ついに地上波で放送される『A.I.C.O. Incarnation』は現実でも起こり得るバイオSF

2018年3月に「面白いアニメがNetflixから出たらしい」という情報が俺の耳に入った。『A.I.C.O. Incarnation』というそのアニメは、一つのサブスクで独占配信なのが勿体ないと思える程のストーリーで、アニメ好きに強烈な印象をもたらした。今日は、2020年7月より満を持して地上波放送される本作について語りたい。

「あらすじ」

2035年、日本。黒部峡谷一帯では医療目的の人工生体の研究のための研究都市が形成されていた。その研究都市に属する桐生生命工学研究所にて起きた人工生命体暴走事故「バースト」。それにより渓谷一帯は人工生命体「マター」によって埋め尽くされ、政府によって管理がされる危険地帯になってから2年が経過していた。

バーストの事故によって家族を失ったうえ、自身は交通事故で重傷を負い、黒部平野に位置する桐生生命工学研究所に併設された桐生病院にて、リハビリを続けながら学校に通っていた橘アイコは、夏休みの1日前に転校してきた神崎雄哉によって突如拉致され、人工生体開発者である黒瀬進に引き合わせられ、信じがたい事実を告げられる。Wikipediaより引用

 

 

簡単な作品の概要

まずは内容ではなく製作陣について。

原作・制作はBONES、そして村田和也監督(コードギアスの助監督でありガルガンティアの監督)、脚本家として知られる野村祐一さん(エウレカ・コードギアス・DTB、最近だとキャロチュー)が構成という鉄壁の布陣。

そしてキャラクター原案:鳴子ハナハル。『COMIC快楽天』の表紙と言えばハナハル先生、『少女マテリアル』と言えばのハナハル先生だ。『彗星のガルガンティア』繋がりで起用されたのかな? なんにしてもGJ。これだけで観る気沸いてくるよね。

 

 

遠い未来の話じゃない

俺が第一話を観た時にまず思ったのは、”人工的な肉体をクローン技術で生み出して人間の治療に用いる”ってのは、全然未来の話ではないなってことだ。実際に(表向きには)動物のクローン臓器を人間に移植する研究も進んでいるし、その生命倫理問題は某有名SF雑誌でも何度も取り上げられている(俺の愛読書)。

だから、これは大枠の設定だけで言えば”近未来SF”に分類されるんだと思う。『攻殻機動隊』のように一足飛びで未来って感じじゃないだけに、妙に現実感を感じて物語に没入することができた。

 

俺的SF概念

そもそも俺的にSF作品ってのは実現可能な限界範囲の中で未来を現わしているものなワケで、「こんくらいだったら科学的にいつか辿り着きそう」っていう塩梅を客観的に感じれるか否かで印象が大きく変わってくる。その点で本作は100点。しっかりとサイエンスなフィクションしてる。

SFという分野は、現実の技術が進むのに比例して更なる未来へ連れて行ってくれるから好きだ。まぁ、車はいつまで経っても空を飛んでないし、俺が生まれた時から最後の物語と言い続けて最近7作目をリメイクしているゲームすらあるのが我が国の現状だが。頑張れ化学班! 徹夜すればリナリーが美味しいコーヒー淹れてくれるぞ。

 

 

本当の自分とは

自分の身体が本物に似せて作られた偽物だという衝撃的な事実を突きつけられるJK。しかもそれだけに留まらず、本当の身体は実の母・弟を巻き込んで被災地の中心部にあるという残酷な告白。この容赦ないテクノロジーの暴力と、かなり練り込まれた設定はSF好きにとってはかなりツボ。

初めは母&弟を助けるために自分の身体の暴走を止めに行くっていう王道展開なんだけどね。話が進むにつれて、自分の本当の身体にも意思が宿っていることに気付く(だいたい同じタイミングで視聴者も気付く)。自分の意思は確かにここ(頭の中)にあるのに、もう一人自分がいると知った時、人間はどういった行動を取るのか。そして、もう一人の自分はどういった行動を取るのか。ここが面白い

「まとめ」

独占配信っていうとさ、なんか低予算クオリティな感じをイメージしがちだけど。俺はこの作品を観てからオリジナル作品も捨てたもんじゃねぇなって思った売れてる企業は大体映画作るからな。それは資金が豊富なワケで。

地上波で放送されたらもっと多くの人に観て貰えると思うけど、これは本当に良いSF作品。

酒は飲んでも飲まれるな、『ぐらんぶる』で描かれる日本教育の闇は俺たちにとっての光

2014年から漫画連載、2018年にアニメ化、そして2020年に実写映画、順調にその勢力を伸ばす『ぐらんぶる』。だが、その爽やかなビジュアルに騙されてはいけない。これは常軌を逸したノスタルジック作品である。

『あらすじ』

海が近くにある大学への進学を機に、おじが経営するダイビングショップ「グランブルー」に居候することになった北原伊織。そこで出会ったのはとびきりの美女、そして酒とスキューバダイビングと裸を愛する屈強な男たちだった。そして、元が馬鹿で無神経かつ鈍感な性格の伊織は彼らとの暴走にのめり込んでいく。Wikipediaより引用

 

 

あの時、確かに輝いていた

キャンパスライフが蘇る

あー、結論から言うとこれはダイビング漫画ではない。ダイビングは要素の一つであって、表紙の透明感にジャケ買いしてしまうことなきようご注意。平たく言えば、大学生の時の、あの、毎日のワクワク感を思い出させてくれる青春ギャグ漫画だ。さらに分かりやすく言えば『もやしもん』に近い(いや、『監獄学園』かな…)。本格ダイビング漫画が読みたい? じゃあ『あまんちゅ』読もうぜ

 

心打つ青春の一遍

他のダイビング漫画への風評被害(と、俺の株価ストップ安)が発生すると不本意なので断っておくが、『あまんちゅ』好きはたぶん『ぐらんぶる』も好きだと思う。滅茶苦茶なことをやって、大学生という社会のゴミクズを圧縮したかのような登場キャラの面々は、一見すると社会不適合者(そして正真正銘の馬鹿)。でもその実、現代の若者の心理を代弁するPresidentである

 

 

海×青春=Grand Blue

そこに恋愛(偽装)・友情(打算)・勉学(浅学)という学生時代における3大問題が絡まり、若者ならではの純粋さがケミストリーを起こした結果、何故か真面目な青春漫画の枠をキープしている。更にダイビング要素ですよ。日本の大学制度を経験した世代だったら絶対にノスタルジックになる要素がいくつも詰まっているってことだ

 

 

誰しもが夢見た

美女に囲まれた生活

もはやこの系統の作品には必須と言っても過言ではない”美女”の存在。例にもれず本作もバッチリ揃えてくれました。男子が馬鹿をやって盛り上がるストーリーにおいて、魅力的な女性キャラは必須。故に、ご都合主義なんか知らんぷりで美女を揃えることが命題になるのだが、完全に網羅。「ここで恥を掻き捨てられない作品はダメだ」とでも言わんばかりに期待に応えてくれた。ハラショー。

