 

次々と明かされる教室の秘密

転校してきたアリスは「1年前、教室で殺人事件があった」という眉唾の噂を耳にする。その死んだ男子生徒の座っていた席に座ったからという理由で、クラスメイトに遠巻きに避けられる流れ。調べていくとどうも「男子生徒は4人のユダに殺された」「死んだ男子生徒の名前はユダ」「ユダには妻が4人いた」と一見理解不能な暗号めいた情報だけが集まっていく。もう本当に出てくるキャラがブッ飛び気味で軽快(警戒)。そして、このサスペンス染みた展開で、どういうことだろう? と一瞬でも考えたとしたらもう最後まで観るしかない(そう、俺のように)。

 

詳細を調べようと、殺人事件のいきさつを把握しているという花の家に乗り込むアリス。ここでようやく花とアリスのゴールデンコンビが邂逅する(つまり、なんと作品全体の半分近くを消化するまで主人公の一人である花は出てこない )。

 

罵りながら深まる友情

ここからは正直、前半の導入部とは全く違う作品になる。花とアリスの一夜の大冒険編って感じ(やってることはただのストーキングとパパ活)。ユダの生死を確かめるべくユダの父親を追う2人。まず、この時の2人のすれ違いとアプローチの違いが面白い。花は理詰めで綿密な計画を立てるタイプ。アリスは行き当たりばったりだけど、その人当たりの良さから結局上手く行っちゃうタイプ。この2人が揃うことでの相乗効果が深みのある物語を生んでる。

アニメの世界にとどまらず、頭脳派タイプと行動派タイプが揃った時にお互いの良さが爆発的に向上するってのは良くある話だ。ヒーローにはサイドキックが必要だもんな。まぁ、花とアリスの場合はどっちも行動派だし、どちらも特に猪突猛進馬鹿ってワケではないのだが、要は長所の話。

 

車の下の告白

このシーンの殆どが花の語り(回想&罪の告白)で構成されてる。でもここがこの物語における謎の解答パートだ。ここで一気に全ての謎が解けていくのが最高に気持ち良い。花には最初から全部わかっていて、その上で、アリスを一日付き合わせていたというのもなんか面白い。っていうかユダの真相と最期の瞬間がかなり面白い(いや、アナフィラキシーは馬鹿にしちゃいかん! 俺もクマバチに首の動脈付近を3回ほど刺されたことあるけど、あれ本当に泡吹いて悶絶して糞尿垂れ流すからなッ)。

何よりも、ここで自分の感情を吐露する花の描写・鈴木杏の演技が絶妙なんだよ。アリスの声を当ててる蒼井優も、このシーン以降は少し敵意の無くなった声になって、感情を表に出した花に対して一気に心の距離が縮まったっていうのが表現されてる気がした。このシーンにこの映画の良さと、主題である花とアリスの全てが詰まっていると言っても決して過言ではない。この夜、ゴールデンコンビは誕生した。

 

友情のはじまり

「あたしのダチがアンタに話があるんだよ」ってアリスが言うシーン。いつのまにかダチになってる!  いいぞこういう友情物語は好きだ。一気に世界が明るくなった気がする。このセリフを聞くためにこの映画を観たんだ。

殺人事件の10%は痴情のもつれ・男女関係のトラブルで相手を殺してるって法務省のデータを見たことがあるけど、まさにそれを暗示しているかのような世界一小さい殺人事件でした。でもそれで深まる絆もあるから愛ってのは難しい(自分には愛なんてよくわからん)。

花とアリス殺人事件
※視聴用リンク

というワケで、『花とアリス 殺人事件』良い作品でした。

実は実写版は観てない(本作はロトスコープを用いたアニメ)んだけどね。そっちもファン多いからタイミングで観てみようと思う。本作で描かれた友情の始まりに対して、友情の終わりが描かれているみたいだからなおのこと楽しみ。

『としまえん』行こうって言う女は絶対に信用しちゃダメ、絶対

開始早々にモブが犠牲になる映画。それが『としまえん』。作中のニコ生実況者が早々にエスケープする時点で感じる通り、これは駄作だ。でも見てしまう。それがホラー好きってもんだ。

 

簡単なあらすじ
老舗遊園地としまえんを舞台に、都市伝説の『としまえんの呪い』を実践した仲のいい女子大生5人組が、一人ずつ姿を消していくという、元NGT48の北原里英が主演したジャパニーズホラー映画。

撮影には『としまえん』が全面協力し、実際の都市伝説の噂も背景にして怖さを演出。

 

小休止とみせかけて

正直に言おう。俺は『自殺サークル』『高速ばあば』、もしくは『ひとりかくれんぼ』と同じ類だろうと思ってこの作品を視聴した。つまり、小休止だ。ホラー映画観すぎの脳ミソのご褒美タイムとでも言えば聞こえは良いだろうか。俺的最恐ホラーは『死霊館』なんだけどね、ジェームズ・ワン監督レベルのホラーを一日に3本とか観てると脳が疲れるんだよ。「あの~!そろそろ休憩頂いても良いでしょうかァ!?」って、脳が半ギレで抗議してくる。バイトですら休ませなきゃコンプラ的にNGな昨今、脳も休ませなきゃイカン。

さぁ本題に入ろう。本作は現実にもある遊園地・としまえんを舞台にしたホラー映画だ。女子大生5人がとしまえんのお化け屋敷を訪れてからストーリーは動き出す。開始15分で取り敢えず一人餌食になるんだけどね。そこからが本番。最初餌食になった女子大生から芋づる式に蔓延していく被害の嵐。そう、『着信アリ』と似た構成だ。柴咲コウ好きの俺はここで一回当時の恐怖を想起した(ちなみに堀北真希の方が好き)。

毎回この手のJホラーを観ると、なまじストーリーが入り組んでいるモノが多く。その上、答えは視聴者に丸投げするというクリエイティビティを履き違えまくっているから厄介だ。脳を休ませることすら叶わんのかコイツらは。

 

そもそも「としまえん」と言えば

昔から「お化け屋敷」には本物が出るとホラー好きの間で噂されていた(というか、ホラー好き以外にも結構有名かも? なんかみんな知ってる気がする)。俺が知ってるだけでも火の玉が見えるとか、全自動&スタッフ無しで運営してるハズなのに”明らかに機械じゃない何か”を見たりとか。まぁ、俺は心霊スポットには行かないと心に決めているので体験してないんですけどね…。ホラーは映画だけで十分だ。

他にもミラーハウスに幼女の霊が出るとか、古い洋館(個人的にはこっちの方がヤバイ)は取り壊しようとする度に呪いが降りかかるとか、怖い噂が絶えない。それをどんな感じで映画化してくれるのかなぁと思ったらまさかの噂スポットてんこ盛りで、そこに関しては「やるな」と思ったのが本音。中々にツボを弁えておる。と、思っていたが本編全体に関してはやっぱり内容がよく頭に入ってこなかった(ちなみに作中後半クライマックスの主戦場に選ばれたのは「電気室」)。強制的に脳を休ませるため、俺は考えることをやめた。

zoom飲み翌日の二日酔いの脳ミソにとってはちょうど良かったと言える。

キタリエは可愛い。

映画『としまえん』
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