文化祭編とかね、色々と青春を思い出すよね(まぁコミュ障の俺は模擬店はバックれたけど)。文化祭→打ち上げ→文化祭というヤクザもびっくりの酒盛り具合は今考えるとアルコール摂取量が致死量超えてたけど、今の大学生も打ち上げの方が盛り上がるのかね。いや、コロナブレイクを経た今は大学に通う事すら最小限になっていると聞くので、文化祭すら存在が危ういのだろうか…。そう考えると、あの頃の馬鹿やれた時代は良き時代である(※学生の本文は勉学)

とにかく、本作の女性は最高に魅力的。
なんか女性キャラは作画力も高い気がする。

 

 

アニメ版『ぐらんぶる』

とにかく原作の最初数話を読むかアニメを観れば、前述の内容はすぐに納得できると思う。ちなみにここで少しアニメの魅力を語らせて貰うとすれば俺から言っておきたい事は一つだけ、主題歌は湘南乃風だ。こんなにこの作品に合っているアーティストはいなかったと断言する。

衝撃を受けた人も多いと思うが。まず、アニメ本編が始まる前にたっぷりと尺を取った上記の注意喚起が流れる。そんなアニメある? 俺は今から実写映画も不安だよ。それもそうだ、なんせ主人公の伊織は大学入学と同時に引っ越してきて入学式前日からツブれる。「このご時世によく放送したなぁ」とアニメを観ながら思った記憶ある。そう、この作品は酒カス作品。

「全員の好みが一致する酒は無い、だから全員が辛い酒を飲もう」という暴論でスピリタスを強要。肘で顔面殴打しても怒らないのに水を飲もうとするとガン切れというアルコールハラスメントを超えた先輩テロリズム。PTAもびっくりのモラル無視表現には日本の若者のリアルな腐敗具合が現れていて清々しい。懐かしいなぁ…俺の友達も、大学の時はビール瓶を手を使わずにイッキしてたなぁ

 

※余談

完全に余談だが、俺も多少は酒に強い方だと自負していた。学生時代はどんだけ飲んでも酔わなかったからさ、幾らでも飲めるとタカをくくっていたんだ。でもね、社会人になってからこの自負は即・溺死。世の中には、物理法則を超えて誇張抜きに樽ほど飲む奴がいるということを骨の髄までホルマ(おっと!ホルマリンなんてアルコール度数低い低ィ!)スピリタス漬けにされて理解する。世の若者(20歳以上)は注意して欲しい…社会は鬼の巣窟である。

 

 

実写版『ぐらんぶる』

自粛の影響で後ろ倒しになったので、公開日時は未定なんだけどね。映画化と聞いて、「これ実写化したらアカンやろ」というのが俺の率直な意見だった。だって男性陣、服着てる方が少ないし。むしろよく出演OKしたな事務所。

キャストは若手が多い印象。ネクストブレイク大集合みたいな感じか~なるほどねぇ~まぁ大学生の話だもんな、と思って一通りスタッフリストへ目を通していたら俺の目に飛び込んでくる”浜岡梓/小倉優香”…………あ、ふーん…そうなんだ、へぇ…まぁ…アレだな、何て言うか、あー………そうか、コレ、アレだわ。あ~~~~~~~~~~~、り!  梓さんをリアル峰不二子が演じてくれるのだとしたらアリです! ありがとうございます! 楽しい夏になりそうだな!

『まとめ』

と、メディア毎に本作のブッ飛び具合を紹介してきたが。やっぱり俺は漫画が好きだったかな。アニメは沖縄編で終わったけど(単行本で言うと6~7巻?)、ここから妹が監視カメラ仕掛けて、合コンして、助教授の股間を潰して……あぁ、馬鹿やってんなぁって、何かよくわからんが、どうしようもなく学生時代を思い出す

中国を筆頭にアジア諸国との教育格差が開く一方の日本の大学制度(東大はアジア大学ランキング1位→7位)。大学で勉強を頑張っても就職に直結しないとか、色々問題があるが故の低俗なモラトリアム期間が日本を腐らせているのは明らか。でも、あの何でもない日が宝物だった、そして社会人になった今も宝物であるという事を思い出せる稀有な作品。過ぎたことは変わらん。その分いま死ぬ気でやりゃあ良いんだよ。

たぶん実写化でまた一気に知名度が上がると思うので、その前にぜひノスタルジーに浸ってみては?

いいから黙って脳ミソ空っぽにして『スーサイド・スクワッド』観ようぜ!

2016年に公開された、DCコミック『スーサイド・スクワッド』実写版。アメリカ本国では酷評の割にヒットするという謎の社会現象を引き起こしたことでも知られるが、フラットな心で観れば相当イケてる作品かと。あとハーレクイン可愛いよ。

【あらすじ】

スーパーマンの死から数ヶ月後、米国政府の高官アマンダ・ウォラーは新たなるメタヒューマンへの対抗策として死刑や終身刑になって服役していた犯罪者を減刑と引き換えに構成員とした特殊部隊タスクフォースX、通称「スーサイド・スクワッド」を結成する[3][4]。メンバーはベルレーブ刑務所に収監されている殺し屋のデッドショット、元精神科医のハーレイ・クイン、元ギャングのエル・ディアブロ、強盗のキャプテン・ブーメラン、遺伝子の突然変異したキラー・クロック、縄を使う暗殺者のスリップノットなど危険な犯罪者から選ばれた。彼らはリック・フラッグ大佐の指揮下に置かれて米国政府のためにリスクの高いミッションに使い捨てとして利用される。各メンバーは反乱するか、脱走を試みると爆発するように設計されたナノ爆弾を首に移植されている。Wikipediaより引用

 

 

悪党大集合

Processed with MOLDIV

この作品の魅力はDCが誇る悪人大集合すること。 というかそれしか無い。『バットマン』シリーズを観ている人にとってはお馴染みのジョーカー(ジャレット・レト)、ハーレクイン(マーゴット・ロビー)が大活躍ってだけで観る価値がある。俺はヒース・レジャー演じるジョーカーも、ホアキン・フェニックス演じるジョーカーも好きだけど、ヤンチャなジョーカーも良いね!って感じ。あと声優が子安武人さん(リゼロのロズっち)てのも◎。何しでかすか分からない感じは歴代1位だと思う。

あと、ウィル・スミス出てたんだ。ぜんぜん知らなかった。彼が演じるデッド・ショットとハーレクインのダブル主人公みたいな構成は政治を感じたけど良いバランスだった。

女・子供は殺さないデッド・ショットと、ジョーカーに一途な想いを抱き続ける囚われのハーレクイン。いや完全に王道主人公の設定…! でも安心して欲しい、ちゃんと人殺すから、躊躇いなく。でも仲間想い。最高かよ。ジャンプで連載しよう

 

ハーレクイン可愛すぎ問題

可愛いんだけど、サイコパスなんだよな。でもそこが魅力。メチャクチャにエロくて綺麗なのに、サイコパスなんだよ。つまりサイコパスなんだけどさ。そこが魅力なんだよ。

本作では貴重なジョーカーによる調教&洗脳&惚れるシーンがあるので必見(でも結局は自分から求めてるところが愛い!)。あとメチャクチャにジョーカーに一途なの本当すこ。友達になったら優しい、近所のヤンキー(サイコパス)。問題だ、これは問題だ。

 

 

ドンパチやれば全て解決

首に小型爆弾埋め込まれて、政府の犬として働くフリをする悪党共のスキあらば逃げる&殺す感が良くも悪くもカオスを生み出してくれてた。観てて「ふふッ…こいつら面白れぇな…」って思わず漏れちゃう感じ、『メン・イン・ブラック』とかに近い(まぁウイルスミス出てるし)。

主要メンバーの中々にダークな過去も明らかにされるんだけど、その暗さを引っ張ってシリアスな雰囲気に持って行き過ぎない適度さは秀逸だった。DC系の作品は『ジョーカー』しかり、結構シリアスな方向に持って行きガチだからな(いや、『ジョーカー』は最高だったが)。今回みたいに何も考えずに悪党大集合! ドッカン! は観ていて爽快感があって気持ち良い。

しかも前述の通り、個々のルーツを描くことで、今まで倒すべきヴィランとしか認識されていなかった悪人たちも人間であるという事がしっかり描かれていた。これは昨今のアメリカ映画が漸く到達してくれた「正義は一つではない」という考え方を如実に表してくれていて非常にGood。今まで白塗りで理解不能なことをしてきた敵が、仲間のため、家族のために戦場に赴く姿なんて、震えるに決まってるちなみにジョーカーは本作に置いて是が非でもハーレクインを助けようと、あの手この手で邁進してくれる。

【まとめ】

総括すると、脚本としてはどうだったのかなぁと思う点はある。でもさ、たまにはこういう何も考えずに観れる映画も良いと思うんだ。何も考えたくない時に観れる映画って実はそんなに多くないぞ。俺が常々思っている一番良くないことは、”他人の評価を自分の評価と勘違いすること”だ。星の数が少なくても良いじゃん。友達も星の数で判断するのか? しないでしょ。判断するのは自分自身だ。…という、唐突なシリアス締めたぶん俺みたいな情緒不安定な人間はGoogle的には★☆☆☆☆。

続編も期待してます。

サブカル女がこぞって評価する『冷たい熱帯魚』を実話踏まえて語る

2010年に発表された園子温監督による邦画『冷たい熱帯魚』。これが1993年に起こった「埼玉愛犬家連続殺人事件」が元になっていることは周知の事実。でも世のサブカル女は観る。その愚直な姿勢、単純にすげぇなって思うけどさ、ただ実話が元になってるって知識しかなくない?それ、勿体ないから。この記事ではそれを補足すべく、実際の事件にも触れながら作品の魅力を語る。

【あらすじ】

死別した前妻の娘と現在の妻。その折り合いの悪い二人に挟まれながらも、主人公の社本信行は小さな熱帯魚店を営んでいた。波風の立たないよう静かに暮らす小市民的気質の社本。だが、家族の確執に向き合わない彼の態度は、ついに娘の万引きという非行を招く。スーパーでの万引き発覚で窮地に陥る社本だったが、そんな彼を救ったのはスーパー店長と懇意にしていた村田だった。村田の懇願により店長は万引きを許す。さらに大型熱帯魚店を経営する村田は、娘をバイトとして雇い入れる。その親切さと人の良さそうな男に誘われて、社本と村田夫婦との交流が始まる。 しばらくして、利益の大きい高級魚の取引を持ちかけられる社本。それが、村田の悪逆非道な「ビジネス」と知り、同時に引き返せなくなる顛末への引き金となった。Wikipediaより引用

 

 

人間を透明にする男

「俺は警察もヤクザも、全部を敵にしても自分の力で生きてきた」と台詞にある通り、作中の村田(でんでん)は巧みな話術と暴力で人間を手玉に取って生きる姿が描かれる。

残虐性が話題になりがちな本作だけどさ、人間の「生きる」という本能を描いた良作だと思う。結局は金が動機ってのは残念なポイントではあるけど、誰にも頼らずに生きると決めた人間ってのは他人の命なんて関係なしに生きるための金を調達するんだなって実感できた。

ちなみに、実際の事件が元になったと言っても前半から中盤だからね。リアルでは熱帯魚店じゃなくてペットショップだし。このペットショップ「アフリカケンネル」の名前はあまりにも有名で、当時のニュースを観てた人とかはこの名前を聞いただけで不快感を露わにするんじゃないだろうか。綺麗にエンタメ化されてるのは園子温監督の手腕が良すぎるからだ。

 

 

徹底した犯罪哲学

全く持って褒められたものではないが、この元になった事件の首謀者であるSには犯罪哲学があった。上記はその一部

羅列するとちょっと義賊っぽい人格と錯覚しがちだけど、全くそんなことはなくて、ちゃんとシリアルキラーだから安心して欲しい。ちゃんと人類の敵。というのも、5番目に挙げた「透明にする」というのがかなり周到な死体処理の哲学だからだ。この事件の異端さを最も現わしているこの考え方は映画を観てれば分かるだろうから割愛するけど、この作業に対して留置所で「面白い・楽しい」って供述したってところがしっかり忌むべき絶対悪してる。

4ヶ月で4人の人間を消した罪とカルマは筆舌に尽くしがたい。しかもこれは判明してるだけで、人間に限った話だ。事件の裏では犬を買ってくれた家庭に毒入りの肉を差し入れして、新しい犬を売りつけたり、毒入りの飲料を常に常備していたりと、常軌を逸した行動は戦後の日本でも指折りのグリード

 

 

運の良さも大事

これは園子温監督ファンも知らないことだと思うんだけどね。実は実際の事件内容をまとめたWikipediaに載っている上の5つの決まり事以外にも哲学が存在するんだよ

ホラー民にとっては有名なんだけど。恐い話No.1決定戦『OKOWAチャンピオンシップ決勝戦』にて、初代王者に輝いた三木大雲和尚の怖談。これは「アフリカケンネル」の経営者である容疑者Sが捕まる直前のやり取りだ(上の動画でいうと2:26:50らへん)。

映画とはまた違う視点でこの犯人Sの特異さ、恐さを実際に対峙した三木和尚の口頭で語られてるから本当にオススメ(てか他の話もマジで怖くて面白いから時間があるなら観て欲しい、OKAWAは良いぞ)。

 

 

生きることは痛いんだよ

エロ・グロともに強烈なシーンが多い本作。散々凄惨な描写を魅せられた後なので、「いや、もう分かったよ…」と言いたいところだが、この台詞にこそ本質が詰まっているように俺は感じた。

そもそも、生きることは綺麗事ばかりではない。むしろ痛みの連続だ。金銭的な問題や悩みを全く抱えていない人なんて数えるほどしかいないし、そこに追加で家族問題、職場や友人との人間関係。生きているってことはそれだけで精神が摩耗していく連続であることは、現代を生きている人にとっては絶対に思い当たる節があるハズ

そんな人生においては、痛みを抱えて生きるしかないってこと。 痛みを乗り越えたとしても、その先が輝かしいモノであるとは限らないということをしっかりと表現してくれた。

「ラストが衝撃的」っていう感想を抱く人がすごく多いみたいだけど、俺からしたら「いや、こうなるだろ」って事しか思わなかった。ただ、期待を裏切らずに貫いてくれた園子温監督はやっぱり凄いなぁと思ったし、ラストにかけてのどんでん返し感は”フィクション映画”って感じで単純に芸術として良かったと思う。

でも一旦思い出そうぜ。これは実話が元になっているってことを。だいたい、園子温監督は”現代の闇”を描くのに非常に秀でた人だ。サブカル好きが皆、示し合わせたかのように氏の作品を評価しているのは面白い現象だと思うんだけどさ(何?エキストラで出たいの?そんな奴は一生エキストラだよ)、確実に苦しんだ人がいるという事実。この事実から目を背けてはイケないよね。といっても、単純にエンタメとして観ても秀逸な作品だし。普段他人の人生について考える機会がない人や、人生が綺麗事ばかりだと妄信する被害者A候補の能天気サブカル女に、この凄惨な事件があったということを伝えるためには超良い作品だと思う。

例の如く血が苦手な俺は軽く吐きそうだったのは秘密。

【まとめ】

ちなみに、この事件の首謀者であるK(作中における村田の妻)はまだ生きてるという事実。死刑制度に関しては難しい問題だからさ、俺は明確な答えは持ち合わせていないが、今の日本にはどれだけ痛みを抱えて生きている人がいるんだろう。そう考えると、この作品を只の実話を元にしたフィクションとだけ認識しておくのは勿体ない。これは、誰にでも起こり得る、そして起こり得ている話なんじゃないかと思う。

とりあえず、
川の水を飲むのはやめような。

愛に言葉は要らない、『シェイプ・オブ・ウォーター』観るとはっきり分かんだね

『パンズ・ラビリンス』・『パシフィック・リム』で知られるギレルモ・デル・トロ監督。親日家としても知られる氏が作った中で最高の評価を受けている作品、それが『シェイプ・オブ・ウォーター』だ。

【あらすじ】

1962年の冷戦下のアメリカ。発話障害の女性であるイライザは映画館の上にあるアパートでただ独りで暮らし、機密機関「航空宇宙研究センター」で清掃員として働いている。アパートの隣人であるゲイのジャイルズ、仕事場の同僚で不器用なイライザを気遣ってくれるアフリカ系女性のゼルダに支えられ、平穏な毎日を送りながらも、彼女は恋人のない孤独な思いを常に抱えている。

そんな日々のなか、宇宙センターに新メンバーのホフステトラー博士が一体の生物の入ったタンクを運び込む。普段はイライザに不遜な対応を見せる軍人ストリックランドが、生物を邪険に扱った報復を受けて指を失う騒ぎがあり、清掃のために部屋に入ったイライザは初めてその生物を直視する。生物は「半魚人」と呼べる異形の存在だったが、独特の凛々しさと気品を秘めた容貌をもち、イライザの心を揺り動かす。彼女は生物に好物のゆで卵を提供し、手話を教えて意思の疎通をはかる。ふたりは親密な関係となってゆく。Wikipediaより引用

 

 

種族を超えた純愛物語

キービジュアルだけ観るとさ、普通に半魚人が女性を襲っている様にも見えるのが面白い。それだけ、異形の存在は人間にとって畏怖の対象なんですよと暗に示されている気もしてくる。

だが、本作の主題は「愛」全振りだ。話すことが出来ない(耳は聴こえる)主人公のイライザが半魚人とSEXするという(本作最大の衝撃シーン)「種族の違いなんてなんぼのもんじゃい!愛の前にはそんなこと関係ないんじゃ!」 と言わんばかりの超純愛ストーリーだ。未視聴の人は『美女と野獣』をイメージしてくれれば本作の雰囲気を理解しやすいかもしれない(厳密に言えば真逆の視点を描いているけど)、あれくらいピュアラブ映画。

 

 

ギレルモ監督史上

最高評価

第90回アカデミー賞で作品賞・監督賞・美術賞・作曲賞の4冠。あと英国アカデミー賞で3冠して、ゴールデングローブ賞も2冠してるし、ベネチア国際映画祭で金獅子賞。

ふぁー? そんなことある? 「賞って…独占禁止法とか無いんだ…」と俺が意味不明な感想を抱いたのも仕方がないと思うんだ。ちなみに、他にもいろんな国の映画賞に受賞してて、だいたい50個くらい賞とってる

よくもまぁこんなに…いや、だが、評価されるのも分かる。それは、この作品が前述のように『愛』を主題に置いた物語だからだろう。万国共通で『愛』は大事にされている。しかも、差別に苦しむ人が、人生においてどれだけ苦悩しているのかという様子を絶妙な塩梅で表現しているのも高評価ポイント。

「彼はありのままの私を見る。幸せそうに…私を見る。」は作中でのイライザの名セリフ(手話)なんだけどね。この言葉だけで、様々な迫害を受けてきたであろうことを視聴者に創造させる力がある。こういう話は得てして評価されやすい。普段、下品なウィットに富んでる俺も評価しちゃうんだもん、間違いねぇよ

 

ちなみに、ギレルモ・デル・トロ監督に関しては上の記事で語っているので俺と同じように奇特な趣味をお持ちの方はご一読下さい。非日常感が味わいたい人は彼の他作品も観た方が良い(自己責任でお願いします)

 

 

今の時代に対する風刺

米ソ冷戦中のアメリカを舞台に、政府の極秘機関で働くと言うと、現代とは全く関係ない世界の様に思われる。だが、ギレルモ監督は本作の記者会見で面白いことを言っていた。

「今の世の中、“よそ者は信用するな、警戒しろ”という風潮があり、愛がなかなか感じられない困難な時代だ」

俺的言語で意訳すると「ぶっちゃけ今の時代は、冷戦時代のように、人を信用しない・愛さない時代だ。これは大変宜しくない。私がメスだったらストレスで生理予定日ズレる。」だ。だから敢えてこの時代設定にしたんだろうね(超推測ゆえ信じるな危険)。

色々と脱線したけどさ。評価されているだけあって、扱っている主題の大きさはかなり大きい。得てして大きなことを社会に発信しようとすると、単純なメロドラマではなく、ファンタスティックな寓話の方が多くの人の心に刺さる。本作はこの点が相当考えられていて(例えば、異形の半魚人が派手な技を繰り出して、敵をバッタバタやっつけるという事は決して無い)、脇目も振らずに「愛」について本気で考えましたって作品。たぶん女性の方が好きな人多いんじゃないかな。かなりドラマチック。あと最後のシーンの神々しさが異常

【まとめ】

ちなみに、この記事のアイキャッチ画像になってるのは天野喜孝氏(FFのキャラデザが一番有名)が本作を描いた一枚絵。

映画公式サイトにてSP・PCどちらもダウンロード可能という大判振る舞いで、有名だったから俺も当時ダウンロードしてたけど、この映画を観た後だと、まったく絵の印象が違うのが面白い。こういう楽しみ方が出来るのも、良いよね。

『泣きたい私は猫をかぶる』が抜群に青春してて心が叫びたがってる

2019年6月18日よりNetflixにて配信された『泣きたい私は猫をかぶる』。『とらドラ!』や『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』しかり、人間の心の機微を描かせたら右に出る者なしの”岡田麿里”脚本に外れ無し。

【あらすじ】

周囲になじめない少女の唯一の楽しみは、猫に変身して好きな人に会いにいくこと。でもそんな毎日を続けるうちに、猫と人間の境界が次第にあいまいになり始め…。Netflixより引用

 

 

志田未来 × 花江夏樹

W主演という青春キャスト

今年このアニメ映画に期待していた人も多いんじゃなかろうか。憎きコロナのおかげでNetflixでの配信に急遽変更になったのには色々な事情があるにしても、有難き幸せ

『ペンギンハイウェイ』で一躍有名になったスタジオコロリドが制作ってのも良い。しかも『ARIA』シリーズでお馴染みの佐藤順一監督&柴山智隆監督(スタジオコロリド)。あとさ、個人的に大好きな『ガッチャマンクラウズ インサイト』の清水勇司さんが演出ってのも高評価ポイント。他の製作陣も名だたるメンバーだし、久々に本気で揃えてきたなっていうアニメ映画。

そして、肝心の主演は『借りぐらしのアリエッティ』で声優イケるやん!と日本全土を歓喜させた志田未来。今回も絶好調でした。たぶんこの子は永遠に10代なんだな、女神かな。思いっきり声優っぽくない声がこの映画に最高に嵌ってた。更に、もう一人の男側主人公を演じるのは今をときめく花江夏樹くん。声優とか知らねぇよって人の為に俺が教えてあげよう。花江くんの代表作といえば『鬼滅の刃』の竈門炭治郎だよ。だがこれだけの一発屋というワケでもない。というか、個人的に今回の男主人公が花江くんと聞いた時に俺が歓喜した理由でもあるんだけど、彼は『四月は君の嘘』の有馬公生だよ! 神采配。観るしかなくない?

主題歌・挿入歌・エンドソング
「ヨルシカ」

ヨルシカの劇中歌も全部話の内容に合ってて◎! 重度のニコ厨だった俺にとってはヨルシカは青春の音。ボカロPだった時の面影をほんの少し漂わせつつ肉声で綴られる心の叫びには負け犬だとしてもアンコールを贈りたい

 

 

いつも失ってから気付く

笑顔の素晴らしさ

この作品の凄いところは、単純に恋愛物語だけに留まらない点だ。今までの自分が乗っ取られていき、ドンドン中身が猫になっていくという葛藤。そしていなくなったムゲに対して、隠していた自分の気持ちに気付く日之出少年。この両面の心情を見事に描いている。

中々にシビアな家族環境で過ごしているムゲは、”誰かから愛される”という境遇が理解できず、一度は人間でいることをやめる。と、文字にすると結構ハードな設定に感じるかもしれない。でもこれってさ、思春期に誰しもが一度は思うことだと思うんだ。誰もが一度は親に絶望して、友達のことが信じれなくなり、今とは違うところに行きたくなる。この大衆心理を題材に選ぶという絶妙な匙加減は流石の岡田麿里

だが思い出して欲しい。失った笑顔を取り戻してくれたのもまた家族であり、友達の存在であるということを。その時、その場所で疎ましく感じた存在も、フラットな目線で見れば自分を救っていてくれたことを。一時の感情で逃げることも壊すことも出来るコミュニティも自分の心の在り様ひとつで人生における太陽になる。本作はこの難しい思春期の心を真正面から直視してくれているので、こういった経験がある人ほど見ていて苦しい場面もあると思う。だが、目を背けずに観ることをお勧めする

【まとめ】

中国でも配信が決定したとのことで、これからドンドン人気になると思う。あと猫が可愛い。本当に可愛い。ムゲも可愛いけど太郎めちゃくちゃ美猫。いや、でも…欲を言えば映画館で観たかったな

今のところ、今年のアニメ映画暫定1位。

名実ともに『SPY×FAMILY』は今の漫画界におけるトップランカーになった

2019年から『ジャンプ+』にて連載している『SPY×FAMILY』。圧倒的な人気を誇り(特に女性ファンが多い)、数々の漫画賞を受賞したことで、名実ともに同アプリの看板作品にまで成長した本作について今日は語りたい。

【あらすじ】

東西の間に鉄のカーテンが下りて十余年、隣り合う東国(オスタニア)と西国(ウェスタリス)の間には仮初の平和が成り立っていた。

西国から東国に送られた凄腕スパイ・黄昏(たそがれ)は、東国の政治家ドノバン・デズモンドと接触するため、偽装家族を作ってデズモンドの息子が通う名門イーデン校に養子を入学させる任務オペレーション〈梟〉(ストリクス)を命じられる。黄昏は精神科医ロイド・フォージャーを名乗り、養子を探して訪れた孤児院で他人の心を読める少女アーニャと出会う。その場でアーニャが難しいクロスワードパズルを解いた(実際には、ロイドの心を読んでカンニングした)ため、難関イーデン校に合格できると考えたロイドは彼女を養子にする。実はそれほど賢くないアーニャにロイドは四苦八苦させられるが、なんとか筆記試験に合格。しかし次の面接試験に「両親」揃って来るよう指示されたため、ロイドは急いで妻役の女性を探すことになる。

その矢先、二人はヨル・ブライアという女性と出会う。彼女は公務員をする傍らいばら姫のコードネームで密かに殺し屋をしていたが、婚期の遅れを周囲に揶揄され、他人の注目を避けるために形式上の恋人を探していた。心を読む能力によってヨルが殺し屋であることを知ったアーニャは、好奇心からヨルが母親になってくれるよう仕向ける。恋人役を探していたヨルと、妻役を捜していたロイド、そして「わくわく」を求めるアーニャの利害が一致し、3人は互いに素性を隠しつつ、即席の家族としての生活をスタートさせる。Wikipediaより引用

 

 

連載当初から超高評価

『ジャンプ+』史上、一話のコメント数の最高記録を打ち立て、5話公開までに各話の総閲覧数が300万を突破したという本作。この数字、分かりやすくYoutuberで例えるとはじめしゃちょー位すごい。何なら、はじめしゃちょーも最初の頃はこんなに勢いは無かったからもっとすごい

 

受賞歴

次にくるマンガ大賞2019
コミックス第1巻ランキング
Apple Store「Best of Books 2019」
このマンガがすごい!2020
全国書店員が選んだおすすめコミック2020
TSUTAYAコミック大賞 2020

全部1位。これバケモン記録だから。しかも驚くべきは連載開始からまだ1年ちょっとしか経っていないところ。これからこの勢いが続いたらたぶん漫画史を塗り替えることになる

つい先日、『約束のネバーランド』の記事でも「数多の漫画賞を受賞」って取り上げたけどさ、ネバランの記録は3年かけて築き上げた記録だからさ、本作はこの記録を1年で抜いてることになる。首都高でF1車かっ飛ばしてたらウサイン・ボルトが外側から高速でブチ抜いてきた感じ(俺の中でボルトはF1より早い設定)。

 

 

圧倒的画力で贈る

感動ストーリー

本作の前もいくつか集英社で連載をしたり、他の漫画化のところでアシスタントをしていた遠藤達也先生。『青の祓魔師』の加藤和恵先生の所でも手伝っていたと言うから、画力の高さは一級品だ。連載初期から既にデフォルメ完璧にマスターしてたしね。こんなにキャラの顔を綺麗に歪める作品初めて見た。

 

キャラが可愛い

これも女性ファンが多い秘訣なのかもしれないが、とにかく登場人物のデザインが可愛い。特にアーニャは子供だからか表情のバリエーションが超豊かでナデナデしたくなる(事案)ヨルさんも美人だしな。あとボンドもモフモフしたい可愛い(事案じゃない)

 

胸に響く家族愛

父がスパイで、母が殺し屋で、一人娘が超能力者の仮初の家族。これホラー映画だったら開始2分で5人は死んでる設定だから。でも、そんなダークサイドに堕ちることなく、心にグッときてホッとするハートフルな家族愛を中心に紡がれるストーリーには本当に胸が暖かくなる

お受験の時のアーニャの台詞、「ずっといっしょがいいです」。何か滅茶苦茶に目頭の湿度上がったの俺だけ? これ月9だったら瞬間最高視聴率45%くらいいったでしょ。作品的には金曜22時くらいにやってほしいんだけど、そんなことは今どうでもよい。いや、むしろこれは連載作品であり漫画だからこそだせた味のような感動な気がする。大切なことは、地上波では観れないしな。基本的にコメディタッチで展開される中でこういった落涙必至のハートブレイクショット、テンポ感が非常に良い。

正直、これからどういった展開を魅せてくれるのか(まぁどういった展開にもやり様はあるんだけど)良い意味で予想がつかない。ただ、ずっとこの家族の様子を観て居たいという気持ちもありつつ、物語の核心である「偽りの家族の未来」「東西の平和」という難題をどのタイミングで解決してくれるのかという点が個人的な見所。この核心に触れる時は絶対に面白い。このドキドキ感…流石、今一番ホットな作品。

【まとめ】

朝起きたら”TSUTAYAコミック大賞 2020”の大賞を獲った(おめでとうございます!)ってニュースで取り上げられてるのを見て、3巻まで全話読み直した。「うん、やはり面白いな」って分かりきっていた感想を述べつつ(独り言)、そのままの勢いで感情の赴くままに当記事を執筆。

間違いなく漫画の最前線。まだの人は是非。

最後まで意味が分からなかったと言えば真っ先に浮かんでくる『アイアムアヒーロー』について

2009年~2017年の期間スピリッツで連載しつつ、2016年の実写映画化も成功させた『アイアムアヒーロー』。気が狂ったか? と思うような衝撃の一巻に始まった本作は、連載終了まで見事に気が狂っていたと思うのは俺だけじゃないハズ。

【あらすじ】

主人公・鈴木英雄は、さえない35歳の漫画家。デビュー作は連載開始後半年で早々に打ち切られ、借金も背負い、アシスタントをしながら再デビューを目指し、ネームを描いては持ち込む日々が3年を経たが、出版社には相手にされない悶々とした日常を過ごしている。そんな無為な日常の中の救いは、恋人である黒川徹子の存在。だがその彼女も、すでに売れっ子漫画家になった元カレを何かと引き合いに出し、酔うたびに英雄の不甲斐なさをなじる始末であった。

そんなある日、全国的に「噛み付き事件」が多発する。町に増えてゆく警官の数、さらには厚労相が入院して、その入院先で銃撃戦が起こるといった報道が立て続けに起こる。英雄も深夜、タクシーに轢かれて両腕と右足が潰れ、首が真後ろに折れても運転手に噛み付き、奇声を発し立ち去る女性を目撃する。やがて、周囲の人々がゾンビのような食人鬼と化す謎の奇病が蔓延し、「ZQN」と呼ばれる感染者たちが街に溢れる。恋人や仕事仲間も犠牲となり、都内から逃亡した英雄は富士の樹海で女子高生・早狩比呂美、御殿場のアウトレットモールで看護師・藪(小田つぐみ)と出会い行動を共にする。Wikipediaより引用

 

 

実写版

『アイアムアヒーロー』

主演:大泉洋、そして有村架純長澤まさみがヒロインという豪華キャスティング(小田さんはヒロイン枠、いいね?)。それだけこの作品が売れる自信があったんだろう。結果としてこの思惑は大成功だったと言える

 

原作再現度MAX

まず大泉洋の英雄がめちゃくちゃ良かった(欲を言えばもう少し小太りだが)。社会不適合者感が如実に再現されていて、普通の社会が機能している時は絶対に役立たずな感じが◎。あと会ったことないけど「こんな人いそうだな…」っていうリアリティさが良かった。こういう役うまいよね。

あと長澤まさみのカッコ良さが際立つ。終末の世界で生き抜く強い女感が際立っていて、こんな女性に出会ったら即堕ち。ショッピングモールの面々も糞ったれっぷりを存分に発揮した演技で話を盛り上げてくれた。やっぱり価値観がなくなった世界でこそ人間の本性は出て来る。

 

ZQN再現度120%

韓国技術員の協力を得て行ったという特殊メイク&映像がハンパなくクオリティ高い(というより魅せ方が上手い)。ちなみに監督は『キングダム』と同じ佐藤信介監督なんだけどね。この佐藤監督が原作準拠で描いたスケッチをもとに特殊メイクを施している。陸上選手のZQNは3Dプリンタ使って用意されたZQNらしいし、カズレーザーもZQNとして出てきたりすごくバラエティ色強めながら、映像は最高にグロテスク。この思い切りの良いギャップが素晴らしかった。

もちろんストーリーも良かったよ。敢えてのショッピングモール編をメインにすることでアングラ感増しててゾンビ映画として2階級特進してた。

 

 

原作版

『アイアムアヒーロー』

意外と、映画しか観てない人・原作を最後まで観てない人多くない? 話が進むにつれてドンドン物語がカオスに煮詰まって3日目のカレーみたいになるから、読んでない人は原作の続きも読んだ方が良いと思う。

 

映画版の”その後”

冴えない漫画アシスタントの日常を淡々と描いた末、巻末で衝撃的なアウトブレイクを読者に与えた原作版『アイアムアヒーロー』。もちろん、最終巻でもやってくれてる(いや、むしろ何もやっていない)

映画では多少の差異はあってもほぼ原作準拠でやってくれたから、見事にゾンビ映画としての体を成していたけど。この作品の真のジャンルは実は”ゾンビもの”ではない。最終巻まで観てると要所要所に「あれ、この描写いる?」っていうシーンが出てきて、それがZQNとは? の解答への布石になっている(気がする)。そう、要するに投げっぱなしENDだ。

まぁ、たぶん、宇宙人的な存在が地球をテラフォーミングする&人類が共存できるか測るために、ウイルスなのか概念的なモノをアウトブレイクさせたんだと俺は素直に受け止めた…のかな。うん、正直に言うと俺も何が何だか分からん!

ただ、見所としてはいっぱいあるんだよ。比呂美ちゃん・小田さん・英雄の三角関係とか、建設的ZQN・巨大ZQN・存在理由不明ZQNの登場とか、江の島編・高層ビル編とか! え?大丈夫。俺も今本当に面白かったか疑問に思ってるよ。だが、まぁ、面白かったな…(遠い目)。

 

【まとめ】

俺のボキャブラリーではその魅力の一端しか伝えられなかった感があるが、一世を風靡したことには変わりない本作。終末系作品が一般大衆に認めらるようになった走りと言っても過言ではないので、未読の人は読んどけばヲタクとの会話の時に使えると思うよ(俺はヲタクじゃないから知らんけど)。

原作リスペクトの投げっぱなし記事でした。
(本作はちゃんと面白いから!)

結論から言うと『約束のネバーランド』は本当の自由を証明する為の旅

「ジャンプらしくない新連載」として、2016年に週刊少年ジャンプにて連載を開始した『約束のネバーランド』。2020年6月15日発売の同誌にて堂々完結した本作。いちファンとして、この王道にしてアナーキーな作品を語りたい。

【あらすじ】

色々な孤児が集まる「孤児院」・グレイス=フィールド(GF)ハウスは、院のシスターで「ママ」と慕われるイザベラのもとで、「きょうだいたち」にも血縁関係はないが、幸せに暮らしていた。ここでは、赤ん坊のころに預けられた子供を、特殊な勉強とテストにより育てあげ、6歳から12歳までの間に里親の元へと送り出す…と孤児たちは教えられていた。

里親が見つかり、外の世界に出ることになったというコニーが人形を置き忘れたため、主人公で身体能力に優れるエマと、知略に優れるノーマンはそれを届ける。しかし二人は、近づくことを禁じられていた「門」でコニーが食肉として出荷される瞬間を目撃する。そこから「鬼」の存在を知った二人は、リアリストで博識なレイのほか、ドン、ギルダを仲間に引き入れ、GFからの脱獄計画をスタートさせる。Wikipediaより引用

ちなみに、漫画漬けの日々を送る俺は
他にもオススメ漫画を紹介してます。

SF作品のオススメ漫画は?
人気ブログランキングへ

映画化してるオススメ漫画は?
FC2 ブログランキング

今アツい漫画は?
にほんブログ村

それではお待ちかね。下記にて『約束のネバーランド』に関して独善的に語っていく。楽しく読んで、作品のことを好きになってくれると嬉しい。

 

数多の漫画賞を受賞

TSUTAYAコミック大賞 2016
第63回小学館漫画賞
漫画新聞大賞2017 大賞
このマンガがすごい! オトコ版1位
TSUTAYAコミック大賞 2018

大体有名どころだとこの辺。ゴールドラッシュかよ。ジャンプ編集部の担当は笑いが止まらなかったことだろう(あとケンコバさんがやってる『漫コバ』でもグランプリ獲ってたハズ)。まぁ正直、普段漫画読まない人からしたらこの辺の漫画ランキングは馴染みがないかもしれない(俺はとりあえず全部チェックしてるけど。あ、これ自慢です。あれ、自慢になってる?)。わかりやすく例えると、日本でアカデミー賞獲ったと思ったらカンヌ・ベルリン・ヴェネチアでも選出されちゃった感じ(゚Д゚)ハァ?

2019年1月にアニメ版も放送されたから、それで一気にファンが増えた感もあるよね。UVERworldの「Touch off」が主題歌でめっちゃ格好良かった(あれはズルい)。2021年春にアニメ2期も決定してるという人気ぶり。でも、アニメを控えながらもキッチリ最終回を〆るところが最高にCoolかと。こういうところ、アナーキーで好き

 

 

エッジの効いた設定が◎

てことで、原作ファンの多さもさることながらアニメ観てる人も多いと思うので、詳しくストーリーを紹介するのは割愛。ここからは俺が好きな点を語りたいと思う。

まず、少年誌らしからぬ鬼のビジュアルが◎だよね。エマが初めて鬼を目撃した時の「なに?」は俺たち読者の気持ちを二文字で表現してくれていた。正確には「え、な…ふぇ…あーね、そういう感じでくるかー。で、なに?」っていう形にならない感情だったけど。しかも驚くべきはザコ鬼でこのクオリティ。物語中盤で登場する”狩場の死神”ことレウウィス大公に関してはパリコレモデルも顔負けの8頭身を魅せつけてくれた(女王もスタイル抜群!)。

そもそも、食肉人間の飼育場が舞台の作品をよく本誌で掲載する気になったなと感心しかないゲーム始めたら魔王城が最初の村みたいなクソゲー設定ながら、強大すぎる敵に立ち向かいながらの逃走劇はまごうことなき王道ストーリー

 

 

ジャンプの新たな王道

俺も前述しちゃってるけどさ、よく「ジャンプらしくない」という評価を受ける本作。真正面から敵を倒し、勝鬨を上げるのが本誌の特徴ではあるものの、主人公たちの年齢がここまで幼いと、このステレオタイプも現実と乖離しすぎてしまう。ならばどうするか。逃げるしかないでしょう。俺(30歳)だってそうする。

でも、逃げながらも友情・努力・勝利をしっかりと描いた。つまりこれは、子供という圧倒的弱者の目線でしっかりとジャンプの王道を描いた作品なんだよ。こんなにダークな作風ながら読者層は若年層&女性が多いって聞いたことあるしね。

しかも、お気づきだろうか。この『約束のネバーランド』のヒットを受けてか、本作以降、尖った作品がジャンプ本誌に増えた。『チェンソーマン』『呪術廻戦』はその筆頭だ(富樫先生は例外だ! 一旦忘れろ)。ダークファンタジーとして、名実ともにジャンプの新境地を切り拓いたってこと。

 

 

最高の未来とは

あ、このブログ全然ネタバレするスタイルだから。躊躇いなく最終話にも触れます(でも人が良いから大事なところは暈すよ←異論は認めない)

「運命なんて覆してやる」の精神で、仲間のために突き進む子供たちの姿はここまで観てきた読者も納得の展開。称賛すべきは、ここで希望の道を指し示すのが失った仲間であること。コニー、ユーゴ、イザベラをここで再登場させる作者の脚本作成能力をスキルハンター(盗賊の極意)したい

最後の最期で家族を失ったエマ。それを見て絞り出されるノーマンの「よかった…」。記憶が無い相手に対して独白のように綴られる幸せな未来と、選択したことの正当性。最高の未来だよ、でも、それでも僕は君といたかったという切なる少年の願いはもう全読者感涙必至でしょう。しかもさ、この独白を聞いたエマも泣いちゃうところが最高。全く記憶が無いのに、何故か溢れ出る涙。そして零れる「会いたかった…」の一言。これが聞ければもう満足なんだよ。むしろ最終話この一コマだけでも良かった。忘れてても、思い出せなくても、依然と別人でも良いから一緒に生きようって言えるのは、ここにたどり着くまで「なんとしても皆で生きよう」って願ってきた子たちだからこその言葉だよね。

見事なハッピーエンドで皆幸せなことには変わりないんだけど。他作品のように、ご都合主義全開で誰一人漏れることなくハッピーエンドじゃないっていうこの絶妙な塩梅がお見事。しかも俺は逃してませんよ。ジャンプって毎号、最終ページに編集部が一言〆の一言見出しみたいの入れるじゃん? それが今回は「絶望の運命、その彼岸(さき)で――」だったんだよ。ちゃんと絶望乗り越えてるんだよ。編集部公認ですよ。やはり、”最高の未来”って言うのは、苦しい逆境を乗り越えた先にしか手にすることが出来ないってことを、俺たちにしかと教えてくれた。本当の自由は頑張った奴だけが得られるんだよ

【まとめ】

本当の自由を求め、温室から脱走して異世界まで辿り着く物語。結末は、どうなんだろう…。賛否両論あるのかな。俺は好きだけどな。というより、最期まで少年誌としてのご都合主義に抗ったという点に俺は感動したよ。誰よりも本当の自由を証明したのは、この作品自体だったのでは? 週刊少年ジャンプという媒体の中に居ながらも「運命なんてクソくらえ」とヤリ切った本作に感謝。ちなみに、実写で映画化するらしいよ(マジ)

白井カイウ先生&出水ぽすか先生、お疲れ様でした。

次回作も本当に期待してる。

何も考えず『宇宙戦争:ゴライアス』観て脳の快楽物質をコントロールしよう

2012年、マレーシアにて制作された『宇宙戦争:ゴライアス』。知る人ぞ知る『宇宙戦争』後日譚だが、コレが中々に気持ちの良いドンパチSFなので今回はこれを取り上げたい。

【概要】

H・G・ウェルズの名作SF小説をアニメ映画化。地球に火星人の大軍が襲来し、勇敢な戦士達は侵略者に立ち向かう。地球の技術の粋を集めた兵器が今、うなりを上げる。Netflixより引用

時代設定が1910年代なんだけど、こんなに昔の設定だったんだ。あの賛否両論を生んだスピルバーグ監督版(トム・クルーズ主演)の『宇宙戦争』はモダナイズされてたってことかな。

宇宙戦争 (吹替版)

 

 

SF×スチームパンクアニメ

「ふむ…エンジンが蒸気機関だから、これはスチームパンクだな(謎理論)」というのが俺が観た時に一番最初に思った感想。正直、最初観てる時はこれがH.G ウェルズ原作だって気付かなかった。でも火星人のビジュアルが明らかに『宇宙戦争』意識してたからさ、「あ、そういう…?」ということで続編であることを理解した。

いや、でも流石に時代感あり過ぎでは!? テクノロジー格差が俺の母校の用務員室と電通の喫煙所くらいあるんですけど。なんて、人類敗北待ったなしと思っていた矢先、奮闘しだす人類。あ、良かった。やっぱり戦争は技術力を底上げするんだな。こんなビーム兵器が第二次世界大戦に使われてたら三国同盟は瞬殺で海の藻屑でしたね。ということで、幼いころに両親を消された主人公が火星人に復讐するスーパーマンになる物語が始まった。

 

 

偉大なアメリカ様に捧ぐ

リスペクト精神

面白い位に人が溶けて骨になるんだけどね。もうちょい避けろよ! 命大事にしようぜという俺の心配など意にも介さず溶ける。そして火星人は爆発する。足をヤられたハードパンチャーのインファイトだったか…と諦念を抱くと共に、俺にはある一つの考えが浮かんだ→「そうか、これはアメリカ様リスペクトのドンパチ映画だ」。こう思ってからはかなり気持ち良かった。

「我が軍の勝利だ!」って言って拳を掲げる姿には『インディペンデンスデイ』の大統領演説の感動を思い出したし、全世界が一丸となって火星人に立ち向かっていく様子も王道。余談だが、かの有名なウィル・スミス主演の『インディペンデンスデイ』も、原作『宇宙戦争』から影響を受けてたらしいね。ラストの倒し方とか類似するものがあったしな。本作はそれらを全て踏まえた上で、敢えて純粋な殴り合いをアニメ映像に落とし込んだ良作だと言える。ただただ、見ていて気持ち良く、良い感じにドーパミン出るからパーキンソン病の予防になること請け合い

【まとめ】

Netflixって面白い作品多いなぁと改めて思った。今まで興味なかった作品も定額だとついつい観ちゃうよね。ということを言い訳にして、日々黙々と膨大な量の娯楽を消費している俺。たぶん働き盛りの20代の中では視聴率上位ランカーだと思う。全く自慢じゃなく、むしろ廃人の証明なんだけど、その辺の映画系Youtuberより観てる

Huluも登録するかも。
廃人への軌跡、乞うご期待。